封 書

第2話


お初です!わたしがベルです。ベルは、慌てて封筒から大きな貝殻のスライスを手に取り、しげしげと眺め、電灯に透かして見たが、貝とは思えない模様が浮き上がるだけで謎を解く鍵は一向に掴めない。
イライラして貝殻をフリスビーのように放り投げたり、コーヒーミルのハンドルでコンコン叩いたりしたが、まったく変化が見られなかった。

疲れ果てたベルは、頭を抱えて床にへたりこんでしまった。
そんなベルの頭上で、店の大時計が賑やかなミッキーのテーマソングとともに、深夜の12時を告げた。
こんな模様の貝ってあるかしら?


あぁーもう、こんな時間か・・・手足が氷のように冷えきってしまった・・・


渦巻きキャンディーは要らんかね? ベルは冷えた身体を温めようと熱いシャワーを浴びた後、まだ濡れていたその手で貝ガラを掴み、再びぼんやりと見詰めていた。

すると、濡れた手で掴んだ部分から、貝の色がブルーへと変化し始め、その直後、突然にグルグルと渦を巻き始めたのだ。
ベルは激しくうろたえた。
とっさに、傍らにあったコーヒーミルのハンドルで貝を叩こうと振り下ろすと、ハンドルは貝の物凄い吸引力に呆気なく飲み込まれてしまった。
その信じ難い光景を目の当たりにしたベルは、悲しい現状を受け入れるより他なかった。


これが! これが、化け物の人喰い貝なのか!!
ポヨ嬢は、やっぱり、この貝に・・・なんてこった!!


ベルは、やけのやんぱちで唯一の手掛かりである封筒までをも、グルグル回り続ける化け物貝に投げつけた、とその時である。
封筒の中の星の砂が、吸い込まれる事なくパッと空中に飛び散り何やら文字を形作リ始めていた。
その文字を、いぶかしく思いながらも読み取ると、2つの単語だと言うコトが分かった。それは・・・・・・

お手紙ちょうだいねっ

 「シ、ン、ジュ・・・・・・ネ、、リネ??」と読めた。



ベルは、冷静さを取り戻し、数日前の新聞の記事を思い出していた。

そう、たしか・・・ここ何年も海水が汚れ続け、ポヨ嬢の好きな真珠作りも難しくなってると載っていた。  ポヨ嬢も嘆いてたっけ・・・・・・  それと、ネリネって花の名前だよな?!  ・・・この花は、ギリシア神話に登場する美しい水の妖精、ネーレーイスにちなんだ名のはず。ネーレーイスは、父の住む海底の宮殿で楽しく暮らしていると聞いていたが・・・  う〜ん、これは、ネーレーイスの妖精が悲しがって、ポヨ嬢を引き寄せたのか?!


奇妙な封書が届いてから、これまで悶々と苦しみ続けていたベルだったが、今となっては自分が何をすべきなのかが解った気がした。
全ての謎を解くためには、貝の中に侵入し、そして、ポヨ嬢と一緒に脱出して元の生活に戻らなければと・・・・。
そう判断し、決心したベルの動きは、超人的なほど素早かった

まず、カフェ店を覆うように繁っているアイビーで、太くて丈夫な綱を作った。
また、大きなバックには、ネリネの花の球根をわんさか入れた。
胸のポケットには、ライラックのキーホルダーとコーヒー豆と星の砂の残りを入れた。

どうすれば救出できるのか、本当のところ、ベルは自信が持てなかった。
そんな自分の気弱な気持ちを奮い立たせ、落ち着かせようと、グルグル回る貝を目の前にして一度だけ深呼吸をした。

運を天に任せる心境である!
ポヨ嬢とネーレーイスの妖精を助け出すために、ベルは思いっきり貝めがけてダイビングした!!


 


貝の中は、ぼんやりと光が射していて、ふわっと柔らかく、思いのほか居心地が良さそうに感じられた。
手探りしながら当てもなく歩いていると、何やらヒンヤリと冷たい塊に遭った。それは、巨大な薄いピンク色の真珠のようだった。

両手で触ると中から振動が伝わってきた。
それは、誰かが中からドンドンと叩きながら叫んでいるようだった。
ピンク色の真珠に耳をピッタリと当てると、懐かしい、愛する者の声が、ベルの耳に聴こえた

ベル〜〜! 私よ〜 ポヨよ〜〜






第3話へつづく     創作者 ぷちろーど・あき 

2002.10.27 UP