彼との生活


ポコポコ、シュッ、ポコポコ。タクタク、タクン…
今朝もコーヒーメーカーからコーヒーの滴が音を奏でてる。

朝陽が降り注ぐ先に、籠いっぱいのハーブを摘んで元気よく大股で歩いて来るあなたの姿が見える。
窓を全開にして、大声であなたに呼びかける。

「お帰りなさい!今日も大収穫ねっ。」

「今日は今まで踏み込んだことのない洞窟に入ってみたんだ!何があったと思う?洞窟を進んで行くとさ、まるでステージのような円形の場所に出て、真上から太陽が降り注いでてさ、若葉から朝露がキラキラ零れて、流石の僕も言葉を失ったよ。そして…ねぇ、聞いてる?」

「うん、うん、朝ごはん食べながら聞きたいわ♪ だから、ちょっと待っててよ」

彼の言葉にあいづちをうちながら、私は素早くプレーンオムレツを焼いて、彼の摘みたてハーブ入れのフレッシュサラダを盛って、トースト焼いて、コーヒーを注いだの。

外のテラスは雨ざらしだから色が少しはげてるけど、味わいがあって私のお気に入りの場所。そこに朝ごはんを並べてから、彼に声を掛けた。

「さぁ〜準備万端よ。それで?話の続きを聞きたいわ♪」

風が駆け抜ける草原に、いつもの小犬が餌をねだりにやって来た。
彼は自分のトーストの端を千切って、野良の子犬に投げてやりながら、話し始めた。

「そうそう、この小犬に似てたなぁ〜その神秘に魅せられてたらさ、突如キィ〜ンて音がして耳が痛くなって、その場にしゃがんだんだ。音が止んだから目を開いたらさ、円形のステージで子犬が踊ってるんだよ。可愛かったよ〜君にも見せてやりたかったよ。そして、ワルツの音楽が止むと、子犬が会釈して、僕もステージに上がれって言うんだ。」

私は、ハーブ入りのサラダをパクパクッ食べて、いつもの彼の空想を微笑んで聞いていた。 

数日後の朝、ハーブを摘みに行った彼を、いつものように待っていた。
でも、彼は帰ってこなかった。
翌日、空想とは思ったが、彼の言う洞窟へ捜しに行く事にした。
風に背中を押されるままに当ても無く歩き、森の清水で喉を潤し、また風の囁きに従って歩いた。すると、、、


つづく


2002.5.10UP