今日は栗健診日です。マロンは体重測定が大スキ。 だって、栗の世界では体重の重いほうが褒め称えられ、皆からの羨望の眼差しを独り占めできるのですから。なのに、今回のマロンときたら、日毎夜毎に恋の想いをつのらせ、食事も忘れていたので少し痩せてしまい、憂鬱な日となってしまいました。 「あぁ〜健診なんてすっかり忘れていたわ…ランクが落ちたら叱られちゃうのにぃ。おぉ〜マッシュー、私を守って…」 こんなマロンのヤキモキする気持ちを一息で吹き消すような看護婦さんの声が響きます。 「ミス・マロン!お入りなさい!! あらっ、少し痩せたんじゃない? 虫でもいるのかしら…虫下しの薬、飲んでみる??」 「いいえ、いいえ、虫なんて…大丈夫です。次回までには太るようにしますから…ランクは下げないでください。お願いします。」 ランクが下がると、姉達のように焼き栗・ペースト・グラッセにはなれずに、堆肥組として子孫繁栄のお役目を担うのです。大切なお役目とは言え、若い栗たちにとっては出来れば選択したくない道でした。 恋も体重も思い通りにならず、気分が沈んでいたマロンですが、そろそろマッシューと会える時刻だと思うと、いつしか鼻歌まじりで 「今日はローズピンクの口紅にしようかなぁ〜 前髪のカールはジェルでシッカリキープしてぇ〜♪」 とルンルンしています。 楽しいデートの時間は瞬く間に過ぎていくものです。 「マッシューの声を、もっと近くで聴きたいなぁ〜」 と思わず口にすると、マッシューが冷めたような大人ぶった口調で 「…今までどおりでいいじゃない?こうして会いたい時に会えるんだし…そりゃ、君の独立への道が決まるのも時間の問題だから、近い将来には……会えなく…な…る…」 マッシューはそう言ったきり淋しさのあまりうつむいて、気のせいかビロードの帽子が小刻みに揺れていました。 そんな愛しいマッシューの姿に、マロンは大きく頷いて心の中で呟きました。 「マッシュー………わたし決めたわ!!」 マロンだって、たまらなく淋しいのです。だからこその決断です。 |
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数日後の真夜中のことです。 「マロン!起きて…窓から顔を出してよ。ほらぁ〜僕、こんなに近くに来たよ♪」 マッシューの声です。 驚いてベッドから跳ね起き、小窓に駆け寄り覗いてみると、なんとマシューがキノコの掟を破り、危険も顧みずに葡萄のツルで編んだトランポリンでマロンの居る小窓近くまでジャンピングしているのです。 「マッシュー、危ないわ…それに見つかったら掟破りでシャンピニオンの王道を歩めなくなるじゃない…」 つい心配から出た言葉でしたが、マロンにはマッシューの優しさが胸に染み、より熱い感情がマロンを支配し、そして、マロンの決心は揺ぎ無いものとなった瞬間でした。 |