水しぶき

今年も約束どおりに夏がくる。
涼を求めて公園の水道で遊ぶ子供たちの水しぶきが、傍を通りかかったサクラの顔に掛かった。
「あぁ〜冷たくて気持ち良いなぁ〜。水しぶきかぁ〜そう言えば……」


  


サクラの両親はね、スポーツ万能な父と活発を絵に描いたような母なワケよ。
なのにサクラは、スポーツがあんまり得意じゃなかったの。
だけど、泳ぐのだけは別!
何故かって言うとね、夏になると日曜ごとにプールに連れて行ってもらってたからなんだ。
当然、最初は泳げなくて、お母さんの首に小猿のようにしがみ付いていたの。

「サクラ、腕を少し緩めてよ!お母さん、息が出来ないじゃない!」

なんて怒られるほど、水が怖くてギューッとしがみ付いていたのよ。
「顔を水に浸けてごらん」って言われて徐々に水に慣れていったんだけど、
親って辛抱強いねっ!

或る日、いつものように手を持っててもらって浮いてたの。
でも、気が付いたらお母さんの手が、いつの間にか離れてて、
サクラだけがプカプカ浮いてて、それがすごく嬉しくて面白くてね。
その日はただプカプカ浮いて遊んでたっけ。


  


そんな両親の特訓の甲斐あって、小1の初プール授業では難なく泳げたんだ。
でも、息つぎが出来なかった。
ガムシャラに泳いで行っては15m辺りで足をつき、
思いっきり息を吸い直してから、残りの10mを泳いだってワケ。
でもサ、息継ぎが出来ないと……25m泳げないと……プールの選手にはなれないじゃない?!
どんなにバタ足で水しぶきを上げても、15m地点で息が苦しくなる。
サクラは悔しかったなぁ。


あれは、プール授業も終わりの頃だったかなぁ…
水面からイキナリ顔をガバッと上げて泳いでるサクラの姿は、
たぶん遠目から見ると溺れてるみたいな息継ぎだったと思う。
呼吸がラクになるはずのこの息継ぎは、じつはとっっても苦しかったの。
だって、悲しいカナ、酸素は殆んど吸えてなかったんだもん。
25mを必死の思いで泳ぎ着くと、まるで何百mも泳いだみたいにヘトヘト。
おまけに酸素不足で頭も痛くなったりしてサ。
だけど、イヤにはならずにプール授業は大好きだった!


  


小4になった夏。
相変わらず息継ぎ下手なサクラだったけど、
頑張りが先生に認められてね。
区大会の選手に選ばれたんだよ!
サクラはルルンと嬉しくってサ、休まず練習に出た。
しかーーし、サクラの気持ちをショゲさせる課題が降ってきた!

それは、“飛び込み”。
繰り返し行われる飛び込みの練習は痛かった!
水面をお腹と太ももでシッカリ受け止めてたからねっ。
ビシッバシッって思いっきり水面で打って、終いには紫色の打ち身。
でもね、頑張ったサ!!


  


綺麗なフォームじゃなかったけど、飛び込みも息継ぎも何とかクリア。
いよいよ区大会の日。
晴天に恵まれ、サクラの番だ!
サクラは、水面を睨んで、頭を内側に入れて勢いよく飛び込み台を蹴った!
高々と水しぶきを四方八方に散らして、ガムシャラに泳いだ!
途中で立つこともなく、無事に25mの壁をタッチ!!

大会の結果は、表彰台には上がれなかったけどねっ。
青空に思いっきり跳ね上げた「サクラの水しぶき」。
最高に気持ちよかったよ〜♪



おわり


2003.7.1UP