シロちゃん


ここは、茶トラ里親相談所。
春に産まれた仔猫は手形登録してください。

桜の花びらがふわふわ舞い踊る桜並木を通りがかったとき、こんなうたい文句の折込広告が空から降ってきた。
真っ白にゃんこは、子供心に考えた。

「ひとりで生きていこう!アタシは一匹にゃんこ(狼)が似合ってる!」

と小さな涙を隠し、意地を張って、その広告を尻尾でパシッと掃った。
だけど、世の中、世話好きが結構いるもので。

数日して、広告の茶トラ相談所のほうから、アタシに声を掛けてきた。
正確に言うと、“声を掛けた”と言うよりも、お腹ペコペコになりすぎて小刻みに震えて、ヨロヨロだったアタシの弱点を見抜いたのね。
すごく甘くて美味しい搾りたてミルクを、目の前にちらつかせて…

 でね、こう言うのよ。
「もっとミルクが飲みたかったら、一緒についておいで!」ってね。
アタシ、迷わなかった。
だって、愛しのミルクがお腹いっぱい飲めるんなら!

茶トラはアタシを、とある家の庭に招き入れた。
そして、茶トラが耳元で囁いたの。

「ここでジッとしてるんだよ。逃げちゃダメだ。5分も我慢してたら、甘くて美味しいミルクが好きなだけ飲めるんだから。いいね?!」

そう言い終えると、茶トラは、その家に向かって一声『にゃぁ〜』と鳴いた後、物陰に隠れたの。
アタシは言われるがままに、暫くただボンヤリ座ってた。
そうしたら、ガタガタって音がして、人間の女の子のデッカイ声が聞こえた。

「ワッ、真っ白な猫だ!…お母さん、仔猫がいるよ!!」

アタシは声のする網戸の奥をジッと見た。
向こうもアタシをジッと見ていた。
と思ったら、いきなり網戸が開いて、女の子と母親の二人が目を真ん丸くして出てきたの。
びっくりして横っ飛びしそうになったのはアタシのほうなのに…
でも、茶トラの言ったとおりだった。
アタシは、甘くて美味しいミルクがたっぷり飲めたのよ。
すっかりお腹がいっぱいになって、気持ちよくグッスリ眠ったっけ。
アタシは、その庭が気に入ったわ。


   


ときが過ぎて、アタシもちょっぴりオシャレな年頃になって。
美貌が災いしたって言うか…ちょっと散歩に出ると、アタシの後ろをぞろぞろと、色柄の違う4匹が一列になってついてくるの。
だから、みんなと仲良しになったの。
そしたらね、とどのつまり4種類の仔猫が産まれたのよ♪
アタシの子供たちよ♪

            

人間たちは、もぉ大騒ぎ。
「猫ってどうなってるの?4種類よ〜…!!」
なんて、こっちが変みたいじゃない。
どうしたも、こうしたも、にゃんこ社会じゃ珍しくもないのにね。




アタシの子供たちは、4匹とも個性的で、愛嬌があって可愛いの。
にゃんこの誰からも歓迎されて、もちろん人間からも愛された。
ただ、アタシ、身体が弱くてね…怪我の治りも悪くて…病気がち。
泣く泣く2匹を手放し、1匹は独立し、最後の1匹だけがアタシと一緒に暮らしたの。


 


たくさんの春が過ぎて行ったわ。
春産まれのアタシが、春に……
茶トラ里親相談所の広告が降ってきた、あの空に……
アタシ、そろそろ戻ることにしたのよ。
じゃぁ〜ねっ。。。ごきげんよう♪ また、お空で会いましょ♪

          


おわり

2003.4.2 UP