小さな物語表紙  T  U  V  W  X  Y  Z  [


[.ちょっと悲しい海


七色のカエルは満月の夜に集めたサンゴの赤ちゃんをオオサンショオウオの大きな口の中に隠していました。
オオサンショオウオとカエルは人知れず穏やかな浅瀬から海に入り、音もさせずに深く深ぁ〜く潜り、真っ黒に見えるほど海底を覆い尽くしている巨大昆布のうえにサンゴの赤ちゃんを静かに吐き出し、遠くへ遠くへ潮に乗せてやりました。



オオサンショオウオもカエルも何百年と生き続けてきましたが、どうにも寄る年波には勝てません。
大きく深呼吸をして、そぉ〜と息を吐き出し、最後の赤ちゃんを潮に乗せると、オオサンショオウオは息絶えてしまい、折り重なるように七色のカエルも海の底深くに沈んでいきました。


この様子を人魚のショーコちゃんが悲しく見守っていました。
すると突然、真夜中なのに空が七色に光り、ドドドッ〜と大きな音がして海が大きく高くうねり始めました。
若い人魚のショーコちゃんは初めてのことで、車で出かけて行った3人を心配しながらも、岩陰に非難するのが精一杯なほど海は揺れ、雷が鳴り、静かにきらめいていた夜空が一転してしまいました。




とそこへ、嵐の道をくぐり抜けて来た5人の姿がありました。
そうです…エルちゃん、ニジちゃん、リンデさん、レナさん、じゅん君の5人です。



           


ニジちゃんは急いで車から走り出て、何の迷いもなく荒れ狂う海に飛び込み、酔った魔女が持っていた残りのタネを海に流しました。



すると不思議なことに、深海からひとすじの光が真っ直ぐに天に向かって昇っていくではないですか…。
岸の岩陰に身を寄せ合いながら見守っていた4人は、いつしか気を失っていました。

どのくらい時が過ぎたのでしょうか…ニジちゃんが大きな波ごと岸辺に運ばれ、ようやく目を開けて見たものは
オオサンショオウオと七色のカエルが天に召されて、空高く昇っていく様でした。
そして切れ切れになった巨大な昆布が岸に流れ着いていて、それはそれは大きな昆布の山がいくつも出来ており、あとには光輝く紺碧の海原が広がっていました。
それを見たのが最後で、いつしかニジちゃんもあまりの疲労から気を失ってしまったのです。


鳥の賑やかなさえずりでハッとすると、5人ともリンデさんの家にワープしていました。
「海は…海はどうなったの?」
だれかれともなく言うと同時にドアが開き、秋のキノコいっぱいのシチューを持った若葉のナオミちゃんと、肩に小鳥を乗せて鈴の音のような甘いセレナーデを奏でてる鈴音ちゃんと、紺碧のトレーにたっぷりと海の幸を盛った人魚のショーコちゃんが笑顔で立っていました。


 

ナオミちゃん&きのこシチュー
 

ショーコちゃん&魚貝トレー
 

鈴音ちゃん&小鳥




数日後、エルちゃんとニジちゃんは、みんなに祝福されて風車の付いた可愛いチャペルでウエディングベルを鳴らし、リンデさん達の隣家で賑やかに暮らすこととなったようです。



2001.9.2 小さな小さな物語 完