タイトル : あいらぶポン太 (前編)



空に住む蒼い目をした子象達は、雲海のスケートリンクで遊ぶのが大好きです。
スッーとたなびく白い雲海は何処までも何処までも途切れることなく続き、子象達は夢中で滑走し、時には、滑走するだけでは飽きたらず、雲の隙間から下界の匂いを当てる「鼻当てゲーム」を楽しみました。
子象のポン太とジャムが特に興奮する鼻当てゲームは、町に一件だけあるパン屋さんの匂いを当てる時です。
食べても食べてもお腹が減る育ち盛りの彼らは、毎日のように長い鼻を雲にズボッと押し込んで、立ち上るパンの香りをお腹いっぱい吸い込んでいたのです。

或る日のこと…。
ポン太は何を思ったか、鼻ではなく目でパン屋を覗いてみたいと思いました。
覗いてみると、汗を拭き拭きパン生地を練っては丸めオーブンで焼いている少年と、その少年の傍らで遊ぶ可愛らしい少女の姿が見えました。
ポン太は一目で少女が気に入りました。

「あの子、可愛い 一緒に遊んでみたいなぁ〜

そうポツリと呟いたポン太の声を、友達のジャムは聞き逃しませんでした。

「おぃ、ポン太! そんならさぁ、アイスホッケー大会で1等になろうよ!1等のご褒美は1泊2日の下界旅行って言ってたゼ」

ポン太は唖然としました。

「大会で1等だなんて…世界の空から集まるチームの中で1等になるなんて…ぜぇーーーーーたいに無理だ!!」

冗談だと思ったポン太は笑いながらジャムの顔を見ましたが、ジャムの顔は真剣でした。

「ウッッ…息苦しい雰囲気って、僕、苦手だ」

ピンと張り詰めた空気がポン太を硬直させ、四つ足はカタカタ震え始めてしまいました。

「僕、帰っろかな…」

そう気弱な言葉を残し帰ろうとするポン太の尻尾を、友達のジャムはムンズと掴んで離しません。
ジャムに引きずられるようにして、町に唯一つあるアイスホッケーチームを訪ねました。
丁度、補欠が必要だったと喜んで迎えられたジャムとポン太は、その日から練習に励むこととなりました。
四つ足だから安定は良かったけれど、スティック代りに長い鼻を使ってパックを飛ばすのは、とても冷たかったし、時には砕けた氷を吸い込んでしまうこともありました。
あれよあれよと言う間の大会当日。
めちゃくちゃ緊張したポン太グループは、練習の成果も実らず一回戦で敗退してしまったのです。

夢破れたポン太は、ションボリしながら秘密基地へやって来て、久しぶりにパン屋を覗くと、折しも少女が少年に泣きながら何かをせがんでいるところでした。




「ねぇーーリョウ兄ちゃん!! どうしてサンタさん来ないのーー、サクラんちだけだよ!お友達のうちはみぃーーんな来るのに!」

「サクラ…、サクラはまだ小さいから分からないかもしれないけど、お兄ちゃんはね、町中の人達のためにX’masケーキを焼かなきゃならないんだよ。それに、こんなに忙しくっちゃ、煙突掃除も出来ないし、プレゼントを入れる大きな大きな靴下だって編めないだろっ?」


          


お兄ちゃんの言葉も耳に入らず、泣き続ける少女の姿を見て、ポン太は胸を熱くしました。

「待ってて! 僕が何とかするから!」

ポン太の熱血精神が宿った瞬間です。
旅支度をしたポン太は、友達のジャムにも内緒で生れて初めてプチ家出をしました。
目的地はサンタの国です。

何日も何日もスケートの刃がボロボロになるまで滑り続けて、やっっっとサンタの国に辿り着き、疲れも忘れてポン太は意気揚々とサンタに声を掛けては見たものの……。


2003.12.21 UP

つづく
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