書籍のご紹介

市街地再生の構想と戦略

著 者:原川洋之(弊社代表)
発 行:日経BP企画
価 格:1,680円(税込)
B5版:175頁




昭和の時代ににぎわった中心市街地を、法律に基づく支援を受けて再生しようとする取り組みが全国各地で見られる。その一方で、大型ショッピングセンターをはじめ、大規模な集客施設が郊外に立地する流れは止まらない。中心市街地に人を呼び戻す試みはこのまま成果を上げることができるのか、こうした問題意識の下、東京・天王洲の倉庫街をオフィス街に生まれ変わらせたり、大型ショッピングセンターやスキー場センター施設などを開発したりしてきた経験を持つ元商社員の筆者が「不動産開発事業とは何か」という原点に立って、中心市街地の再生に向けた持論を展開する。中心市街地の再生に向けた7カ条として、「背景を読み取り、構想と戦略を打ち立てる」「地区計画を利用するなど、全体計画を立てる」「合意形成では、原則論を徹底して説得する」「行政は基盤整備と財政支援の後押しで協力」「街には全体としての運営・管理が欠かせない」「街づくりの主役はあくまで地域住民」「中心市街地の再生は不動産開発事業」という点を打ち出し、開発事業を成功へ導くためには、事業全体を統括するプロジェクトマネージャーの存在が欠かせないと説く。



 本書は、著者が天王洲アイルの開発や苫小牧駅前再開発等の都市開発に取り組んだ経験とノウハウの書である。
 天王洲のマスタープランは、1986年に再開発協会に日端康雄教授を委員長とする委員会を設置して策定された。このマスタープランは、行政主導で専門家の意見により策定されたものではなく、民間側が自らのまちづくりの方向性について専門家の協力を得て地元意向も反映しながら自らの費用と努力でとりまとめたものである。天王洲の開発方式は、産業構造転換にともなう大規模土地利用転換、官民協調方式、民間主導の都市開発などの点で、1990年代以降の都市再生の先導役を果たした。
 苫小牧駅前再開発は、共有借地権を設定し、原則として全てを保留床とし止むを得ず設定せざるを得なかった権利床も権利者法人「株式会社トマップ」が借り入れて再開発ビル全体を総合的にマネジメントする方式を採用した。苫小牧方式は近年のタウンマネジメント、ビルマネジメントの先駆例と言えよう。
 また、著者は中心市街地の活性化についても、自らの経験とノウハウに基づいて第6章で「中心市街地の再生に向けた7カ条」として提言している。
 つまり、街づくりに取り組むプロジェクトマネージャーは、@経済社会の潮流変化などの背景を読み取りながら、正しい「構想と戦略」を立て、A区域の全体像をとらえ、地区計画などを利用して「全体計画」を立てる。そして、B地権者をはじめとする利害関係者の合意形成は徹底した「原則論」で行い、C行政には「基盤整備と財政支援」のバックアップを求める。しかし、D街は「全体として運営・管理」しなければならず、E街づくりの主役はあくまで「地域住民」である。また、F中心市街地の再生は「不動産開発事業」であり、その成功は民間には利益を、行政には税収増をもたらす。とするのが、著者の長年の経験から生まれた7原則である。
 巻末に日端教授の寄稿があり、街づくりや再開発事業に取り組まれている方、またこれから取り組もうとする方に是非ご一読をお薦めしたい。

プリメックス日興株式会社all rights reserved.