〜ロアルド・ダール〜
ロアルド・ダールの『あなたに似た人』をみてみることにしましょう。
これは、1953年にアメリカで刊行された短編集です。
ダールの作品は人間心理の落とし穴に焦点をあてて、書かれています。
サキの作品に似ているところがあるかもしれません。
しかしストーリー構成を考えてみると、その違いが明らかです。
例えば、この短編集の中の『味』(Taste)はその舞台となるのも日常であれば、
起こった出来事も決して現実で起こり得ないことではありません。
種明かしの意外な結末もサキのものと似ているでしょう。
ただ、オチまでのストーリー展開が違うのです。
何気なく進み、最後に驚くべき結末が待っているサキの作品に比べ、
ストーリーの進行に伴いしだいに不気味さを増し、
物語を締めるべく結末があるのです。
『味』の場合、オチで種明かしがされるのですから
読み手はそこで一安心するはずなのです。
ところが、読後の印象はそういった安心感ではなく、
それまでの恐怖感の再来なのです。
想像による恐怖がオチによって解明されることにより
今度は「想像力の生む恐怖」に恐ろしさを感じるというわけでなのです。
つまり、ダールの作品ではストーリーの方にインパクトを持たせ、
オチの方を現実的に描いているというわけなのです。
何気ない日常の裏に驚くべき事実があるというのではなく、
驚くべき事実の正体は平凡なものであるという「意外さ」をオチとしているのです。
彼の作品の中心となっているものは、実はオチではなくストーリーの方なのです。