エヴェレット解釈 vs. コペンハーゲン解釈

解釈の問題?

エヴェレット解釈もコペンハーゲン解釈も実験的には同じ結果を出すので単 に解釈の問題にすぎないという話をよく聞きますが、これは「解釈」という 言葉の意味を日常用語としての「解釈」と混同したために生じた誤解です。 量子力学で何々解釈というときには通常定式化のことを指します。「波束の 収縮過程をこう解釈する」というような日常用語としての「解釈」のことで はありませんので注意しましょう。 「いわゆる」コペンハーゲン解釈(正確ではありませんが、伝統的な確率解 釈のことをコペンハーゲン解釈と呼ぶこともあります)というのはエヴェレ ット解釈に基づく量子力学の定式化の中で定理として導出されます。エヴェ レット解釈では波束の収縮を仮定していませんので、少ない仮定で同じ現象 を説明できるという意味ではコペンハーゲン解釈より優れた理論だというこ とができます。

物理の理論というのは(哲学とは違って?)、明晰さと有効性を競うという 側面があります。よく知られているように量子力学では観測装置が原理的な ところで決定的な役割を果しますが、コペンハーゲン解釈では観測装置の定 義がはっきりしません。観測装置まで系に含めてシュレーディンガー方程式 を解くと状態の収縮は起こらずいわゆるシュレーディンガーの猫状態になっ てしまいますので、(コペンハーゲン解釈では)自然を記述するときに物理 的な過程として記述できるところとそうでないところの間に常に「あいまい な」境界が存在することになります。物性物理学のような分野ではあまり問 題になることはありませんが、一般相対論のように時空の計量を力学変数と して扱うときには深刻な問題となります。つまり、どちらが真実かというこ とではなく、有効性という意味でコペンハーゲン解釈には問題があるわけです。



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© 1998-2005 Toshifumi Sakaguchi