20世紀の終わりの日、21世紀の初めの日
どこで過ごすか、色々考えた末、奈良へ向かいました。
12月31日、都内の職場で仕事から解放されたのが、午後6時過ぎ。
この時点で、残る20世紀は、あと5時間。
東京駅に急ぎ、19時ちょうど発の、のぞみ65号(700系)に乗り込み、
そそくさと、駅弁の幕の内「相撲」を食べる。
携帯ラジオをFMにあわせると、新幹線の車内で、NHKラジオ第1が聞こえる。
藤井隆の「ナンダカンダ」が聞こえてくる。そうです。紅白歌合戦です。
ラジオで紅白を聴くのは初めてですが、前奏や間奏の間にアナウンサーの実況が入るのですね。
衣装などの説明があって、歌手によってはラジオを聞いている人へのメッセージもありました。
モーニング娘。が3曲もメドレーしたら、京都到着のアナウンス。
東山のトンネルを出て、鴨川を渡る、ほんの少しの時間ですが、進行方向の右手、比叡山方向に、
今年だけ特別に大晦日にも灯された、大文字の送り火の「大」の字が見えました。
他の4つは見えませんでした。
京都駅ビルの大階段を上って、送り火を見ようと思ったら、
この日は入場整理券が必要なようで、諦めて近鉄方面に向かいました。
京都からは近鉄で南を目指します。
それなりに用務客も多い、大晦日の夜の電車です。
ラジオからは、相変わらず、紅白歌合戦。
大久保から新田辺にかけて、美川健一登場。
ラジオのアナウンサーは、さながらスポーツの中継と同じ。
登場の様子、衣装、動きを、歌そっちのけ?で伝えています。
大和西大寺に到着した頃、ピンクレディーが古いヒット曲を歌い、
2階のコンコースに上がると、ケーブルテレビ宣伝用のモニターには、
なぜか初出場のアリスが、冬の稲妻を歌っている。
橿原線にに乗り換えて、平端で小林幸子が登場し、アナウンサーもまたスポーツ中継。
思った。美川健一や、小林幸子や、応援に来たいっこく堂、ラジオで聞いても面白くない。
やっぱりテレビじゃないとね。
大和八木で乗り換え、桜井到着。
以前に安倍文殊院を訪れたときのように、駅の南口に出ると、人影少ない闇。
大晦日の深夜運転のバスは北口から出るのです。
安室奈美恵を聞きながら、近鉄側の北口に着くと、人がたくさん。
でも、そのほとんどは三輪明神に行くようで、安倍文殊院へのバスはガラガラ。
そのガラガラのバスが、駅を出て進んでいく間、
北島三郎の「帰ろかな、帰るのよそうかな〜」などと歌っている。
ガラガラのバスが無性に寂しくなりました。
バスが着いて、安倍文殊院の門にたどり着くまで、五木ひろしの「山河」。
いよいよ20世紀も終わりです。石段を登る途中で「山河」が終わった。
石段の途中から、振る舞い雑煮の列。
本殿の前には、100人ほどの、除夜の鐘を突きたいの列。
108を超えても、全員突かせてくれるらしい。
要するに、現代人の煩悩なんて、108では足りんようです。
やがて、鐘が鳴り始めて、
20世紀が終わり、21世紀が始まった。
その瞬間、僕は、除夜の鐘を突く列の中にいました。
列はどんどん進んで、108個目の鐘は、やはり坊さんが突くらしい。
で、107個目までの鐘は、坊さんが横についていてくれたのに、
108個目の鐘を突き終ると、坊さんはどこぞへ戻っていってしまった。
勝手に突けとのことらしい。何か、本当にご利益があるのか分からん。
結局、120番目くらいに自分の番にまわってきました。
鐘を突くだけなら、決して難しくはないのですが,そのあとに連なる人の列の全員が注目する中、
もしスカするとどうしようとか,いらない考えが頭を巡るわけです。
でも,何とか荘厳な音を立てて,鐘は鳴り,僕の最初で最後の新世紀はスタートしました。
紅白歌合戦が終わってから家を出たと思われる大量の参拝客が,いつのまにか境内を埋め尽くしていました。
無料の振る舞い雑煮の列があまりに長いので,あきらめて,とりあえず絵馬だけは書いて,
毎年引くことにしている御籤を引くと,末吉,体に気をつけないといけないらしい。
ここの御籤は,中に小さなお守りみたいなのが入っていて,今回は達磨(だるま)でした。
忍と福と寿命の三徳を与える福神ということらしい。
昨年もらった招き猫を返納して,達磨を財布に入れ,阿部文殊院をあとにしました。
終夜運転の近鉄の各駅停車で鶴橋に向かい,鶴橋のラーメン屋で空腹を満たしました。
まずまず美味いのですが,深夜のせいか店は1人でやっていて,客はそこそこいるので,大変そうでした。
これが,21世紀はじめての食事です。
京都へ向かう阪急の車内で夜が明けました。あいにくの曇りだったので,初日の出は無理でしたが,
さすがに眠くなって,21世紀初の夜明けは,うとうとの浅い眠りの中でした。
京都につくと,そのあたりをぶらぶらした後,叡山電車の出町柳に向かい,
ちょうど運良くやってきたオレンジ色の「きらら」に乗って,鞍馬を目指しました。
「きらら」は,鞍馬の「雲母坂」から名前が取られているのですが,一面ガラス張りの展望の良い電車です。
本来は,貴船や鞍馬の紅葉を見物する電車なのですが,冬時の景色もまたいいもので,
洛北の何となく煙った緑に時おりちらつく雪が存分に眺められ,
21世紀の明るさが暖かく車内に差し込んでくる,ホッとする車両です。
やはりうとうとしていると,いつのまにか電車は貴船を出て,終点鞍馬にさしかかっていました。
鞍馬駅の荘厳な駅舎
木造で味のある鞍馬駅の駅舎を出ると,左手に鞍馬寺の門。
ここから日本で唯一,宗教法人が経営する電車であるケーブルカーがあるのですが,
客の多い日は,老人などを乗せるため,若い人は歩くように案内されます。
雪の降る山への道を15分ほど登ると,だいぶ息も切れてくるのですが(この程度で息切れとは!),
途中にもお堂があって,読経の声がしています。
賽銭を入れようかと思って,何か不自然なことに気付き,よく目と耳を働かせてみると,
お経はテープ。テープが流れているのです。アホらしくなって,賽銭は辞めました。
やっと赤い本殿の前に出ます。歩きつかれた人々が、境内で休んでいます。
さすがに,こっちの読経の声はライブみたいなので,ちゃんと賽銭を入れました。
ひととおり参拝して,本当はそのさらに上にある自然科学館も興味があったのですが,
元旦には開いていないだろうと,引き返しました。
昔来た時は,木の根道を歩いて,貴船まで歩いたものでしたが。

元旦ののんびりした鞍馬の山里。
木の枝に付いているのは,花ではなく,雪が融けた水滴が,陽光(逆光)に輝いているもの。
鞍馬寺の入り口
京都の2泊し,適当に市内を見物して,1月3日に東京に戻りました。