2004年1月18日
岡山〜井倉〜方谷〜米子
地図はこちら (井倉駅付近。ここから国道沿いに南下)
1月18日朝,岡山の空は晴れ。
前週から,仙台〜東京〜岡山と移動してきた仕事も終わり,
つかの間の休暇に,ちょっと旅してみようと。
とはいえ,岡山のホテルを出たのは,すでに10時。
前日,仕事の先輩としっかり呑んで,軽い二日酔い・・・。
でも,10時でいいんです。
最初の目的地,井倉に停まる特急は1日にたったの1本。
それが,岡山発10時22分発の「やくも7号」。
岡山駅停車中の「やくも7号」
というわけで,暖かい陽射しの中,倉敷から伯備線に入った「やくも7号」は,
高梁川に沿って,どんどん中国山地に分け入っていきます。
方谷駅を通過し,信号場で岡山行きの特急と行き違い,
11時22分,井倉駅に到着しました。降りたのは僕一人。

井倉駅のホーム。裏手は石灰石の採石場。
山間の駅ですが,駅の周りの風景は,かなり異様です。
階段を降りると,どこにでもあるような小さな駅舎。
鍾乳洞の「井倉洞」の最寄り駅で,観光パンフレットも置いてあります。
その一角には,これもよくある,名産品などを展示する小さなガラスケース。
しかし,そこには,名産品に他に,ビンが5つ。

左から,生石灰,カナリア,石灰石,工業用消石灰,タンカ
駅舎のショーケースに,工業原料が置いてあるのも,この駅らしい。
生石灰CaO,石灰石CaCO3,消石灰Ca(OH)2は分かるけど,
カナリアとかタンカっつうのは,鉱業の業界用語なんでしょうなあ。
さて,本日の旅行ルートは,
井倉駅から,1駅前の方谷駅まで,約10kmを歩くぞー
まあ,高梁川に沿って,国道をひたすら歩くだけです・・・
11時半に井倉を出発して,目標は15時43分の電車に乗ること。
約4時間,余裕だな・・・
さて,井倉駅の周辺は,四方に石灰岩の大きな壁がそびえたっており,
いくつもの採石場が操業中,日曜でもときどきダンプが出入りしています。
このあたりは石灰岩台地で,古生代の石灰岩他の層が分布しています。
しばらく歩くと,そこは「井倉洞」。D51機関車がお出迎えです。
D51

左は高梁川,対岸は石灰岩の壁。右は飲食店や土産物屋
観光客も少なく,閑散とした飲食店や土産物屋が並び,
いかにも,一昔前の観光地といった感じの懐かしささえ感じますが,
店構えはしっかりしており,秋の紅葉の季節には賑わうんでしょうなあ。
そんな井倉峡の風景ですが,高梁川の対岸の絶壁には,鍾乳洞の入り口。

写真右の橋を渡り,ジグザグの階段をのぼると鍾乳洞。
と,ここまで見ながら,鍾乳洞には入らずに,足を先に進めます。
観光客の少ない時期に,ワタクシみたいにお金を落としていかない旅行者は
もはや観光客じゃないんでしょうなあ。
ってなわけで,高梁川に沿って,下流へ足を進めます。
振り返ると,井倉駅付近を取り囲む石灰岩の絶壁の中に町があり,
高梁川の作った段丘のようすが見て取れます。

高梁川の河岸段丘の一部。段丘上の学校は井倉中学校。

国道180号線,白谷橋付近。石灰岩が高梁川に浸食されている。
ここより下流は,石灰岩から輝緑凝灰岩に変わる。
JR伯備線と並行する国道180号線は,ずっと高梁川の左岸に走っており,
川沿いの岩石の変化を見物しようと思っていたのですが,
さすがに,川は護岸工事,山側はコンクリート,災害を防ぐ工事が完璧に行われていて
やっぱり,こんな主要な国道沿いに岩石を観察するのは無理だなあと実感。
あとは,景色を眺めながら,のんびり散歩です。
太陽がちょっと隠れると寒いのですが,けっこう歩きやすい陽気です。

高梁川の刻むV字谷
左岸に国道180号線,遠くに伯備線の橋梁
鮎をとるため,川岸に下りることができる場所があちこちにあって,
川原に下りると,いろいろバラエティーに富んだ石ころが広がっています。

川原でひときわ目立つ鮮やかな白は石灰岩,
まじめに探せば,フズリナ(紡錘虫)の化石があるだろうなあ。
その他,色とりどりの石が散りばめられていて,きれいな川原ですが,
たぶん,ピンク色は花こう岩,黒っぽいのは頁岩?,うすい緑は輝緑凝灰岩。
このへんは,向斜構造(地層が下へ凸に褶曲している)が見られるそうですが,
何せ,河床には岩石がわずかに露出するだけなので,
たぶんそうなんだろうなあ,っていう雰囲気しかわかりません・・・
JRの鉄橋をくぐり,ときどき落石除けのロックシェードをくぐり
と,この時点ですでに時刻は14時過ぎ。ゆっくり歩きすぎました。
周囲が再び石灰岩となって,ちょっと開けた場所にさしかかり,
絹掛の滝 到着! (新見市指定名勝)

ちょっと,写真に横たわる電線がジャマですが・・・
高梁川とその支流の間に浸食力の差があるので,
その段差が滝になったものです。奥にはあと2つ滝があるそうです。
石灰岩の壁を伝って流れる約50mの一筋の滝。
水量は少ないのですが,それが絹糸のような気品ということだそうです。
滝の右上部の鍾乳石
石灰岩の岸壁には,小さな洞ができていて,
そこには,不動明王がありました。
川の向こうの石灰岩には,鬼女洞という鍾乳洞があるそうです。
滝の前には,コンビニと食堂,自販機,トイレなどが揃っていて,
ちょいと腹ごしらえをしてから,また出発です。
ここを境に,再び両側に谷が迫りますが,これは中生代の流紋岩。
でも,道路沿いで見れるところはあんまりないなあ。
15時になり,予定の時刻には方谷駅に着けないことが分かり,
1時間あとの電車に予定変更。
それはいいのですが,V字谷の底を歩くと,太陽が山の向こうに沈んでしまって,
寒いのなんのって,身体に堪えます。
滝から2kmほど歩くと,開けた場所に出て,人家がたくさん建っています。
広石の集落,ここは高梁川の小規模扇状地です。

広石橋から上流を望む。左岸(右側)が広石の集落
この付近を境に,流紋岩から石灰角礫岩に変わります。
中生代白亜紀の石灰角礫岩,名の通り,角ばった石灰岩の礫でできています。
歩いている国道180号線は,広石橋を渡って,はじめて高梁川の右岸に出ますが,
その前に,橋のたもとの,左岸側の露頭を見ます。

露頭の表面

左岸の石灰角礫岩の絶壁。川面は浸食されている。
そのまま2kmほど歩いていきます。
谷が開けてきたので,再び太陽が当たってきます。
高梁川の川面をみると,緑色なんですよね。
以前,四国の吉野川を見たときも,やはり緑色でした。
両者には共通して,結晶片岩が分布しています。
結晶片岩は,もともとの岩石が,強い圧力によって変化した岩石です。
井高の集落では,ちょうど山の斜面の工事をやっていました。

工事現場の緑色片岩。左下は工事の土のう。
ここの塩基性片岩は,三郡変成帯の一部で,(吉野川は三波川帯)
古生代の終わり〜中生代のはじめのころに,変成作用が行われたものです。
緑色は,緑簾石,緑泥石のためだそうです。
高梁川には両側から川が流れ込んできますが,
これは,高梁川と交わる断層で弱くなったところに谷筋が通っているためで,
この断層を境に,行政境界が,新見市から高梁市に変わります。
そうこうしているうちに,目的地の方谷駅に到着,
時刻は16時すぎ。ざっと4時間半かかってしまいました。

駅舎に入り,電車まで時間があるので,荷物を整理しようとすると,
出札口のおばちゃんがきっぷを見せるように言ってきます。
不正乗車と疑われているのかなと思い,あらかじめ購入してあったきっぷを見せます。
すると,今度は,新見から米子までの特急券を買わないかと言ってきます。
よくよく話を聞くと,このおばちゃん,駅の事務をJRから請け負っているのですが,
なんと,給料は時給や日給ではないんです。
売り上げの5%・・・
山間の小駅では,日々のきっぷの売り上げは,1万円いかないときもあるでしょう。
1万円だとしても,給料は1日に500円・・・
明日にでも辞められるけれど,地元の人の,ぜひ続けて欲しいという願いで
やっているとのこと。
というわけで,車内で購入するつもりだった特急券は,
1000円ちょっとですが,このおばちゃんから買いました。
ついでに入場券も買ったのですが,
車掌が持っている携帯用の発券機なので,ペラペラの紙なんですね。
全国でも珍しい人名駅なのですから,硬券の入場券を置いていてもいいのに。
というわけで,新見まで普通電車,そこから特急で米子まで移動して宿泊。