粘り強く耐え続ける建物を造るには
第28回 SRC造は?
鉄筋コンクリートの始まりは、植木鉢を作るときに、針金を骨にして形作ったのが始まりだと言われています。もろくて割れ崩れていた植木鉢が、ひび割れをしても形をとどめ、用に供することができたのは驚きだったでしょう。
鉄筋コンクリート造はRC造とも表現されています。針金入りの植木鉢が現在のRC造に至るまでには、長い道のりがあったと思います。力学的・数学的・工学的にその性質が解き明かされ、高性能構造システムとして、最も一般的に使われているものになっています。
超高層マンションには無くてはならない構造システムで、現在の超高層・高層マンションのほとんどがRC造です。
コンクリートは耐火性能も高く、鉄筋の錆を防ぐセメントの働きもあり、鉄筋とコンクリートの組合せによる構造システムには、数多くの高い性能の特徴があります。
S造と表現されている鉄骨造の骨組を、鉄筋コンクリート造で囲い込んだものを、鉄骨鉄筋コンクリート造と呼んでいます。又、SRC造とも表現しています。40〜50年前のSRC造は、コンクリートの中の鉄骨部分がL型鋼(アングル)やH型鋼で造られていましたが、非常に大きなサイズの鋼材を使っていました。
SRC造の起源は、S造で設計されているものを、耐火のためや防錆のために鉄筋コンクリートで囲んだというのが始まりと言われています。
曲りやすい鉄骨をコンクリートで囲むことによって座屈しにくくなり、S造だけよりも高耐力になったことを発見し、研究開発されてきたものと思われます。
S造で充分耐えうるものを、RC造で囲んでSRC造にしたのですから、充分以上の耐力なったのは当然と言えます。その印象から「SRC造は高耐力で粘り強い」という言い伝えが出来たのだと思われます。
古くは教科書にもSRC造は粘り強いと書かれていました。つい最近まで、SRC造のマンションのセールストークにも使われていましたし、信じて止まない所有者も販売者も今も多く居ると思います。
コンクリートや鉄筋も高強度のものが研究開発されて来ています。国内での50年程前との比較では、コンクリートでは5倍前後、鉄筋では2倍前後に高強度化されたものが、一般的に流通している状況にあります。ちょっと特殊にはなりますが、これを越えるものも入手出来るまでになっています。
超高層マンションがRC造で可能となったのも、RC造の主要材料であるコンクリート、鉄筋が高強度なものになったことが裏付となっています。
超高層マンションのセールストークには、大臣認定を取得した高強度のRC造であることが使われているはずです。以前のSRC造のマンションのセールストークに似ています。これらは、その時代毎に、その時代に認められる科学技術を背景にした言葉が使われていると言えます。
そもそも、SRC造はなぜ使われたのかと言えば、以前からの行政指導によるものです。今も、在来耐震構造計算法による場合は、この指導が有効になって指導されます。
高さ31mを越える建築物は、RC造ではなくSRC造にするようになっています。古くからの神話にも近い言い伝えによるもので、高層の建築物は、高耐力で粘り強いとされていたSRC造にするように指導していたのです。
このことは力学的に構造計算の値としては全く同じ耐力を持つRC造とSRC造でも、SRC造が上だと思える判断からくるものです。これは自然科学ではなく宗教か神話としか言いようがありません。もし、真実だとすると超高層RC造マンションはどのように説明すれば良いのか判りません。
実は建築物は、高層になればなる程に、地震の力が加わりにくくなる性質があります。このことは日本における一般的地震動に対しては、法律的にも認められています。遠くの海溝での大きくゆっくりした地震動の場合は逆になりますが、その確率は非常に小さく、しかも減衰されたものが多いとされています。
高い建築物ほど、小さな地震動が作用するという関係からも、高い建築物をSRC造にするという意味は失ってしまうものです。
S造の鉄骨の組立て上りの単価と、RC造の鉄筋の組立上りの単価は、共にton(1,000kg=1トン)当りの単価で流通されています。
現在の両者の単価比は3:1に近いものになっています。30万円/tonと10万円/tonといった具合です。SRC造の鉄骨部分も高価なのです。
建築物も経済活動の中の産物ですから、コスト意識からは免れません。高価な鉄骨部分を可能な限り少なくして、S造とRC造を組み合せたSRC造をつくるようになってきました。1990年頃からは、この傾向が特に強くなり、最近に至っては柱・梁の部材中心近くに名ばかりの鉄骨が入っているというようになってきたのが現実です。激しいマンションの販売競走によるものでしょう。
柱や梁に入っている鉄筋や鉄骨にしても、日常の荷重や地震の荷重で曲げられる働きを受け持っています。その時には柱・梁の表面に近い鋼材から働き始め、中心部にある鋼材が働き始めるころには、表面近い外側の鋼材は伸びはじめていて、柱・梁は壊れ始めるのです。このような時、現状のSRC造の部材中心部にあるS造は充分働いてくれるとは考えにくいのです。
RC造もSRC造も、粘り強く耐え続けることを考え込んだ構造設計でなければ目的を果たせません。SRC造神話に頼るような事では逆効果にもなりかねません。
粘り強く耐え続けることができる超高層のRC造マンションも構造設計が可能なのです。
構造種別だけで決め込めるものではないのです。
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