地震情報日誌


朝日新聞2006.11.22(2006.11.30)

火口近くに写真乾板 噴火予知に期待

宇宙線使い火山を透視


 宇宙から降り注ぐ粒子線を捕らえ、火山内部の横手をあたかもS線写真のように撮る技術の開発を、東京大学地震研究所と名古屋大が進めている。今夏から長野県の浅間山などに写真乾板を置いて実験を始めた。火口の底の上昇などでマグマの動きを探り、噴火予知に結びつける試みだ。 (鍛治信太郎)

 写真乾板で捕らえるのはミュー粒子という宇宙線。地上では手のひらほどの面積あたり毎秒1個ほど降り注ぐ。エネルギーの高いものは1`の岩盤も通り抜ける。岩盤の薄い部分や空洞があれば通り抜ける量が増え、粒子が来る方向と照合すれば、火山の内部を10bほどの細かさで探れる理屈だ。複数の場所に置けば、MRl(磁気共鳴断層撮影)のように立体的な形もわかるという。
 深い場所のマグマの動きは地震波などで観測できるが、噴火が近づいて、マグマが火口付近までせり上がってくる状態をつかむ手段として、役に立つという。
 アイデア自体は十数年前からあり、永嶺謙忠東大名誉教授らが取り組んできた。宇宙線をデジタル方式で検出する装置はトレーラーが必要なほど重く、電力も食い、火口近くには置けなかった。この研究を発展させた写真乾板方式だと、人間の行ける場所ならどこでも置くことができる。検出装置は一式で1千万〜2千万円もするが、乾板は1枚数万円だ。
 地震研の田中宏幸特別研究員らが8月から浅間山、11月に北海道の昭和新山に乾板を置き、一部で分析も始めた。田中さんは「大惨事にもっながる爆発的な噴火は粘度が高くてマグマの動きが遅い火山で起きやすい。時間はかかっても予知に役立つ」という。



キーワード
ミュー粒子 物質を形づくる12種類の素粒子の一種。重さ(質量)は電子の約200倍で、電子と同じ負の電荷を持つ。宇宙放射線が大気に衝突して生じる。地表に達する宇宙線の約7割はミュー粒子で、残りのぼとんどは電子。



  


Copyright (C) 2001-2003 Nippon Jishin Jyohou kenkyukai. All Right Reserved