掲示板 Ryuuさんの質問について
Ryuuさんより、「初期の小さい揺れがずいぶん長かったですが、あれは震源地の深さに関係があるのですか?」という問いかけがありました。だいぶん遅くなりましたがお答えします。
下図は地震の波形です。
地震が起きると、震源の部分から弾性波が発生し、四方に伝わる。この弾性波が地震波に他ならない。地震波には地球内部を伝わる実態波(縦波=P波・横波=S波)と、地球表面にそって伝わる表面波がある。
地震は、はじめにピリピリ、ガタガタと比較的小刻みに揺れ、ついでユサユサ、グラグラと大きく比較的ゆっくり揺れる。はじめの比較的小刻みな揺れがP波によるもの、ついで起こる大きく比較的ゆっくりした揺れがS波によるものです。なぜ同時に揺れが来ないのかというと、P波とS波には伝わる速度に違いがあるからです。
ある地点に到着するP波とS波の時間差を、P−S時間、初期微動継続時間といいます。
Ryuuさんは初期微動継続時間の長さに注目されたというわけです。この点についてさらに調べて見ました。
P波の速度はS波の約1.7倍で、両者の到着時間の差τ(秒)は、震源距離R(km)に比例して長くなる。したがってP−S時間からおおよその震源距離を知ることが出来る。
このことに着目した大森房吉東大教授は、震源の浅い地震について
R=kτ kは約7km/s
とした。これが大森公式と呼ばれています。
その後の調査によれば、kは4〜9程度である。現在はP波の走時を重視して震源決定が行われているが、以前(1950年頃まで)はP−S時間が震源決定手段であった。現在も震源の第一次近似を求めたり、震源の深さを確かめたりするのにP−S時間が用いられている。
P波 媒質の粒子を波の進行方向(縦)に振動させることから縦波と呼ばれ、弾性波の中でもっとも早く伝わる。地殻のなかでは6〜7km/s(表面近くはずっと遅い)、深さとともに次第に増加し、マントルの底では13〜14km/s(最大)となる。縦波は空気中や水中を音波として伝わる。
S波 媒質の粒子を波の進行方向に垂直な面上(横)に振動させ伝わることから横波と呼ばれる。横波は媒質の振れ(形の変化)の状態を伝えるもので、振れ波ともいう。水や空気(流体)は形の変化に抵抗しない(剛性がなく、自由に変形する)ので、横波は流体の中を伝わらない。速度はP波より遅く(約0.6倍)、地殻の中で3.5〜4km/s(最大)となる。P波とS波は地球内部を三次元的に伝わることから、両者を併せて実態波ということもある。
表面波 弾性体の表面にそって伝わる弾性波、記号L波で呼ばれる。地震波(震源の浅い地震の)には地球表面にそって伝わる2種類(レイリー波とラブ波)の表面波がある。表面波は、通常周期の長い波で、振動は表面からの深さが増すと、急に小さくなる。表面波には、速度が波長によりかわる性質(分散性)があるが、S波より遅い。このため、近地地震ではS波との分離が困難であるが、遠地地震では明瞭に分かれる。表面波は長周期で、二次元的に伝わるので、実態波に比べ少ない減衰で遠方まで達する。大規模な地震では地球を何階も回る(一周2.5時間前後)ことがある。
*参考図書は、東京堂出版「地震・火山の事典」です。
巨大地震が連続多発し,浜岡原発を直撃。日本列島は壊滅的打撃か?
昨年9月の米国に対する「同時多発テロ事件」以降,週刊誌の巨大地震についての報道が滞ってきたが,またぞろ出はじめてきた。
『ついに来た!この春同時多発巨大地震がニッポン列島を襲う!?(週間プレーボーイ 2002.2.12号)』と『「秒読み開始」東海地震が浜岡原発を直撃する最悪のシナリオ(特ダネ最前線 2002.2.14号)』である。両記事とも,関東以西の東海・東南海・南海の巨大地震の発生とその被害を取り上げている。とりわけ,東海地震を引き起こす相模トラフには膨大な地震エネルギーが蓄積されており,それがいつ放出されてもおかしくない状況であること,そして,その波動が浜岡原発を直撃し破壊した場合には,日本列島は壊滅的打撃を被る,と警告を発している。
その要旨を紹介する。
1.東海大地震と東南海・南海地震は一緒にやってくる
関東以西の日本列島・南側が,ここ2年で突如暴れ始めた。震度5〜7の強い地震だけでも,2000年10月6日の「鳥取県西部地震」(M7.3),2001年3月25日「芸予地震」(M6.4),4月4日「静岡県中部地震」(M5.1),12月18日「与那国沖地震」(M7.3)という具合で,しかも,どれも今まで静かだった地域で発生している点が未知の大災害の接近を予感させる。
それは,地震の専門家たちも同じようだ。京都大学工学部の土岐恵三教授も次の警告を発している。「これらの”内陸直下型地震”や三宅島噴火活動は,過去に日本列島で起きてきた大地震の発生パターンと照らし合わせてみると間違いなくひとつの危機的な結論に結びつく。それは,30年以上前から心配されてきた東海地震などの”海溝型巨大地震”(トラフ型地震)が近いうちに発生するということです」(トラフとは,「地殻プレート」の境目のことで,日本列島関東以西の太平洋沿岸では,駿河湾から沖縄方面にかけて数千キロのトラフが延びている。駿河トラフ,東南海トラフ,南海トラフと3つのブロックに分けられている)
問題は,これらのトラフ型地震の放出パワーのすさまじさだ。琉球大学の木村正昭教授によると「95年1月の兵庫県南部地震(M7.3)は内陸型直下型地震で,長さ20数キロの断層破壊が原因だった。ところが,トラフ型の場合は,破壊が起きるトラフ域は数百〜千キロにも達する。もしM8の東海地震が起きるとすれば,そのエネルギーは兵庫県南部地震の約11倍という計算になる」という。
さらに,京都大学防災研究所の橋本学教授は「政府は一応,東海・東南海・南海と個別に地震を想定しているようですが,これは現実的には同一トラフ上で起きる巨大地震の発生パターンのひとつです。1854年の安政東海地震(M8.4)では,その32時間後に西側で南海地震(M8.4)が発生しているんですから」 1707年の宝永大地震では,駿河・東南海・南海トラフ全域で大規模な地殻破壊が生じ,M8.6という日本史上最大規模の地震が起きている。このとき富士山も噴火しているのだ。
2.その発生時期はいつなのか?「地震考古学」は何を教えるのか
「東海・東南海・南海地震の間隔は,おおむね100年〜150年周期」(東大名誉教授・溝上恵氏」という数値が既成事実になっている。過去の地震発生記録からも実に精度の高いことがわかる。1498年の明応東海地震(M8.3)。次いで,107年後に1605年慶長地震(M7.9),102年後に宝永地震(1707年,M8.6),147年後に安政東海・南海地震(1854年,M8.4)が起こり,90年〜92年後には,昭和東南海地震(1944年,M7.9),昭和南海地震(1946年,M8.0)が発生している。
そうなると,次の発生時期はいつなのか?周期100年〜150年となると,2040年〜2100年になり,「な〜んだ,まだ遠い将来のことではないか」となる。だが,ここに大きな落とし穴がある。その説明には「地震考古学」という新しい学術分野がかかわってくる。これは,古代・中世の遺跡に埋もれてた”地盤液状化現象”の跡などを調べ,古い時代の地震の実態を探る学問である。その第一人者である産業技術総合研究所活断層研究センター主任研究員の寒川(さんかわ)旭氏によれば「15世紀の明応東海地震以前にも約100年〜150年周期で発生してきたことがわかってきました。特に南海地震の痕跡は中国山地から中部地方にかけて広く分布している。これは東南海,東海地震が南海地震に連動して起こりやすいことを意味しています。特に東海地震については単独では発生しにくいという推理が成り立ちます。そこで改めて注目されるのが,1944年の昭和東南海地震と46年の昭和南海地震の特異性です。このふたつの破壊域は,それぞれ東南海と南海トラフ内だけにとどまり,なぜか東海地震にはつながっていないのです」
要するに,昭和東南海地震と昭和南海地震は本当にエネルギーを放出しきっていない。その結果,1854年の安政東海・南海地震を最後に,東海地震を引き起こす相模トラフは約150年間に渡って破壊をまぬがれてきている。「いいかえれば,それだけ膨大な歪みが駿河トラフに蓄積されているわけで,この次に起きる巨大地震は宝永地震に匹敵するような破壊現象が予測されるのです」(寒川氏)
相模トラフに蓄積された地震エネルギーは,1854年から148年目の今年にも大放出されても不思議ではない。昨年7月に国土地理院が「東海地方の陸地は北西方向に年間約2cmで移動してきたが,昨年3月頃からその動きが停止してしまった」という観測データを緊急発表した。この現象は,地震活動事態の収束を意味するものでなく,むしろ,逆に大地震発生直前の状況を示すものではないかという,多くの地震学者の警告が発せられ,トラフ型巨大地震の発生予測時期を大幅に見直す結果となった。
国立防災科学技術研究所の松村正三室長は,微小地震の発生頻度から「2005年までに発生する」と予測。名古屋大学の山岡耕春助教授のグループは,2002年中頃が要注意時期と唱え,注目を集めた。東大大学院理学系の五十嵐丈二助教授は御前崎の沈降データから,「2004年2月±10ヶ月で発生する」と予測している。それぞれ異なるデータでの地震の起こる時期を予測したこれらをふまえて,日本地震学会は,「2005年には東海地方の地殻変動は限界に達し,東海地震は3年以内に起きる」と結論づけた。
3.被害は? 静岡県被災想定−死傷者10万人以上,米国防総省は死者2千万人
以上の試算
静岡県は,昨年5月30日に東海地方の新たな被害想定を公表した。それによると,県全域で震度5以上が1分程度続き,埋立地などの軟弱な地盤域では震度6〜7の大きな揺れとなり,山間部でも震度5強や6弱の強震度になるという。被災の想定では,大破,中破,一部破損,床下浸水する建物棟数は,「地震予知なし」の場合で75万〜77万棟。人的被害が最大となる「予知なし,冬の午前5時」では,死傷者は,死者6000人弱を含めて11万人を超えるというのだ。
東海地方には,日本の大動脈,東名高速道路と東海道新幹線が横断しているが,科学評論家の大宮信光氏によれば,「高速道路の倒壊,トンネル内の連鎖火災,走行中の電車の脱線,化学工場のガス・石油タンクの爆発炎上など,特に都市部を中心に想像を絶する死傷者が出ることは間違いない。米国防総省による東海大地震のマグニチュード予測は9級で,その場合には関東から中国・四国地方にかけて2千万人以上の死者が出ると試算しています。蓄積された地震エネルギーがかってなく膨大なことを考えれば,この被害規模試算はきわめて現実的でしょう」という。
4.巨大地震,そのとき浜岡原発は?
東海地震にはさらに恐るべき巨大な落とし穴が存在している。これだけ地震に対して敏感になっている地域に中部電力浜岡原子力発電所が存在しているのだ。震源と予想されている真上に建っており,現在も稼働中なのである。
「東海地震時の危険性から浜岡原発を休止せよ」という市民グループ(反原発の立場ではない)は,「原発側が言う安全性は矛盾だらけなんですよ。原発の重要な建物は,建築基準法の3倍の強度で作っているから大丈夫というが,通常の耐震基準は建物が壊れても人身に被害が及ばないことを基準にしており,放射能漏れは,建築基準法の範疇ではない。また,1・2号機は最大450ガル(揺れを示す加速度)までの耐震設計。3・4号機は600ガルです。しかし,阪神・淡路大地震では,800ガル以上の揺れを記録しています」と怒りをあらわす。
さらに,「硬い岩盤の上に直接建設している」というが,原発の地盤は,掛川層群比木層という400万年前の砂と泥の地層で工学的にはとりわけ固結度が悪い「軟岩」に分類されるのだ。そればかりか,浜岡原発1号機は,運転開始から25年が経過しており,老朽化が著しい。88年には1号機の原子炉圧力容器配管溶接部の水漏れ事故があり,昨年にも1号機の緊急炉心冷却装置配管が破断するという事故を起こしているのだ。昨年12月7日付の朝日新聞も「健康診断にあたる定期検診の対象にならない部分に亀裂が入り,炉心から離れたところのパイプが破断した。これまでの検査体制や設計のあり方が問われている」
つまり,地震がなくても危険な原発なのである。
更には,津波による被災警告もされている。昨年12月には「政府中央防災会議」が”東海地震に関する専門調査会報告”を発表した。東海沖などでM8級以上の巨大地震が発生した場合,「関東から九州にかけての広域沿岸部に高さ5〜10mの大津波が押し寄せる危険性」が強調されている。民間地震研究家との相互情報交換と,公的機関のウオッチングを行っている鹿嶋實氏によれば,「これは,震源域に近い静岡県・浜岡原発の被災を具体的に心配したものでしょう。まず津波襲来前の引き潮で大量の冷却用海水の取り入れが停止し,数分にして炉心爆発が起きる。そして本番の大津波は高さ5mの外塀を乗り越え,大規模な水素爆発で放射能がまき散らされる。そもそも浜岡原発だけでなく,日本の原発はM6.5までの直下型地震にしか耐えられない構造なので,他地域の原発でも致命的なトラブルが続発しそうです」
95年に京大原子炉実験所助手だった瀬尾健氏(故人)が,浜岡原発の3号機がメルトダウンを起こして格納容器が破損した場合の被害を予測している。それによれば,放射能汚染によって,10万人以上が急性死するというのだ。これだけでは収まらない。放射能は風や雨によってさらに遠方に運ばれ,残留し続ける。居住不能地域は,名古屋,大阪,東京を含む。しかし大都会であるほど避難は困難を極める。その結果,「将来のガン死者数は,首都圏で434万人。西の名古屋方面に広がれば200万人にのぼる。これはまだ希望的観測といったほうがいいかもしれない。現在,浜岡原発では4基が稼働中ですが,5号機の建設が進んでいます。もし,これが一斉にメルトダウンすると,広島の原爆数十個分の被害になります。首都圏や関西圏でも急性死する犠牲者が出るでしょう。死者は1000万人以上,いやその倍になるかもしれない。当然,永田町は全滅し政府機能は麻痺,在京企業も全て被爆するため,復興もできない。チェルノブイリの時も日本まで放射のが降ったくらいですから,こうなると日本だけの被害だけでなく,地球規模の被害です。阪神・淡路大地震とはまったく比較できない」と指摘する科学ジャーナリストもいる。
このレポートをまとめてみて,死者2千万人以上という米国防総省の試算には驚かされたが,この試算に浜岡原発による震災が含まれているとすると,極めて妥当な数値となるのではないかと思う。「原子力には運転停止後も放射能が放出する際のエネルギー(崩壊熱)で燃料集合体が大量に発熱し続けるという弱点がある。破局的事故を避けるためには,遅くとも地震発生から3ヶ月前には運転休止の必要がある」と言われている。チェルノブイリ原発事故でも明らかなように,原発のメルトダウンのような計り知れないリスクには,個人や組織の結果責任ではあがないきれないのである。唯一残されている責任の取り方は,国家の最高責任者が,想定された大きなリスクを避けるために,現実的な小さなリスクを甘んじて受けとめる勇気と,国民が危険域の原発停止を求める声を高らかにし,行動を強め,国家の責任者をつき動かしていくしかないのだと思う。 (2002.02.04 田村 岱)
浜岡原子力発電所の耐震性、再検証が急務
11月7日の、中部電力浜岡原子力発電所1号機の配管破断事故は、炭素鋼という丈夫な金属がちぎれたということだ。「地震で揺れたらどこかが壊れるのでは?」と不安の声が上がっている。
国から原発施設の耐震性実証試験の委託を受けるのは、財団法人原子力発電技術機構(東京)だ。今までに行われたのは、原子炉格納容器、一次冷却設備、電算システム、配管等の振動試験。世界最大級の振動台{最大積載重量1千トン。再現できる揺れの強さは最大加速度で、水平が2.72G、垂直が1.36G(地球の重力加速度は1G、昭和57年から試験をはじめた。過去の地震の地震波も使って、コンピューターで実際の揺れを再現し、応力分布の解析から、力のかかる場所も分析している)を備えた多度津工学試験所(香川県)で、対象物を実際に揺らして行っている。結果は、「配管は簡単には壊れない。考えられる地震の最大の揺れの2.5倍まで揺らしたことがあるが、大きな変化はなかった。壊そうと思っても壊れないのが配管部分」と同機構耐震技術センターの市橋一郎部長らは語る。
実験の対象は、加圧水型原子炉の主蒸気配管と、浜岡原発と同じ沸騰水型の給水配管系。振動台が縦横15mのため、2.3分の1のスケールとし、原子炉格納容器に取り付けた形で揺らした。地震も多くのパターンを再現し、兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)の地震波もコンピューターに入れ、上下動はさらに二倍にして配管モデルのダメージを点検したが「全く問題なかった」という。
ただ最近になり、「経年変化によって仮に配管内が腐食した場合はどうなのか?」という声が出だし、同機構では昨年から新しい試験にも取り組みだした。パイプの肉厚を削った配管で振動実験を行う「減肉配管耐震分科会」を作った。また、L字型、T字型といった問題になりやすい場所を壊れるまで揺らす、終局強度実験も計画中(試験は振動台に載せる構造物の製作からはじめるため、対象物ごとに4年から8年かけて行っている)。
耐震工学の専門家で、米国機械学会委員長の鈴木浩平都立大教授も「地震で壊れて問題になる石油プラントや火力発電所の配管に比べ、原発の配管は格段に強固。普通なら問題ないのだが、経年変化で状況が変わったりした場合はどうなのかといった問題は、みんな相当気にしている。」と問題点を認める。
また、構造物と構造物をつなぐパイプのジョイント(結節)部分は大きな弱点。敷地内に小さな断層が走るなどして構造物が互い違いにずれたりした場合は、配管の耐震性に問題が生じるのではないかとも言われる。世界的に見ても、日本のように巨大地震の震源域の真上に原発が立地する例はなく、地震で原発の配管が大きく壊れたケースは過去にも報告されていないため、実験の今後の結果が注目される。 静岡新聞「週刊地震新聞Vol43」から
以上が記事の要旨です。もし地震のため原発に故障が起こったら、どんなことになるのかを考え、関係者には責任のある事故防止の対応を求めたいと思います。この記事では問題にされていませんが、最近中央防災会議の東海地震に関する専門調査会(座長、溝上恵・東大名誉教授)から発表された東海地震の際に予測される各地の震度と津波の高さによると、浜岡原発は震度6もしくは7、地震の数分から30分後に高さ5メートルから最大10メートルの津波が襲うとされています。津波に対する対策も十分されているのでしょうか?(2001.12.26 田村 岱)
東海地震発生は近い? 日本地震学会秋季大会報告
日本地震学会の2001年秋季大会(10月24日・25日)が鹿児島市で開かれ,東海地方の地殻変動異常が活発に取り上げられました。静岡新聞の「特集・週刊地震新聞Vol39」から要旨を紹介します。
1.今年7月にGPS(衛星利用測位システム)観測によって東海地方の地殻変動異常を発表した国土地理院は,異常はプレート間のスロースリップによる現象とみて,動きのモデル化を試みた研究について報告した。
それによると,
a)滑りは昨年の10月ころから確認できる。
b)浜名湖周辺の地下を中心に徐々に滑りの面が拡大していく様子が再現できた。
滑りの面は,今年1月ころは,渥美半島,3月ころは,知多半島から御前崎にかけての範囲に及ぶ。今までに,このスロースリップ地震によって,中規模地震程度のエネルギーが解放されたものと考えられる。
GPS観測によると,浜松市附近で2001年3月から9月にかけて南東方向に約1.5cmの動きが確認された。通常は逆に,フィリピン海プレートの沈み込みで北西に押される。この動きがスロースリップの発生を強く示唆している。
2.名古屋大の木股文昭教授も,東海地方では過去20年間にスロースリップがすでに2回起こり,今回が3回目ではないかという新見解を示した。
1978年から96年にかけて,掛川市ー相良町間と愛知県蒲郡市ー田原町間の距離を図りつづけた結果,両地域とも,2点間の距離が「ほとんど縮まない停滞期」と「急激に縮む時期」が5年ほどで交互に現れ,この緩急と合致する形で東海地域の地殻の上下変動にも進行期と停滞期が見られる。
この停滞期から,81−83年と87−91年にも,スロースリップが発生したと考えられる。
3.スロースリップ(サイレント地震)の第一人者,富山大の川崎一朗教授は,豊後水道であったサイレント地震は1年ほど続いた後,プレート間の滑り面が「固いセグメントにぶつかって止まったように見えた」という。滑りを止める突起物や非常にあれた面などにぶつかったというイメージで,東海地域の滑りもそのように「まもなく止まる可能性がある」としている。
今後については,「止まる可能性のほうが高い」としつつ,「自信はない」と語る。大型地震に発展する場合は,「年末ぐらいまでに顕著な変化があるはず」,「たとえ,5パーセントでも危険性があるのなら,今は非常に警戒すべき時期ではないか」と語った。
今回の学会は東海地震の発生時期に関する報告が2件あり,注目された。
?.名古屋大の山岡耕春助教授は,「現時点では東海地震につながらない可能性が高い」としつつも,変動が加速した場合には2002年に東海地震発生の可能性を示す試算を発表した。タイム・トゥー・フェイリアー(破壊に至る時間)解析という手法を使い,スロースリップがこのまま加速すると数ヶ月以内に破壊点に達するという試算結果。
?.防災科学技術研究所固体地球研究部門の松村正三副部門長も,同じタイム・トゥー・フェイリアー解析により想定震源域の中心部で起こる地震をエネルギーの発散に見立て,ここ10数年の変化を追うと,加速的に増加するように見え,破壊点は2003年から2005年に算出された。
?.今春の学会では,東大の五十嵐丈二助教授が,御前崎の水準測量の変化を破壊に向かう,より複雑な数式に当てはめ,東海地震の発生を2004.3年誤差範囲(プラスマイナス)0.8年と発表している。
以上が学会の報あるが,東海地震の想定震源域の地殻異常がスロー・スリップ現象(サイレント地震とか,ゆっくり地震とか呼ばれる)であることがほぼ確定された。ただ,まだ評価が分かれているのは「サイレント地震で地殻変動のエネルギーが放出されて大地震は起きない」のか「サイレント地震が止まった後に大地震がくる」のかである。事態の推移をもう少し見なければならないとしても「危険」を叫ぶ研究者・学者の声も多い。もう1点気になることは,東海地震想定震源域内にある「浜岡原発」のことである。緊急炉心冷却装置系の配管が破断したという事故は深刻である。炉の構造的問題や寿命説が言われているが,地震発生で,緊急炉心装置系の機構に事故が起き,炉の暴走や最悪の場合にはメルトダウンにつながらないとも限らないのである。チェルノブイリ原発事故の二の舞は絶対に避けなければならない。原発のように事故のリスクが大きいものは,その地域環境の変化にリンクさせた思想と行動が欲しい。浜岡原発も現在稼働中の炉は全て停止し,東海地震震源域の地殻異常の推移を見守るべきではないだろうか。
静岡新聞は,今年の2月5日から一週間に1度の割で,特集「週刊地震新聞」を発行し,通常の新聞の中に挟んで発行してる。静岡県で起こった地震の震源域の紹介などは地図に立体的に表すなど,努力されており,機会があればご覧になるようお勧めします。私も今後,適宜情報を紹介していきたいと思います。(2001.11.19 田村 岱)