どうする?山林の境界

Q.日本国内における最大のバイオマス(エネルギー)資源は何でしょう?

「酪農家から野積みできすに処理に困る畜産排泄物を集め、発酵槽でバイオガスを発生させ発電し、周囲の集落に売電し、発酵残渣は畑の肥料にする」・・・というようなシステムは一石三鳥効果があり有望にも感じますが、実は、元をたどれば、米国から輸入するとうもろこしなどの飼料穀物に行き着きます。今はダイオキシン規制があって処分に困っている製材所や工務店から出てくる廃材も、今後の石油高騰期には、あっという間になくなります。実際、近くの製材所で家庭用コンポストに使う端材やおがくずを以前はタダでわけてもらえたのに、最近は全くもらえません(=いつ出かけても置き場はカラッポ)。ご近所の方が、燃料費節約のために、お風呂の焚き付けにせっせと持って行かれるようになったそうです。

→ 日本国内の最大バイオマス資源は、
Ans.森林(木材)です

日本における農業とエネルギー
−21世紀の食料事情を考える−
Antony F.F. Boys (アントニー F.F. ボーイズ)
http://www007.upp.so-net.ne.jp/tikyuu/pdf_files/tombo.pdf

は、石油高騰とそれに伴う食糧危機を予測した、読み応えのある秀逸の論文であると思っています。しかしながら、肝心の、「では、どうすべきなのか」という対策編において、残念ながら、以下の第3番目の森林の項には全く同意できません。

P 74より抜粋
☆ 日本の本当の再生可能な自然資源とは:
(1) 肥沃な土壌。収量を維持するのに化学肥料が必要だという主張は神話である。本当
  の持続可能な循環型農業に早く移行し、大量の化学肥料投入を止めるべきである
(2)豊富な水。日本における水の循環を維持するためにあらゆる努力がなされるべきで
  ある。とくに、森林の保護、持続可能で良心的な森林の管理をすべきである
(3)広大な森林地帯。国土の3 分の2 は森林で、これが日本の主な再生可能な資源と言
  える。森林を保護し育成する政策が緊急の課題である

正しくは
(3)広大な山林地帯。国土の3 分の2 は山林で、その大半が複雑・急峻な急傾斜林であり、これが日本の主な再生可能な資源と言える。この、利用が困難な山林の、エネルギー利用方法を確立する政策が緊急の課題である
・・・日本の森林の4分の3が、30度以上の急傾斜林です。斜度が30度を超えると登りは体にきつく、下りも足がすくむ位に下りづらいものです。登山をしながら、伐採や搬出などの
きつい肉体労働をせねばなりません。

スウェーデンの森林=平坦林 日本の森林=山林

日本は、地形が複雑急峻な山岳国家なのです。つまり、
森林=山林=急傾斜林(道路がない、機械が入らない、設備をつくれば設備費倒れになる)
山林からのバイオマス搬出に、非常に大きなエネルギー損失を生ずるのです。
森林バイオマスの利用が商業化してきている、欧米の平坦林は、全くお手本にはなりません。

日本は、温帯モンスーンの湿潤気候帯なのです。つまり、
わざわざ保護し育成する必要などありません。気温と降水量に恵まれていますから、公園でドングリをバケツ一杯拾ってきて、山に入って、そのドングリを埋めまくったら、かなりの確率で発芽して、鬱蒼とした広葉樹の森が自然にできてきます。

潜在資源量はいっぱいあっても、利用の仕方が全く確立されていないのが、日本の森林(=山林)バイオマスなのです。かつて、昭和の初めまで、樵や、炭焼きの冬季副業に農家が、険しい山に入っていきました。同じように、先祖がえりして、斧やノコギリのマンパワー(過酷な肉体労働&手作業)で、日本の山林エネルギーを使いましょうか???

地球エネルギーシステム研究所代表佐野寛先生は、この難問題を克服するために、
(1)傾斜林放牧
(2)柴材等の無動力搬出技術(林内チッパーと人工シュラ)
(3)里山老人ホーム
の提案をされています。

以上は、山林のエネルギー利用における物理的弊害についてですが、もう一つ、制度的(ソフト的)弊害もなかなかやっかいです。

現在、日本の山林の境界は、メチャクチャなことになっています。
もうすでに、「手遅れの段階」に入ったと言えます。
石油高騰とともに、山林のエネルギー的価値が見直されれば、山林の価値も急騰し、境界紛争が頻発しかねません。裁判沙汰があっちこっちで起これば、それこそ、大混乱の時代に突入します。

まずは、予備知識から・・・

+境界は2種類ある+
そもそも、山林の境界とは?
地番の境界と所有権の境界(範囲)は別物!
境界とは、個々の土地を区画する法律上の線で、地番ごとに区画しています。これは客観的に固定されており、当事者の合意のみによって移動、変更することはできません。それに対し、私法上の境界=土地の所有権の範囲の境界も存在します。

+地図にもいろいろある+
公図はもともと、明治時代に税金を取るための資料として作成されました。長い年月を経た今でも、地籍調査が進んでいない地域ではそれが法務局に置かれ、追加、削除などの書き加えがひたすら繰り返されて、活用されています。法務局で公図の写しをもらうと、下に「これは地図に準ずる図面の写しである」と書いてあります。したがって、公図から土地の境界を正確に知ることはできません。

対して「地図」というものは、不動産登記法第14条で規定されている、正確な測量及び調査の成果に基づいて作成されたものです。法務局で地図の写しをもらうと「これは地図の写しである」と書かれています。

地図は公図とは違い、ひとつひとつの境界点に座標値が与えられ、距離や面積などを正しく表しています。したがって、地図が整備されている地域では、現地で境界杭の位置などがわからなくても、境界点に与えられた座標を用いて正確に復元することが出来ます。

☆公図(字限図:あざきりず)
明治時代初期の地租改正によって作成された地図。不動産登記法第14条で定められた「地図」(=地籍図)が整備されていない地域では、「地図に準ずる図面」として、公図が法務局登記所に備え付けられているが、土地の形状、隣地との位置関係などの概略を知ることはできても、地積、距離を正確に表しているわけではない。特に、山林や原野については、はなはだ精度が落ちる。

☆森林図面(森林組合が作業請負のために作成する)
村などの自治体に備え付けてある。地形にそって、大まかに、地番が入れてある。精度は、各自治体により異なるが、公図よりは境界がわかりやすい。

☆地籍図
国土調査法による地籍調査を実施した地域の地図。一筆ごとの土地について、所有者、地番、地目、土地の境界(筆界)と面積(地積)が示される。ひとつひとつの境界点に座標値が与えられ、距離や面積などを正しく表しているので、境界杭がなくても現地の境界を特定することができる。
新たに登記所に、不動産登記法第14条第1項に規定する地図として備え付けられるが、肝心のその調査が、遅々として進んでいない。整備されている面積は、日本全国で半分にも満たない。

☆地形図
地番ごとの境界を示すものではない。国土地理院発行。

例:下の3つの地図は、「同一の山林」を示していますが、正確な場所(境界)を示すものは存在していません(=地籍調査の未実施地区)

<公図>
実際はつながっている土地が「飛び地」になっていて、現状を全く示していない。
<森林図>
尾根筋と谷筋がわかるので境界を知る手がかりにはなるが、「飛び地」を含んだりしているので、境界を示す地図とはいえない。
<地形図>
国土地理院発行
地番の境界が示されないので、境界紛争の解決には貢献しない


+山は縄伸びが当たり前+
(近畿地方では、一般的に、『山は3倍』と、しばしば言われています)
田舎では、土地がそれほど売買が繰り返されていたわけではないので、土地の境界は明確でない場合が多く、また、登記簿の面積と実際の面積にも開きがあることが多いのです。

縄縮み
租税が高くなっても、小作料をたくさんとるために、かつて地主が実際の土地面積より大きく申告した結果、登記面積よりも、実際の土地の面積が小さくなっていること。

縄伸び
租税を安くするために、実際の土地面積より小さく地主が申告した結果、登記面積よりも実際の面積が大きくなっていること。近畿地方の山林では、縄伸びの方が一般的です。実測すれば、3倍になるようなこともしばしばです。京都府相楽郡内で10倍になったという事例も聞きました。

+山林に固有の事情+
一般的な土地取引では、実測図面があるか隣地地主の立会いのもとで境界確認を行うのが当たり前のことでしょう。また、山林は田舎にあるのが普通です。売買が繰り返されてきた都会の土地は境界もしっかりしていていますが、田舎では境界がはっきりしていない土地は少なくありません。そして、山林は広大で、測量には膨大な経費がかかり、また、遠方に住む複数の隣地地主の立会いを求めることも大変な負担(旅費など)です。よって、山林では、公簿と公図で売買させることがしばしばです。それが嫌なら、買主は、「買わないか、(土地代以外に)膨大な経費をかけるか」のどちらかしかないでしょう。山林の境界は、境界杭や立木ペンキのほか、人工的な林相とか、自然の地形(尾根、谷)や大木、大岩などで示されるのが普通です。

+時効取得+
“山に出かけたこともないような山主を守ってくれる法律はありません”
田舎では、何十年間も放置していた土地に他人が勝手に小屋を建てて使用して、時効取得を裁判所に申し立てられ、その土地を失うというケースが、もちろん件数は少ないでしょうが、実際に存在するのです。他人の土地を勝手に占拠するのは不法行為ですが、時効取得は、この不法行為にお墨付きを与えるような法律ですね。つまり、山林は、所有権の範囲がいとも簡単に動きやすいという事実ともに、土地の境界(地籍図)そのものも確定していないところがほとんどなのです。境界がグラグラ<二重に>動き回っているようですね。これが、山林の境界確定をはなはだ難しくさせる一因です。

こんなこと1
・・・・(略)・・・
 四国の有名な林業地にある森林組合を訪ねたとき、「一番の仕事は山の境界線を確かめること」といわれ、驚いた。
 地元にいない、いわゆる不在村山主が増え、長年、山へ足を踏み入れることがない。そのような山は年とともに、境界が山の上へ上へとのぼり、面積が狭まっているという。
 ふもとに住む地元民が下のほうの山を持ち、次第に境界を上へ押し上げて自分の持ち分を広げているのだ。境界線の確定などは森林組合の本来の仕事ではなく、職員は苦笑いしながら現状を語るのだった。
・・・・(略)・・・
(変わりゆく日本の森林 高田浩一 都市文化社 p.160より)

こんなこと2
広葉樹発電を提唱されるグリーンウッドさんいわく
http://www.asahi-net.or.jp/~pu4i-aok/cooldata2/npo/improvedj.htm
・・・・(略)・・・
ところで今朝NHKが地籍問題を取り上げておりました。国土の67%が森林というのに地籍が確定しているのは35%くらいで残りの山地は明治時代に作成した公図しかなく、実際の境界は確定していないとのことです。今各地の森林組合に委託して遅ればせながら棺おけ寸前の老人達を山に連れ出して、境界を確定してもらっているそうです。NHKが一生懸命に教宣してくれましたけれど、まず行政にこの地籍の確定をしてもらわないと大規模広葉樹林の利用の基盤すら存在しないということですね。でもどうせ今後も相続で文筆され、所有権はますます細分化されるでしょうから山の形状に従いグループ分けしグループ毎にまとめて外側の境界だけ確定し、内部は所有割合だけ記載するという法律を作ってもらえれば、お互いに面倒なこともなくなるとおもうのですが
・・・・(略)・・・
((なるほど、グループ化した外側の境界だけを確定するのは良い案だと思いますが、子孫の事を考えて、すでに多額の費用を投じて、山林の実測図を完成させた山主さんが、持分割合が実測値よりも小さかったときに納得されるかどうか?例えば、「縄伸びなし」と「縄のび10倍」が混在するような山も十分あり得るわけですから。)

こんなこと3 日吉町森林組合のHPより見つけました
http://www2.ocn.ne.jp/~h-sinrin/sannrin.htm
(縄伸び12倍のケース)
〜実測見込み面積は航空写真より割り出しているそうです〜
所在地   京都府 南丹市 日吉町 天若 北倉 29
面  積   0.18ha(1,800u)   公簿面積 148u
価  格   344,000円
アクセス   JR日吉駅より町道天若線約8.0km

他の山林売物件を見てみると、縄伸びなし〜縄伸び10倍までさまざまです。よって、日吉町の山については「縄伸び*倍が一般的である」というような表現は成立しませんね。
  
こんなこと4(私の実体験)
山林の前所有者さんに、売買の前後で、2回山へ案内してもらいました。ところが、1回目と2回目で指示される境界(谷筋)が一筋違うのです。
2回目の案内で、前所有者いわく
「この小さい谷は境界ではない」
西上
「この前の案内の際は、この谷が境界で、その向こうのヒノキ林は所有地に入ると言っておられましたね?」
前所有者
「このあたりの隣地は、K市の○○商店が持っている。そこで売るにあたって、境界確認のため出向いて欲しいと要望したところ、次のような返事であり、結局、確認に笠置まで来てもらえなかった。
『山林があるらしいとは聞いているが、2代目になったので境界はわからない。現地へは一度も行ったことがない。』
というわけで、最初の小さい谷が境界だと主張しても通る。つまり、谷筋を越えたヒノキ林全部を自分のものだと言っても通る。あんたが自分のものやと主張すればそれで通る(=あんたのものになる)。」
・・・これが山の常識だそうです。へぇ〜!

こんなこと5(私の実体験)
山師にだまされた!の山師がやったこと
山師の依頼で、売物件の山林の隣地の農家数軒が立会いで山に来られたんですが、居合わす全員が、境界がわからず、結局、『大変声の大きい』山師が、過去の経緯もわからないのに勝手に境界をつけていきました。それで、結果的に、かつて渡されていた「物件チラシ」よりも、境界が山上(尾根筋)に上がってしまい、「見晴らしの良い展望台つきの山小屋が建てられますね〜。広くなりましたね〜」と、愛想良く、売物件を勧めました。私は内心、『エ〜〜!!!』。こんなことをしても犯罪にはならないのだから不思議ですよね?山師の詐欺師たる所以かも???

こんなこと6(私の実体験)お役所の持っている測量図もあてにならない
国道拡張工事ための境界の立会いに、京都府(官)に呼ばれて、民A(西上)、民B、民Cの三者が揃いました。官民Aと官民Bの境界を確定するために、民A民B、民A民Cおよび民B民Cの境界も確定する必要があったからです。当日は、京都府側は、民間会社の測量士を含め、総勢10名以上でやって来られました((この人数を見れば、実際の工事の前の測量にも多大の経費がかかることが容易に想像できます))。ところが、これまでの測量図面をもとに京都府土木事務所が一番最初に示された民A民Bの境界ポイントは、実際の地点から西へ20mほどずれていました。この間違いを指摘されたのは、土地の事情に詳しいCさんでした。Cさんは、中立な立場で発言されました。A(西上)とBさんは、京都府の図面に印してある地点を境界とするか、あるいは、Cさんの指摘場所を境界とするか、しばらく、辺りを歩きながら調べ、後者にすることに新たに合意しました。その合意を受けて、京都府(官)は、その場でその測量図に修正を加えられました。

・京都府は基点(建設省とかの標識)を決めて実測している。しかし、道路建設の進捗で、「山全体」の持ち主を全員集合させてた上で立会いと実測をしているいるわけではない。よって、少しの誤差が、ひずみとして、どんどん「蓄積」されてくる。官が持っている測量図面もあてにならない。
・「民民境界」が優先されるので、双方が合意すれば、測量図面(官)の方が修正される
・明治・大正時代に役場のつくった図面では、実測していないので、面積・長さが不明確。ただし、形状は実体に近い。

つまり、すでに手遅れの段階に入ったけれども、境界のわからない所有者どうし(民民)が、『新たに納得すれば』、新たに民民境界が確定する・・・ということです。

こんなこと7
(耳より情報!究極のアドバイスを地元の不動産業者より頂きました!なるほど!)
民民境界確認は、言い出した方(立会いをお願いした方)が絶対に損する。だから、自分から、境界確認を言ってはダメ!=民民境界確定図を自分から作ろうとしてはダメ!」だそうです。
どういうことかというと
@頼まれたら、たとえ境界を知らなくても、恩きせがましくのこのこやってくるかもしれない
A頼んだほうの足元(大金を投入するので測量図を何としても完成させたいという気持ち)を見越して、境界を、自分の面積がより広くなるように主張するかもしれない
・・・なるほどね〜。これは人情ですよね〜。

<国がすべきこと>
せっかくの文明の利器の全地球測位システムGPSがある。
一刻も早く、日本国土全体の地籍図を確定させること(現在、遅々として進んでいいない)。
官が呼び出す民民境界確定は、どちらかが不利になることもなく、公平公正に行われるはず。

無駄なハコモノ建設や土建工事に税金を投入し、地方の景気を刺激するのではなく、同じお金で日本国土全体の地籍図を確定させれば、いざというとき、木質バイオマスのエネルギー利用が商業ベースに乗るとき(石油高騰時)には、スムーズに地域共同で開発が行われる可能性がある。過伐採や盗伐を防ぐことにもなる。境界が確定していない地域では、紛争といがみ合いの勃発で、事業化はほぼ不可能であろう。

<個人でできること>
全国一斉入山デーをつくりませんか?(候補は、みどりの日?)
一山全部を一人の山林所有者が占めている例は少ないでしょう。
所有は、恐ろしいほどに、『細切れ』のモザイク状態だと思います。普段から山林に多くの山主が入るようになっていれば、境界トラブルの多発も防ぐことができます。一度も自分の山に入ったことのないような山主には、裁判を起こす資格はないと世間一般に認識されることが大切です。

ついでに、ゴミ拾いもしましょう!どれだけたくさんの不法投棄が行われているのか、ビックリするはずです。都会のツケを田舎に持ってきているのです。

時間を見つけて、たまに、私は山に入って、せっせと野生動物のごとく「マーキング」をしています。ペンキや紐で、境界の立木に印をつけて、デジカメで写真をとっています。そして、最近は、ピンク色のハナミズキとか花の咲く木の苗を育てて、境界木として植えようと計画しています。いつか、大混乱の争いの時代が来たとき、確証を持って、「私の山林はここからここまでです」とはっきり言いきれるように・・・

大変参考になったHP(弁護士 久保内統 先生の 法律知識箱)
http://homepage1.nifty.com/lawsection/tisikibako/kyoukaikakutei.htm

2007年11月記


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