楽家 BookReview
1999年版
Released

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  • ★3つ以上はお薦めです。★4つと★5つは個人的な好みや、 読んだ時の感情によって違っているだけで、ほとんどの場合は差がありません。

  • 右端の「有」は所有、「借」は図書館から借りた本、「古」は古本屋で買った本、 「貰」は人から貰った本であることを表わしています。

  • 1999年12月21日火曜日
    ★★★★☆ 「温かなお皿」江國香織理論社 1993年6月 p131
    「おもしろい。でも、なんてもったいないんだ!」というのが感想。

    これには、
    という2つの気持ちが交錯した感情(感想)が現れています。または辻仁成とのオムニバス本「冷静と情熱のあいだ」が読めないいらだちが現れている、とも言えます。

    1999年12月20日月曜日
    ★★★☆☆ 「娘たちのための狩りと釣りの手引き」メリッサ・バンク著 飛田野裕子訳ソニー・マガジンズ 1999年10月20日 p350
    TBS「王様のブランチ」の影響を受けたわけではないが、図書館の新刊コーナーにあったので借りた。連作短編集。基本的に男が読む本ではないのかも知れないので、評価は低めかもしれない。ただ、父親が亡くなる話とかっこいい中年の彼氏との中編は、なかなか読み応えがあった。まさか2人がよりを戻すとは思わなかったし。しかも父親が亡くなるまでの親子2人の会話は、なかなかグッとくるものがある。また、最終編は、違う人が主人公だとずっと思って読み終えてしまうくらいジェーンの様子が変わっている。あせるというか、熟成されたというか。そーなんだよねー、そういう年なんだよねー。そして踏み込めないものなのだ。

    1999年12月9日木曜日
    ★★★★☆ 文庫版「姑獲鳥の夏」京極夏彦講談社文庫 1998年9月15日 p630
    関口巽をみてるとイライラする。なんでこんな奴がワトソン役なんだ。妄想ばかりする奴ではなく、現実主義者がワトソン役のハマリ所じゃないか。まあ京極堂と榎木津と中禅寺敦子がいるからなんとかなっているけど。「呪い」という概念に対する姿勢というか、考えは非常に面白い。「言霊」にも通じる所があり、そうやって他人や自分に「呪い」をする。そして「呪い」は「心」の問題である、ということがわかる。あー、すでに洗脳されている。たぶん、特に面白いといわれる「魍魎のはこ(漢字が出ない)」も買ってしまうだろう。

    1999年12月4日土曜日
    ★★★★☆ 「辺境・近境」村上春樹新潮社 1998年4月23日 p252
     素晴らしく綺麗な表紙の景色と、本の装丁。村上春樹。そして本屋の旅行記コーナーに置いてある本。それが自分にとってのこの本の記号だった。
     内容もとても気持ちが良い。無人島からす島の現実や、メキシコの現実(これが一番長いはなし)、確かにディープな讃岐うどん(記録:小懸家(おがたや)、中村うどん、山下うどん、がもううどん、久保うどん)と香川県専用の丸香マーク付きのうどん粉。そして表紙を現わすノモンハン紀行。自分はモンゴルなどの、こういった草原にはあこがれを持っていたが、不毛の土地だった、といことには驚かされた。今回北海道にいったときの期待の一つ、ただっ広い場所を旅することを自分は夢見ていたが、その辛さについて教えられる。たしかに同じ風景と過酷な移動手段は辛いのだろう。そしてアメリカ横断が、ただの退屈な旅で、辛くはないが退屈で不毛の地の旅は人を摩耗させる、ということも知る。またユタ州がそういう習慣の場所だとか、アメリカ中西部という土地が辺境ということも初めて知る。最後に神戸の話があり、あとがきへと続く。「辺境を旅する」というあとがきには、「旅してから1ヶ月してから書く旅行記が一番面白い」というのはそうかもしれないと思われた。でもいらない部分が混じる直後の旅行記も面白いけど。でも、いい本だったよ。

    1999年11月16日火曜日
    ★★★★☆ 建築探偵桜井京介の事件簿「桜闇」篠田真由美講談社 1999年4月5日 p434
     シリーズ初の短編集。エッセンスが詰まっていて面白い。特に最初の3編はバックパッカーしていていい。もちろん一番行ってみたいと思ったのは、イタリア半島の中部、オルヴィエートのサン・パトリッツィオの井戸。おー、なんて不可思議な井戸。実用性が高い、というのは自分的にはどうでもいいのだが、「逆さまの塔」という風景が不思議そうなので行ってみたい。まあ、無難に行けるのは会津若松の栄螺堂(さざえどう)。桜井京介&作者的には不細工で構造的に意味が無いので嫌っていたので、それに毒されて期待はしてないが、そのうち行こうと思っている。他に二重螺旋四部作として「ベトナム、ハノイの国旗掲揚塔」、「フランスのロワール河南岸の森の中にある白い城、シャンポール城の大二重螺旋階段」が出てくる。このシャンポール城の話「永遠を巡る螺旋」の敵役って、もしかしたら京介の恋人?にでも将来にはなれるかな、と思ったりしたが、結果として信奉者レベルを越えられない気がしたのと、書き下ろしの短編「桜闇」を読むと未来への布石が感じられ、美貌の名探偵はたぶん独身を通すかも、と思ってみたり。
     この作家はガチガチのトリック派ではないので読みやすいし、特に最後の3編は、ストーリー重視となっていて、シリーズ短編として「おいしい」話である。でもやっぱり最初の3編が一番面白いと思った。「あとがき兼自筆改題」にもあるが、各体験は作者の旅の経験に一致する所が「面白い」と思える源泉なのかもしれない。また作品年表がこの巻には付いているが便利である。これを見るとわかる通り、小説内の主人公は実時間にしたがって、流行などにも影響を受けて話が進んでいくのは珍しいと思う。これが吉となるかはこれ以降の展開次第か。

    1999年11月10日水曜日
    ★★★☆☆ 「聖域」篠田節子講談社 1994年4月20日 p330
    前作(「弥勒」)の影響が自分に残っているせいで、勢いで読まされた、という感じがした。この作家の文の流れの韻の踏み方が、自分の読むときの韻の踏み方に共鳴しているせいかもしれない。なんかいやな展開だな、と思っても無理矢理読まされてしまう。
     本作でまず最初に響いたのが「三十を間近にした多くの男達がそうであるように、実藤もまた高い意識と意識の及ばぬ実力のはざまで、いくぶんいらだち、気負い立っていた。」という言葉。実感できる。また実藤の女性への接し方も共感できる(あー情けね)。チベットや仏教や宗教という言葉に「弥勒」を思い出し、そして、思わず青森県の地図で確認してみたりする。物語り内物語りの「聖域」もそれなりに面白いが、この結末が正しいのかはよくわからない。「死」については自分は元は輪廻転生派だったが、最近これについては少々考える所があって、この本のような考え方もありうると考えている。でも最後に実藤が、道を取って返して泉の家に行ってからの展開はどうなんだろ。こうまで恐い思いをしながら、それに立ち向かうことはできるのだろうか。いづれにせよ、「弥勒」のレベルにはまだ達していない、と思った。
     付記:途中で出てくる松葉を黒砂糖で発酵させた暖かい飲み物が、非常においしそうに見えた。飲んでみたい。

    1999年11月4日木曜日
    ★★★★★ 「弥勒」篠田節子講談社 1998年9月20日 p555
    タイトルを見たときはどんな話か全く予想できなかった。読み始めると、これは仏教美術に関わる男達の欲望と栄達の物語と思った。本当は何の話だったのだろう、と読後の今はポカンとするしかない。そんな圧倒感だけが残った。永岡が弥勒菩薩を盗もうとするシーンにはハラハラさせられ、その後の展開に永岡とともに戸惑うも、これもいいかもと思っていたら、また突き落とされる、という風に作者にもてあそばれた。いわゆるタブーである人の肉を食べるシーンがあるが、死が当たり前の世界ではこのようになってしまうだろう。特に徐々に荒んでいくと、感覚も徐々に麻痺していくので抵抗感は薄くなるだろうから。ゲルツェンとサーカルのどちらの思想がどうだとかは言えないが、本当の道は果てしなく険しいのだろう。輝きと妖しさに満ちた時のパスキムに行ってみたいと思うし、しかしそれはゲルツェンの言う通り、”通り過ぎる人”=”旅人”の甘えなのかもしれない。そして自分もこのすさまじい体験をした永岡が、日本で生きていくのは困難だと思う。とにかく、篠田節子のこのグイグイと引っ張る筆力には圧倒された。それに尽きる。

    1999年10月29日金曜日
    ★★★★☆ 「ブギーポップは笑わない」上遠野浩平電撃文庫 1998年2月25日 p283
    今度アニメ化されるので、世間では面白い話として認められているのだろうけど、それほどとは思えなかった。まあ、設定と人間心理に関しては良く出来ていると思うのだが。もしかして2巻以降が面白いのかもしれない。霧間凪の人間性と早乙女の思考にだけは、違和感と共感があったのでキャラクタが立っていた。イラストレーターの絵が非常に話にマッチしている点が、このお話の最大のウリだと思う。

    1999年10月26日火曜日
    ★★★★☆ 「藩校早春賦」宮本昌孝集英社 1999年7月30日 p382
    極めて安全な本。気分よく読めて、快いラストへと向かう連作短編集。「何か読みたいけど、気楽にハッピーエンドな本を読みたい」という人には薦められる。それだけなんだけど、そういうのって時代小説の黄金パターンであり、当然作者の実力があることは折り紙付き。内容はタイトルから想像が付く通り。

    1999年10月22日金曜日
    ★★★★☆ 「イノセント -沈む少年-」図子慧角川書店 1997年9月30日 p251
    なんかの雑誌に「人工知能の小説」と紹介記事があった記憶があったので借りた。最初はあまりピンとこなかったけど、教師という職業の問題点がいろいろ出てくると面白くなり出す。うちの会社に教育学部出身の人がいて何故先生にならなかったのかと問うと、「教育実習のときに先生達の派閥争いやら何やらと醜聞ばかりなので辞めた」といっていたが、そういう世界を映していた(もちろんすべてがそうではないだろうが)。この人工知能プログラムはなかなかに興味深い。学習能力が愛だの恋だのに至れるかはわからないが、データベースと学習によりある程度は力を持つことができるかもしれない。それと最後にあった興味深い言葉を書き留めておく。

    「この一瞬、生きている瞬間の連続が生であるなら、信じること自体が、無駄な行為であるに違いない。それでもなお生きつづけたいなら、一歩ごとに空しさを振り払い、進んでいかなければならないのだ。たとえ先になにもないとしても。」


    1999年10月16日土曜日
    ★★★★☆ 「復活、へび女」池上永一実業之日本社 1999年9月25日 p219
    著者初の短編集。得意の沖縄物と、新たな試みといえる都市の物語り。一番面白かったのは「宗教新聞」。とんでもねぇタイトルだけど、目線光線と恋?の物語である。「前世迷宮」もファンタジーとしては面白い。俺は占いに影響されやすいので読まないし、こういう女は嫌いだが。「サトウキビの森」のヤマトンチュの話はありがちだが、そういう人も多いのが、沖縄とか南の国の現実的なことであろう。すべてを読み終えてからあとがきを読むと、著者の人柄が出ていて、もう一度物語りに浸れてうれしい。

    1999年10月11日月曜日
    ★★★★☆ 「ホワイトアウト」真保裕一新潮社 1995年9月20日 p360
    面白かったのは間違い無い。ちょっとご都合主義な所があったけど。今度映画化されるらしいが、確かに映画向きな派手な冒険アクション物語であった。読んでる間中、「ダイ・ハード」のイメージでブルース・ウィリスが苦しみ、のたうちながら活躍するシーンばかり思い付いた。なんか織田裕二だとイメージ薄い...。でも、雪山って恐いっすね。模倣犯が出ないことを祈る。

    1999年10月1日金曜日
    ★★★☆☆ 「日蝕」平野啓一郎新潮社 1998年10月15日 p189
    漢字が難しい。明治の文豪の小説を文語体で読んでいるようだ。漢和辞典が必須。内容としては、話が動かない前半は漢字の難しさとあいまって辛い。辛すぎる。こんなに短いのに1日10ページしか進まないぐらいだったが、錬金術師の秘密から物語は進んでいく。とくに両性具有者の登場のシーンは圧巻。このエロチック(古い言葉!)さはなかなかのもの。石筍のうちに棒に刺し貫かれて存在するシーンは、想像すると禁断の思いが巡る。この中盤以降だけを見れば、多くの評論家が三島由紀夫を継ぐもの、と表現した意味が分かる。でもとにかく漢字が難しく文語体っぽいので疲れた。もっと平易な文で書いてあれば気楽に読めるのだが。でも、これを平易な文体で書くと、雰囲気が、特に例のシーンがつまらなくなることは分かる。そのためだけにこの小難しい文体を使ったのは、仕方がないかもしれない。しかしこの若さでこれを書くのはすごい。どんな生活&読書生活をしていたのだろうか。たしか芥川賞も取ったしな。

    1999年9月14日火曜日
    ★★★☆☆ 「陰陽師」夢枕獏文春文庫 1991年2月10日 p333
    気持ちのいい話。博雅の漢(おとこ)ぶりが話を気持ちよくさせている。とくに晴明との酒を飲むシーンがいい。男と男の飲み方だ。連作短編としても楽しい。続きが読みたい。ただ特にクライマックスを迎えるわけではないので明らかな物足りなさはあった。また、誰にでも薦められる本ではないので評価は3。ちなみにこれを読んだわけは、当然「コミック・バーズ」の影響。

    1999年9月7日火曜日
    ★★★★☆ 「ダブル・キャスト」高畑京一郎メディアワークス 1999年4月20日 p536
    アイデアは面白いんだけど、ストーリーとしてはありがちなので、「タイムリープ」よりは評価が落ちた。一つのハードディスクに2つのOSという考え方が根本で、これはこれでいい。だが、ヤングアダルトとバイクに話がいってしまったので読みやすいんだけど、最後の解決方法が少々ご都合主義的に感じられた。この作者はおもしろいアイデアで毎回楽しませてくれるが、そのアイデアに頼り過ぎた面が今回の話では出てしまった感じがする。期待しているのでもっとがんばって欲しい(って、そんなことを言える立場でもないが)。

    1999年9月5日日曜日
    ★★★★☆ 「エンディミオン」ダン・シモンズ早川書房 1999年2月20日 p598
    ハイペリオン」「ハイペリオンの没落」に続くハイペリオンシリーズの完結編の前編(なげー)。死がひたすら続くお話。訳者あとがきにもあるが、この巻の実質的なの主役はデ・ソヤ神父大佐であることは間違い無い。タイトルも変えた方がいいんじゃない、というくらいだ。何せ本編の最中で16回も死んでいる。死の恐怖を味わうとこうなるであろう描写もいい。しかしあの聖十字架をこう使うとは考えていなかった。コアにより補完されたとは言え、確かにこれでは人類は拘束され、進化は衰えるに違いない。でもハイペリオンを読んだのはもう何年も前だったので、基本部分以外は忘れていた。この話をより味わうためには今後出るであろう完結編「The Rise of Endymion」がそろってから一気に読むことをオススメする。

    1999年8月14日土曜日
    ★★★★☆ 「ターン」北村薫新潮社 1997年8月30日 p352
    スキップ」に続く時間もの。ちょっとキャラクターが狙い過ぎなきらいはあるけれど、やはり術中にはまる。銅版画の絵が思い浮かぶ。デザイナーもいい感じ。最後にトラブりながらも安らかに終わって、よかったよかった。同じ1日を繰り返すとなるとつらいなあ。まあ1週間が限界という所か。自分がそうなったら、1ヶ月もたてば、何もやる気がなくなるのはまあ当然だろうね。

    1999年8月5日木曜日
    ★★★☆☆ 「傭兵ピエール」佐藤賢一集英社 1996年2月29日 p573
    本当の時代の傭兵の姿を写していて面白いんだけど、何か物足りなかった。でもマンガ「ベルセルク」の世界でもあり、有名な100年戦争とジャンヌ・ダルクをうまく絡ませている。ハッピーエンドなんだけど、後の話は蛇足のような気もするし、楽しみでもあるし。でもピエールと女性との会話はおもしろいし、傭兵達もおもしろい。でも読んでいるときに、この佐藤賢一が直木賞を受けたのはビックリした。

    1999年7月10日土曜日
    ★★★★☆ 「屍鬼」小野不由美新潮社 1998年9月30日 p726
    第一声「長かった。」もう、これに尽きる。下巻の後半からはつらくて読み進むペースが格段に落ちた。ホラーなので、下手したら最悪のラストシーンかとも思ったけど、ある種のハッピーエンドかもしれない。ホラーがだめな自分でも読めたのでホラーだと思って読んで無い人でも読めます。以下ネタバレ。下巻になると屍鬼の側からの話も出てくるが、これが面白い。ドリームキャストのゲームのCMでゾンビの家庭が出てきて会話をしていたが、一般的には悪とされる側からの話は面白い。というか、住民はどんどん襲われて悲しい結末に向かう、倦怠感が漂う話にしかならないのに対して、屍鬼側は景気のいい話ばかりで明るいせいもあって読みやすかった。屍鬼のなかにも2つのタイプの人達がいたが、粗忽で攻撃的な自分は恵や正雄のようにしかなれないだろう。徹や律子のような自分らしくという感じや、人間の夏野のような毅然としたかっこいいのにはなれない。でもあこがれる。小野不由美の力量がすごいと思ったのは「読んでいて気分が悪くなる人間の浅ましさ、意地汚さ」を書けることや、異常な心情を書けてしまう点にあると思う。気分の滅入る部分があるということは、作者もつらいはずだと思うからだ。自分にはつらい。また神経症で自分しか見えていない元子のような人間も書ける。冷静な人間なら書けるのかもしれないけど。ここらへんは「月の影 影の海」の上巻を思い出す。また下巻の終わりになって人間達が反撃し出すのは敏夫の状態からして予想できなかった。たしかに1回目の襲撃だけで、かつ相手が千鶴ならば可能かもしれない。でもここからがこの話の本番なのであろう。言い古された言葉だが、人間が一番残虐であることをやっている。まあ予想できるラストへとつながるが、静信の冷静さと、案外冷静な人狼の辰巳の会話が意味深だ。さらに静信の小説「屍鬼」も衝撃のラストへと向かう。「人間界=流刑地」 の情景が思い浮かぶ。この発想は天上界を最上と考える仏教の考えや多くの宗教の考え方の一つでもあると思う。まあ、面白かったかと聞かれれば面白い、といえると思う。長すぎる話だが、上巻の半ばからは話が動き出し、いろんな人の生活が見て取れるようで楽しい。でも長いので読書好きな人にしか薦められない。ちなみにメインキャラクタの静信を、自分は坊さんらしく「せいしん」と呼んでいたけど、これでいいのかな?また、この本を楽しむために、この期間中、特に6月以降は「屍鬼」しか読んでいない。ホラーを楽しむためにはそのくらいは必要でしょう。逃げないためにも。

    1999年6月4日金曜日
    ★★★★☆ グインサーガ65「鷹とイリス」栗本薫早川文庫 1999年4月15日 p284
    イシュトバーンがどんどん賢くなっている。仕事バリバリだしね。大人になったのか。さてナリスのセリフだが、スカールとの話はヴァレリウスのときと違って素直なのが怪しい。本心だろうけど、ほんとにこんな奴か?という感じ。次の巻で秘密がいろいろと分かるだろう。リンダの話は...

    1999年5月28日金曜日
    −−−−− 「屍鬼(上)」小野不由美新潮社 1998年9月30日 p545
    この本は発売日当日に、しかもその日は有休を取っておいたので、すぐに買ったけど余りにも本が分厚かったのと、最初が読みづらかったので読んでいなかったが、とりあえず上巻を読み終わらした。じわりじわりとくる怖さ。そして本当にこの外場という村があるのでは、と思ってしまうくらい息づいている村の人々の生活と思い。これらが相まって少しづつ読むスピードが早まっていく。自分はホラーは苦手だが、これは本当に面白い。上巻の最後のほうで、さらなる悲惨な事態が下巻では待ち受けていそうなことは分かっているので、怖い。今のところ、ほっとするのは若御院と例の女の子の会話と、高校生夏野と看護婦律子が生きていることだけかもしれない。

    1999年5月28日金曜日
    ★★★★★ 「邪馬台国はどこですか?」鯨統一郎東京創元社 1998年5月29日 p316
    大胆な仮説、多種多様な証拠。こう言われたら信じるしかあるまい、という会話のうまさ。6編からなる連作短編だが、この6つの大胆な仮説のうち最低でも一つは本当ではないか、と思ってしまった。自分も古代史には興味があるので特に邪馬台国については以前から興味があり、自分としてはなんとなく畿内説を取っていたのだが、これを読むと「○○県」(自分で読んでね)という説もうなづけるものがある。この連作短編には続きはあるのだろうか?あれば読んでみたいけど、これ以上さらに大胆な仮説をいろいろと提示し続けるのは、それなりの検証が必要なので大変だろう。もしかしたら最終編で宮田と静香が結婚するのでは、とも思っていたりしたので。でも「宮田氏付記」があることを考えるとこのシリーズはこれ以上はないだろう。

    1999年5月21日金曜日
    ★★★★★ 「深夜特急4 -シルクロード-」(文庫版)沢木耕太郎新潮社 1994年4月25日 p204
    本文については言うまでもないので省いて、今回は文末の対談。この文化人類学者との対談はおもしろい。とくに文化人類学者という事実を述べる仕事やノンフィクションの仕事にも、フィクションの部分が含まれている、というのは「あっ、そうか」と思わせるものがあった。誰かが書く以上、どうしてもその人の主観が含まれてしまうため「創作=フィクション」が入ってしまうのは、やもえないのだ。この対談を読んでいてル・クレジオ「悪魔祓い」やスティーブン・フェルド「鳥になった少年」を読んでみたくなる。

    1999年5月7日金曜日
    ★★★★☆ 「少女達がいた街」柴田よしき角川書店 1997年2月28日 p406
    最近よく名前を聞く作家なので借りてみた。RIKOという警察小説が有名なので、ミステリ系かと思って読み始めてみたら、なんか1975年の青春小説が始まる。あー、今も昔もそんなに変わっていないな、描写の内容も携帯電話が無いという以外は、人が求めるものは変わらないのか、と感傷に浸りながら読んでいたら、記者中山の登場で、事件の謎が提示され、ググッと話が動き出す、そして事件が起きるまでが前半。そして解決に向かう後半へ。どんでん返しの連続。もうこれで終わりだろう、と何度も思ったが最後の1ページまで話は展開し続けた。ロック喫茶という今ではほとんど聞かない(もしかしたらあるかもしれない)舞台裏が登場するが、確かに記者中山がいうように昔は一部のマニアのものだったロックが今では完全に庶民のものとなっている。多くのものがそうなっていくのだろう。カズというキャラクタはいい、と思った。こんな奴がいてもいいと陣内は思ったから、そして作者が思ったのでこの話は作られたのではないかと思う。

    1999年4月27日火曜日
    ★★★★★ 「すべてがFになる」森博嗣講談社NOVELS 1996年4月10日 p369
    タイトルが面白いので以前から気になっていた本。最初がかなり読みづらい。それ以降は普通に読める推理小説。これが面白かったかどうかで、理系な頭か、文系な頭か分かるような気がする。自分はもう少し文系頭かと思っていたが、所詮は理系だったようだ。以下ネタバレ。
    UNIXやコンピュータを知っている人ほどこの話は楽しめる。RedMagicというOSがトロイの木馬という予想はできたし、実は犯人は博士自身であったことは話の流れと一般的なミステリのお約束で分かったけど、人が増えるという発想は全くできなかった。また、自分はコンピュータ屋なのに時間がずれればファイルを上書きするというのは全く気付かなかった。確かに十分にありうる。トリックの部分はかなり完璧だが、それ以外の実際の犯人の逃走方法に関してはかなり甘い気がするのは、逆に言えば作者にとってこれが1作目と考えると仕方の無い所か、それとも理系ゆえかはわからない。タイトルのFというのもなんだか分からなかったが、unsigned shortとは思い付かなかった。専門なのに。
    でも、RedMagicというOSのversion6は使ってみたい。すごそう。でも空想の産物だが。実際に本当に数学的に天才なハッカーな人には、こんなこともできるかもしれない。また、こういった煩わしさの無い研究所は、確かにある種の安らぎを感じてしまうのは、理系な人の、そしてコミュニケーションべたな人にとっては仕方の無い所なのかもしれない。

     ちなみに妃真加島は、実在の日間賀島がモデルと思われる。シマダス95によると「キャンプ場は未整備のため不可」とある。年間40万人も訪れるらしいので、たぶん愛知では有名な海水浴地の一つ。

    1999年4月15日木曜日
    ★★★★☆ 「夏のロケット」川端裕人文芸春秋 1999年10月10日 p339
    この話の頭は、目茶苦茶面白い。なんだけど、ヤマネコアーミーという過激派の話が出てからは、ロケット=善VSミサイル=悪、という図式から逃れられなくなる。高校生時代のワクワクする夢を実現する話から、冷静なビジネスとしてのロケットになるためにはどうしてもこの橋を渡らねばならないのだろうが、この「悪」の存在がブレーキとなってしまい、読み進めるスピードを弱められた。でも最先端でお金がかかるもの、というロケットに対する認識が、案外うまくやればコストダウンは十分にできるという考えは、本当の「本当」のところはどうかは知らないが、とってもうまく書かれていて唸らされた。1998年第15回サントリーミステリー大賞優秀作品賞。作者はこんなにロケットのことを書くので専門家かと思ったら、作品に主役で出てくる新聞記者と同じ立場の元TV記者だった。なんとなく納得。

    1999年4月12日月曜日
    ★★☆☆☆ 「水の中の八月」石井聰互ソニー・マガジンズ 1995年6月20日 p217
    評価が悪いのは「思った話と違う」ためである。自分の何かで見た記憶では、同名の映画のラストシーンは、高校生が水が少ししかないプールの中で自転車を走らせている幻想的な風景があったはずなのだが、そうではない、解説的な終わり方をしているためだ。ノベライズのためかもしれないし、自分の思い違いかもしれない。最後のシーンしか知らない(間違っているかもしれないが)ので内容がこんなにファンタジーだったのも予想外であった。高校生の恋愛青春ものかと、思っていたからだ。最初の飛び込みのシーンなどは気持ちが良くてよかったのに。本書では「石化病」という病気が登場するが、この石化病はコンピュータや電気関連の仕事をしている人ほどなりやすい病気の設定になっている。自分なぞは、すぐに石化病になってしまうので、ある意味で今まで読んだ病気の設定の中で個人的には恐い病気ナンバー1である。

    1999年4月10日土曜日
    ★★★★☆ 「クリス・クロス -混沌の魔王-」高畑京一郎電撃文庫 1997年2月25日 p248
    「タイムリープ」の高畑京一郎のデビュー作で第一回電撃ゲーム小説大賞金賞受賞作の文庫版。とても面白くて一気に読み終えた。バーチャルリアリティRPGの世界で起きたトラブルの話だが、設定がうまいし、単純にTRPG(テーブルトーク)をドラマとして見ても人間臭くていい。以下ネタバレ→でもこの話はファンタジーというよりはラストだけを見るとホラー要素もある。一度現実世界に戻って、勝ったと思ったら「実は...」というのは、単純な楽しいヤングアダルトだと思っているとキツイ世界でビックリした。ちょっと後を引く後味なので評価が-1されている。(個人的にホラーは苦手なため)

    1999年4月4日日曜日
    ★★★★★ 「不肖・宮嶋 南極観測隊ニ同行ス」宮嶋茂樹/
    勝谷誠彦構成
    新潮社 1998年5月30日 p285
    南極観測隊といったら知的なかっこいい冒険者達=おしとやかで知的な美人と思っていたら、なんと人間臭く、かつ人間離れした狂った状況なのか=美女ではあったがそのために努力して綺麗に化粧をするけど、やっぱりクソもする人間で付き合ってみたら性格は奔放だった、という実状を暴露した紀行本。あとがきにあるように内容に一部誇張があるようだが、それでもすごい世界だ。摂氏-40℃の世界にいるので、まあマトモではいられないのかもしれないが、普通の日本の常識は全く通じない異常に厳しく不思議な日常が書かれている。環境保護策からみれば南極条約は妥当だと思うが、実際に行っている人にとってはかなりつらいものだと分かる。また世の中には表面だけ見ていいかげんなことを言っている人達がたくさんいるのも分かった(自分もその一人ではあるようだ)。ページは多いが半分は写真なのでスラスラ読めたが、作者はオウム事件に影響を受けている。でも確かに昭和基地はサティアンに見えなくもないし、越冬隊員たちの風貌はあやしすぎる。でも語り口が面白くて笑える本である。

    1999年4月2日金曜日
    ★★★☆☆ グインサーガ64「ゴーラの僭王」栗本薫早川文庫 1999年2月15日 p284
    正直な所、ついにここまで来たかという感じ。あとがきにもあるが、かなり前から予告されていたタイトルだからだ。だが自分の予想と反してまだイシュトヴァーンはまだゴーラの王にはなっていない。これからが本番。しかしこれで本当に100巻で終わるのかは不安だったりする。

    1999年3月31日水曜日
    ★★★★★ 「夜明けまで1マイル」- someday loves you -村山由佳集英社 1998年9月23日 p289
    前作の「」とはうって変わって、どちらかというと普通?めの話。このおとこ女と言われてしまう女の子(男の子っぽい女の子のこと)は個人的には好みの方である。それなのでこのヒロインの一人「うさぎ」がどうなるかという点に注目して読み進めてしまった。(もう一人の大人の女のヒロインに注目できないという所が自分の限界かも)特に人死にがある分けでもなく、予想通りの失恋があるのだが、自然な展開であった。話の内容としてはやはりNON NOで連載していただけあって、どちらかというと前作よりは若い人向けの内容だったけど、単純にドキドキして一気に読むことができた。主役の男のように女の子に相談されるような男になりたいものだ。(そう思っているだけではなれないのは事実)

    1999年3月29日月曜日
    ★★★★☆ グインサーガ63「時の潮」栗本薫早川文庫 1999年1月15日 p294
    最初の情景描写にイライラしながらも久しぶりの草原とスカールの話を読んだりして、またまたグラチウスがいたり、実はリギアがああっだったりとして読み進める。そして読みたかったユラニア情勢を読むとこれが思った以上にイシュトバーンが成長していて、その国政のあり方が楽しかった。すでに64巻の1章を読み始めているのでちょっとやな展開になりそうなのが気にかかる所。でも63巻だけで考えると楽しい。(暗くないので)

    1999年3月27日土曜日
    ★★★★☆ グインサーガ62「ユラニア最後の日」栗本薫早川文庫 1998年10月15日 p298
    久しぶりに読んだので新鮮で面白かった。手持ちに図書館の本がなかったので、久しぶりに読み止めていた途中から開始したというのが真相。内容はタイトル通りだが、駆け引きの話は栗本薫は相変わらずうまい。

    1999年3月24日水曜日
    ★★★★★ 「僕は勉強ができない」山田詠美新潮社 1993年3月25日 p235 1200円
    あとがきにも書いてあるが、主役は男子高校生だがこれは大人に読ませたい本だ。こんなにかっこいい人間になれたら、と思う。まあ思うって所が、すでに「なれない」と言い訳しているようで情けなくもあるが。さらに「自分は自分であるってことを解っている人間になる」のは難しいし、自分は未だにそうではない。そういう思いにとらわれる本だ。ちなみにNHKFMのラジオドラマよりも当然原作のほうが表現度アップしている。あと、他のホームページとかによると今年の大学入試センター試験の国語の問題に出たらしい。

    1999年3月13日土曜日
    ★★★★★ 「青猫の街」涼元悠一新潮社 1998年12月20日 p248 1500円
    コンピュータをやってきた人には、なつかしく楽しい話。その上、いまバリバリにインターネットを使いこなしている人にもとっても興味深く、楽しい話。なにせいきなりPC9801VM。それもメインメモリ384KB時代の。自分もこの頃は、一時期パソコンから離れていたので、そんなに知っているスペックのマシンではないが、1985年のマシンだそうだ。しかも「How meny files (1-15) ?」ときたもんだ。懐かしくってたまらない。そう思って読み進めると、今度はインターネットから自分に必要な情報を探すためのロボット検索エンジンの超使用法になり、さらにアンダーグラウンドに移動してBBSでのやり取りへと続く。時代背景は1996年の暮れだが、2年ずれながら「今」のネット社会をよく表わしている。また、主役の仕事がSEなので自分にもなじみがある。会社の仕事での客の突然の仕様変更とか。さて、200ページまではとても楽しいが、その後は謎が深まる。最後はちょっと分かりづらいが、これがないと日本ファンタジーノベル大賞優秀賞とはいえない話になってしまう。ちなみに第10回の受賞作で「ヤンのいた島」共々優秀賞。つまりこの上に大賞が存在している。また作者略歴によると涼元(すずもと)氏は以前に集英社コバルトノベル大賞に入選しており、すでに本も発売している人だった。ホームページも存在しているのが今風の作家といえよう。付け足しとして、この作品には女性は実質でてきていない、ということと、本が左から横書きに書かれるという、コンピュータテキスト形式で書かれているという重要な特徴がある。

    1999年3月11日木曜日
    ★★★★★ 「檀」沢木耕太郎新潮社 1995年10月25日 p257 1500円
    もう一度、読み返したい本かと問われれば、そうではない、というだろう。実際は読み返したりできるが、そうかっこよく答えを返したくなる。沢木耕太郎らしい、うまい文のせいでどんどん読み進められた。自分は「火宅の人」を読んだことはないが、この話は、その妻側から見た小説ともノンフィクションとも取れる。序章と終章はあきらかに取材の風景が見え隠れしているのだが、それ以外は小説かもしれない。檀一雄という風来坊な生き方はかっこいい(他の人と違うという意味で)が、自分には真似がむずかしい。また檀一雄が弱っていく場面は現実的すぎて、読まずにはいられなかった。

    1999年3月6日土曜日
    ★★★★★ 「ヤンのいた島」沢村凛新潮社 1998年12月20日 p254 1500円
    最初のうちは空想の生物「ダンボハナアルキ」を探し出す、いわゆる「大人のためのファンタジー」的な物語と思ったら、話は現実的な戦争の世界となり、そしてそれがファンタジーへと昇華していく様が見事な話である。タイトルも意味深だ(読んでからのお楽しみ)。扱いの難しいゲリラの話もそれなりにうまく書けていると思う。とても気持ち良く、そして何となく物悲しい物語である。第10回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞作品。

    1999年3月4日木曜日
    ★★★★☆ 「夏への扉」ロバート・A・ハインライン早川文庫 1979年5月31日 p338 600円
    個人的に流行の時間物。ついに古典的名作にも行ってみる。猫好きのための本で有名だが、「猫に案内されて時間と空間を移動する話」、と思ったら違っていて、実は冷凍睡眠+αであることがわかる。主人公がきつい部分は読むのは辛かったが後半のカタルシスは「訳者あとがき」であるように、SFの醍醐味だと思った。2000年が未来世界として登場するが、1999年現在、こんな便利な世界にはなっていない。製図機ダンが現在のCADソフトに一番近いものかもしれないが、まだそれほど便利ではないと思う。でも総じて本書で予言されている世界は「当たらずとも遠からず」といったところにSF作家として能力を感じる。

    1999年2月22日月曜日
    ★★☆☆☆ 「時をかける少女」筒井康隆ハルキ文庫 1997年4月18日 p141 280円
    とても薄いので1日で読み終わした。有名なタイトルの新装版(内容同じ)。私的に流行っている時間物である。「タイムリープ」に限りなく似ている。「タイムリープ」は、この「時をかける少女」のバージョンアップというべきか。例えば、同じ曜日を2度繰り返すのだが、授業の第1時限目「数学」が始まるところでも主役は今日の曜日を気にしていないという点だ。通常2日連続で同じ授業が同じ時間にあることはないので、最悪でも始まった瞬間に違いに気付くはずなのに、授業の内容を聞いてから主役はおかしいということに気付いているからだ(「タイムリープ」ではこの点はきちんとフォローしている)。また「かの女」と主人公を呼んでいるのが時代を感じさせる。でも表紙はいい感じであるし、「解説」の大林宣彦の話はおもしろい。

    1999年2月18日木曜日
    ★★★★★ 「タイムリープ」高畑京一郎メディアワークス 1995年6月30日 p363 1480円
    1日で読み終わしてしまった。それぐらい読み易くて面白かった。タイトルからも分かる通り、時間物である。今までも「タイムリーパー」「リプレイ」「スキップ」、そして「Y」などいろいろ読んできたが、それらとはまた違った発想の元に書かれている。一番影響を受けているのは読めば分かるが「バック・トゥー・ザ・フューチャー」であるが、SF的な考察もしっかり守っているのが、正統派でうれしい。ヤングアダルト青春ものでもあるが、SFなうえに実は事件ものでもあったりして、読み易くて楽しい読書も出来た。それと護身術に関しての記述で、1対1ならば、仮に両手両足を敵に押さえられたとしても、まずは肩で敵の顔などを攻撃し、ひるんだところを緩んだ手のどちらかの肘で攻撃し、さらに拳ではなく(素人なので)、掌底(親指の付け根)で攻撃すれば、多くの場合は脱出できるという。これを読んでキン肉マンのキン肉バスターやぶりを思い出してしまった。

    1999年2月17日水曜日
    ★★★★☆ 「三月は深き紅の淵を」恩田陸講談社 1997年7月7日 p353 1800円
    四つの部からなる小説「三月は深き紅の淵を」を取り巻く話。この話は予備知識無しで読むと非常に「なるほど」となって面白い本。
    以下ある程度ネタバレ。(反転させると読めます) 第1部は面白い部分とそんなことはどうでもいいから先に進めてくれ、という話。ある意味すべてはここにある。第2部はロードムービーになるのだが、これを読むと自分も寝台電車で出雲に行きながら酒を飲んでみたい。第3部は「六番目の小夜子」というよりは「球形の季節」に近い青春小説で一番楽しめた。第4部は第1部からの予定通り、作者の独白かと思ったが、それ以上に複雑で3人の話が同時進行する。そのうち2つは作者の話なのだが、もう一つはなぜか不思議な世界の青春小説。これはもしかすると話の中の「作者」が作った話かもしれない。自分には第4部は難しすぎて理解しづらいところもあったが、うん蓄もあったし、本当の作者「恩田陸」の「あとがき」の意味を持っているかもしれない。ガチガチな構成の本格派推理小説が好きな人には理解できるかもしれない。また内部小説「三月は深き紅の淵を」第4部「鳩笛」で出てくるキャラクターが、実際にこの第4部「回転木馬」に出ていることが、第2部「出雲夜想曲」で違う形で予約されているのに読み終わった後に気付いた。
    備忘録
    登場した本ロアルド・ダール作 田村隆一訳「チョコレート工場の秘密」児童書
    美内すずえ「聖アリス学園」漫画
    ロレンス・ダレル「アレキサンドリア・カルテット」4部作小説
    映画「ジェイコブズ・ラダー」ベトナム戦争に関する噂を元にした話
    植草甚一「雨降りだからミステリーでも勉強しよう」翻訳ミステリーの感想本
    ジョン・ファウルズ「コレクター」人も収集したミステリ
    小説の書き方「彼女が小説を書くときの方法は、大雑把である。「こういう雰囲気で、読んだらこういう気分になるものが書きたい」というのがまず最初にあって、次に「この場面が書きたい」というのが幾つかあって、それを繋げていくというのを作業の中心にしている。散らばっている場面から全体像を掘り起こしていくのが楽しみであるのと同時に、骨の折れる作業なのだ。全部が見通せると書いていてつまらない。しかし、ある程度進むと、今度は終点まで見通せないのが不安になる。書くことはいつも未知の世界だ。終わりまで誰も分からない。」

    1999年2月10日水曜日
    ★★☆☆☆ 「夜が闇のうちに」楡井亜木子集英社 1996年12月18日 p229 1600円
    ?????。よくわからない。評価がむずかしい。いろんなことが起こるが、たんたんと話は進んでいる。おもしろいわけではないが、読み進めたくなる。この話は続編らしいが、その最初の話の方が面白かったかもしれない。
    ただ書き方にちょっと気になる所がある。ひとつは、描写の修飾子がうざったいぐらいあること。それともう一つは難しい漢字を使いたがること。「うつむく」を「俯く」とか(個人的にはこの字はひらがなのほうが柔らかくていいと思う)、救急絆創膏を漢字で書いて(変換候補になかった)いたり、とか。気取っているというべきかもしれない。

    1999年2月7日日曜日
    ★★★☆☆ 「イノセントワールド」桜井亜美幻冬舎 1996年3月25日 p198 1200円
    最近は自分とかけ離れた世界の本をよく読む。これもその一つ。ウリをやっている女子高生とその知能傷害の兄の話だが、結構リアルだなぁ、と思ったらあとがきを読んで主役の名前がアミだったのに気付く。自分のレベルの低さかもしれないが、ここに描かれたことはどのくらい、本当なのか、それとも全くの作り物なのか、と考えてしまう。自分が行き得ないだろう世界の人をうらやむべきなのか。都会に住まない自分には分からない所でもある。この話に出てくる人はすべてカタカナで書かれて、記号と化しているのは最近のはやりなのだろう。匿名性を強める意味合いかもしれない。

    1999年2月6日土曜日
    ★★★☆☆ 「ブエノスアイレス午前零時」藤沢周河出書房新社 1998年8月10日 p146 1000円
    確か芥川賞を獲った作品。はっきりいって面白くない。でも、描写とか着想は確かに「そー感じる」といったうまさはある。表題作「ブエノスアイレス午前零時」はUターン若者と、ぼけたおばあさんの話。描写がしつこいくらいリアル。ちょっと気分が悪くなるくらい。また「屋上」はつまらない仕事をさせられる男の解放の話。実際に狭い所に閉じ込められる動物はみていると自分の気持ちがいやになる。それを緻密に書いている。ずれていく世界と狂っていく世界の2編がこの本にはある。

    1999年2月4日木曜日
    ★★★★☆ 「Y」佐藤正午角川春樹事務所 1998年11月8日 p270 1600円
    面白いのだけれど、個人的につらいので読み進めにくい、悲しい場面があったので読むのに時間がかかった話。「リプレイ」「スキップ」と同じ時間ものだが、悲恋ものともいえる新しい切り口の話。最後におとずれる調和の前後にある告白には裏をかかれた。「Y」というタイトルがいい。ヒロインの一人、「スッとした立ち姿にポニーテール」な描写と「水書弓子」という名前は目に浮かぶイメージにはまる。アダルトなかっこつけな大人のための小説を書くのがうまい作家である。

    1999年1月10日日曜日
    ★★★★☆ 「ラジオデイズ」鈴木清剛河出書房新社 1998年1月16日 p159
    ツラツラとすらすらと進んだ、または読み進めた本。イメージが浮かぶ綺麗な表紙。ありふれた日常にちょっとだけ起きた波紋。どうやって生きていくかをちょっとだけ考えてしまう。子供時代のいじめっ子の顔が浮かぶ。そんな短めの話。

    1999年1月6日水曜日
    ★★★☆☆ 「取り扱い注意」佐藤正午角川書店 1996年12月25日 p356
    最新作「Y」が書評で取り上げてあり、興味を持ったので佐藤正午の本を探したら見つかったのがこの本。ミステリではないし、恋愛物でもなく、「新文芸」らしいがジャンル付けはできない話。すごーく面白い部分(性のお話)と、個人的に読みづらい部分(ヒステリ女)が交互につらなる。本の表紙はまったく気にせず読んだが、実はこの表紙に出てくるのがスクランブルというゲームであることがわかる。アルファベットを並べて英単語力を用いて得点を争うゲームらしく、面白そうである。


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