楽家 BookReview
2003年版
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  • ★4つ以上はお薦めです。★4つと★5つは個人的な好みや、 読んだ時の感情によって違っているだけで、ほとんどの場合は差がありません。 ただし、楽也の特徴として「初読の著者の評価は特に甘い」、「簡単に★5つがでる」 という特徴があります。

  • 右端の「有」は所有、「借」は図書館から借りた本、「古」は古本屋で買った本、 「貰」は人から貰った本であることを意味しています。


  • 2003年12月28日日曜日
    ★★★☆☆ グインサーガ91「魔宮の攻防」栗本薫早川文庫 2003年8月15日 p317
     なんかあまりにちょこっとずつ読んだので最初のほうの展開を忘れてしまった。つまり前半はさほど面白くなかったともいえる。それはともかく、最後の最後のセリフには思わず、

    「もったいない!」

    と口に出してしまった。これって技術者の人はそう思ってしまうよなあ。

    2003年11月23日日曜日
    ★★★☆☆ グインサーガ90「恐怖の霧」栗本薫早川文庫 2003年6月15日 p317
     前半の展開があまりに夫婦喧嘩なのでゲソッとしてしまった。またいつもの繰り言か、という感じ。作家はこんなシーンも書かなくてはいけないので大変ですな。それ以外は着実に話が進んでいくという感じ。まあツナギの巻です。

    2003年10月5日日曜日
    ★★★☆☆ 「ヘミングウェイ短編集(一)」ヘミングウェイ
    大久保康雄訳
    新潮文庫 1970年6月25日 p288
     小説家であるハリーはアフリカのサバンナで死にかけていた。傷の痛みのため、夢うつつの状態の中で現実と過去と、そして構想していた小説のことを考えていた。「キリマンジャロの雪」を含む短編集。

     全体的にいえることだが、なんというか「これで小説なの?」という感じに話をブツ切りにされた短編が多い。起承転結の「結」が短すぎる。その潔さがハードボイルドと解釈すべきなのかもしれないが。そのハードボイルド感を味わいきれないのは翻訳ものだからだろうか、それとも時代背景が違うためだろうか。

     ニック・アダムスものは高校の英語の教科書以来の付き合いであるが、少しずつ「男」になっていく様がなんとも懐かしい。荒野に突き進んでいく様を思い浮かべてしまう。(これってハードボイルド道?)

    2003年9月28日日曜日
    ★★★★★ 「蹴りたい背中」綿矢りさ河出書房新社 2003年8月20日 p140
     高校に入学して数ヶ月。クラスの勢力図は決まり、皆どこかのグループに属していく。でもハツは理科室でのグループ分けで余ってしまうコだった。そんな余りもの同士のグループに女性誌を見続ける男子がいた。それが「にな川」だった。期待の新人のデビュー2作目。

     買うつもりは無かったんだけど、本屋で手にとってパラパラと読むと、やはり「めっちゃ好みの文章!」という状態になってしまい購入。まあなんというか言葉の表現が多彩というか、普通の「主語」に意外な「述語」をくっつける文章表現がうまいというべきか。それにはまってしまいました。

     内容的にも意外なところをもってきた。たぶんこれは恋愛小説ではないと思う。高校生な話ではあるけれど、主人公の反発ぶり自虐ぶりが青くて悲しい。休憩時間の10分間が辛いというのは良く分かったりするものですから。

     たぶん彼女が次の作品を出したときも買ってしまうんだろうなぁ、と思う今日この頃。

    2003年9月7日日曜日
    ★★★★☆ 「図書室の海」恩田陸新潮社 2002年2月20日 p237
     入社して10年も経つと新人達に対する興味を失う。ところが4月からやってきた彼女に対してだけは別であった。あのとき道で倒れた人をすばやく救命したのが彼女だった。私はそれ以来彼女の行動をつぶさに観察していた。そして彼女のロッカーに「茶色の小瓶」があることに気付いた。うっとりした目で見つめる彼女...表題作を含む短編集。

     10個の短編があるが、まさに玉石混交といった様相。とても面白いものから、難解すぎて分かりにくい話など。私的に面白かったものとして「茶色の小瓶」「イサオ・オサリヴァンを探して」「国境の南」「オデュッセイア」の4つ」。それぞれミステリー・ファンタジー・SFといった要素がつまった独創性の強い、作者らしい発想が具現化した作品。ネタバレ→特に「オデュッセイア」は意表を突く作品で、宮崎駿監督の次作品「ハウルの動く城」の原作?かと思うほどに似た内容。こちらは長編のための準備作として書いたラフスケッチという感じではあるのだが。この「オデュッセイア」はもっと精密に書いて長編化を希望したいところだが、その「ハウルの動く城」と重なる部分が多いので無理かもしれない。
     他にも「睡蓮」「ピクニックの準備」なども面白いが、これらも含めて未完といえる作品ばかりでもあるのが残念。長編への準備作品群というべきだろうか。だからこその玉石混交だとも言える。
    ←ここまで。

     本作には「六番目の小夜子」「麦の海に沈む果実」の関連キャラが出てくるのでそちらを知っている人には、その意味でオススメ。

    2003年8月19日火曜日
    ★★★☆☆ 「DIVE!! 4 コンクリート・ドラゴン」森絵都講談社 2002年8月8日 p234
     ついに始まったシドニーオリンピック代表への最終選考会。知季・飛沫・要一の3人はコンクリートドラゴンの頂上から、それぞれの思いをのせてダイブする。DIVEシリーズの最終巻。

     予想外なことに夏陽子が主人公ではなく、主要な登場人物すべての持ち回り主人公であった。ネタバレ→そのためか、それぞれの印象が薄くなってしまったことが残念。まあ一人一人の心の葛藤が分かったのは良かったのだけれど、最終巻ですべてを解決(説明)するためにこうしたのなら、ちょっと失敗か。夏陽子自身の存在理由をもう少し掘り下げてほしかった。それなので評価は低め。←ここまで。でもシリーズを通しては、飛び込みというマイナー競技の実像が良く分かって見てみたくなった。しかし、テレビで放映しているのを見たことは無い。たぶんNHK教育テレビならやっていると思うのだが。

    2003年8月3日日曜日
    ★★★★★ 「空中庭園」角田光代文藝春秋 2002年11月30日 p298
     地方都市でありながら、造成されたばかりの幸福そうな光あふれたアパート群。子供ができたことをきっかけに結婚した2人は、ここを住居に定めた。それから16年がたち、長女は高校生に長男も中学生になった。この家族と祖母と愛人を含めた人々を中心に、家族とは、家庭とは、を問う家族小説。

     子供の頃、両親は絶対的なものだと思っていたが、自分が大人になってみるとやはり彼らもただの人なのだ、と気付く。本作では6人の登場人物がそれぞれ1章ごとに1人称の独白をするのだが、子供たちの反応がまさにそんな感じ。だから母親が家庭を守ろうと必死な姿は滑稽にも映るのだが、その行動を否定することは自分にはできない。

     特に印象に残ったのは次の2点。ひとつは「無意識のうちにショッピングモールに絡め取られる・閉じ込められる」、という発想。これは地方都市に住む人間ならわかると思うが、地方都市は遊び場・イベント場所が少ない。ところが最近各地方に大量に発生している巨大ショッピングモールは、非日常空間として機能し、その地域の人たちを吸収する。彼らは意味も無く毎週・毎日のごとく通いつめる。まるでそこにくれば何もかもが良くなると思っているかのように。自分も地方に住む人間なので、このことを言われるまで気付かなかった。この指摘は、個人的には非常に恐怖を感じた。自分も洗脳されていた、という恐怖である。
     もう一つは、祖母の1人称である。正直言ってこの章は気持ち悪いくらい老人の思考を的確に表していると思う。特に人生経験の豊富さからくる悔恨を「繰り言」として老人らしく表現している。最近、病院に行くことが多いのだが、そこでの主役たちである老人たちの姿そのものであった。

     本作は普通には人におすすめできる作品ではないが、個人的にはいろんな意味で楽しめた。ただしあまり再読したいわけではないが。

    2003年7月11日金曜日
    ★★★★★ 「ロミオとロミオは永遠に」恩田陸早川書房 2002年10月31日 p485
     21世紀後半、荒廃してしまった地球。日本には唯一にして最高学府の高校「大東京学園」が、かつての東京の地にあった。この高校への入学を目指して日本全国から多くの受験生が横浜に向かい、そして合格していた。そんな中にアキラとシゲルの2人がいた。SF学園小説。

     誤解を恐れずに大雑把にたとえるなら、このお話は「恩田陸版バトルロワイヤル」。残虐な教師と壮絶なゲームと体制批判、そして皮肉たっぷりに登場する多くの20世紀の遺物。厳しい規則の世界の裏側に広がる、アングラで占められた地下世界。小説の舞台装置としては非常に魅力的な世界が展開される。あまりに魅力的な舞台装置が多くて完全に消化しきれていない部分も多いし、恩田陸お得意の「エイヤッ」という感じの無理矢理な展開も結構あるけど、それでも勢いで読めてしまうストーリー展開に拍手したい。

     ごった煮な世界観にぴったりなイラストが表紙を飾っている。まさにこんな眉唾ものの世界が小説でも展開される。唯一の欠点はタイトルがあまり内容と関係がないこと。作者も、たぶんこのタイトルにふさわしい内容にしようと思っていたのかもしれないが、結果としてタイトルとは全く関係ないストーリーが逆にこのお話を面白くしていると思う。

    2003年6月30日月曜日
    ★★★☆☆ グインサーガ89「夢魔の王子」栗本薫早川文庫 2003年4月15日 p309
     特に普通。主役のグインが活躍するのはいいのだけれど、夢魔の王子がかなりイヤなキャラ。まあ悪役らしいくて良いのだけれど、子供の悪人は苦手です。

     それと相変わらず「あとがき」が愚痴だらけ。まあ言いたくなるのはわかるけど、昔のような「あとがき作家」と呼ばれた頃のような面白い「あとがき」を希望。

    2003年6月24日火曜日
    ★★★★☆ 「ウはウミウシのウ」宮田珠己小学館 2000年3月20日 p236
     変なカタチのものにこだわる作者宮田珠己のシュノーケリング旅行記。世にダイビング本は山のようにあるけれど、非常に稀なシュノーケラーのための本。

     とは言ってもこの宮田珠己という人はただの旅行記など書かない。「変なカタチ」がポイント。熱帯魚ではなく、ウミウシやイザリウオやイカといった変な形をした生物を見るために海に潜るのだ。しかも独特の真面目そうで不真面目な発言を繰り返す文体が、この「変さ」をより強調するのである。

     自分もシュノーケラーだが、ナマコやウミウシといったものにはまったく興味がなく、やはり珊瑚と熱帯魚が目的である。そんな人でも、実はこの本を読んでもなんとなく役に立つ(実際には笑えるネタのほうが多いが)。特に海外や沖縄以外の日本沿岸に詳しい。その中でも高知県の南端にある柏島には行ってみたくなってしまった。伊豆などもダイビングができるのは知っていたが、シュノーケルは難しい。ところが柏島は、浅い場所でも珊瑚が十分にあり、1990年代終わりの世界的な珊瑚の白化現象の影響も全くないそうだ。そのうち行きたいなあ〜

    2003年6月16日月曜日
    ★★★★☆ 「センセイの鞄」川上弘美平凡社 2001年6月25日 p277
     駅前の飲み屋で20年ぶりに高校時代のセンセイに出会った。それ以来、ちょくちょくとその飲み屋で会っては、お酒を一緒に飲むようになった。30代後半の独身女性とそのセンセイとの降り積もる日々を描いた小説。

     じんわりとじんわりと2人が近づいていく様を、急がずにゆっくりと書ききった一品。自分が男だからかもしれないけど、この女性のほうは好ましい人であるが、このセンセイのほうはちょっと気難しくて近寄りがたい感じがした。実際、女性の同級生(男性)の友達が登場してくるが、彼もやはりこのセンセイは苦手だ。だからかもしれないがこの連作短編の中で、センセイの主張が強すぎる回は、ちょっと憮然としたりした。でもリアルの人々ってそんなものかもしれない。すべてに同意できる人はいるわけはないし、相手を理解することが重要である、といことを考えれば、これは至極まっとうな描写なのだ。

     センセイの「老い」を主人公のツキコさんが感じる瞬間がなんとも心苦しい。ツキコさんが年を取ったのと同じ分をセンセイも年を取っている。ネタバレ→そして静かなラスト。そうなってしまうのは、必然なのだろうか。←ここまで。ともかく、動きは少ないけれど、しみじみーとした大人向けの小説。

    2003年6月8日日曜日
    ★★★★☆ 「アジアンタムブルー」大崎善生角川書店 2002年9月1日 p326
     デパートの屋上で退屈と憂鬱と悲しみを持て余していた。必要なものを失くしてしまった。ただデパートの屋上でタバコを吸い続けたり、あびるほどのビールを飲み続けたりして。そんなことで葉子の不在を確認していた。非常に繊細な大崎善生の2冊目の小説作品。

     なんとなく雰囲気が村上春樹に似ている。でもちょっと違う。ひとつは大崎善生が元々は編集者であったところに起因するのだろうか。文章がより緻密な気がする。そんな緻密な話でテーマが「死と向き合うこと」なためにかなり内省的なのだが、自分自身と多くを重ねてしまい、「考えるのを止める」という「大人の行為」をしてしまった。それは原罪の風景のこと、死のこと、そしてそんなことに思い悩んだ中高生のころ。考えるのを止めて思い出さないようにした。それが大人のやりかた。

     本作は前作「パイロットフィッシュ」より少し前の話。あんまり関係ないけど作者(40代)は元の業界である将棋界のアイドル的な女流棋士(20代)と結婚したらしい。やっぱり恋愛経験豊富?な作者ならでは、なのだろうか。次回作への結婚の影響がどうなるか期待したい。

    2003年5月25日日曜日
    ★★★☆☆ 「言の葉の樹」アーシュラ・K・ル・グィン早川文庫 2002年6月30日 p319
     人類が宇宙に飛び出した時代。地球生まれのインド系カナダ人のサティは、惑星アカに宇宙連合の使節の一人として滞在していた。アカは急激に工業化が進んだために、過去の文化をすべて捨て去ろうとしていた。過去の文化遺産を探索するために来たサティは、首都以外に行くことを禁じられ鬱々とした日々を過ごしていたのだった。そんなある日、彼女に突然探索の許可が下りる...文化人類学的なSF小説。

     ル・グィンのハイニッシュ・ユニバースシリーズの一冊。当ホームページの履歴にはないが、過去にこのシリーズのうち「辺境の惑星」は読んだことはある。このシリーズは「輝かしい未来」ではなく、「いろいろ過去にはあった未来」を描いた、なんとも現実的な大人向けSFである。

     気持ちいい体験としては、「船で川をさかのぼり、少しずつ違う風俗の景色や街を眺めながら紀行をする小説」の部分。アマゾン川遡上ツアーとかに乗っている気分。そして霊峰にある惑星最大の図書館。本好きにはたまらない場所がそんな場所にある発想。作者ル・グィンはすでに70歳を超えているのに(誤変換だがこっちがよさげ)、この想像力はすごい。自分ですら年とともに発想レベルがダウンしていることを感じることがあるが、作家とは違うものなのかもしれない。

     本書の日本語タイトルは「言の葉の樹」だが原題「THE TELLING」のほうがこの小説の本質を現している。まあだからといって「ザ・テリング」では仕方がないのかもしれないが、もっと良い和題にしてほしい。

    2003年4月18日金曜日
    ★★★★☆ 「夏化粧」池上永一文藝春秋 2002年10月30日 p341
     津奈美には生まれたばかりの赤ん坊裕司がいた。しかしその子を見ることができるのは彼女一人だけだった。そのまじないを解くために津奈美は奮闘する。夏を迎えようとする南の島での物語。
     池上永一お得意の沖縄の石垣島での物語であり、パワフルなオバアが出てくる物語ではある。でもそんな現代物語と、ファンタジーである「陰の世界」が合体できるところが小説界唯一の沖縄ファンタジーたる所以なのだ。よく考えてみれば、池上永一は毎回いつもそんな世界ばかり描いているのにいろいろなネタを思いつくものだ。想像力がちがうのだろう。ネタバレ→作中の千佳子のように。そして彼ら彼女らの奪われてしまった力に思いを寄せる。哲也の店のゆし豆腐が食べたかった。賢二のギターを聴いてみたかった。パトリシアの世界記録が見てみたかった。でもそれらは永遠にかなわない願いとなってしまった。そうしてまでも母は子供を取り戻したいのだろう。←ここまで。

     物語の最後で世界がぱあっと広がる感覚はまるでルパン三世の「カリオストロの城」のラストシーンのように目に鮮やかだった。そういった意味では最後は爽快に終わるお話ではある。

    2003年3月27日木曜日
    ★★★☆☆ 「栄花物語」山本周五郎新潮文庫 1972年9月30日 p508
     江戸中期、商人の力が強まる一方の時代。財政逼迫の折、老中田沼意次は多くの改革案を押し通そうとしていた。幕府の威厳を重視する守旧派の白河候松平定信との対立は日に日に高まっていった。一方、そんな時代の流れに翻弄される2人の武士。彼らを取り巻く女達や庶民たちが精いっぱい時代を生きる物語。

     田沼意次をどう評価するのが正しいのか。歴史研究者の間では現在はどう考えられているのだろうか。個人的には池波正太郎を読んでいた関係で田沼政治は決して間違っていなかったことを知っていたが、山本周五郎はさらに一歩踏み込んで細かい政策にまで言及している。資本の流通を商人主導から幕府主導に切り替えていく考え方など、今の政治でも通用しそうな発想だと思う(これが史実であれば)。
     自分が子供の頃読んだ「まんが日本の歴史」などでは田沼意次はあからさまな賄賂政治の代表のように取り扱っていたが、現在の教育分野での田沼意次と松平定信の扱いはどうなっているか非常に興味をそそられた。暇があったら調べてみたい。

     もう一つの主題は政治によって振り回される武士・庶民たちのくらしぶり。愚直な人を書かせるとうまい山本周五郎なので、なんとも彼ら(保之助・新助)の愚直ぶりが辛い。その後の転落が予想され、実際にそうなってしまうので辛かった。飄々と生きる、好感の持てる信二郎だけが救いの元なのだが...

     その昔一時期、山本周五郎の短編集にはまったことがあったがそれ以来久しぶりに読んだ。冗長な話ではないが、長すぎて小説としてはさほど面白くはなかった。山本周五郎は短編がいいのかもしれない。

    2003年3月5日水曜日
    ★★★★★ グインサーガ88「星の葬送」栗本薫早川文庫 2003年2月15日 p309
     今回は、この巻だけを独立した話にして小劇場で演劇化しても面白そうな話。ある貴族が亡くなったのだけれど、その遺骸の御前という狭い空間で繰り広げられる幕間の話。例えば、こんな調子。
    ・貴人の葬式は金がかかるし、格式も考えなくてはいけないからケチれない
    ・故人の昔の愛人がやってきて嘆き悲しむの図、そして敵意満々の未亡人
    ・家出していた弟が帰ってきて、悔やむの図
    ・未亡人を誘惑しようとする、未亡人の昔の恋人
    ・そんな中でも現実的に仕事をこなさざるを得ない大臣
     こう書くと、お笑い系かと思われるけど、もちろんシリアスである。でも今回の巻は、なんかしみじみと笑えた。

    2003年3月1日土曜日
    ★★★★★ グインサーガ87「ヤーンの時の時」栗本薫早川文庫 2002年12月15日 p321
     ついに訪れた、グインとの邂逅の時。ナリスはまるで子供のようにはしゃいだ。ネタバレ→そしてナリスは死の時を迎える。まだまだ生きると思っていたので意外だった。いや、確かに「いつ死んでもおかしくない」と医師が言っていたとはいえ、普通の小説だと強引に生き残ってしまうところだ。それでも正しく寿命をまっとうさせた作者に敬意を表わしたい。今回のあとがきはそういう意味では非常によかったと思う。最近繰り言が多かったので。←ここまで。

     いろいろな布石がこの巻では非常に効いていた。けどそれを思っているうちに心配になったのは、作者が生きているうちに後伝(本伝の次の話、源氏物語の宇治十帖にあたる)まで書ききれるかということ。このままだと本伝も130巻ぐらい行きそうなので。後伝も20巻ぐらい書いて欲しいし。

    2003年2月23日日曜日
    ★★★★☆ グインサーガ86「運命の糸車」栗本薫早川文庫 2002年8月15日 p318
     戦闘の話から始まるかと思ったら、以外にもゴーラの都の話から始まる。オイオイ、また待たせる気かよ、といじけながら読んでいたらあまりに意外の展開が。グインサーガって、ずっと本当に安定した話だったので急展開は予想外だった。そしてやっとグイン対イシュトの対決へ。そうこれが読みたかったんだよ。読後、あとがきを読んでいて安定したキャラクターがあると話は重厚になるが、確かに波乱や面白味が薄くなるので不安定なキャラクターは必要なのだ、という話は「小説」という世界の仕組みを知った思い。

    2003年2月19日水曜日
    ★★★★☆ グインサーガ85「蜃気楼の彼方」栗本薫早川文庫 2002年6月15日 p320
     話がすすむにつれ最悪なキャラクターになっていくイシュトバーン。4章ででやっとグインが出てきて話が重厚になって「ふう」と読みやすくなった。イシュトが出ているともっと悪い展開になりはしないかとハラハラしていたのがわかる。とりあえず次巻は面白そうで期待。

    2003年2月16日日曜日
    ★★★★☆ 「新ゴーゴー・インド」CD付蔵前仁一旅行人 2001年9月26日 p222
     旅行作家として有名な蔵前編集長のデビュー作の新版。しかもCD「インドのざわめきが聞こえる」が付属する特別版。

     なぜインドのような厳しいところに行く気が(現時点では)全くない自分がこの本を買ったかというと、このCDがお目当て。いわゆるインストゥルメンタルなんだけど、所々にインドで録音された「音」が挿入され、まるでインドに旅行した気分になれる。寺院音楽などは特に永遠にハマリそうな輪廻な曲が続き、そこだけ繰り返し聞き続けたくらい。このCDのためだけでも買った価値はあると思う。

     さて本文はどうかというと、多くの現地で描かれたイラストが良い味を出している。また旅行情報としても使えるように新版用に2001年時点での新しい情報が捕捉されている。だがこの本は情報本ではない。やはりイラストエッセイの本である。最新情報が欲しければネットか「歩き方」でも買ったほうがいい。

     さて本書を読み終わって自分はインドに行きたくなったかと問われれば、「うーん」というところ。個人的に遺跡好きではあるので、その部分では非常に惹かれるのだが、まだ全くインドでやっていける自信が無いのだ。

     この本は発売された頃、ちょうど東京駅そばの紀伊国屋書店で普通に買った。そしたらなんとサイン本だった!サイン会で並んだわけではないのでラッキーというところ。

    2003年2月12日水曜日
    ★★★★★ グインサーガ84「劫火」栗本薫早川文庫 2002年4月15日 p318
     おおっ、豪快な展開。しかも最近登場していなかったいろんな人が登場!かなりワクワクな展開へ。ネタバレ→ここでナリスを助けに来るのはグイン(もしかしてスカール?)しかないでしょう。しかもグインが助ける理由は義兄だから、と見た!さてどうなることやら。←ここまで。

     作者も言っている通り、話がバンバン動き出したので最近のグインは面白い。この調子で100巻突破してもらいものだ。

    2003年2月2日日曜日
    ★★★★☆ 「A2Z」山田詠美講談社 2000年1月11日 p239
     夫の一浩がついに付き合っている女の子がいると白状した頃、妻の夏美も気になる男の子がいた。そんな夫婦とそれを取り巻く人たちとの日々を26文字で著わしたお話。

     詠美節炸裂でこの主人公の夫婦、とりわけサバサバした夏美の性格はとっても好きなんだけど、ネタバレ→タイトルと章立てを少し読み進めれば、やはりZで恋?が終わることは分かってしまっていたのが欠点。結末が分かっているので好奇心が半分になってしまった。だからアルファベットが後半になるにつれて大丈夫かな大丈夫かなと心配しながら読まされた。(恋愛は突然終わるものとはいえ、恋の破綻の影が21/26になるまで全くなかったのに驚かされた)←ここまで。とはいってもさすがに読ませるのは詠美だから。恋愛初期中期の大人だからできるラブラブ状態は読んでいてあまりの恥ずかしさに体をよじれさせられた。男女の関係についてはウンチクはなるほどなるほど。ただみんなカッコ良すぎる、とは思うけど。

    2003年1月30日木曜日
    ★★★☆☆ グインサーガ83「嵐の獅子たち」栗本薫早川文庫 2002年2月15日 p311
     ようし、今回もグインの話だからよかった、と思ったら2章から暗い暗いイシュトの話に。しかも最後には、はああな状態に。明るく行きたいです。だから主人公のグインをもっと出して。

    2003年1月19日日曜日
    ★★★★☆ おいしいコーヒーの入れ方Y「遠い背中」村山由佳集英社JBOOKS 2002年3月27日 p225
     ロンドンに行っていた叔母夫婦が東京に戻ってくることを機会に、一人暮らしを決めた勝利。かれんとは同居できなくなるが、一人前になるために独立を決意する。「おいコー」シリーズ(あとがきでこの呼び名を知った)の第6弾。

     毎度のことながら、甘っ甘っ甘っ甘っな話です。思わず何度も赤面しながら読みました。相変わらず話はまだまだ終わりそうもないけど、なんていうか勉強になりました(笑)。

     おまけの短編は今まで説明されていない、兄妹なのになぜ別々に育ったのかの話が出ているけど冗長だと思う。それより由里子さんとマスターのなれそめをもっと書いて欲しかった。

    2003年1月13日月曜日
    ★★★★☆ 「パレード」吉田修一幻冬舎 2002年2月10日 p282
     なんとなく大学生の良介、ただ恋人を待つだけの琴美、働いているけど大酒飲みの未来、拾われた18歳のサトル、そして一番まっとうな社会人直輝。彼ら5人は同じマンションの一室で共同生活をしていた。いろいろな事情をかかえて。

     本作では舞台は東京だけど、舞台をニューヨーク辺りにして出演者をすべてアメリカ人にしてハリウッドで映画化してもいいかも。もちろん舞台は東京のままで日本の映画にしてもいいけど、ネタバレ→ラストのサイコな部分を考えるとちょっと日本映画だと迫力不足になるかも。←ここまで。

     最近の作家の特徴かもしれないが、実際の人物・団体・音楽・映画が平気で出てくる。それで「今」という時代を感じさせたいのだろうけど、10年後に読んだ人にこのネタがわかるのだろうか。逆に10年後に読んで、昔を懐かしむためにこの仕掛けはあるのかもしれないが、現在に生きる自分としては現実の中に有り得ない虚構(小説世界の人物・団体)が入り込んで逆に違和感を感じる。

     友人でもない人たちが「一つ屋根の下」でワイワイ過ごしたりぶつかったりするだけの単純な話ではないのがミソ。ネタバレ→パレードが終わり、別離の予感、そして読者の想像にお任せする「余韻」は、ハッピーではないがそんな終わり方も「アリ」なのかもしれない←ここまで。

    2003年1月8日水曜日
    ★★★★☆ 「ツインズ」嶽本野ばら小学館 2001年12月1日 p252
     君を失ってからの僕は何をするでもなくただ毎日を生きていた。それでもその悲しみから逃れるために「世界の終わりという名の雑貨店」という小説のようなものを書いた。特に発表したいというわけでもなかったがそれを知り合いの編集者に送付した。数日たったある日、別の女性編集者がやってきて「本にしたい」と言ってきた。そしてこの京都から離れたほうがいいと。そして僕は東京に引っ越した・・・・そして出会い、破滅への道を歩んでいく物語。前作「ミシン」の中の中編「世界の終わりという名の雑貨店」の続編。

     正直言ってかなり強烈なお話です。内容というより登場人物の行動を想像しながら読むと気分が最悪になります。なんとか読み終えることができたのは、深夜という時間に読んだからでしょう。昼間、活動したいときに読むべきではありません。

     でも女性編集者が語る出版業界の実状は豆知識として非常に面白いのでした。この女性編集者がいなければこのお話は辛すぎて読み進めることは困難だったでしょう。ネタバレ→ラストで「僕」が「彼女」から離れていってこれで一安心、と思いましたがやはり「僕」は「彼女」の元に戻りました。自らの魂の安息のために。後味は悪いですが、これが必然でしょう。←ここまで。







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