ぶつぶつ独り言


プロ球団の広告戦略


 時期はずれだが、キャンプが始まる頃は、球団の年間指定席発売等の広告をそろそろ意識するようになる。年間指定席を買うほどリッチではないが、我がファイターズがファン獲得のため、どんなビジュアルで来るか気になるのである。
 確か高田監督の2年目、営団地下鉄の車内に掲げられた広告は、ユニホーム姿の高田監督の、横顔のアップだった。察するに、選手の練習風景を見ているところだろう。そういうまなざしだった。そしてコピーが「見ててくれ」。
 なかなか「挑戦者」という趣があって悪くなかった。しかし、指定席発売に関する要項が目立ちすぎて、写真も、悪く言えばきれいすぎる、インパクトに欠ける「普通の」「鮮明な」カラー写真だった。なんと言うか、車内全体での存在感が良くも悪くもファイターズらしく「控えめ」なのである。わかりやすく言うと「警察官募集」という感じなのである。営業広告としてはどうかと思った。
 インパクトと言えば、近藤監督の3年目だったか、その年のポスターはゴジラが街で暴れる写真だった (旧東映のチームが何で?と思ったが)。コピーは「強いファイターズが帰ってきた」。球団関係者は一切登場しないゴジラオンリーのもの。ゴジラを「ファイター」になぞらえているのだと思う。
 このポスターはかなりの人気で、度々盗難にあったという。球団は「ポスターに人気があるということだから」と特に問題にするでもなかったらしいが、ポスターだけ人気が出てもしょうがない。
 プロ野球チームの営業広告は、金をかけてないか、作ってる人が真面目すぎるのか、自治体の公共広告みたいな事務的なものが多い。日程を知らせる広告などはよく見かけるが、だいたい選手の、ユニホームを着た、普通に試合をしている写真が載っていて、その横に「○月○日〜○日・対近鉄」とか表示されていて、斜め下にアイスクリームの広告なんかが入っていたりするパターンである。
 僕は広告の専門家ではないが、広告には、告知をすることだけを目的とする受け身の広告と、それに興味のない人達のハートを掴むことを目的とする能動的広告とがあると思う。前述の例は、ただ日程を知らせることだけを目的とした、受け身の広告に含まれるのではないだろうか。
 が、こんな広告技法が許されるのは、殿様商売を代々続けているあのチームだけである。ファイターズが広告をうつなら、能動的広告でなければならないと考える。
 主力選手や監督の「普通の」写真を載せて、「年間指定席が発売になりましたよ」と告知したところで、ファイターズのファンでもなければ「ふーん、そうか。もうそんな時期か」と思われるだけだろう。
 どうせ広告をうつなら、ファイターズに、さらに野球に興味のない人達の関心を集める工夫をしなければならない。少なくともパのチームなら、常にそういう努力をしなければならない。
 ではファイターズの場合、どうしたらいいか。
 ファイターズは幸い「イイ男」という素材に恵まれている。ここで言うイイ男とは、いわゆる軽薄な意味でのそれである。これを利用しない手はない。
 ファイターズに興味のない人にファイターズのユニホーム姿を、野球に興味のない人に野球をしているところを見せてもあまり効果はない。彼ら(選手)には、野球選手、さらにファイターズの選手であるという「素性」を隠してもらう。まず第一に、その「容姿」を持ってくるのである。つまり今時の典型的な広告手法だ。商品やサービス云々より、まずインパクトのある何かを見せ、注意を惹きつけた上で商品なりサービスを視聴者に覚えさせるという。
 例えば、私服姿の小笠原の写真を見て「日本ハムの小笠原選手だ」と認識できるのは、全人口の半分以下だろう。この知名度の低さを逆手にとるのである。
 ズバリ、選手の面々には、この時だけは自意識ビンビンの「タレント」になっていただく。スポーツ選手の魅力とは何か?色々あるが、ここではスポーツ選手としてのそれはもとより、その人の一番合う顔にスポットを当てたい。泥にまみれて悔しそうな顔がサマになってる奴、爽やかスマイルが売りの奴、人なつっこい笑顔が似合う奴、渋い顔してる奴等、野球を離れた彼らの一番良い顔を選んでみる。
 そして、インパクトのあるビジュアルは、人物の場合普通のカラー写真より、皮膚の質感が暑苦しい程伝わってくるモノクロの方がいい。ポートレートと考えていい。
 さて、僕は毎年選手名鑑を、データの充実度から見て日刊スポーツ版を買うことにしている。79年度のそれは、通算成績、寸評といったおなじみのデータ以外に、「抱負と決意」という項目があった。各選手がこの項目だけは自分で自由にできるのである。多くの選手は「3割を目標に」などと月並みな事を書くのだが、当時阪急の簑田選手のは「福本さん、悪いけど盗塁王はいただきますよ」。同じ「目標」でも、言い方一つで中々の「コピー」になるのである。これは一例で、他にも中々のコピーライターだなと思わせるものも結構あった(大体忘れたが)。
 ファイターズの営業広告にも、そういう感覚を盛り込みたい。必ずしも選手が自分で考える必要はないが、「インパクトのあるビジュアル」と「インパクトのある言葉」は必要不可欠だ。例えば、軽装でトレーニング中の、汗をだらだら流しながら遠方を睨む金子誠の写真に脇に、何か歯の浮くようなコピーを添える。これを見た人は「この人、誰?」と思う。ここで知名度の低さが生きてくる。Fightersのロゴと年間指定席の要項は、ビジュアルの邪魔にならないように、隅に置いておく。ついでに誠のプロフィールも入れておいたらいい。そして興味を持った人は「あ、日本ハムなのか〜」と思う。そうなればしめたものである。
 そんな感じで、小笠原、関根、下柳、根本、金子、上田、岩本の計7バージョン用意する。この中に「イイ男」とは別系統の人も混じっているが(笑)、チームの顔ということで、また個性的なキャラということで必要である。
 さて、この広告を出せるのはどこか?まず西武はダメ(笑)。JRもダメっぽい。前身の東急はよさそう。営団も有望。その他はまあまあといったところ。
 なんにしても、「TVじゃ観れない川崎劇場」の精神がなくては。

******* 仮想反論コーナー(笑) ******

「野球選手はタレントではない!」
「野球選手は野球をしているところだけが魅力なんだ」
「そんな広告は邪道だ!」

 はいはいわかってます。僕も個人的にはタレントくさい選手はあまり好きではない。でも、野球選手は本当に野球をしてるとこだけが魅力だろうか?魅力があるなら、それは使うべきなのだ。僕らが何かを好きになる時、それ自体の魅力に接することがキッカケである場合が多いが、ある人物に惹かれ、そこからその人と同じ物を好きになる場合だってあると思う。
「野球が上手ければ、お金は沢山もらえる」という仕組みは、本来世の中には存在しない。野球自体は経済行為ではないからだ。「野球が上手い→お金がもらえる」。この「→」の部分にどういう力が働いているか、考えてみて欲しい。彼らが野球のプロなら、それを「売る」人もまたプロということなのだ。だから、野球をやる側の人も「→」の部分に、協力できるところはするべきなのである。
 それに、ここは野球場ではなく「電車の中」なのだから。

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