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収益物件ブームの落し穴

  2006/ 9/16

カネ余りの昨今、ゼロ金利が解除になったとはいえ、株式や不動産等リスク商品にお金が流れています。不動産に関して言えば家賃収入を生むいわゆる収益物件がよく売れており、ひとつのブームになっています。

高利回りを誇っていたそれら収益物件も都内では価格が上昇し、いまでこそ5〜7%ほどになっておりますが他の金融商品等に比べればまだまだ魅力的に写りますよね。

しかし、その「利回り」というのがまた”くせもの”なんです。
そもそも「利回り」とはなんでしょうか。
「利回り」とは投資金額に対する年間収入の割合のことですね。
例えば、家賃7万円のワンルームマンションを1000万円で買った場合この収益物件の「利回り」は

        7万円 × 12ヶ月 = 84万円(年間収入)
        84万円 ÷ 1000万円 = 8.4% ですね。

考え方は銀行の金利と一緒です。100円を1年預けて利息が5円つけば金利は5%ですよね。よって、「利回り」=「金利」ということになります。

さて、話を戻しますがここで言う「利回り」や「金利」は表面的な意味合いです。実際に入ってくるお金はワンルームマンションで言えば管理費や固定資産税などの経費が別途かかってるわけですから手取りはもっと少ないはずですよね。銀行預金にしたって受取利息から20%の所得税・住民税が控除されますから、実質的な「利回り」や「金利」はもっと低いはずです。
そして、前者を「表面利回り」、後者を「実質利回り」または「ネット利回り」といいます。
それでは実際に上記の例をもとに数値を当てはめて「実質利回り」を求めてみましょう。

  手取年収は....
    7万円(家賃) − 1.5万円(管理費・修繕積立金) = 5.5万円
    5.5万円 × 12ヶ月 − 5万円(固定資産税・都市計画税) = 61万円

  投資金額は....
    1000万円(物件価格) + 70万円(諸経費) = 1070万円
      ※当然ですが不動産購入の際は諸経費がかかります。概算ですが、不動産屋
       さんの仲介により購入した場合、その仲介手数料、登記料、不動産取得税、
       印紙代でおよそ物件価格の7%と想定します。

  実質利回りは....
        61万円 ÷ 1070万円 ≒ 5.7% です。

あらら、表面利回りと比較してなんと−2.7%にもなりましたね。
さらに、上記の式では入れてませんが不動産屋さんに集金管理(入居斡旋、督促、クレーム処理、リフォーム手配など)をお願いすると家賃の5%(相場)が手数料としてかかります。上記の例だと3675円(消費税込み)が毎月の家賃からさらに控除されるということです。

ちなみに、不動産の広告はほとんどすべてと言っていいでしょう、「表面利回り」の方を掲載しています。特にどちらを載せるかとか決まりはありません。とすると高利回りを表現し価値の高い商品に見せようとするのは不動産屋さんとして当然ですよね。

さて、「利回り」の"くせもの"ぶりはまだまだあります。次からは”リスク”が「利回り」に与える影響についてを記述します。

空室リスク
家賃下落リスク
修繕リスク
資産変動リスク
所得税・住民税

<空室リスク>
はたして常時入居者が入っててくれるでしょうか。そうです、空室のリスクがありますよね。立地によっては常に入居の需要が高いところ(港区や渋谷区など)もあれば、相場の家賃を設定しても長期にわたって空室率が高い、いわゆる入居需要の低いところも最近は増えてきました。今後の少子化も懸念されてますし、空室は更に目立ってくるでしょう。

ちなみに、収益物件を多数取得保有している「J−REIT」などのいわゆる”ファンド”は「実質利回り」を求める際にその立地における想定される「入居率」を加味します。上記の例はワンルームマンションですから1室だけですが、建物1棟とか戸数も多くなると近隣の競合物件だって多数あるわけですし、常に入居率100%というわけにはいきませんよね。例えば、場所によって80%とか90%とかなってくるわけです。

上記の例で何年間か所有するとして年平均1ヶ月は空室になる期間があるだろうと仮定すると入居率は
        11ヶ月 ÷ 12ヶ月 ≒ 91.6% となり、平均家賃は
        7万円(家賃) × 91.6%(入居率) ≒ 6.4万円 となり、
上記の実質利回りの式に家賃6.4万円を当てはめて計算していくと、空室リスクを加味した実質利回りは更に下がって5%になってしまいました。

<家賃下落リスク>
都内の一部では地価や家賃の上昇エリアも見受けられるようですが、鵜呑みにしてはいけません。確かに東京を中心とし、近県3県(神奈川、埼玉、千葉)主要都市までの沿線はしばらくは人口が増加すると予測されているそうです。まっ、一極集中がさらに進んでいくということですね。
しかし、最近の収益物件ブーム、不動産投資信託ファンドの急増に伴ってアパート、マンション、ビルが爆発的に増えています。近所を見渡してみてください。貸駐車場や町工場がマンションに建て替わってたりとか、荒地や畑にアパートが建ったとか、古い低層ビル群が解体され1棟の超高層ビルを建設中とか、「こんなに建てて大丈夫??」と思わざるをえません。

物の値段は需要と供給のバランスによって決まります。家賃も同じ。人が増えてもそれ以上に器が増えれば家賃は下落します。

そしてこれは将来的な話なので数値では表せませんが、収益物件購入の際にはこの先ずっと家賃下落リスクが付きまとうということを忘れないで下さい。「1年で15%も家賃が下がった」という話もあるくらいですから。上記の例で15%下落すると6万円の家賃になり、「実質利回り」はなんと4.5%にまで下がってしまいます。大変、大変。

<修繕リスク>
収益物件は長期運用が原則です。そうすると当然長期的な建物の修繕計画が必要となります。もちろん、不備があった時にその都度修繕する行き当たりばったりのやり方でもいいんですが、それでも出費はしますよね。場合によっては外壁塗装や防水工事などの大規模な修繕に伴い大きな出費が必要です。

また、中古物件ではよくあるんですが築15年くらいの建物の程度が比較的よいアパートを買ったはいいが給湯器やエアコンなどの設備が次々と故障し、交換に多額の費用を要した、なんてこともあるんです。過去に一度も交換してなくてちょうど寿命のくる時期だったんですね。

そんなこともあるんで、15年か20年単位でいいと思いますが修繕計画に基づく総費用を予測し、月数(20年なら240)で割った月平均費用を毎月積み立てる必要があります。
木造、鉄筋等建物の種類や規模によりますが、余裕を見て家賃の10〜15%くらいは必要だと思いますが多すぎるでしょうか。

入居者のニーズも時代とともに変化するので、間取りや設備を大幅に変えなければいけなくなったとか、退室時の原状回復費用は原則家主負担になりつつあり、東京では全国に先駆けて通称”東京ルール”と呼んでますが「ハウスクリーニング等軽微なものや入居者の故意・過失による損傷以外は家主負担」を書面化しなければならず、いままでみたいに入居者に全額負担させられなくなったとか、ということまで加味すれば決して大袈裟な数字ではないと思います。
そして、その毎月の積立金は将来において必ずかかる必要経費ですから「実質利回り」を求める際に反映させる必要があります。

上記の例ではマンション1室なので管理組合に所有者の義務として修繕積立金を別途プールしているので家賃の10%もいらないにしてもそれでも毎月5000円は積み立てるべきです。さらにこれは家賃が入らない空室時でも積み立てなければいけません。なにせ入居者はいてもいなくても建物は日々老朽化するわけですから。先の空室リスクとこの修繕リスクとを加味し「実質利回り」を求めると4.4%となり、”利回り8.4%の高利回り物件!”との謳い文句は実質半分の利回りしかなかったわけですね....。残念....。

さて、いろいろとリスクの話をしましたが、もっと肝心で根本的なリスクがあるんです。

<資産変動リスク>
利回り計算の元となる分母は投資額ですよね。そしてそれは為替や株と一緒で極端に言えば買った翌日から変動します。不動産の場合は特に投資額もでかいので、1000万円の投資で10%下がれば100万円も目減りしてしまいます。前述の「実質利回り」4.4%だと年間手取額は47.8万円なので約2年分の収入が吹っ飛んだことになります。
もし、10年所有した後900万円で売却すると100万円の売却損に売却経費が約36万円の合計136万円が実損となり、これを「実質利回り」計算に反映させると、

     まず、10年間の実質手取額は
       47.8万円(手取年収) × 10年間(所有期間) = 478万円
       478万円 ー 136万円(売却損・売却費用) = 342万円

     年平均の実質利回りは
       (342万円 ÷ 10年間) ÷ 1070万円(投資額) ≒ 3.2%

はい、これが最終の【確定運用利回り】です。....”3.2%”....。
う〜ん、おいしくない....。さらに「管理費や積立金が値上がりするかもしれない」「入居者の家賃の支払が滞るかもしれない」などなど心配事は山積み。
チラシで謳ってた利回り”8.4%”とは「想定利回り」というよりももっと正確に表現するとすれば、その一時(いっとき)だけの『瞬間想定利回り』という言葉がぴったりではないでしょうか。

<所得税・住民税>
あっ、それともう一つ。「まだあるのか〜」と溜息が聞こえてきそうですが、これはリスクではないんです。でも手取額や利回りには影響します。それは「所得税・住民税」。

家賃収入は税法上”不動産所得”という種類の所得でサラリーマンであれば給料やボーナスである”給与所得”と合算し確定申告にて所得税や住民税の元となる課税所得を計算し直します。日本の税制は累進課税方式なので課税所得が大きければ最大で約50%弱の所得税・住民税が控除されてしまいます。

建物の減価償却を反映させたりとか、複雑な計算が必要なため合算後の課税所得における不動産所得に対する所得税・住民税の額は多少ぶれますが、合算後の課税所得が1000万円とすると所得税・住民税の実効税率は27.6%となるので上記の例より手取年収が47.8万円とすると、

    所得税・住民税は最大で
      47.8万円 × 27.6% = 13.2万円

となり間違いなく上記手取額よりは減ります。
なんのための投資だか分かんなくなっちゃいますよね。

<最後に...>
さて、以上得々と収益物件の投資に対するリスクやデメリットを書きましたが、それでもいままで述べたポイントさえおさえて自分なりの目標収入が確保できるならば不動産投資は”うまみ”があります。資産家の方はキャッシュを不動産に換えておけば資産の相続税評価を下げることが出来、相続対策にもなるという一面もあり、家賃も入ってくるとなると二重の”うまみ”となります。

でも、いちいち上記のポイントをチェックするなんて面倒だし、実際はプロでないと出来ません。そのプロですら収益物件に関する取引経験が少ないと見誤ってしまうことも多々あるんです。
よって、物件をちゃんと見極めてくれて信頼できる良きパートナーを得ることが自分の大切な資産を守る上でより重要になってきます。人選びはくれぐれも慎重に....。

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