立ち退きの難しさ
2007/3/20
『立ち退き』という作業は時に不動産活用に於いてとても重要な場合があります。
ところがなかなか思うようにいかないというのが現状です。単純に追い出せばいいという発想ではうまくいきません。事はそれほど簡単ではないんです。
『立ち退き』とは賃貸で借りてもらってるいわゆる店子に退去してもらうことです。どうも立ち退きというと「どかせる」とか「追い出す」といった悪いイメージを連想してしまいがちです。よって、退去の通告を受けた店子もつい構えてしまうんですね。
具体的に立ち退きが必要な場合というのは、建物の老朽化による建替えか、建物を解体し更地として売却したい時です。まっ、後者の場合も建物が老朽化してるケースが多いですけどね。
さて、まず家主の立場で考えると建物が古くなれば「メンテナンスが大変」「家賃が安く収益性が悪い」「地震とかの際危険」「早く売って換金したい」というようなことを考えるでしょう。
逆に店子の立場だと「古いけどこの場所でこの家賃は安いのでずっといたい。もし出て行けと言われてもまたお金がかかるし、面倒だ。第一、この辺にここと同じくらいの家賃の物件なんてないでしょう。もっと遠くに行けばあるだろうけど子供は転校させたくない」とか考えるでしょう。
じゃ、法的にはどうなっているんでしょうか。
賃貸借契約には普通借家契約と定期借家契約とがあり、後者の場合は更新がなく期間も決められているので店子は期日がくれば必ず退去しなければならず、よってあまり問題にはなりません。問題は前者です。店子が契約更新を申し出れば家主は相当の理由がなければ拒絶することが出来ません。家主が更新の拒絶、契約解除をすることが出来る相当の理由とは実際には2つのケースしかないんです。それは「自分がそこに住む、使う場合」「行政等がその建物を倒壊の危険があると認定した場合」です。そして実際の市場での契約形態はほとんど前者なんです。
定期借家の形態もだんだんと浸透してはきましたが、まだまだ需要も供給も少ない状況です。だって、せっかく借りたのに2年や3年で出て行かないといけないんですよ。もちろん再契約も出来るよと謳ってはいますが、保証はありません。そんなの誰が借ります?家主側も工夫して定期借家の場合は家賃を相場より多少下げたりしているようですが、多少ではダメです。思い切って2〜3割くらい下げないと。
それと、既存の普通借家契約を定期借家契約へ変更することも認められません。
さてさて、どうです?弱い立場の店子は法律に守られているんです。それなのに退去する意思のない店子を退去させようとするわけですから、土台無理な話だと思いませんか?
それでも家主はいつかはやらなければならないんです。困ってるんです。だからあとはお金の話です。それで折り合いをつけて退去してもらうしかありません。
そしてその交渉は当事者同士ではやらないほうが無難です。最初のうちはお互い言いたいことを言えません。それだとお互いの腹の内が分かりませんよね。なので必ずどっかで言わないといけません。しかし、上手に言えなかったりするとそれが感情の部分を刺激してしまったりするんですね。そうなるともう関係の修復は非常に難しくなります。よって第三者を間に入れたほうが費用もかかるし長引くかもしれませんが修復不能になるよりはよっぽどマシだと思います。
あと、多額の出費は覚悟しないといけません。具体的には交渉人の報酬、敷金の全額返還、住替えに要する費用(礼金、仲介手数料、引越し代等)、店舗であれば売上に応じた営業補償、それと慰謝料的なもの。この慰謝料的なものが相手によって大きく変動してきます。その他の費用は事前にだいたい把握できますが、慰謝料的なものは相手の気持ちを納得させるいわば切り札のようなものなので慎重に提示しなければならず簡単には決められません。もちろん払わないに越したことはありませんが、店子の方々も何かと情報収集をしているのでゼロではなかなか済まないのが現状です。
交渉人はホント大変ですよ。お互いの立場を尊重しつつ、でも相手方の立場も分かって貰わないといけないわけですから。特に店子側に対しては誠意を見せないといけません。時には店子の住替え先も手配してあげたり、時には手土産を持っていって世間話をしたりしていい人間関係を築きます。かなりデリケートな仕事ですよね。
しかし、せっかくいい関係を築いても肝心の住替え先が見つからないと前に進めません。これが次のハードルです。元々住替えの条件は厳しいんです。似たような物件なんてそうそう出てはきません。なのであとは根気よく物件を探すか、条件をもう少し緩くしてもらうしかありません。
というわけなので、家主の皆様、立ち退きが必要になったときは心して、細心の注意を払って取りかかってくださいね。ご健闘を祈ります。





