散歩者の夢想
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編集中記:0086
広大な富士の裾野
再び故郷に戻りますが、その前に馬力の話。
敗戦から二年後に、母が疎開先を引き上げる時、父の郷里に預けてあった家財を運んだのが馬力です。
馬力とは馬をつないだ荷車のこと。人間でも引ける程度の荷車に、家財を積んでもまだ空きがあったので、薪を一杯積み上げて、F市から我が家まで、届けてもらったそうです。
父のすぐ上の兄の子、つまり私の従兄弟は、泡の弾けた直後に、都内の事業所用地を相続した結果、重税を払えず、事業所の土地と建物を売却してなお足りず、田舎の土地をも処分、生業の会社を清算、母が疎開先を去って五十年目に、還暦の若さでF市に引き上げましたが、その折はディーゼルトラックが現代の馬力。
富士の裾野は広大です。東海道の馬力に頼んだのでしょうか。
千本松原から三島を通り、箱根を越え、小田原から二宮、大磯、平塚、藤沢、そして横浜、川崎、大森、品川----。
馬力が到着した日、両親は、ほっとしたのでしょう。