クリスマスの季節
その86
両親と出かけたスキー場は水上、志賀高原、霧が峰、湯沢、野沢、赤倉、蔵王だったと思います。確かではありません。水上は二回かも。志賀と蔵王は家族だけです。他のスキー場は店の従業員の慰安旅行。工場従業員の慰安旅行には同行せず。兄は運動部優先。なお、関西方面への仕入れ旅行、紡績の接待、お客さまの招待旅行(北海道〜九州)など頻繁に出かけた両親の出張時は私が留守居。頼りにしてくれましたが、その分、従業員には煙たがられ、気心の知れたのは三人程度。

小四の頃、志賀高原に出かけています。

志賀高原は高校時代も大学時代も出かけました。友人に紹介された民宿に泊まったり、旅行社のスキーバスに加わって、滑ってはお喋りを楽しんだものです。当時、美意識という言葉を聞いたら歯が浮いてしまったでしょう。しかし、小四の志賀高原は違っていました。

積雪でバスが通れず「雪上車」で運ばれました。心強かったです。好奇心も満足しました。予約できた宿は高原に一軒。建物は異国の風格。古風な三階(?)建て。暖炉には薪が音を立てて燃えていました。暖炉の脇には樺の丸太が重ねてありました。古美術を連想させる花瓶には、見事な枝振りの真っ赤な実が壁面を覆い、暫くは暖炉から離れられなかったです。ホテルの感覚もベッドの記憶も消えていますが、建物と暖炉と花瓶は忘れられません。

翌朝は整備されたゲレンデに出かけましたが、傾斜がきつく、雪面が凍りつき、棒で打たれるようで楽しくなかったです。奥利根の喜びが蘇ったのは、庭の小山か何かでしょう、ホテルの脇で無人の斜面を発見したときです。スキー板で上り下りするほどに雪が締まり、ミズスマシ・ボーゲンを会得するのに十分な広さ。頬を紅潮させた子どもを夢中にさせる優しさと、群青の空と、太陽に照り映える霧氷と、銀色に輝く遠い山々。
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