題名 せいこ

作者 安藤富



係から

 九十九年の春、高校の卒展を終えた孫娘を連れ(あるい
は連れられ)皆で出かけた熱海の旅館で、寛いでいる姿を
帰った直後に描く筈が、今年九月の二十三日になって、よ
うやく下図がまとまりました。

 橡の木の葉展/第一回に出品した「戦場ヶ原」は、下図
を暫く、私の住まいで療養しながら描いていましたが、富
にとっては初めての五十号でしたので、筆が遅れたのは大
きさのせいと、九分九厘、思っていた見方が今回、一厘の
側へ傾いています。描こうとする意欲を翌日まで持ち越せ
ません。家事で一日の活力を使い果たし、余力が失われて
しまうのです。

 緻密です。手抜きは、しないのではなく出来ないのでし
ょう。画面を隅々まで計算しながら、残りの日数を数えな
がら取り組んでいますが、「戦場ヶ原」では、下部の落ち
葉をベタ塗りに変えるなど、方針の変更を余儀なくされて
います。

 歳の壁が低かった「ナイル河」では、流れが変化してい
る部分部分に、家族の名前を割り当て描いたそうです。日
光浴に出かける植物園では、枝振りを仔細に観察、落ち葉
を集めるなど対象に極めて誠実。日本画を始めた頃に描い
た牡丹は、写生の際、数えた花びらが、一つは百六枚、今
一つは百何枚と、私の方が聞いた数を忘れています。描く
基本、すべての基本、なのかも知れません。