折々の文章


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クリスマスの季節 −227−
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  (まぼろし)

























この界隈には知人の事務所があります
出かけた折に見渡しますが
F先生のお住まいは判りませんでした

最近、薬局の建物が残っていると知り
昨日の朝(三十一日)確かめました

外観は忘れています
薬局の今はコンビニ
調剤は見上げる高さ
半円の窓から差し込む光が柔らかでした

病床の祖父は
紙を細工して遊んでくれました
症状が悪化
連日F先生が往診に見えたそうです
鎮痛の措置
父が付ききりで介護
母は父の介添え
祖母は離れた場所から

F先生は父に
これが最後の注射です
楽にしてあげて下さいと指示
父は祖父の胸に注射
暫くして亡くなりました

バラックだった店で葬儀
当時の店には
菅野を引き払った祖父母一家が住まい
父は菅野から通っていました
母は菅野の自宅で型紙と縫製

葬儀の折 ←1949年
母は父親の棺(ひつぎ)の裏で寝ました ←場所がなかった
赤ん坊を背負って駆けつけた親族は
真っ先に台所に出向き
夢中でご飯を食べた時代です




問屋街の一角 1959年 中央のお店の戦前は古着商


近所の古着商の娘さんが
F先生の後添いになったのがご縁
古着を買うのが当たり前でした
婚礼衣裳や留袖を扱う有力な古着商と
普段着を商う無数の古着商の
娘さんの実家は後者
祖父の店のごく近く

F先生は大学にも部屋があり
自宅のレントゲン装置(小型)で無理なときは
大学の装置をご自分で操作
F先生とのご縁がなかったら
我が家の今もあったかどうか

F先生が亡くなられた時
薬局の薬剤師が店に来られ
今までの処方箋を渡してくれました
菅野時代の父は
F先生の指示で
栄養剤と抗生物質を必要な折々
我々家族と自分自身に注射

母は都電で女学校へ通学
F先生のお宅はその途中で
通学の記憶が通院の記憶を上書きしてしまい
私の記憶とズレがありましたが
一昨日
突然浮かんだ停留所の名前を教えてもらい出かける気持ちに
古い町名

F先生のお宅の記憶は
大きな門
応接室の椅子と絵の額
暗い廊下
日当たりのよい診察室
医療機器がびっしり並んだ部屋
間違って入ってしまった書斎など

洋館です
開かれたままの門は
駐留軍の大型車両も出入りできる広さ

古い町名を頼りに歩きました
二本の通りの
一方に違いないと思いましたが
昔の痕跡は煉瓦塀の名残(なごり)程度

お店のシャッターを開けた中年女性に
F先生のお宅をご存知ですか?

Fさんなら知っています
ずっと前に○○へ越しました
跡地はマンションになっています
医者ではありません
この辺には大学の先生も医者もいません

がっかりしました
再び痕跡を求めて
並行しているもう一本の通りへ移り
髪の真っ白な婦人二人に同じ質問

 以上の文には記憶違いが
 以下の文には聞き違いがあると思います

私は八十歳です
二十八歳で結婚、その時に移ってきました
私は八十四歳になります
私が住み始めたのはあなたと同じ頃ね
F先生のお宅の今は、ほら! そのマンションですよ
そこもあそこも引っ越してしまいました
大学のお医者さまが住んでいたのですよ
同じ大学です
その空き地はC先生のお住まいの跡
S先生の跡はあのマンション
この辺はA男爵の家作だったのです
御典医のA男爵です
分割して売りに出された私達の所は
当時の家も残っていますが
先生方の敷地は広かったのです

母の記憶によりますと
F先生の葉巻はご病気の臭いを隠すためとか
真っ白な髭(ひげ)と
節くれだった指先が黄ばんでいました
繊細な動き
穏やかな言葉

今の子は半世紀後に
どのような幻に出合うのだろう



秋葉原
工事が始まったのはC→A→Bの順

 BとC

 A

 BとC


我が家近くに
大学が建った時は嬉しかったです
カッコいいです
利根川の近くに住む縁者の市にも
都心の芸術系大学が建った時はスゴイと思いました
常磐線の古い新駅のマンション街には
駅近くに他県の大学の新校舎
新線沿いにはF先生の大学も

移転や併用など運用や形態は様々でしょう
学内に関心はありません
大学が近くに建つそのことに期待するのです
しかし風土は
約二十年前の博覧会と同じ方向

市街美であれ田園美であれ
最高学府こそ景観美の象徴であって欲しいと
今でも思っています
風土資本を高度に蓄積した環境で学ぶことと
瓦礫の含み試算を高度に蓄積した環境で学ぶ場合の
未来の子への貢献度は大きく異なるでしょう
感性が損なわれるか高められるかの違い
島嶼の原風景は
地表で最も恵まれた一つであることを
識者も政壇も忘れないで欲しい
厳しい制約下で技術を高度化するのが知恵
その逆は無知または我欲

田野を抉(えぐ)って
秀麗な構内が一つ築かれるたびに
都心では高層による過密化が進み
郊外では都心の野放図が移植されます
移転も回帰も分散も新設も
景観美の保全を忘れ
住環境悪化の防止と住環境修復の配慮を欠いたまま
自己都合を押し通してしまうのが涙国の最高学府

一つだけですと
野放図をいつまでも拡散し続けてしまいます
首都の移転も大学の分散も同じ力学
暮らしやすさの視点から首都圏を厳しく制限
首都集中および首都回帰の力学を排除
島嶼内の数州(数ムラ)が各々独自の法のもとで
暮らしやすさを競って欲しい



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