クリスマスの季節 −539−
  
風呂敷あれこれ

祖父の小学生時代 1890年代 

南京米の等分に混ざったお米を二十五銭ほど買って帰る途中、
新堀の橋の際に出ていた煮込み屋で、豚の臓物の串刺しを味噌
で煮た一銭四本の「牛煮込み」を買い、片手にお米の風呂敷、
片手に煮込みを下げて帰る楽しさ。

真冬の夜など、両親がランプの下で懸命に仕事中、命じられ、
買ってきた焼き芋の風呂敷を広げ、湯気の立つのを、親子で囲
んで食べる美味さ。

貧しくとも、生きていれば楽しみがあった。

自伝抄録【祖父の肖像




女学校五年次の肩章づくり 1939年とその前後

母の女学校でも一、二年は週一(?)回、三〜五年は週二(?)回、
和裁の正課があり、卒業年次は教室毎に和裁の点数を競ったそ
うです。縫い込んでいた母は和裁の先生に指示され、和裁の先
生が受け持つ教室を手伝ったところ、点数がその教室に加算さ
れ、釈然としない思いを経験しています。

卒業年次は和裁だけでなく、学年一番(答辞を読む人)も自分
の教室から出そうと、担任の先生同士も競っていたのです。算
盤が出来た母は担任の先生から、クラス全員の成績計算を頼ま
れています。その折、和裁の点数が持ち去られた経緯も聞かさ
れています。

五年次の白のネルの傷病服はなかなか仕上がらず、一学期でお
終いでした。肩章づくりは(フェルトに階級章を縫い込む作業
は)女学校のミシンが遅く、こちらも和裁の先生に指示され、
神田に持ち帰り、母は足踏みの工業ミシンで三日に一度、風呂
敷一包みを仕上げ女学校に持ち帰り、教室全員でアイロンをか
け陸軍へ納品、それを一年続けた結果、陸軍から女学校に感謝
状が届いています

クリスマスの季節−16−




結婚式祝品寄贈芳名 1942年

祖父の遺品に「結婚式祝品寄贈芳名」と題した帳面が残ってい
ます。その中からお祝いの品々をご紹介します。

桑製三尺鏡臺 桑製三尺針箱 朱研出し栗箪笥 桜材刳り火鉢 
張交ぜ五尺二曲屏風半雙 小田巻呉服細工 鎌倉刻四尺卓 
桑製手火鉢 桐製三味線箱 ラヂオセット 旅行鞄 銅製花瓶 
小間紙入り手箱 絞り帯揚げ 宮古上布 漆器三抽出小箱 
無地綸子縮緬 絹足袋・キャリコ足袋 携帯用抹茶器 
松春慶塗菓子鉢 白絽 衣裳籠 女持洋傘 紙壱締、末広一對 
草履 商品券 ハンドバック 文化洋装講座六巻 硯箱 
有明スタンド 漆器飯櫃 風呂敷 小物入箱 

現金は五圓〜二十圓がほとんどです。「米四升及びせんべい」
のお祝いが印象的。

寄贈者には二見理千、杵屋佐次郎・六寿、花柳寿美輔、武藤な
どのお名前もあります。他には白木屋(日本橋)、芙蓉荘(湯河
原の別荘兼旅館)、「隣組第○○群一同」が目につきました。お
返しは五圓十圓の「国債」が圧倒的、次いで鰹節と風呂敷です。

編集中記【No.245




婿養子の立場 1942年〜45年

風呂敷包みより軽かったそうです、母が認識していた婿養子の
立場は。娘の意向に関係なく主人の気持ち次第で、離縁されて
しまったそうです。妊娠中の母は長男を連れ富士に疎開、祖父
一家は菅野に疎開、父は真間から通勤していた戦争末期、祖父
は祖母と父を呼び出し、婿への財産(戦後は紙屑同然)の譲渡
を保証する証文を手渡しています。父への信頼が増した祖父が、
養子の不安を除く配慮。しかし戦後、祖父が亡くなった直後に
祖母は父を呼び出し「こんな証文は意味がないから破ってしま
おう。ヤッチャンもそうしておくれ。」 訴訟の地均(なら)し。

クリスマスの季節−14−




配属された部署 1968年、1971年

新卒の頃、配属された部署で最上位の上司が、風呂敷包みを抱
え、私を伴い、通行人を威圧する看板の掛かった建物に入り、
私なら十年出入りしても迷ってしまう部屋に直行、ドアを押し
開け、挨拶を傍聴した記憶があります。

参謀の性格は同じでしたが、配属された部署には三通りの仕事
が雑居、内一つの仕事にこの折、私は失格したのだと思います。
その後三通りの仕事は三部署に分かれ、私の兼務していた二通
りの仕事も一つは遠方に移転、どちらの規模も入社時とは比較
にならないど大きくなりましたが、最上位の上司の新たな部署
は相変わらずでした。因みに、新卒時に配属された部署の担当
役員は、名目上、当時の全社の二番手でしたが、私が命じられ
た米国の研修旅行は、この役員の名代としてです。披露宴にお
招きできる相手ではありませんでしたが、結婚祝いは、ご出身
を偲ばせる煙草盆でした。

随想 青い闇 −6− 09 Feb 2001








 ※

  
天鵝絨(てんがじゅう)(ビロード)
筑波実験植物園(つくば植物園) 茨城県つくば市


 クレマチス展にて

 ビロードの風合い





















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