ストロングスタイルとは?

●ストロングスタイルと猪木の関係

 「『ストロングスタイル』というキーワードから導かれるものは」と問われると、「猪木」と答える方が多いのではないか。猪木は「馬場さんはショーマンスタイル。俺はストロングスタイル」と語ったといわれているので、これも無理はない話。しかし私見では、猪木はストロングスタイルではない(猪木のスタイルは「プロレス流なんでもあり」だろう)。さらにメインエベンターもストロングスタイルである必要はない。

●ストロングスタイルとショーマンスタイル

 猪木発言の真意は、自分を馬場と差別化したかったことにあると思う。猪木発言をふまえて「じゃあ猪木はショーマンではなかったのか?」と問われると、答は絶対に否だろう。リバース・インディアン・デス・ロックのかたちから、客席を観て「シャイ、シャイ」とアピールする人間が、ショーマン以外の何者なのだろうか? 私から言わせると「猪木以上のショーマンはそうそうはいない」である(猪木自身も「アメプロを日本に持ち込んだのは俺かも」と語っている)。
 馬場はその身体の大きさから、ちょっと動いただけで凄く見栄えがする。見栄えという考えからいうと、あれだけ大きな人間だから、ゆったりと動いた方がいい。だから本当は結構俊敏に動けるのに(以前は、ね(^^;)、わざとゆっくりと動く。レスラーの技術や運動能力とは別のところで観客にアピールするから、猪木はそこをとって「ショーマンスタイル」と表したのだろう。
 対するに猪木はレスラーとしては決して大きな人間ではない。よって自分の技術・運動能力に頼った試合をすることが多かったのだろう。で、「ストロングスタイル」と定義したのではないだろうか。しかしレスラーの技術・運動能力に頼るストロングスタイルは観客に理解できない部分も多く、必然的に観客へのアピール(自分への鼓舞もあるとは思うが)が多くなってしまい、またそのアピールがあまりにもあからさまなので、見方によっては馬場よりもショーマンに見えてしまう、と。

●いわゆる「ストロングスタイル」とは?

 で、この「ストロングスタイル」という言葉を巧みに利用したのが、新間だと思う。レスラーの技術・運動能力に頼ったスタイルを、売りにした。つまり、ある意味プロレスにとってそんなに重要ではないファクターである、「強さ」を前面に打ち出した。そして、私をはじめとするストロングスタイルの信奉者をつくっていった。
 今でも新日の前座レスラー(海外遠征にいっていない連中)はすべからくストロングスタイルであって欲しいと思う。また、メインエベンターもストロングスタイルで何年もやってきたからこそ、新日流メルヘンを体現できるわけなのだ。いや、そうあるべきなのだ。ぼっくの兄弟の言葉を拝借すると、「プロレスの本当」を知らない奴が「本当のプロレス」をできるわけがないのである。「プロレスの本当」っていったって、何も蹴りや関節技を試合で出せといっているわけではない。蹴りや関節技はU系の範疇である。これを試合で出してもストロングスタイルではない。いや、かえってストロングスタイルから遠く離れていってしまう。確かにそういうのは道場で勉強して、使えるようにならなくてはならない。でもそんなものはお客さんに見せるべきものではない。道場破りが来たときに使えばいい。あるいは異種格闘技戦に望むときに出せばいい。

●ストロングスタイルな試合

 では、どういう試合がストロングスタイルなのだろうか?

 ストロングスタイルの試合でも蹴りは出す。でも出す蹴りは足の裏で蹴るもの。ドロップ・キックやストンピング。足の甲側で蹴ってもいいのは、木戸蹴り・長州蹴りのあのタイプのみ。だからレガースなんて必要ない。
 関節技だって、序盤で手を取ったり足を取ったりで少し見せればいい。「暗黙のタップ」は観客にそれと気付かれないようにやることが肝要。グラウンドはコントロール(バックの取り合い、腕の取り合い)とブリッジを見せる。関節技は極力少なく、ストレッチや絞め技を大きく見せる(疲れたときのひと休みに最適(^^))。
 ロープワークを見せる。ドロップキックは大きく、確実に顔面に入れる。中盤、相手が倒れたらストンピングで活を入れる。倒れた相手に関節技なんかには決してもっていかないこと(このあと、関節技を狙ったところを相手が丸め込むという展開があればOK)。
 ストロングスタイルにはブレーン・バスターは欠かせない。張り手はOKだが、エルボーは好ましくない。どちらにしても多発はもってのほか。試合の流れを変えるための打撃も好ましくない。ラリアートなんて出す奴は破門。コーナーに登ったら、ミサイル・キック以外は許さない。ましてや雪崩式。バック・ドロップはきっちりと後頭部から落とす。バック・ドロップは切り札だから、一人2発まで。
 返し技も一人一回は出すこと。出すときは全身全霊を込めること。そうすれば、返し技でブーイングなんかおこらない(おこったのは別の団体だが(^^;)。ブリッジがしっかりしていれば、原爆固めも使用可。
 全体に若いときにしか出せないスピード感が大切。相手の技を受けるときも、相手に体を預けるわけではなく、「いつか反撃してやる」という目の輝き(殺気につながる)を忘れずに。よって「死んだふり」なんていうものは存在しない。時には相手の技をすかすことも必要。

●ストロングスタイルののちに

 こういう試合を2年以上こなし、観客を沸かせることができるようになったら、海外遠征の出番だろう。「日本のプロレスが最高」というファンも多いだろうが、アメリカンプロレスにはショーマン性とその裏のセメント性、ルチャには飛び技の他にも多種多様なストレッチ、キャッチにはグリップを離さない危険なスープレックス、というようにまだまだ学ぶべきことは多い(ある意味、一番売りがないのは日本のプロレス)。そして海外遠征(できれば2年以上)で学んだことを、凱旋帰国して披露する。そこには新日流ストロングスタイルと遠征先のプロレスの融合系がある。なかには長州のように、「成果は精神的に図太くなったことだけ」といった遠征もあるだろうが、それもOK。

●結論

 ストロングスタイルとは、新日のレスラーが必ず身につけていなければならないものではあるが、それを行使するのはデビューから海外遠征までというのが理想。上に挙げた試合がかたちの上ではできても、決して試合に出してはいけない本物の関節技、絞め技、ストレッチをできないレスラーがやっていれば、それはストロングスタイルとは呼ばない。
 総じて「勝ってやる」という気持ちが観客に伝わらなければダメ。そのためには目が死んではいけない。目で殺気が表現できれば最高。

●新日の現状

 できているのだろうか? 98年1月現在、ヤングライオンと呼べるのは吉江・藤田・真壁の三人。吉江はこのキャリアで早くも「ミニ長州」となっており、安易な打撃技が多いように思う。藤田はよくやっていると思うが、いかんせんドロップキックがぎこちない。真壁はまだ数戦しかこなしていないので、これからに期待。この三人の近未来には、「取りあえず」注目していこうではありませんか>皆さん。

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