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第5話 「初戦」



「お、おまえ・・・、なに?」
顔面蒼白になった彼に、僕は彼が姫野ちゃんにした事と同じ様に、
思いっきり腹にパンチを食らわせた。 そして、言った・・・。
「僕は・・・、
姫野ちゃんを守る男だ・・・」



「はぁーはぁー」
僕は、深呼吸をし、辺りを見回した。
そこには、壁際の床が砕け散った後と、
その下にはさっきまで僕の上に乗っていた男が倒れている。
右側には、鉄柵が、まるで飴の様に折れ曲がっており、その向こうからはうめき声が聞こえる。
そして、僕の真下には、姫野ちゃんを殴った不良が床にキスをしていた。
僕は、自分の両腕を見てみた。
そこには、シュウシュウと、まるでそれ自体が熱せられている様な、
太く、青黒い腕、
「ベルセルク」の腕が、僕の腕と同化していた。
「こ・・・これ・・・は・・・」
容易に想像が出来なかった。
僕は、不良の仲間に捕まっていた。
そして、姫野ちゃんが不良に殴られ・・・。
気が付いたら、こう・・・なっていた。
はっと、僕は思い出したかの様に、姫野ちゃんの元に走った。
「ひ、姫野・・・」・・・と、僕は彼女を抱きかかえようとした時、
そこで初めてその存在に気が付いたのだった・・・。
「あ、悪魔の腕・・・」
その、鋭い爪の生えた大きな両手、青黒く、ピクピクと脈を打つ太い腕。
それを見た瞬間、僕は全てを理解した。
この光景は、
この僕が悪魔の腕を使って作り出したのだ・・・と。



不意に、後ろから声が聞こえた。
「派手に・・・やったもんだな」
僕がビックリして後ろを振り返ると、
そこには水色のトレーナーを腕まくりして着た、二十歳前後の若い男が僕を見つめていた。
そして、その左腕の二の腕には、4つの星が鈍く光っていた。
「お前、
デビルハンズだろ?」
「デビル・・・ハン・・・ズ?」
そう言って、僕は慌てて両腕を制服の下に隠した。 隠れなかったけど・・・。
「ははっ、隠しても無駄さ」
そう男は笑った。
「お前、あの洋館で「悪魔の力」を得たんだろ?」
「洋館・・・」
「ああ」
僕は思い出した様に、あの時の光景を思い出していた。

言われるままに差し出した僕の両腕。
それをスッパリと切り取った、魔女の様な御婆さん。
そして・・・結合された、大悪魔、「ベルセルク」の腕・・・。

「何、隠す事はないさ」
男は薄気味悪い笑みを浮かべながら、僕の方へと一歩づつ近寄ってくる。
「俺も・・・仲間だから・・・さ」
そう言ったかと思うと、男の両腕がみるみる変化していった。
「いや、
「敵」・・・か」
僕は疑った! 目の前の男の両腕が、
一瞬の間で青黒い蛇に変わったのだ!
「うわぁーー!!」

僕は自分の腕が切断された時以上に驚いた!!
「こいつの名前は、「マキュール」と言って、今じゃ俺の相棒さ」
僕は、その光景に恐怖し、足がガクガクと震え始めた。
こんな恐怖、今までの虐めの比なんかじゃなかった!
それこそ、僕は蛇に見らまれたカエルの様に、ピクリとも動けなかった。
「お前に恨みは無いが・・・」
そう言って、男は戦闘態勢をとる。
「お前のソウルスター、頂くぜ!!!」
素早い動きで、男の両腕の「マキュール」が僕の両腕を捕まえた。
「っ!!」
そして、そのままの体勢で空中に持ち上げられた。
「うわぁ!」
僕は足をバタつかせた。 だが、虚しく空を切るばかりで、一向に降りる気配は無かった。
「どうだ? いい眺めか?」
不敵に笑う男は、これから僕をどうするか考えている様子だった。
「お前、その腕、今発動させたばかりだな?」
男の腕から伸びる蛇の腕が、僕の両腕を締め上げてきた。
「これはいい獲物に出会ったぜ。 これで、またソウルスターが増える」
そう言って、男は二の腕に鈍く光る4つの星の刺青の様なアザを見た。

確か、「悪魔の力」を手に入れたあの洋館の御婆さんが言っていた。
ソウルスターを得る事によって、「悪魔の力」は更なる力を得るのだ・・・と。

どうやらこの僕の両腕を締め上げるこの男も、
あの洋館で「悪魔の力」を手に入れた人間の一人なんだろう。
しかも、この男が得た「悪魔の力」は、
僕の「ベルセルク」の腕とは違って、自在に動く蛇の様な腕だったらしい。
しかも、男の左腕に鈍く光る4つの星型のアザがある。 あれが多分ソウルスターなんだろう。
・・・と、すると、4つのソウルスターを集めたこの男は、
既に4人の
「デビルハンズ」と言われる「悪魔の力」を手に入れた人間達と戦い、
その結果、ソウルスターを手に入れたんだと思う・・・。
そう考えると、僕なんかはいくら「悪魔の力」を手に入れたからって言っても、
今までと同じ「弱虫」なんだろう・・・。
そう考えたら、急に寒気がした。

「っく!」
僕は、その蛇の腕を見た。
そこには、青白く光る眼をした蛇の頭があった。
「この腕、「マキュール」はな、あの洋館で手に入れたんだ。
それ以来、俺は生きたい様に生きてきた」
男は、僕を舐めまわす様な目で見つめる。
「俺を怒鳴る上司、いつもいつもうるさい親父、それから俺を裏切りやがった彼女(あいつ)・・・」
その口調が、段々怒りの熱を帯びていくのが分かる。
そして、僕の腕を締め上げる力も段々強まっていった。
「だが・・・この力を手に入れてから、俺は変わった・・・」
「・・・」
僕は痛みに堪えるのが精一杯で、男に何も言えなかった。
「あいつ等の全て吸い取ってやったよ!」
男の顔が、今まで僕が見たことの無い恐ろしい笑みで僕を見やった。
その瞬間だった! 僕の左肩に激痛が走ったのは!!
「あぐっ!!」
なんと、
僕の腕を掴んでいた蛇の頭が、急に肩に噛み付いたのだった!!
「い、痛っ!!」
僕は、いろんな虐めを耐え抜いた。 殴る、蹴る、叩く、投げられる・・・。
だけど、
「噛み付かれる」事など、もちろん初めての事で、
僕は得体の知れない、今までに無い恐怖を感じた。
「さあ、どうだ? 噛まれた気分は?」
い、痛い・・・としか言わないと、更に噛まれそうだったので、あえて僕は黙っていた。
だが、男は更に凄い事を言ったのだった。
「殺(や)れ! 「マキュール」、こいつの精気を吸い取れ!!」
一瞬、僕はその言葉の意味が分からなかった。
だが、僕を噛む青白い眼が光ったかと思うと、急激に力が抜けていくのが分かった。
そう、この「マキュール」と言われた蛇が、僕の精気と言われる何かを吸い取っていたのだ!



これが、これから僕が体験する「力」と「力」との戦いの渦の初戦の始まりだった・・・。



To Be Continued・・・



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神の左手 悪魔の右手