TOPに戻る

 

 

第13話 「弁解」



僕が「悪魔の力」を得たあの洋館は、光にーの言うとおり、跡形もなく無くなっていた。
その光景を前に、僕の頭の中は様々な疑問で一杯になった。
しかし、その疑問一つ一つをクリアーしていくうちに、一番考えられる答えを出した僕は、
胸の中をスッキリさせ、夕日の沈む空を背に家に帰ろうと振り向いたのだった。
だけど、そこには鉄男くんが腕を組んで僕を待ち構えていたのだった・・・。



「やはり来ると思っていたぜ・・・。 真」

「あ、鉄男くんもここに来たんだ」
オレンジ色の光に浮かぶ鉄男くんは、僕を見つめながら笑顔を浮かべていた。
「ああ、真が来ると思って待ってたんだ」
「そう言えば、今日学校休んでいたよね? 風邪でも引いたの?」
「・・・ちょっと違うな」
僕の問いに鉄男くんはニヤニヤしながら答えたのだが、
その様子に、僕は何か嫌な感じがしたのだけど、気にしない様に振舞った。
「ちょっと宝集めと軽い運動をしてたのさ」
「宝・・・集め?」
僕は彼の言葉の意味が分からなかったので、スネた風に聞いてみた。
「なんだよ〜、宝集めってさぁ〜」
いつもの鉄男くんなら、僕がこの様な態度をとった時は、
僕に合わせて、ジュースおごってくれれば教えてやるぜ♪、と、返してくるのだったが、
今日の彼は、ただ一言、
「教えてやるから、来な」、と、苦笑いをしながら背を向けたのだった・・・。



鉄男くんが連れてきてくれた場所は、洋館跡地から近い古びた病院だった。
何でもここは、駅前に新しく出来た大文字病院という大きな病院に客を取られてしまい、
沢山の借金を残したまま潰れてしまったらしく、建物はほったらかし状態で置かれ、
今では近所の子供達のいい遊び場になっていたのだ。
「こんな所で、何の話をするって言うの?」
段々不安になってきた僕は、鉄男くんを呼び止めるように声を掛けた。
「そうだな、この辺でいいか」
僕は何がこの辺で良いのかは分からなかったが、これ以上歩かなくて済むなら何でも良かった。
「真、お前、何であの洋館の場所を知っていたんだ?」
その言葉に、僕は昨日の光にーが僕を疑った顔を思い出した。
「あ、いや、今日鉄男くん、学校を休んだじゃない? 昨日僕に「あの洋館に行く」って言って。
だから、もしかして学校を休んだ理由に洋館が関係してるのかなぁ〜って思って、
クラスの友達に聞いたんだよ、あの洋館の場所を!」
僕は慌てて喋ったので、息が切れてしまった。
「・・・ほう」
そんな僕の様子に、鉄男くんは怪しげな視線を向けていた。
しかし、僕は本当の事を言う訳にはいかなかった。
だって、今まで僕達が仲良くワイワイ話してきた悪魔についての内容が、
実は
人殺しの道具になる程のとてつもない危険な力を秘めていたとは思わなかったからだ。
しかも、この「悪魔の力」を更に強くするソウルスターを求めて、
いつ襲われるかもしれない毎日を送る様になってしまったのだ。
そんな不幸な出来事に、僕は鉄男くんを巻き込みたくなかったのだ。
だから彼が学校を休んだと聞いたとき、僕はとても心配だったけど、
でも、彼は元気な姿で今、僕の前で壁に寄りかかって僕を見ている様子からして、
単なるズル休みだったのかな?と、取れなくもなく、ひとまずは安心したのだった。
・・・が、そんな僕の心配事もお構いなしに、鉄男くんは話を進めてきた。
「なる程。 ・・・で、真、何を隠している?」
今まで笑顔で僕を見つめていた鉄男くんが、急に真剣な眼差しで問い掛けてきた。
その視線に、僕は一歩下がってしまった。
「な、何にも隠してなんか・・・無いよ?」
今までの鉄男くんの様に、僕はおどけて笑ってみた。 上手くは出来なかったけど。
だが、鉄男くんは僕を逃がしてくれる様子はなく、更に厳しい表情で僕を見つめてきた。
「ほ、本当だよ!
親友の鉄男くんに、僕が隠し事をする訳なんかないじゃん!」

僕は精一杯の声で言い放つ様に弁解をした。
そんな態度に鉄男くんは満足してくれたのか、苦笑気味に笑った。
「なる程、
「親友」ね」
クスクスと笑う鉄男くん。 そんな彼を見て、僕もつられて苦笑いをする。
「そうだよ。 鉄男くんは、僕の唯一の「親友」さ! そんな君に、僕が嘘をつく訳ないじゃん!」

もうどうでも良かった。
彼がこの「悪魔の力」から遠ざかってくれるのなら、僕はどんな嘘でもつく決心がついた。
例えこれからも虐めが続いても・・・。
例え彼が助けてくれなくなっても・・・。
例え彼が僕の「親友」じゃなくなっても・・・。

でも、やはり悪魔は僕の近くにいるようで、見えない運命の輪とやらを操って、
僕と鉄男くんとで遊んでいるのではないか?と、疑う言葉を、僕は鉄男くんの口から聞いた。
「お前のその左腕のアザ、悪魔を倒したから出来たのだろう?」
それは、質問なのか確認なのか一瞬区別がつかなかくて、僕は思わず黙ってしまった。
そんな僕に、彼は更にキツいパンチを浴びせた。
「お前、人を殺した・・・な?」
ニヤリと、まるでこの前戦った阿久津と言われた男を思い出すような笑みで、
鉄男くんは僕を見い放ったのだった。
「そ、そんな! 僕は人を殺してない!!
それに、あれはあいつが悪かったんだ!!
 だって、姫野ちゃんを・・・」
そこまで言った時、僕は気が付いた。
「何故、鉄男くんがそんな事を知っているのか」を・・・。
その瞬間だった! 彼が手にした鋭く光る大きな武器で、僕を攻撃してきたのは!!
いや、それは・・・
「お?! 良く避けたな」
大きく振りかぶった彼の攻撃を完全に避けきれなかった僕は、
左腕に二本の傷跡を受け、そのまま後ろに倒れこんでしまった。
そして、僕は見てしまった! 見たくない物を・・・。
「真、恥じる事は無いんだぜ。 俺達は」
そう言って、鉄男くんは僕の前で腕を広げた。
その腕に彼の腕の面影は何一つ無く、まるでセメントにでもつっこんだ様な灰色をしていた。
そう、
彼の腕は悪魔の腕に変わっていたのだった・・・。



To Be Continued・・・



最初にもどる


神の左手 悪魔の右手