第17話 「接触」
「「力」・・・」
僕は落ちてくる天井を見つめながら呟いた。
力とは何か?
それは単純に「腕力」だったり「体力」だったりする。
しかし、他にも「力」はあるのだ。
それは、「想像力」だったり「精神力」というものある。
そう、「力」とは一定ではないのだ。
そして、僕が求めたのは、大好きな姫野ちゃんを守りたいが為の「力」だった。
それは、虐めから僕を助けてくれる彼女に頼らない為に得たかった「腕力」だったのか・・・。
それは、「好きだ」と一言言う勇気が欲しかった為に得たかった「精神力」だったのか・・・。
それとも、僕自身が生まれ変わる為に得たかった「成長力」だったのかも知れなかった・・・。
そう、「力」とは常に一定ではなく、僕の意識一つでいくらでも見つかるものなのだ・・・。
そして思った。
『重そうな天井に、僕と鉄男くんは潰される。 潰されない為には・・・』
スローモーションで落ちてくる天井を見つめ、僕は一つの回避案を考えついたのだったが、
非情にも重く大きな天井は、僕と鉄男くんの上に覆い被さり、
さき程以上の衝撃が廃病院に広がったのだった。
「真!!」
姫野ちゃんが僕と鉄男くんの事を見てか、大きな声で叫んだ。
それは、僕と鉄男くんは重い天井に下敷きになった瞬間だった・・・。
僕の手、「ベルセルク」の手が鈍い光で輝いていた。
その輝きは、あの重くて大きい天井を支えていた。
そう、僕の腕、「ベルセルク」の腕が本当の意味で「覚醒」したのだ。
「真・・・、それは」
僕の足元で、血の気の引いた鉄男くんが呟いた。
恐らく彼は「死」を覚悟したのだろう。
でも、彼は助かった。 僕の持つ「ベルセルク」の腕の能力で・・・。
「大丈夫、僕はこんな天井なんかには負けない」
でも、ちょっとだけ僕の額には冷や汗が流れていた。
それはそうだ。 僕だってこんなに上手くいくとは思わなかったのだから。
僕は軽くなった天井をバランスを崩さない様に持ち上げて立ち上がり、
鉄男くんや姫野ちゃんに当たらない位置まで投げつけた。
「さあ、大丈夫だった?」
汗を拭き、僕は精一杯の笑みで鉄男くんの手を引いた。
「ああ、なんとか・・・」
「良かった」
足がもつれながらも、何とか立ち上がった鉄男くんと、僕は硬い握手をした。
「真! 大丈夫だった?!」
瞳一杯に涙を貯め、姫野ちゃんは僕達の所まで走ってきた。
「うん、僕達は大丈夫だよ。 鉄男くんがちょっと足をひねったけどね」
「本当? 真に何かあったら私・・・光一さんになんて言えば・・・」
そこまで言って、姫野ちゃんは泣いてしまい、後まで言葉が続かなかった。
ここで出てきた彼女の言葉、「光一さんに・・・」とは、
今まで僕と鉄男くんとの戦いを見て動揺し、恐らく無意識のうちに口から出たのだろう。
普段、僕に何かあった場合は、彼女はまずその原因について僕を問いただし、
僕に否が合った場合は僕を、相手に否が合った場合は相手を怒るのだ。
しかし今回の事は彼女が経験のした事のないものばかりで何一つ出来なく、
結局ただ見守る事しか出来ないでいたのだ。
その為、今まで我慢していた胸のうちのものが、ここに来て一気に溢れたのだろう。
「あ、ありがと、そこまで心配してくれて」
そう、僕は言うのが一杯だった。
「それにしても、一体どうやってあの天井を支えたんだ?」
困った表情で姫野ちゃんを慰めている僕に、鉄男くんが助け舟を出してくれた。
「ああ、あれね」
僕はウインクして説明を始めた。
天井が落ちてきたあの時、僕は悪魔、「ベルセルク」の声を聞いた。
・・・我の名はベルセルク。 力を司る者・・・
そして、その声は言ったのだった。
・・・我の名はベルセルク。 全ての力を支配する者・・・
そう、「全ての力を支配する」・・・と。
「だから、僕は「力」を支配したのさ。 「重力」をいう「力」を・・・」
そう二人に説明をし、僕は「ベルセルク」の手を握ったのだった・・・。
「え? じゃあ、その悪魔の腕って、重力を操れるの?」
ようやく「悪魔の力」を理解してくれた姫野ちゃんが、僕の持つ「ベルセルク」の腕を見、
恐々ながらも僕に聞いてきた。
「いや、ちょっと違うよ、姫野ちゃん。 「力」を支配するんだよ」
「どういう事?」
「つまり、この悪魔、「ベルセルク」の腕の持つ能力は、いろんな「力」を支配する。
・・・で、僕はさっき落ちてきた天井の持つ重さ、つまり「重力」を奪ったのさ」
「なる程、「力を支配する」・・・か」
さすが僕の親友、鉄男くんだ。
一回説明しただけで、この腕の持つ能力の凄さに気が付いたらしい。
「え? じゃあ、この悪魔の腕があれば、真は虐めに合わなくなるの?」
「まあ・・・、そうかな?」
姫野ちゃんはまだ動揺している様子で、どうも焦点の違う捕らえ方をしているけど、
でも僕の言いたい事はなんとか分かってくれたらしい。
「これじゃ、俺の持つ「ギガンテス」なんか顔負けだな」
「え? そ、そうかな?」
妙に恥ずかしくなった僕は、思わず頭をかいてしまった。
そんな瞬間だった。 突然彼が現れたのは。
「へぇ〜、凄いね、その「ベルセルク」の腕ってやつは」
「え?!」
ビックリした僕達は、一斉に声の聞こえた方を見た。
すると、そこには金髪の、大体小学5、6年生ぐらいに見える少年と、
そのすぐ後ろにひっそりとたたずむ、黒く長い髪を持つ綺麗な女の人がいたのだった。
「「力を支配する」能力かぁ〜。 僕の持つ「ハウントピクシー」なんか相手にならないなぁ〜」
ニコニコと笑いながら僕達の所にやって来た少年は、その小さな手で拍手をしていた。
「誰だ? お前?」
「僕? 僕かい?」
鉄男くんが少し警戒しながら目の前の少年に聞く。
「僕の名前は、マリオ・イセルタル。 そして、僕の後ろにいるのが沙羅だ」
簡単に名乗った金髪の少年の左腕に、僕は見覚えのあるアザを見つけた。
「ソ、ソウルスター・・・」
驚いて目を大きくした僕に、マリオと名乗った少年は確認するように自分の腕のアザを見た。
「ああ、これね? 何とかここまで集まったよ」
そのアザは、4つの星型を腕に作っていた。
「じゃあ、君もデビルハンズ?」
「ああ、そうだよ」
その返答に、僕は嫌な予感がした。
「その・・・、君は何をしにここに来たの?」
「僕かい?」
その僕の問いに、マリオはクスクスと笑う。
「君達の戦いを見に来ただけだよ」
「ぼ、僕達の、戦いを?」
「うん」
その返事の裏に、もちろん別の意味を含んでいると僕は本能的に理解し、
無言で姫野ちゃんを下がらせた。
「・・で、どうだった?」
その声は鉄男くんだった。
「う〜ん、まあまあだったかな?」
それは、まるで前人気の高かった映画を見て、
少し肩透かしを受けた時にでも出そうなセリフだった。
「じゃあ、今度は面白くなる様に、俺と戦うか?」
ズズっと、砂埃の積もる床に足を滑らせ、鉄男くんは構えを取る。
「ええ?! 駄目駄目、僕なんか全然弱いんだから」
そう言いつつも、彼は笑っていた。
「でも、僕的にはもっと君達に戦って欲しかったな」
「何?」
「もっと激しく、もっと熱く戦ってくれれば、僕もここに来た甲斐があるってものだけど・・・」
ここまで言い終えて、僕は確信した。
彼は・・・「敵」だと。
To Be Continued・・・
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神の左手 悪魔の右手