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第23話 「再会」



「え?! 元気くんが変な御婆さん達に捕まったって?!」
元気くんとの約束、「飛行機を見に行く」計画を立てた僕は、
彼の円満な笑みを見て満足げに帰宅の途に着いたのだったが、
家で待っていたのは、血相を変えた母と元気くんのお母さんからの助けを求める電話だった。
「そ、その電話って、いつあったの?!」
「い、今さっきだけど、一体何のよ? 光ちゃんもお父さんもいないから、どうしようかと・・・」
そう言って動揺する母を見ていた僕の左腕のアザがうずき出したので、
袖を巻くって見てみると、そこから薄く、だが熱い僕の血が流れていたのだった・・・。



「すみません!! 大文字病院へお願い!!」
血相を変えた母から元気くんの危険を察した伝言を聞いた僕は、
大慌てで大通りに出てタクシーを捕まえて乗り込んだ!!
本来、徒歩で三十分を掛かるところを、タクシーだと五分ぐらいしか掛からなかったが、
その五分間が、今の僕にとってはとても長く感じたのだった。
たしか、お母さんは言っていた。
「元気くんが、変な御婆さん達に・・・」、と。
変な御婆さん・・・。
その言葉を聞いた後に出た、左腕にあるソウルスターのアザ痕からの血が、
僕の心の中に、深い不安の影を作っていた・・・。

「病院内は、走っちゃいけません!!」
「ご、ごめんなさい!!」
猛ダッシュで病院の廊下を走り抜ける僕に向かって、看護婦さんの注意の声が聞こえたが、
一応僕は謝り、でも走る事を止めずに元気くんの居る病室まで飛び込んだ。
「ああ、真君・・・」
そこには、手足をロープで結ばれて倒れこんでいた元気くんのお母さんがいた。
「だ、大丈夫ですか?」
その光景を見て、僕は慌ててお母さんのロープを解く。
「げ、元気が・・・、元気が変な格好をした人達に連れ去られて・・・」
「変な人達?」
涙をボロボロと流しながら僕に訴えるお母さんを落ち着かせ、
僕は一つ一つロープを解いて周る。
「そうなの。 あの後、元気と二人でここに戻ったら、ここにあの変な人達が居たの。
そして、
真っ黒な仮面を被った男が私を羽交い絞めにして・・・」
真っ黒の仮面の男?
僕の予想・・・、いや、予感として、恐らく「変な御婆さん」とは、
僕があの怪しげな洋館で会った、あの「悪魔の力」をくれた御婆さんだと思う。
そう、僕の左腕にあるソウルスターが告げている様に感じる。
だけど、どうして元気くんなんかをさらったのかは分からない。
しかし、元気くんのお母さんを縛った真っ黒の仮面を被った男って・・・。
やはりその男も「デビルハンズ」だろうか?
「それでお母さん。 その人達は何て言ってました?」
ようやく少しだけ落ち着いたお母さんは、涙を拭いて僕に言った。
「確か、
「君に大空へ羽ばたく、大きな翼をあげよう」とか何とか・・・」
「大きな翼?」
この言葉を聞いて、僕は確信した。
やはり、あの時の御婆さんだ。
すると、元気くんをさらった理由は、彼に「悪魔の力」をあげる為か。
でも何故に元気くんだったのだろう?
他にも「悪魔の力」を欲しいなんて言う
馬鹿な人はいるだろうに・・・。
「・・・で、その人達は、元気くんを何処へ連れ去るか言ってました?」
ロープを解き終えた僕は、お母さんに肩を貸して立ち上がらせた。
「ええ。 ここじゃ狭いから、屋上へ行こうかって」
「屋上か・・・」
僕は独り言を呟き、一人、屋上へと走った・・・。



「はーはー・・・、あれ?」
屋上へ出る扉の前までやって来た僕は、扉を開けようとドアノブを回したが、
どうやら向こう側から何か細工をされているらしく、ドアノブは空回りするだけだった。
「開かない」
やはり、この向こう側で何かが行われているのだろうか?
そう思い、僕はドアに耳を当てて聞き耳を立てた。 すると・・・
「さあ、名前は書けたね。 良い子じゃ」
「うん、僕名前ぐらい書けるよ!!」
そこからは、元気くんの興奮する声と、聞き忘れないあの声が聞こえてきた。
そう、あの洋館で「悪魔の力」をくれた御婆さんの声だった。
「じゃあ次にこの大きな翼、これを元気君に付けてあげるから、
ゆっくり両腕を上げてくれるかな?」
「うん!!」
ま、マズイ!!
このままじゃ元気くんが僕と同じ目にあっちゃう!!

それは駄目だ!!
こんな「悪魔の力」、あんな可愛い元気くんが手に入れてはいけないんだ!!
こんな「悪魔の力」せいで・・・、僕は・・・、僕は・・・。
そう思った僕は、元気くんを救う為、
皮肉にも「悪魔の力」を使うのだった。
「力を貸してくれ!! 大悪魔、「ベルセルク」よ!!!」




僕の心奥深くから、重く広がる声が聴こえてくる・・・
・・・我の名はベルセルク。
力を司る者にして、全てを破壊する為に生まれし者・・・
「ベルセルク! 僕に、僕に力を貸してくれ!!
僕は、僕はあの人達を止めなくてはいけないんだ!!」
・・・ほう。 それは、お前のどんな感情から呼ぶ声なのだ?・・・
「感情?」
・・・そうだ。 我は全ての裏切り者を殺し尽くす復讐者。
その我にして、お前の今の感情は相反する・・・
確かに、あの初めて戦った「マキュール」とか言う悪魔のと戦いでは、
姫野ちゃんを傷つけた事への憎しみの感情によって「ベルセルク」の力を借りた。
次の鉄男くんの時は、多分「ベルセルク」自身が僕に力を貸してくれたのだと思う。
だって、あの御婆さんが言っていた。
「この大悪魔「ベルセルク」は、数多くの敵と味方を殺した」と。
だから、目の前にいた悪魔(てき)に対して自ら力を貸してくれたのだろう。
しかし今回、僕が彼の力を借りるにあったっての理由は、
彼にしてみれば、
「ただ元気くんを救う為」なのだ。
だから、「ベルセルク」は渋っているのだろう。 なら・・・。
「こうはどうだ! あの「悪魔の力」をくれた御婆さんが憎い!!
その憎い御婆さんが、このドアの向こう側に居る!!
その御婆さんを倒す為、この僕に力を・・・、彼方の力を借りたいんだ!!!」
これならどうだ?!
そう思っていると・・・、
・・・分かった。 我はそのお前の憎しみを買おう・・・
そう言って、彼はこの僕に力を貸してくれたのだった。



「はあぁーーー!!!」
ようやく「悪魔の力」借りた僕は、気合を入れて目の前のドアに、
思いっきりの力でパンチをお見舞いした!!
物凄い轟音と共にドアは吹き飛び、そのままの殴った勢いで僕も屋上へ踊りこんだ。
「げ、元気くん!!」
「あ、あにー?」
元気くんが驚いた様子で僕の方を向いた。
良かった。 彼の腕はまだ
「彼の腕」だった。
「ほお、お久しぶりじゃな」
そう言って顎(あご)を撫でる御婆さん。
やはりあの時の御婆さんだったか。
あの時を同じ黒いローブを被り、猫背で僕を見る目つき。
何一つ変わっていない・・・。 いや、一つだけ変わっていた。
それは、話口調だった。
「どうじゃな? その「悪魔の力」は?」
「冗談じゃない!! こんな・・・、こんな腕・・・」
僕は握りこぶしを作りうつむく。
「こんな腕の為に、僕は・・・、僕は・・・」
そこまで言ったが、次の声が出なかった。
「でも使ったのじゃろ? 
「親友と戦う為」に」
そう言ってニヤリと笑う姿は、化け猫の様な姿を思わせる。
「し、知って・・・」
「ああ、知っているさ。 何しろその腕をあげた本人じゃからのぁ〜」
「え?! 本当?!」
「ああ、本当じゃよ」
絶句する僕に代わって、元気くんが歓喜の声を上げる。
「じゃ、じゃ、僕はお空を飛べるんだね?! 本当なんだね?!」
そう興奮しながら何度も御婆さんに聞き返す元気くん。
そんな元気くんに、あの御婆さんは優しい笑みで計画を進める声を掛ける。
「そうじゃ、だからさっさと済ませようか」
そう言って僕の方を見る。
「早くしないと、あそこのお兄ちゃんが
この翼を横取りしようとしているからね
その言葉の威力は強力だった。
「え? 駄目だよ!! これは僕のモノだ!!!」
そう言って、元気くんは鋭い目つきで僕を睨んだ。
「ち、違うんだ、元気くん!! 僕は!! 僕は!!」
だが・・・
「あう!!」
「・・・」
戸惑いながら弁解していた僕は、物凄い力で後ろから羽交い絞めされたのだった。
忘れていた。 もう一人の存在の事を・・・。
「放せ!!」

「・・・」
僕は何度も何度も振りほどこうと腕を振ったが、無言で男は僕を押さえつける。
「良い働きじゃ、
「サイレントマスク」よ。 そのままうるさいのを抑えつけておいてくれ」
「・・・」
「サイレントマスク」と言われた男は、無言の頷きを返し僕を押さえつける。
それにしても、何て腕力だ。 ビクともしないなんて・・・
「さあ、じゃあこの翼を元気君にあげようか」
「うん!!」
そう言って差し出された彼の白くか細い腕。
あれが、あれが悪魔の腕に変わってしまう!!
だけど、僕はこの押さえつける腕を振り解けない!!

「さあ、目をつぶって・・・」
「うん・・・」
御婆さんの言う通りに目をつぶる元気くん。
そして、その彼の両腕に狙いをつけた御婆さんは、
何処からか出したあの大きな鎌を振り上げる。
僕があの鎌をこの「ベルセルク」の腕を結合するにあたって見た時よりも、
今見ているあの鎌の方が冷たく、そして大きく見えたのは、
今まで経験した怖く悲しい体験のためだろうか・・・。
「げ、元気くんーーー!!!」
その悲鳴とも取れる僕の声が虚しく夏の夕暮れの空に響いた時、
元気くんの両腕は宙を舞ったのだった・・・。



To Be Continued・・・



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神の左手 悪魔の右手