98年 はるの「現在地」
どこかのロック雑誌に載っていたピーズのはるのインタビュー
見開きに言葉だけがばーっと印刷してあった。
ピーズについての解説も何も無く、ただはるの言葉だけ。
そんなに知名度が高いわけでもなく、
さらに活動休止してしばらく経っているバンドのインタビューとしては
実に不親切きわまりない編集、ともいえる。
だけど、気持ちはわかるのだ。
もし、ピーズを知らない人でも、その言葉を読めば何かが伝わるだろう。
ひとつの作品のような言葉。
いつものピーズの作品のように情けなく、
そして厳しく、痛々しい、言葉。


今は別にしんどいわけじゃないんだ。バンドやってた方がもっとしんどかったから。
今はな、仕事覚えるだけで精一杯だから、楽だよ。全然頭使わないもん。覚えるだけ。
バンドをやるってのはさ、考えなきゃなんないから。
なんか、いろいろ無茶したりして、その時に何を思うかとか、そういう感情を利用して、
ムリヤリ曲にしたりとかさ。脳ミソの片方ばっかり使ってるような感じ。
 
でも今は、外から教わる事ばっかりで「自分とは何ぞや」みたいなことって、全然考えないからな・・・今は。
ただ、働いて、「どれぐらい俺は犬なのか」っていうのを実感してるよ。
わざわざ絞り出す必要は一切ないんだよ。すっげぇー楽だよ。体は疲れるけど、すっげぇー楽だ。
あと1年くらいやったら、オラもいい加減さぼるのやめようとか思うかもしんねーけど。
 
今も今で、オラはがんばってんなーって思うんだ。店長とも喧嘩してるし(笑)
本当にさぼったら、もう店長とも喧嘩しないで「給料もらってるんだから、仕事は仕事だから」とか言ってんだろうけど。
ここでも、言いたいこと言ってるよ、オラは。
 
だけど、ピーズのお客さんがたまに店にきて「ピーズはもうやらないのですか」とか聞かれると、
「オラ、べつにさぼってねーのになー」って思う。
ありがたいとは思ってたんだけどね、オラのライブにお客さんが来てくれるのは。
 
でも、いつも自信なんかないよ。オラには、知らない人の前で調子に乗るような自信なんか、全然ないよ。
ライブの最中、オラは、こんなことが起こるわけ?みたいな偶然が・・・・たまたま遭遇してしまった景色のような、そういう気分だったよ。
 
だって、オラは」「みんな踊れ」なんて曲はやってないじゃないですか。
「みんな楽しもうぜ、朝まで何もかも忘れて踊ろうぜ」なんて、そんなのやってない。「なんもかんも忘れて・・」なんて、
そんなのは許さなかった、オラは。全部ほじくり返してほじくり返して、根に持って。
やっぱ女々しいし。じゃねーと嘘んなっちゃうから。
 
オラ、偉そうに言えねーもん。「パッとやろうぜ」なんて・・・・・無理だよ。
オラは仕切りたくねーよ。幹事とかいやだもん(笑)。盛り上げ役とか嫌だもん。
だから、オラは本当は、バンドなんかできねんじゃねえかとか思ってたよ。
もともとちょっと器用なだけで、やれてただけだよ。
自分のなかに本当は音楽なんかなくて、たまたまベースの弾き方とかを知ってたりとか、メロディーの創り方を知ってたりとかしただけで。
 
バンドをやれるような人間ではないんじゃねぇかって、そんなことをずっと考えてた。
何か純粋に音楽が好きだった頃とは変わっちゃってたんだよね。今でも、でっかい音出せたら気持ちいいだろうなぁってのはあるよ。
でも、わざわざ自分の中から曲創っていうのが、なんか嘘っぺーんだよ。
オラは、人に聴かせるような必要なんかねーだよ・・・・自分が創った曲を。
またバンドをやる気?バンドとかって、やる気とかでやるんじゃねえと思う。やりたくなった時にやるんじゃねぇのか?
「貴様やる気あるのか!ないのか!」とかそうじゃないべ。
だから、やりたくなったらやるよ。じゃぁ・・オラは今、やりたくないっちゅうことなのか。そうか。
でも、やりたくないってわけでもないけど・・・・仕事しなきゃ。バンドって仕事じゃないもん。 
 

(平成10年10月19日〜20日深夜、池袋にて)


不器用に生きていた時期が、確かにあったはずだ。
立派な事を口では言いながらも、日々の暮らしの中では何にも戦う事ができずに、
それなりに真剣に自己嫌悪なんかをやりながら、
行き詰まると
酒やその他いろいろな物でごまかしていた時期。
 
そんなに自分を追い詰めるなよって、いつも思ってた。
その頃も。
もっと楽にやればいいのにって。
僕らが、あきらめて引き返してしまった場所
その場所を、はるかに越えて、その言葉は歌われていた。
今も
あいつは歌っているのだ。
 
 
本当のことを言えば
自分は
卒業したつもりでいた。
 
「格好悪いことを、突き詰めたって、結局格好悪いままだなぁってさ」
 
そんなことはない。


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