できるだけ
意味のない電話が欲しい
なんでもない一日を
ぼんやりながめたドラマなんかを
浮かぶままにただ連ねていく
話 したかったんだ
そんな気持ちだけ伝わってくるようなそうしたら僕は
おもいっきりどうでもいい手紙を返すよ
昨日見た夢の話や
幼い頃の友だちを語って
レポート用紙を埋めていくんだ
手紙書きたかったからさ
その想いだけ
君に届けるよ中身がないことを
気にすることはないんだ
唄い出す気持ちがあるのなら
その気持ちだけ唄っていればいい
君に届きたい僕
それだけが届けばいい
たぶんそれが
一番のメッセージ土曜の午後なら自転車で
遠くまで漕ぎだしたい
たどりついた場所がきっと
目的地になるはずだから
一緒に走っちゃうんだ 日曜の昼下がりの定番 マラソン中継 必ずいるのさ 追い駆ける少年 いいなぁ 集団で 一人で 自転車で 走っているんだ 100Mぐらいであきらめちゃうけれど 瞳はマジなんだ 俺のほうが速いんだぜ 本気で思っている瞳なんだ テレビには映らなくても 僕にはわかるんだ いいよなぁ 通り過ぎていくものを 追い駆けたいのさ 目の前を何かが 駆け抜ける その時に 旗を振るだけじゃぁ 退屈すぎるよ 満足できないよ ピ−スサインは忘れないけれど 全力で疾走しているんだ 動機は不純だけれど 走りだす気持ちは本当なのさ 走りだそうか 走りだそうぜ
バイトやめること きのう主任に話したんだ だいっきらいな職場だったから もちろんせいせいしたんだけれど あんまりあっさり許されたから なんだかすこし 寂しい気持ちにもなったのさ ちょっとは引き留めろよお前 なんて 言いたくなる感じにさ 勝手な話なんだけどね テレビのニュ−スを見ていたら 臓器移植してみたくなったんだ 僕の肝臓と君のやつを交換してみたいのさ もしそれがうまくいったなら 次は肺にも挑戦してみたい 適応力はあるつもりだから 新しい環境にもたぶんすぐなじめるよ あしたからまた 違う場所を探さなくちゃね 転校生のような顔をして どこかに溶け込んでいかないとね 君のかわりならば いくらでもいるのだから すこし残念だけど そんなに困ることはないと思う 君にふさわしい場所だって 他にたくさんあるはずだから 心配することもないね ここでお別れしよう
テレビは恐ろしいと政治家が言った 何気ない仕草やわずかな表情の動きで 意図しないものまで伝わってしまうから テレビは怖いんだって 悪党なんて言われている割に あんまりかわいいことを言うもんだから 僕はあやうく好きになってしまいそうだった 唐突に 昔出した手紙を見せられて 人質を握られたように僕は おとなしくなってしまったんだ たしかにそれは僕の筆跡なのだけれどけど トンチンカンな言葉とでたらめに飛躍する文脈は 伝えたい想いを裏切って ほとんど本人にも読解不能で 思わず僕は 君ごと焼却してしまいたくなっている それでも君は嬉しかっただなんて言うんだ 言葉なんかじゃないんだって 平気な顔をして君が言うから どうしよう 否応なく伝わってしまう自分が怖くて いつも無口になってしまうけれど そんな沈黙は何よりも饒舌だから 僕はあわてて意味のないことしゃべりだすんだ あの人に言おうか だいじょうぶだよ 君の純粋も屈折も混乱も きっとそのまま伝わるはずだから そんな心配はしなくたっていい むしろ問題は君自身 いつだって そう問題なのはいつだって ね
列車はいつだって 前に進んでいるはずなのに 後ろ向きのシ−ト座ったら 全速で過去に向かっているみたいだ 無数の分岐点を思って ありえたかもしれない人生と戦っているけれど そんな時はもう 負け始めているのだ ほんとうに大切なことはひとつなんだって 誰かが唄っている だけど 切り捨ててきたものに 責められているのは 想いが足りないせいなのだろうか これさえあればいい というもの それさえあれあればいいと思う時もあるけれど 食べ物があふれているのなら 手当たり次第というのも 悪くないのかもしれない 抑圧を知らない僕たちは ほんとうの自由も知りえないんだと 8月のラジオが憂い顔をしているけれど そんなことはもうどうでもいい気がする あなたの痛みは あなたが癒すものだ 中途半端に傷付けられた ガラス玉だから 曖昧に輝いていよう 切れ味の悪い刃ならば たちの悪い痛みを与えるのだ ずっと昔から始まっている 目的もわからないままに 僕たちはピストルの音を聞いた とまどいながら走りだして いまもとまどい続けている 走りだす方向がいつだって前なのだから たどりついたところがゴ−ルなのだから 進むことに間違いはないはずだけど 後ろ向きのシ−トに座って僕は 西に向かっている 遠ざかる景色に未練はあるけれど とりあえず 誰かに会いに行こうと思っている
「うたはかなしみを忘れさせるためではなく かなしみを忘れなくさせるためにある」 君の部屋に向かう電車に揺られながら 思い出しているのは、そんな言葉 いつかもこんなふうに 君は僕を呼んだ 僕はその時もおなじような気分でいた 自分のことなら たぶん我慢する 他人の話なら 気にもしないけど 君のかなしみに 僕は口ごもる 言葉になれない吐息のあいまいさは 嫌になるぐらい 僕たちに似ている 忘れればいいだなんて言えない 思い出したって何も変わりはしないけど 忘れたい言葉も 忘れられない想いも 今は僕が預かってあげるから 僕は詩を書いている それで変わる事なんて 何も無いけれど むしろ都合の良い思い出に変えないために できるだけ正確に輪郭を描いている 君もいつか僕がいらなくなる その時まで僕は君のそばにいる 君を僕がおぼえている 君が忘れたいその瞬間を 君が忘れたい そのいきさつを全て きっと僕がおぼえていてあげる
どうしよう
とんでもなくすごい奴でも 全然ダメな奴でもなくて 自分は そこそこいけるってぐらいのレベルなんだよなぁって 気が付いたときにはどうする? とても がっかりする? 友達の顔を思い浮かべて なんだかホッとする? ちょっとだけため息をついて いつもより早く眠ることにする?
ナビゲーター
3階の音楽室から聞こえてくる リコーダーの合奏 「コンドルは飛んでいく」 廊下を歩いていた 数学の先生が わけもなくかなしい気持ちになって 一瞬遠くを 見つめる瞳になった 取り返しのつかない間違いなんて どこにもありはしないはずなのに
息子
なにか物事が うまくいきすぎている時には 思いがけない災いが待っているものだから そんなに浮かれていてはいけないよ 母親はそういっていつも 有頂天になる息子をたしなめていた あまり期待しないこと 何事に対してもね たいていのことは 思い通りいかないものと覚悟していれば 裏切られることも がっかりすることもないから と いつだって 何でもないような顔をして おぼえているのは後ろ姿 すこし背を丸めて 食器を洗っていた後ろ姿 バランスはいつも よくない方にすこし傾いていて だけど それを崩してしまったら もっと ひどい事になってしまうかもしれないから すべてがそのままであるように 変わらずにあり続けることだけのために 費やしていくことを いつか選んだのだろう もう あまり揺るがない そんなに驚くこともない そして悲しむことも 何を思い出しても 何を経験しても 微笑んでいられるように 私はなった だけど それで本当にいいのか お母さん あなたのことが 嫌いなわけではないけれど
追伸
電話で話したら なんだか弱音ばかりになってしまうけど 手紙で書いてみたら 今度はちょっと格好良すぎるね 誰にも話さなければ こんな気持ちもいつかは忘れるけれど どこかにとどめておかなければならないような そんな気持ちが僕をあせらせて ごめんなさい もうすこしだけ つきあってほしいんだ 笑える話だけ つなぎあわせてみれば いつまでも君と 笑っていられるよ 沈んだ出来事を連ねて話したら きっと君は慰めてくれるんだろう だけど僕のこの毎日が ほんとうのところ どうなのかなんて 聞かないでほしい 僕にはわからないんだ 君がいないところで僕は 笑うこともないし 泣いたりもしない そんな時はただ 君のことを考えて それでどうにか人間らしく 僕は振る舞えるんだよ そんなことをやっぱり手紙に書いて 宛名を書こうとして少し考えて 結局あきらめて ほったらかしにして もうすこし沈んだ 気持ちになったんだ 心配かけたけど もう大丈夫です ありがとう 君がいてくれて ほんとうに 助かりました