こんなふうにしてダメになっていった人を 何人も知っている わけではないが こんなふうにしてダメになっていった自分なら 何人も知っている あの時も あの時も 「ああ、こんなことしてたら絶対に後悔する」って 思いながら 思いながら 同じ道を通って ダメになっていった もうその道は けもの道 どころか 県道レベルにまで整備されていて <目的地まで あと15キロ> 標識まで立っている あとどれくらいでダメか 大体わかる 今また僕は 県道の入り口に立っていて ある意味 僕もすごい
木を治す人に会いに行こう 木の病気を治す人に 会いに行こうと思うんだ その人は知っているはずだ 僕の知らない言葉を その人は教えてくれるはずだ 僕たちの知らない 話し方を 僕は質問する 「一本の木はどこまで伸びていけるの」 「一本の木は どこまで伸びていきたいの」 「一本の木は どこまで伸びていかなくちゃいけないの」 まわりは死んだ木ばっかりだ 内側も外側も 死んだ木で埋め尽くされた 林ばかりだよ もう手遅れですか もう 手遅れ なんですか (太陽の方向を 探しなさい それさえわかれば たぶん なんとかなる) 死にそうな木よ 死にそうな僕の木々たちよ もうすこしだけ待ってほしい もうすこしだけ 生き延びていておくれ 僕は林に戻る 新しい知識と経験を手に入れて 僕は僕の林に戻る 失ってしまった 情熱をもう一度手に入れて 僕が 自分で治す
言葉を書くのなら 殴り書き じゃなければ ダメだ 僕らの新しい言葉を書くのなら 走り書き じゃなければ 絶対にダメだ 何かを殴りながら 言葉を書かなくちゃダメだ どこかへ全力で走りながら 書かないとダメなんだ そんな 書くことだけを目的にして アレコレ考えて まとまったように見えたって そんなの 全然おもしろくない きれいに書けたって ただのキネンサツエイだ 思い出を作るための 書くことは 目的じゃない 届かないものを 殴り続けるための ひとつの手段だ 届かないところへ 走り続けるための ひとつの 手段だ 僕らは走る 僕らの言葉を 書き飛ばしながら 僕らは殴る 僕らの言葉を 書き飛ばしながら 自分の言葉で 自分を立たせる 自分の言葉で 自分を走らせる そう決めたから 自分の言葉に 自分がしばられたり 自分の言葉に 自分が殴られることも それもあるけれど 印刷された言葉を信じない 僕らの 仲間たちよ 書き飛ばせ 僕らの新しい言葉を 書き飛ばせ 僕らの 新しい言葉を そう 僕らの新しい言葉を 書きながら 飛べ
モーニングコールが 作動しなかったのは 08時15分 じゃなくて 80時15分 にセットしてしまったから いいよ 80時15分まで 僕は眠っているよ
太陽が気持ちよく照っているだけで 風が優しく吹いているだけで ただそれだけのことで 君は笑っているんだね 君の笑顔が好きなんだ 何かを笑うんじゃなくて 誰かを笑うんじゃなくて ただ自分のなかから にじみ出てくるんだね 君といる時の自分も好きになれるんだ どこかの公園で 自動詞のように君が笑って つられて僕も笑った 意味もなく笑っていたよ 意味なんか忘れて 僕ら笑っていたんだ もっともっと カラッポになれたらいいね そして君を入れられたら いいのにね
「こいつも すぐに消えるよ」 いつだったか テレビのアイドルを見ながら はきすてたやつがいた 今になってみれば いなくなったのは あいつのほうだ
(それとも僕が あいつから消えたのか)
彼女は 26歳で死んだ 死んだ彼女の趣味はホームページ作り アクセスカウンターは21354 そんでまだ その数字は増え続けている 気のあったメール友達が たくさんいたみたい お気に入りのページだって たくさんあったみたい 「どうしたの 最近見ないけど」 そんなメールが 今日も彼女のフォルダに届く たくさんの人が 今も 彼女を待っている 「使用法をあやまると 逆に さびしくなってしまいます。 使用法をあやまると もっと さびしくなってしまいます。 どうぞ ご注意下さい」 本当は 彼女がどんな人間でも そんなこと どうだってよかった 僕がどんな人間だって そんなこと どうだってよかった あんたがどんな人間でも そんなこと どうだっていいんだよ 音も立てずに カウンターは増えていくんだろう こんな夜に 音も立てずに カウンターは増えていくんだろう
「もう 楽になりたい」だなんて そんな じじいみたいなこと 毎日考えて 楽になんて なれるわけないじゃんか そんなことばっかり考えているから ほら四方から 丹下段平が やってくるよそりゃ うじゃうじゃと そんでまた 勝手なことばっか言いやがって それをまた いちいち真面目に聞こうとするもんだから わけわかんなくなるって 当たり前だわな (自然体でがんばるって なんだ?) だけど おやじ 教えてくれよ 俺は どの幻と闘えばいいんか?
泣いている人に聞きたいことがあった どこが 悪いんですか どれくらい 痛みますか まだ がんばれますか もう だめですか 泣いている人に聞きたいことがあった
どこも侵略しない 誰からも攻められることのない そんな国に ひとりで住んでいる 平和である
あれは本当の話だったのかな 幼い頃によく聞かされた恐竜の話 ほら とても神経が鈍くてさ 痛みが何時間もかけて伝わっていくんだ 途中で何度も休みながらね 痛い!なんて叫ぶころには もう 半日ぐらいたっているんだって たぶん間の抜けた顔で眠ってばかりいる そんな恐竜の話が僕は大好きだったんだ こんな話もおぼえているよ 理科はあんまり好きじゃなかったけれど 「夜空に見える星の光は 何世紀も昔の輝きで 僕らにその光が届くときには もう その星はとっくに無くなっているのかもしれない」 僕らが見ているのが幻の光だなんて そんな想像は なんだかすこし 寂しい気持ちにしたな いまはまだ ひとつもかなしくはないのです いつもと同じ顔をして 僕は 今日も笑いながら働いています どこかで見た水族館のペンギンのように ただぼんやりと夜空を見上げている 夜にしか見えないものが 振り返ることしかできないもの達が 遠い回路をたどって何かを伝えている もう遅すぎる 何もできることはない もうどうしようもない 元には戻らない だけど 本当にそうなのか 答えを探すために 恐竜は 歩き出そうと考えた それは先週の木曜の午後のことで 物語の始まり 本当に歩きだしたのがいつだったか 答えは見つかったのか 物語には書かれていない
きのう 怖い夢を見た とても 怖い夢だった たくさん人がいて 色々なことを言われた ずっと隠していたことを みんなが知っていた ずっと内緒にしていたことを みんなが知っていた 僕は どこかへ逃げようと思う きのう とても怖い夢を見た たくさん人がいて みんな笑っていた もう ここにはいられない
時々忘れてしまう 自由に楽しく生きていいんだ やりたいように笑いながら生きればいいんだ おいしいものを食べて 気持ちのいい酒を飲んで 大好きな人と話をして 笑いながら時を過ごしていく それは決して ぜいたくじゃない それは絶対 つらいことを我慢した報酬なんかじゃない 時々忘れて僕は なんだかつらそうな顔をして生きている 忘れないように ここに書いておく
どこか遠くへ行こう どこか遠くへ行こう 見たこともない昔か そうじゃなかったら 思い出せないくらい遠い未来へ 何を持っていこう 何をおいていこうか お別れの手紙は 誰に出せばいいんだろう 友達の定義は難しい 結局 わからないままだったな そんなことでもう 悩むこともないでしょう 必要なものがあまりなく 必要とされることもそれほどなので それで 気楽なんでしょう
ごめんなさい
ほんとうに ごめんなさい
光に向かって伸びる 理由なんて知らない なんだかいい気持ち だけど理由なんて知らない どこまでも遠くに行けそうな そんな気持ちがしてる なぜだかわからない だけど僕たちは笑ってる なにも不思議じゃないね みんな予定どおりだね
何年かしたら きっと聞かれるだろう 「その時 あなたは何をしていましたか」 1995年1月17日 僕は夕方まで眠っていた その時僕は23才だった その時はまだ親と一緒に住んでいた やさしい女の子がいなくなって 違う出来事を ぼんやりと待っていた もっとたくさんの事を 僕は憶えているだろうか 僕は何も関係しなかった 僕は2週間で飽きてしまった なんだか訳もなく苛立っていた 何年かすれば すべて忘れてしまう 急いでいるふりをして通り過ぎた 「すみません」と小さくつぶやいて 僕は通り過ぎたけど それでどこに 辿り着いたんだろう
日曜日は 一日家にいる 何時間も 本を読んでいる 音楽を聞きながらコーヒーを飲んで たまに電話機を みつめることもある 友達がひとり いなくなっちゃった ひとりごとをつぶやきながら 部屋を片付けたりする そんなふうにしていつも 日曜日はどこかへ行ってしまう 渡辺君 もうここにはいられないよ