切なさの理由 2


=単純な三角関係=

夏っぽく晴れたある日の午後。
あいは隣の家への回覧板を回すよう母親に頼まれた。
今日は日曜日…ひょっとしたら、博が家にいるかもしれない…。
そんなささやかな期待を胸に、隣へ向かった。
博の優しさというものにどんどん惹かれていく自分をあいは痛いほど自覚していた。
「あいちゃん、こんにちは〜」
家の前を通ると庭の花に水をやっていた准一と博の母親が、明るい笑顔で声をかけてくれた。
「こんにちは〜…これ回覧板です。」
そう言いながらもあいは、家のサイドにあるガレージに目をやった。
博の黒い車は見当たらなかった。ちょっとだけがっかりしながらも、回覧板を手渡す。
「よかったら、ちょっとあがっていかない??なんか准一がお友達連れてきてるみたいだし。
ギターとか弾いてて面白いのよ」
「あぁ〜…サークルでやってるんでしょ、准くん」
「そうらしいの〜…だけど胡散臭いのよ、アコギサークルだとか言って」
「あっソレ…私もまったく同じ反応を准くんにしたんですよ〜」
2人はそんな可笑しい偶然に笑いあった。
少し寄っていくことにしたあいは、何年ぶりかに博と准一の住む家にあがった。

綺麗に片付けられたリビングに入ると准一が井ノ原と一緒に、ギターを弾いていた。
「あい〜…どしたの??突然」
驚いた様子の准一。
「ちょっと回覧板持ってきただけだったんだけど」
「准一がお友達と楽しそうにしてるから、一緒にどう??って誘ったの」
母親はお菓子と冷たいジュースを用意しながらキッチンから言った。
「准一…誰??」
井ノ原が小声で訊ねた。
「あぁ〜隣に住んでる幼なじみ。一年振りに北海道からこないだ帰ってきたんだ。
で、こっちは俺がこないだ話したアコギサークルの先輩で井ノ原さん。」
「はじめまして〜…いつも准くんがお世話になってます」
「お前は俺の親かっつ〜の」
准一の反抗は無視してあいはペコリと頭を下げた。あいはどことなくしっかり者の雰囲気を持っている。
「こちらこそ、宜しくね〜。あいちゃんって言うんだ〜。准一とは長いんでしょ??」
「生まれた時から隣にいたから、長いなんてもんじゃないよねぇ」
「そうそう、あいのことで知らないことなんてないくらい」
「自信満々じゃん、准くん。」
「だって、お前昔は俺のこと好きだったしなぁ〜。純粋で可愛かったよな〜あの頃のあいは」
「昔の准くんも今よりずっと素直で可愛い男の子だったのにさ〜…。」
「でも2人ともすっごい仲よさそうよ〜…オジさん、ちょっと取り残された気分〜」
ちょっと気持ち悪い仕草で井ノ原はお茶らけて言った。
「先輩…マジで気持ち悪い…」
深刻に嫌がる准一の横であいはケラケラと笑う。

するとそこへガチャという扉の音と共に博が入ってきた。
「ただいま〜…なんか冷たいお茶ない??あち〜」
「あっ兄貴、おかえり」
「おかえり〜」
「おかえり〜」
准一、あいのおかえりに続いて井ノ原も馴れ馴れしく言っている。
あまりにおかえりコールが続くので博が不思議そうな顔でリビングを見た。
「あい、来てたの??准一はお友達??」
「回覧板置きに来て、そのまんまちょっとお茶飲んでたの。博さんはどっかいってたんだよね」
「うん、ちょっとね。」
「兄貴〜…俺の先輩で井ノ原さん。」
「こんにちは〜井ノ原です。お兄さんのお話は准一から聞いてます…。Fコードおさえられないんですか??」
笑顔で話を飛ばし出す井ノ原に准一は少し呆れつつ、博は苦笑しながら言った。
「なんで知ってんの!!??あっ、准一が言ったの??」
「そうなんですよ〜だから、俺がおさえられないのは遺伝だとかなんとかいっちゃって」
「暴露するなよ〜!!」
博がムスッとしながら言う。イジけたような表情でスネる博にみんなは吹き出した。
その後も4人は和やかな空気のもとで楽しく過ごした。

帰るという井ノ原と一緒に准一は近くのコンビニへと向かった。
その途中で井ノ原がいつになく真剣な面持ちで話を切り出した。
「准一〜…あいちゃんってお前の好きな子なんだろ??」
突然の言葉である上に、井ノ原が真面目に話しているという状態に准一は面食らった。
何も言わない准一に、井ノ原は確信したとでも言い出すように明るく言った。
「それじゃぁ…三角関係かぁ〜。准一とあいちゃんと…お前の兄貴の」
井ノ原の自信に溢れた口調に准一は驚きながらも、無言で頷いた。
「見え見えの三角関係って難しいんだよな〜…それに、お前の立場って一番辛いんだろうな〜」
井ノ原が話す言葉に准一は深く納得していた。
あいのことを真剣に思いながらも、現実にあいは博を思っていることを准一は感じていた。
好きになると相手の気持ちに敏感になるが、そういう感情にまで過敏に反応してしまう…。
そんなあいの気持ちは実際には博に届いていないこともわかっていた。
こんな状況を知っているのに、何もできない自分。無力な自分が情けなく思えた。
准一の気持ち…はどうしたことか簡単に井ノ原に感じ取られてしまった。

=別れの日=

数日後。博は一人、部屋のベッドの上で今日のことを思い出していた。
昨日までの今日子との関係は、今はどこにも存在しない。
博は今日子のアメリカ留学を尊重し、二人は別れることになった。
今日子は止めて欲しいのかもしれないという坂本の助言もあったが、博は最終的に別れることを選んだ。
「今日子がアメリカに行きたいっていうのを止める権利は俺にないと思うんだ。
日本にこのままいて、俺と一緒にいるよりも今日子のやりたいことへ突き進んで欲しいし。
だから、この別れは淋しい別れじゃなくって、二人のための別れなんだよ」
今日子を家に送り届けた時、博が今日子に言った最後の言葉。
微笑みながら博は今日子を抱きしめた。
「博くん…ありがとう。今まで3年間も一緒にいて、こんなに博君の優しさを感じたことってなかった。
だけどね…ここまで心が切なくてどうしようもないこともなかったな…。
今までどうもありがとう、じゃぁね…おやすみ」
博を振りきって少し歩いた後、今日子は振りかえって満面の笑みで言った。
「博君!!好きだよ、大好き」
博は答えようと思ったが、ここで自分の好きという気持ちを口に出したら、
今日子と離れる決心が揺らぎそうだった。
結果、心の中で答えながら、今日子に笑顔で手を振ることしかできなかった。
そして今日子はマンションの中へ消えた。

家に帰ってきてからも目を瞑るだけで今日子の笑顔や困った顔、そして泣き顔が次々と浮かんでは消えていく。
自分の中で、どれほど大きな存在だったか…今になって博は感じたがもう遅い。
『2人のための別れ』自分が口にした言葉を信じて博は眠りについた。

=伝えられた思い=

博がそんな状況に追いこまれている頃、准一も様々な思いが葛藤していた。
井ノ原といつものように他愛無いお喋りをしながらも、窓の外を眺めるとふと浮かぶあいのこと。
「准一…恋に溺れてるね…」
そんな井ノ原のからかいにも准一はかえす余裕がない。
一年振りにあいがこっちへ帰ってきた時から、気持ちは日に日に増して
前はあいが幸せだったらいいと思っていたが、最近はそんなことは思わなくなっていた。
「それじゃぁ、告白しちゃえばいいだろ〜」
井ノ原に話すといとも簡単にそんなことを言ってきた。
「だって…もう見えてるんですよ、振られるコトは。それに…」
「振られちゃって、二人の今の関係が崩れるのが恐いってことなんだろ、要するに。その上、恋敵は兄貴だしな」
「そう…」
「だけどそんなの考えてたらダメ〜!!!言ったもん勝ちなんだよ、恋愛は。落とせたもん勝ちなの。
それに言ってみないとわかんないじゃん!!もしかしたら、あいちゃんは准一のことも好きかもしれないし」
「『も』って俺は兄貴の付けたしになってるワケでしょ〜…先輩ってフォローしてるようでフォローになってない」
「そうなんだけど…こう相手を振り向かせる恋っていうのも面白いもんよ〜。俺はいつもそういうのだね。
恋は冒険!!アドベンチャーよぉ!!それに言ってみないとわかんないんだからさ、現実っていうのは」
井ノ原のそんな励ましに、准一は心のうちをあいに伝えようと思い出した。
その時の准一はあいの直接的な反応が欲しかったのだ。
いや隠し通して、密かに思い続けるというこの辛さから
一刻も早く開放されたかったというのが本当のところだったのかもしれない。

その晩、准一はあいが最近始めたバイト先のコンビニへ向かった。
街灯だけしかない暗がりの道から見える明るいコンビニの店内にあいはあくびをしながら眠そうにしていた。
その頃、博は今日子のことを報告すべく坂本の家を訪れていた。
「俺さぁ…別れたんだ、今日子と」
ついさっきまで仕事の話をうだうだしていたのに突然話を切り替えたので坂本はびっくりしていた。
「そうか…まっ、お前がいいと思ったんだったらいいんじゃない??後悔してないんだろ??」
「後悔してない。二人のための別れだからね。だけど本当はさ、今日子のことを止めて
結婚するっていうのはちょっとためらいがあったのかもしれないなぁって思うんだ。
今日子の人生まで背負えるほどの人間じゃないし」
「人間誰だって、人の人生まで背負えないって。無理に背負おうとすると失敗するよ」
「そうかなぁ…」
「俺みたいにさ…。」
そう言うと坂本は俯いてビールをぐっと飲み干した。
「坂本君がそんな風になってるの珍しいじゃん」
「アイツの全てを受け止めてやれる程、俺は大人じゃないんだよな、きっと。」
「どうしたの、突然??」
「俺もすっごい喧嘩別れしてさぁ…昨日」
「そうだったんだ…」
部屋の中に重たい空気が流れる。
「俺はもう後悔し出しちゃってんだよなぁ…昨日の今日だって言うのに。」
坂本は机の上に置いてあった合鍵を引き寄せて握った。
「価値観の違いとかだってあったんでしょ??学生と社会人なら尚更。」
「そういうのが違ったら付き合えないよ、きっと。
もっと、他のところで俺はアイツの気持ちが理解しきれてなかった。」
「自分ばっかり責めるのよくないよ〜」
「年下と付き合うならそれなりの覚悟がいるんだよな」
「例えば…??」
「年が離れてると話が合う合わない以前に物事の感じ方が違うんだよ。普通に言った一言に
ヤケに傷ついたり過敏に反応して喜んだり…。どういう感情に対してもすごく敏感だからさ。
そういう感じ方の違いっていうかそういうのがわかんなかったから
受け止めきれないところがあったんだろうな、俺は」
坂本の少し投げやりな言いぐさに、博は明るく話を変えようとした。
「それじゃぁ、失恋した者同士…飲みましょっか」
「お前、飲めないクセに…」
坂本は顔を上げると博に向かって悪戯っぽく笑いかけた。

准一はコンビニの自動ドアの前に立った。
「いらっしゃいま…せ…。准くんどうしたの??何しにきたわけ」
客がちょうどいないのをいいことにあいは驚きの声を上げた。
「お客サンが来たのに、その言い方はなんなんだろうね〜…。ちょっと買いだしに来たんだよ」
准一は、雑誌とポテトチップスやらを持って来た。
「1250円です」
総計を告げると准一はお金を出しながら言った。
「なぁ…ちょっと今いい??」
「今??ダメだよ、バイト中だよ、私」
「客いないじゃん。誰も、俺以外に…。ここの前のところでちょっと言いたいことがあるから」
「また今度じゃダメなの??」
「ダメ、今日じゃないと」
意外な准一の押しの強い言葉に負けてあいはエプロン姿のまま、コンビニの外へ出た。
さっき買ったばかりのジュースを開けて准一は話し出した。
高校時代の友達のことや、思い出。二人には共通の過去が沢山あった。
「あいってさぁ〜…好きな人の前に行くとさ、すぐに赤くなっちゃったりするんだよな〜。
だから、本人は勿論、周りの友達にまで知られちゃってからかわれるんだよ、いつも」
「そうそうっ!!自分でもわかるんだよね〜あっ赤くなってく〜…って」
「それって止められないワケ??」
「止められないって自然の条理に逆らうことになっちゃってさ〜…
逆にどうしようって思うともう止められないほど赤くなってくもん」
「あ〜悪循環ってヤツ」
そんな他愛もない話を30分くらい続けていると准一が言った。
「俺と兄貴でさ、何が違うんだろう…あいから見たら…??」
「えっ〜…准くんは率直にいい友達として頼りになるし、博さんは悲しいくらいに優しいっていう感じかなぁ」
「悲しいくらいに優しい…か。あいは兄貴のそんなところに惚れちゃってるんだ…。
じゃぁ俺は、あいが兄貴見て顔を赤くしてるところが好きなのかな…」
そう言うと、准一は作り笑いを浮かべた。
「准くん…あのさそれって…」
言いかけるとそこにコンビニへとカップルが仲良く入っていった。
「ホラ、お客サン来た!!早く店戻れよ。じゃぁまたなっ」
准一はそう言うとそそくさとコンビニの袋をぶら下げて暗闇の夜道へと消えていった。
あいは突然の告白に動揺を隠せなかった。

=2人の距離=

准一の突然の告白から3日が経とうとしていた。あれから一度も姿を見かけてはいない。
なんて返事をすればいいのか…あいは完璧に混乱していた。
准一が自分のことを好きでいてくれるのは素直に嬉しいことだったが、
同時に准一はあいの本当の気持ちまで知っていた。
これから先、どうやって接していけばいいのか。あいは泣きたいくらいに困っていた。

「先輩〜…言っちゃいました」
准一は、サークルの帰り道、井ノ原と2人になったところで話を持ち出した。
「何を〜??」
完璧に忘れている井ノ原を少しムッとしながら准一は続ける。
「気持ちを言っちゃったっていうのを先輩に報告してんでしょ〜!!忘れたんですか??」
「あっ…!!!あぁ〜!!あいちゃんね」
井ノ原は不意に思い出したらしく、異常にオーバアクションになった。
「で…ちゃんと言った??言えた??」
「言えたは言えたんだけど、返事まできく勇気がなくって。ちょうどいいタイミングであいのいるコンビニに
お客さんが来たから、帰ってきちゃったんっすよ」
「はぁ〜??で、それから会ったんでしょ??隣に住んでて会ってないとは言わせないよ〜」
「結構、隣って会わないもんで…」
「それって准一が現実逃避してるだけのことなんじゃないかなぁ。やるだけのことやったら運命に任せてさ、
どぉ〜んと大きく構えてた方がいいと思うけどねぇ、俺は」
「会わないようにしてるって程でもないんだけど…」
「とにかく、ちゃんと会って返事を聞かなきゃ。まっフラれたときは俺が慰めてやるし、なっ!!」
「先輩…なんかフラれること前提にしてない??」
「そんなことないって最悪の場合を俺は言ってるの。それに准一が告白しようと決めたのは俺が勧めたからでしょ。感謝してよぉ〜!!!こんないい先輩、この先いないよ〜」
准一が不安がっているのを察して、井ノ原は明るく言うと勢いよく肩をポンッと叩いた。
「ここでうじうじ心配してもしょうがないっすよね〜!!!」
西の空に沈み行く太陽の光が爽やかに輝いていた。

准一にも博にも会わない日々が数日間続いたそんなある日のこと。
あいは大学の帰り道、突然の雨にふられた。
家を出るときは晴れていたのに春の嵐とでもいうように雨は激しくふりつける。
当然のことながら、傘を持っていなかったあいは地下鉄の出口から雨が小雨になるのを今か今かと待っていた。
時計ももうすぐ7時を指そうとしていたところで、あいの後ろから車のクラクションが聞こえた。
あいが振り向くとそこには車の中からあいを見ている博の姿があった。
博はあいに向かって手招きをしている。あいは少し迷ったが、結局その博の好意に従った。
車のトビラを開けると博が言う。
「早く早く!!雨がふりこんじゃう。家まで送ってくよ。」
「ありがと…博さん」
博の車に2人っきりで乗るのは初めてだった。その上、車の中というのは案外狭くて、あいは緊張を隠せない。
「突然、ふってきちゃって傘持ってなかったから、困っちゃった」
緊迫した空気の中での沈黙に耐えられないあいは自分から口火を切った。
きっと顔は赤くなっているだろうとイヤな予感がしていたが、バックミラーで確認するのも恐ろしかった。
「俺が通りかかってよかったねぇ〜。出口の所で立ってるのが遠めにあいかな〜って思ってたんだ。
だから、左折すんのヤメてあいをのっけにいったの。」
「わざわざ…ありがとね、本当に。」
「全然。なんかテープでも聞く??その辺にいっぱい入ってるでしょ」
「あっ…この中??」
あいはがさごそとテープを探し出した。ふと目に留まる一本のテープ。
少し丸い博の筆跡とは違う、綺麗な字。無意識にあいはそのテープを手にとっていた。
あまりに凝視しているあいに博は目を向ける。
「あぁ〜…それ、彼女にもらったの。字が違うでしょ」
「うっうん…なんか目に留まっちゃったから。そっか…彼女いるんだ、博さん」
知っていることだったが、敢えて知らないフリをした。しかし、明らかに声に動揺の色が表れている。
「彼女って言っても今はもういないけどね。こないだ別れちゃったから」
そう言うと博は、少し俯いた後、勢いよくアクセルを踏んだ。
「そうだったんだ…。」
あいは心の中を急いで整理していた。博さん、別れたんだ…そう反復していると博が苦笑しながら言った。
「なんか雰囲気重くなっちゃったなぁ〜…。ラジオでもつけよっか」
博はあいの返事も聞かずにラジオのスイッチを入れた。
スピーカーから流れる軽快な音楽と激しくふる雨の音があいの心のざわめきと重なった。

准一が部屋で雨をぼぉ〜っと眺めていると博の車がガレージに入ってきた。
そして、車が停まると助手席からあいが出てきた。意外な2人に驚きながら准一は目を見張った。

「こっからは走っちゃうね、ホントにどうもありがとう」
あいは家に向かって走り出そうとすると博が腕を掴んだ。
「この傘に入って行ったら??そこまでなら、相合傘する??」
博が屈託のない笑みで言う。あいは否定できずに、頷いた。
ほんの数メートルの相合傘があいにとっては説明のしようがないくらいに嬉しかった。
だけど少し遠慮してあいは控えめに傘に入った。
「もっと寄らないと濡れちゃうから」
博は少し肩を抱き寄せた。あいの心臓は博に聞こえてるんじゃないか心配になるくらいにドキドキしている。
一分も間のないまま、あっという間に家の玄関に辿りついた。
「今度からはちゃんと折りたたみくらい持って家出ろよ〜。」
博は少し皮肉っぽくそう言うと、小走りで帰って行った。
あいはその後姿を見つめた。そして、博との距離を縮めてくれた突然の雨にちょっぴり感謝した。

そんな2人の行動の一部始終を見てしまった准一は、悲しいの一言では表せないくらいに
心がどんどん沈んで行く。同時に博の優しすぎる行為に対して無性に腹が立った。


To Be Continued

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