初版作成日2004年11月22日
最終更新日2005年06月11日

  Top Studio Labo. Music Blog Link  

■Do it yourself ! Synthesizer - Vol.11■

SteinerVCFの製作

 先日のアナログシンセビルダーサミットで、takedaさんが持ってきたSteinerタイプのフィルター。デモで聞かせて頂いたサウンドがあまりにも鮮烈で印象的だったので、早速挑戦することにしました。
恥ずかしながら、オリジナルのSteiner-Parkerのシンセってほとんど知らなかったんですが、Minimoogを意識した構成だそうで、パネルの右左が逆という「へそ曲がり」のシンセのようです。
 「へそが曲がっている」のはパネルだけではなくて、VCFの回路も一見するとmoogラダーかと思いきや、信号の入れ方やCV制御の方法もmoogタイプのVCFとは「逆」の発想で考えられていて、非常にトリッキーです。
さらに、このSteinerのVCFは1つの回路でLPF、HPF、BPFになる万能フィルターで、さらにLPFとHPF入力に同時に信号入力するとAPF(All Path Filter)にもなり、1粒で4つおいしいVCF回路で、これはもう「作らなきゃ損」って感じです。

 SteinerのVCFの回路は、takedaさんのサイトこちらでも紹介されていますが、世界中のDIY'erもいろいろな回路を紹介されており、今回はhoushuさんに教えて頂いたフランスのYves.Ussonさんがご紹介されている、回路とPCBをそのまま製作させて頂くことにいたしました。(Yves.Ussonさんに感謝!)

http://www-timc.imag.fr/Yves.Usson/personnel/SDIY/Modular/EN/STEINERVCF/

このページでは2種類の回路が紹介されていますが、手元にCA3096が無かったので、今回は「2SC1815+TL071バージョン」を製作することにしました。
それで、早速基板を起こして製作してみたのですが、操作が非常にクリチカルで、また一旦発振すると操作が不能になるなど若干問題がありましたので、一部回路定数を変更するなどの変更をしました。

変更箇所(部品番号等はオリジナルの回路図を参照してください)

  • R19,R20,R22 47k → 100kに変更
  • R23 860 → 100に変更
  • T1 2k → 500に変更
  • R21 68k → 4.7kに変更
  • Cut Off VR 25k(lin) → 10k(B)を使用
  • Resonance VR 22k(lin) → 20k(B)を使用
  • C2,C3,C4 はすべて2200pF(=2.2nF)とした
  • R16 330k → 220kに変更
  • TL071のpin2とpin6間にダイオード(1N4148)によるクリッパーを追加

変更の結果、CVとカットオフ周波数の関係は非常にマッチするものとなり、ダイオードクリップを追加したことにより。発振電圧が抑制され、制御が不能となることは無くなりました。
今回の回路ではDUALトランジスタの2SC1583を使用していますが、根本的にあまり精度が出ない回路ですのでマッチングにシビアになる必要は無く、手持ちにデュアルトランジスタがなければ2SC1815を2本使用しても全く問題が無いでしょう。(この回路で2SC1583を使う方がもったいないような気が・・・)

調整は、超簡単でスケール調整トリマT1のみです。レゾナンスをフルにして発振状態にして、さらにキーボードからCVを与えたとき、何となくスケールが合うように調整すればOKです。僕の場合には、外部CV入力に100kBのVRをかましてあるので、フルに回したとき、通常の音階スパン(Oct/V)より若干広がるようにセットしています。これで、フィルターのレゾナンスをOct/Vに合わせたい場合でも、使用時にCV入力制御用のVRで微調整すればOK。(後述するように、この回路では広い周波数範囲でOct/Vに調整するのはほぼ不可能)

肝心なサウンドですが、これまた1癖も2癖もあるサウンドで、僕はこれまで、OTA系の素直なフィルターしか馴染みがなかったのですが、このSteinerのVCFは先日作ったmoogタイプVCF以上に過激で、病みつきになりそうなフィルターです。
特にAPFモードでは、レゾナンス周波数付近の強烈な位相変化が楽しめ、さらに回路構成上、カットオフ周波数が入力信号の影響を非常に受けやすいため、レゾナンスをかけた時のウニョウニョがさらに入力信号で変調され、ほとんどビョーキ(!?)的なサウンドが得られたりします。
このようにSteinerのVCFは、ちょっと癖が強いVCFですが、クローン製品もほとんど見かけませんし、回路も非常に簡単ですからDIY的においしいフィルターといえるでしょう。

 

完成したSteinetフィルターモジュール

<スペック>

  • CUTOFF FREQ.
  • RESONANCE
  • MODE LPF,HPF,BPF,APF
  • CV1〜CV2入力 (VR付き)
  • AUDIO IN (VR付き)
  • AUDIO OUT A,B

 

Steinerフィルター基板

Yves.Ussonさんが公開されているPCBパターンをそのまま使わさせて頂きました。
機能の割に非常にシンプルな基板です。

主要な部品はたったのこれだけ!

  • OPAMP TL071, TL072
  • DIODE 1N4148×10
  • DUAL TR 2SC1583

500円でお釣りが来そう!?

先日2つ目のラックを製作したので、そちらに収納しました
 

(おまけ)SteinerVCF回路の解析

 SteinerのVCF回路は、機能の割に非常にシンプルな回路ですが、それ故、非常にトリッキーで一見しただけでは回路の動作がなかなかイメージできません。またmoogのフィルターなどと違って、極めてマイナーな回路であるため、書籍やインターネット上で参考となる資料があまり存在しないようです。そこで、少しでもsteinerのVCFについて理解を深めるため、無謀にも回路の解析をしてみることにしました。
回路の解析は、moogタイプのフィルター同様、OrCad(spice)を使ってシミュレーションなどもしてみました。

SteinerVCF回路(解析用)

直流解析

 まずは、直流的に回路を見てみることにしましょう。SteinerのVCFもmoogタイプのラダーVCFと同様、ダイオード(トランジスタ)の動抵抗の変化を利用して、フィルターのカットオフ周波数を変化させています。しかしmoogタイプのフィルターはダイオード(トランジスタ)に流す電流を制御するために、別途アンチログ特性を持ったCV−電流変換(定電流)回路を持っていますが、SteinerのVCFでは図1のようにCVで差動アンプ出力に接続されたダイオードのバイアス電圧を直接制御して、ダイオードの持つV-I特性によって動抵抗を変化させています。
図1の回路では、ダイオードに流れる電流が差動出力電圧に影響を与えそうですが、差動アンプのコレクタ電流がmAオーダーに対して、ダイオードのバイアス電流は数nA〜数10uAのオーダー領域での使用を前提にしていますので、ほとんど無視できるオーダーです。
グラフ1はCV入力電圧Vc(X軸)と差動出力VAB(Y軸)の関係をspiceによりシミュレーションした結果です。Tr1のベース接続された抵抗(図1の場合R2)による入力インピーダンスの差でCV入力が0V時に若干逆バイアスなっています。これが許せない場合には、Tr2側にもR2ど同値の抵抗を入れれば良いのですが、使い勝手的には、0V時に若干逆バイアス気味の方が、良いような気がします。(特にKey-CVとEG電圧を同時に加えるような場合にフィルターがちゃんと絞れるようになります。)


図1 CV−ダイオードバイアス電圧回路


グラフ1 CV-ダイオードバイアス電圧VAB特性(Spice)

今回のSteinerのVCF回路では、図2のように差動出力AB間に8個のダイオードがシリーズに接続されていますから、仮に全部のダイオードの特性が揃っているとすると、1つのダイオードにかかる電圧はVABの1/8になります。グラフ1からCV制御電圧Vcと差動出力VAB間にはVAB=0.4VCの関係があるとすると、各ダイオードのバイアス電圧VdとCV電圧Vcの関係は次のようになります。

 


図2 AB間にシリーズ接続されたダイオード

1つのダイオードに印加されるバイアス電圧Vdとするとき、ダイオードに流れる電流Idは、小電流領域ではダイオードのV-I特性の一般式により、次式のような関係になります。
さらに、Vdは(1)式によりCV電圧の関係で表せますのでVcの関数で表現できます。

q=1.6x10-19[C]、k=1.38x10-23[J/K]、T=300K(@27℃)、m=1〜2

※教科書に良く出てくるダイオードのV-I特性の一般式には、この(2)式のmは1としてあまり考慮されていないようですが、実際には1〜2程度の値を取ります。今回のSteinerのフィルターのように極微少電流領域では2に近い値を使った方が、実際の回路では良く整合しているような気がします。

グラフ2はCV電圧とダイオード電流の関係をspiceによりシミュレーションした結果です。このようにCV入力電圧とダイオード電流の関係は指数関係となっており、VCFに必要なアンチログ特性が実現されています。


グラフ2 CV−ダイオード電流Id特性(Spice)

ダイオードに流れる電流Idはダイオードがすべてシリーズに接続されており、ダイオードに接続されているコンデンサの漏れ電流が完全に無視できるとすると、8個のダイオードですべて等しい電流が流れることになります。よって、図2にあるように、ダイオードの動抵抗は次の(3)式のように考えることができ、CV電圧Vcの関数として表現できることになります。
※本来ならば、フィルターの素子としての動抵抗Rdは交流的にdV/dIで考えるべきでしょうけど、可聴周波数帯であれば直流的に考えてもいいのではないかと思います。

このように、今回製作したSteinerのVCF回路は部品の特性に完全に依存しており、また温度補償なども、全くと言っていいほど考慮されていません。また(3)式をみればわかると思いますが、完全にOct/Vに調整するのは無理なようです。(ダイオードの特性によっては、偶然になるかもしれませんが・・・)
しかし、このSteinerのVCFの魅力の1つは回路のシンプルさですから、多少のズレは使い方でカバーするとか妥協が必要でしょう。

交流解析

 次に、交流的に回路を解析してみましょう。

・LPFモード

 ダイオードの動抵抗Rdやコンデンサのリアクタンス1/ωCが周囲の抵抗に比べて十分大きいとすれば、交流的に見れば、図3のように簡易化した回路で考えることができます。図3の回路、見覚えのある回路ですね。そうですいわゆる正帰還(セイレンキー)型のアクティブフィルター回路です。さらにSteinerのVCFでは、RCフィルタ部分が等価的に2個パラ接続となっていると考えることができます。

回路では、Rdをダイオード2個シリーズで考えていますので、よって、LPFモードでのカットオフ周波数fcは次式で表されます。

今回、Cを2200pFとしましたので、周波数範囲を20Hz〜20kHzとすると、CVによるダイオードの動抵抗Rdの変化範囲はおのずと決定されます。


図3 簡易化したLPFモード回路

グラフ3は、Spiceを使用して、SteinerVCFのLPFモードでの周波数特性をシミュレーションした結果です。周波数が100Hz以下となるとゲインが低下していますが、ダイオード自信のアンチログ特性により、大体Oct/Vとなっています。


グラフ3 CV電圧をパラメトリックに変化させた場合のLPF周波数特性(Spice)
レゾナンスVRは50%、CVを2V〜10Vまで1Vづつパラメトリックに変化(色線)

・HPF、BPFモード

LPFと同様に、簡易化すると、それぞれ図4、5のような回路で考えることができます。


図4 簡易化したHPFモード回路


図5 簡易化したBPFモード回路

 


 <<Vol.10に戻る  Vol.12に進む>>

Laboratoryに戻る

トップに戻る


©2004-2005 RJB. All rights reserved