<Boston 8年ぶりの新譜「Corporate America」発売中> 

Boston   「Corporate America」 
国内盤 SME(EICP171)
01. I Had A Good Time   02. Stare Out Your Window   03. Corporate America   04. With You
05. Someone   06. Turn It Off   07. Cryin'   08. Didn't Mean To Fall In Love
09. You Gave Up On Love   10. Livin' For You

 
「ボストンの5枚目の新譜の発売が決定した。2ndアルバム「Don't Look Back」(78年)→3rdアルバム「Third Stage」(86年)→4thアルバム「Walk On」(94年)に続いて、またしても8年ぶりとなった(笑)。内容は今のところ全くわからない。しかしジャケット画を見ていただきたい。今までと全く同じである。これはボストン節健在、トム・ショルツの頑固一徹さは相変わらずであることを示しているものと思われる。あの壮大なギターオーケストレーションとロックを楽しめるのだと思うと、本当にうれしい新譜である」

上記の文章は新譜「Corporate America」の発売が決定した10月1日に掲載したものである。今回の新譜を聴き、「8年間は長かった」と実感している。その理由は・・・・
94年の4thアルバム「Walk On」は何度も聞き直した。個人的にはボストンで最も気に入った作品であり、タイトル曲「Walk On」(メドレー)はボストンサウンドの集大成を見た思いがしていた。このため、次のアルバムは「Walk On」が更に強力になっているのではないかと期待ばかりが膨らんでいった。
またこの8年間に全く動きがなかったわけではない。97年にはベスト盤を発売し、3曲の新曲も収録している。その時のプロデューサー(「再生屋」とも言われる人なのですが、名前を失念しました)を迎えて新譜を制作するという噂もあった。
期待が大きすぎるとどうしても評価が厳しくなる(笑)。今回の新譜を初めて聴いたとき、正直なところ物足りなさを感じた。たとえば1曲1曲がコンパクトにまとめられている。ボストンはアルバムに必ず6分を超える長い曲を入れてきた。1stの「Foreplay〜Long Time」、2ndのタイトル曲「Don't Look Back」、4thの「Walk On」である。今回のアルバムにはそれがない。しかし何度も聞き直すうちに、ボストンとしての水準は十分に保っていることがわかった。これが前作から8年後でなければ、最初からすぐに気に入っていたと思う。

今回はジャケットに6人のメンバーが写っている。明確なメンバークレジットがないものの、次の6人ではないかと思われる。
・トム・シュルツ(ギター、ベース、ドラム、オルガン)
・ブラッド・デルプ(ボーカル)
・フラン・コスモ(ボーカル)
・ギャリー・ピール(キーボード)
・キンバリー・ダーム(ボーカル、ギター)
・アンソニー・コスモ(ボーカル、ギター)
なんと言っても1st〜3rdまでリードボーカルを担ったブラッド・デルプの完全復帰がうれしい。そして新たな参加となるキンバリー・ダームアンソニー・コスモフラン・コスモの息子とのこと)だが、演奏のみならず曲作りに積極的に参加している。今回の新譜では、ショルツが作曲に参加していない曲があり、これは今までになかったことである。彼らの曲が果たしてどのようにボストンサウンドに絡んでくるのかも、新譜の聞き所である。

1曲目「I Had A Good Time」「ボストンはこうでなければならぬ!」という、トム・ショルツの頑固さが反映されている、ボストン節全開のうれしい1曲だ。失恋の歌詞とは思えない明るい曲調に、デルプの衰えの見せない高音のボーカルをフィーチュアしている。ショルツの弾く太く、それでいてメリハリのきいたギターも相変わらずである。一度曲が終わり再びリプライズしてギターで盛り上げるところも、1stからおなじみのボストン的展開である。というか、デルプのボーカル以外は、バックコーラスも含めて全てショルツが演奏していた。ボストンらしくて当然なのである(笑)。
3曲目「Corporate America」。今日という日には意味深なタイトルである。珍しく政治的メッセージを含んだ曲なのだろうかと思ったが、もう少し広い意味でアメリカ社会への危惧を発する曲だった。国内盤解説でも触れられているが、ショルツの自然保護運動への関心も反映されているようだ。アジるようなデジタルなリズムで押してくるが、ドラムをはじめとしてこれまた全てショルツによる演奏(ボストンはデジタル楽器は使わない)。ギターも攻撃的である。ボーカルは、フランを中心にデルプ、ダームの3人が参加。

4曲目「With You」は新加入ダームによる曲で、ボーカルも本人。なんと、アコースティックギターによる弾き語りが中心である。こういう曲は今までにはなかった。確かに新機軸であるが、厳しい見方をさせていただくと、アルバムの中で若干浮いてしまっている。ダームはシェリル・クロウをさらに骨太にしたような声質とボーカルで、アメリカンロック向きである。この辺りは次回作での課題として、まだまだ期待がもてる・・・・といっても次は8年後か(おきまりのオチで恐縮です)。
6曲目「Turn It Off」と7曲目「Cryin'」だが、これは異色だった。まるでオアシスが演奏してもおかしくないような曲なのである。一体なぜ!? と思い、作曲のクレジットを見るとアンソニーが単独で作った曲であった。若いアンソニーはひょっとするとオアシスの影響を受けているのかもしれない。ショルツのギターワークも控えめになっているが、それでも6曲目の間奏でショルツがオルガンとギターをスリリングに絡ませるところはさすがのかっこよさである。なおボーカルは、2曲ともフラン・コスモが担当している。

8曲目「Didn't Mean To Fall In Love」は、抑えめの曲調からショルツのオルガンと、リードギターが立ち上がってくるサビが素晴らしい。一転して中盤でムーディなアコースティックギターソロを入れる展開など、よく練られている。こういう曲はデルプのボーカルが最も似合う。
9曲目「You Gave Up On Love」だが、前作「Walk On」の最後の曲「We Can Make It」のエンディングから引き続いて演奏されているような、ギターの轟音からスタートする「We Can Make It」の続編のような曲だ。国内盤の対訳を見ると、歌詞も深読みすれば「We Can Make It」の8年後を歌っているように見えなくもない。しかし、このドラマチックな展開、そしてそれを盛り上げるコーラスワーク、そしてギターオーケストレーションの魅力は何物にも代え難い。まさにボストンサウンドの王道である。リードボーカルはダームで、より骨太に歌っている。

さてアルバム全体を通してのギターオーケストレーションだが、4thの「Walk On」や「Surrender To Me」のように大きくフィーチュアしている曲はない。これは各曲とのマッチングを考えてのことだと思う。冒頭で述べた「コンパクト」というのはそういう意味も含んでいる。従って、ギターオーケストレーションそのものは曲のあちこちにちりばめられているので、昔からのファンの方は安心してほしい。
またボーカルは、デルプ、フランに新しいダームが加わっているが、フランやダームの曲では複数のボーカルを交錯させているものがある。これは、3rdアルバム「Third Stage」発表後のデルプの脱退がとても痛かったのであろう、4thでショルツがとった方法である。従って、デルプのリードボーカル曲ははっきりとデルプとわかるボーカルの録音となっている。ショルツのデルプへの信頼の大きさがよく出ている。

最後に10曲目「Livin' For You」を紹介したい。これは4thに収録されていた曲のライブバージョンである。なぜライブテイクを? またどうしてこの曲を? と疑問も残る。実は私はこの曲があまり好きではないので少し残念であった。しかし聞き所は多い。まずライブでありながら録音のすばらしさ。スタジオ盤と遜色がないのに驚いた。そして演奏は一貫して端正で丁寧である。さすがショルツが選んだテイクだけのことがある。何年前の録音なのか不明だが、ボーカルのフラン、バックコーラスのデルプも素晴らしいコンディションである。さらにジャケット中の写真では、ステージの模様も掲載している。これは「ライブを期待してほしい」というショルツからのメッセージと受け止めたい。ボストンは新譜を発表すれば必ずツアーを行っていた。恐らく今回も行うだろう。ならば是非、来日公演を実現してもらいたい。そして4年後(笑)くらいには、ライブ盤も発表してほしい。
期待しています。
(2002年12月)

ジャケット中の写真より
左からトム・ショルツ、キンバリー・ダーム、ブラッド・デルプ
後はわからないのですが、・フラン・コスモ、ギャリー・ピール、アンソニー・コスモ
と思われます。

Bostonへもどる