Bachman Turner Overdrive (バックマン・ターナー・オーバードライブ)
<母国カナダを愛するアメリカンロックバンド>
バックマン・ターナー・オーバードライブ(以下BTO)の名前を初めて知ったのは80年代の終わり頃だった。その頃ヘヴィー・メタルが相当な人気を誇っており、ややそちら方面の音楽が苦手だった私は名前だけで「どうせ昔のむさ苦しいハードロックに違いない」と勝手に判断していた。
その後どうやってBTOを聞くようになったのか、ゲス・フーのページと重複するが改めて書いておきたい。2001年2月にリンゴ・スター&ヒズ・オールスターバンドの輸入盤ライブアンソロジー「The
Anthology ...So Far」を購入した。3枚組全47曲という豪華版で、1989年の第1次〜2000年の第6次オールスターバンドまでのベストテイクが収録されていた。そして第3次オールスターバンドからは日本公演も収録されており、ランディ・バックマンが豪快なアメリカンロックを2曲(「Takin' Care Of Business」「You Ain't Seen Nothin' Yet」)を披露していた。英語の解説を読むと「バックマン・ターナー・オーバードライブ(以下BTO)」の中心人物で、その2曲が代表曲だった。
早速タワーレコードでCDを探してみると、ベスト盤が何種類か発売されていた。その中で一番お買い得そうだったのが以下で紹介しているベスト盤「The Collection」である。
こうしてBTOを聞くことになったのだが、確かに基本線は勝手に名前から想像していた通りハードロック色もあった。しかしハードというよりはアメリカンロックというべきであり、はたまたランディのポップ路線が加味され洗練された趣のある曲も多く、すっかり気に入ってしまった。何事も名前だけで判断してはいけないということか(笑)。
一方メンバーは全員カナダ人らしい。つい最近気がついたのだがBTOのトレードマークをよく見るとカナダの国旗のマークが配置されている。当時のステージ写真を見るとカナダの国旗を掲げており、カナダ人としてのアイデンティティを強くアピールしていたようだ。
(余談)
あるBTOに詳しい方のHPで初めて知ったのだが、BTOは日本でも人気があったらしく当然シングル盤も発売されていたそうだ。その時つけられていた邦題が何とも。。。。
・「Takin' Care Of Business」→「仕事にご用心」
・「You Ain't Seen Nothin' Yet」→「恋のめまい」
まるで70年代のB級アイドルの歌にありそうなタイトルだ(笑)。レコード会社の営業担当者はアイドル担当から異動した方だったのだろうか?
(2002年3月)
<プロフィール>
<CDの発売状況> →CDの発売状況(詳細)へ
(2枚組み輸入ベスト盤「The Anthology」(314 514
902-2)のライナーからわかる情報を掲載しました)
<おすすめアルバム>
| Bachman Turner Overdrive 「The
Collection」 (2001) 輸入盤 Spectrum (544 429-2) 01. You Ain't Seen Nothin' Yet 02. Roll On Down The Highway 03. Flat Broke Love 04. Blue Collar 05. Takin' Care Of Business 06. Gimme Your Money Please 07. Welcome Home 08. Not Fragile 09. Rock Is My Life And This Is My Song 10. Four Wheel Drive 11. Don't Let The Blues Get You Down 12. Lookin' Out For #1 13. Shotgun Rider 14. I'm In Love 15. Sledgehammer 16. Find Out About Love 17. Hold Back The Water |
BTOはギターのランディ・バックマンを中心とするバックマン3兄弟(ギターのティム・バックマン、ドラムのロブ・バックマン)によって結成されている。そしてランディの新たなパートナーとなったのがベースのフレッド・ターナーである。バートン・カミングスと同じくハードロックの似合うボーカルを得意としている。従って各曲のボーカルはランディとターナーが交代で担当している。
またランディのポップ感覚がゲス・フー時代よりうまく曲に反映されている。ターナーのヘヴィなセンスも加わり、ちょうどトム・ジョンストン在籍時代のドゥービーのポップ感とグランド・ファンク・レイルロードのハード感の間をいくような感じだ。
彼らの強みはなんと言ってもドライブ感あふれるアメリカンロックだろう。1曲目「You Ain't Seen Nothin' Yet」は全米大ヒット曲。軽快なリズムギターに、器用にそしてルーズに歌うランディのボーカルが楽しい。2曲目「Roll On Down The Highway」の迫力あるドライブ感。ターナーのボーカル曲で激しくリズムを刻むドラムとベースがツインギターと共に突き進んでいく間奏が痛快だ。
10曲目「Four Wheel Drive」はハードなブギのリフを奏でるギターがよい。サビは全員でコーラス。そう、ドゥービーの「Double Dealin' Four Flasher」のような感じだ。別にどちらがどちらの影響を受けたということではなく、当時(75年頃)はこのようなスタイルの曲が人気だったのかもしれない。13曲目「Shotgun Rider」は個人的なベストトラック。アコースティックギターがドライブ感を演出するポップな1曲。さらにアウトロでのアコースティックギターのかき鳴らしが実にかっこいい。ボーカルはランディ。
大ヒット曲の5曲目「Takin' Care Of Business」は、ランディがストーンズ風のギターリフのイントロにノリのある楽しいロックを展開する。このバンドではあまりキーボードが活躍しないが、この曲に限りホンキー・トンキーなピアノがうまいアクセントをつけている。
彼らのもう一つの魅力はミディアムテンポのハードロックだろう。ターナーが歌う3曲目「Flat Broke Love」はその典型だ。15曲目「Sledgehammer」も徹底的にハード。ランディとターナーのツインボーカルではないだろうか。
おもしろいのは7曲目「Welcome Home」。アコギターのイントロに始まり、いきなりサビでハードなギターが炸裂する。しかしエンディングはなぜかジャズのアドリブを聞かせる小技をみせる。ランディが器用なギタリストであることがよくわかる。
8曲目「Not Fragile」はターナー作。ハードなギターのリフが魅力。これはパソコン通信で教えてもらったのだが、曲名はイエスの名作「Fragile(こわれもの)」からヒントを得たらしい。しかしプログレのような小難しさとは無縁の力技の曲である。ひょっとするとそのつもり「Not Fragile」と名付けたのかもしれない。
一方、このベスト盤でも「Takin' Care Of Business」で聞くことができる通り、ランディのブリティッシュ好きが随所に現れる。つまりアメリカンロックにブリティッシュ系ロックギターのリフを取り入れているのだ(この謎はゲス・フーのページを参照してください)。例えば11曲目「Don't Let The Blues Get You Down」ではフリー風の、ネット上の友人に教えてもらった6曲目「Gimme Your Money Please」でもやはりストーンズ風のギターが飛び出しユニークだ。
| Bachman Turner Overdrive 「Live」 (2000) 輸入盤 EMI-Capitol Music (72435-24505-2-7) 01. Let It Ride 02. Give It Time 03. Roll On Down The Highway 04. Welcome Home 05. Takin' Care Of Business 06. Slow Down Boogie 07. You Ain't Seen Nothin' Yet (previously unreleased) |
このライブ盤は上記のベスト盤と一緒に購入してきたもので、選んだ理由は値段が1,180円とやはり安かったからである。一応レーベルがEMIのため公式盤のようだが、別に発売されている「King Biscuit Flower Hour」でのライブ盤と内容が同じなので廉価盤と思われる。
さて「King Biscuit Flower Hour」のHPで確認すると、このライブは74年シカゴ公演のものだった。74年といえば「You Ain't Seen Nothin' Yet」をヒットさせノリにのっていた頃のライブということになる。
そのノリを証明するかのように、ライブではひたすら力技の応酬である。
1曲目「Let It Ride」は彼らの初期の曲であるが、スタジオテイクではアコースティックギターを使い丁寧なコーラスをつけるなどハードな中にも洗練された味わいを見せているが、ここでは最初からエレキギター一筋である。ターナーのボーカルもコーラスも一段と激しい。2曲目「Give It Time」も手をゆるめることはない。間奏やエンディングで延々と弾きまくるランディのギター、そのバックではロブのドラムとターナーのベースがやはり激しいリズムを叩き出している。
日本でも人気のあるグランド・ファンク・レイルロードはやはり肉体的演奏を前面に押し出していたため一部評論家から酷評されることもあったそうだが、BTOも同じだったのではないか。3曲目「Roll On Down The Highway」での飽くことなくハードな演奏を続けるのを聴いているとそんなことを心配してしまう。しかし、これもまたアメリカンハードの味わいなのだろう。この曲の間奏で巨体を揺らしながらギターをかき鳴らしているランディを想像しつつふと我に返ったとき、もう自分もBTO中毒なのだなと妙な感心をしてしまう(笑)。
4曲目「Welcome Home」の前半で少しだけクールダウン、だがサビがこれまたヘヴィなのだ。アウトロのギターはスタジオテイクでのジャズギターではなく、ポップな音色で弾いている。やはり豪快一直線のライブでは小技は難しいようだ。
大ヒット曲である「Takin' Care Of Business」では、とにかく徹底して観客を煽る。間奏はスタジオテイクピアノの代わりにランディとブレア・ソーントンのギターを交代で聞かせてくれる。
最後の「Slow Down Boogie」はエンディングにふさわしいハードなブギ。ボーカルはランディ。アメリカ南部風のスライドギターはソーントンではないかと思われる。ランディは60年代ブルースロック風のねばりあるフレーズを弾き、このライブ盤でランディのブリティッシュ好きをかいま見ることができる瞬間である。
7曲目「You Ain't Seen Nothin' Yet」はスタジオテイクの別バージョンとなっている。
恐らくはこのような熱いステージを日夜繰り広げていたと思われるBTO。しかしこのCDで聞くことができる6曲だけでは満足できない。
是非ともしっかりとしたライブ盤を発掘再発してもらいたい。
2002年4月14日追記 「Best Of Live」
| Bachman Turner Overdrive 「Best
Of Live」 (1994) 輸入盤 Curb (D2-77653) 01. Takin' Care Of Business 02. Blue Collar 03. Gimme Your Money Please 04. American Woman 05. Rock Is My Life 06. Shakin' All Over 07. Four Wheel Drive 08. Weekends 09. Not Fragile 10. Let It Ride |
上記で紹介した「Live」の内容に今ひとつ満足がいかないため、BTOのライブ盤を探して購入したのがこの「Best Of Live」である。タワーレコードで990円という廉価盤であった。ところが廉価盤の悲しさか、ライブ盤でありながら1曲終わることにフェイドアウトする不親切な作りである。これでは臨場感が台無しだ。
いつ頃のライブだろうと思ったらその記述が全くないので不明である。しかしメンバーが興味深い。ランディ、ティムのバックマン兄弟、ターナーに加えてドラムにはゲス・フーのゲイリー・ピーターソンがクレジットされている。また曲間でターナーが「BTO is Back!!」と叫んでいることから、恐らくは再結成ライブではないかと思われる。
さて、選曲はありがたいことに上記「Live」とは2曲しか重複していない。まず目を引くのは4曲目「American Woman」と6曲目「Shakin' All Over」の2曲。これはゲス・フーの持ち歌を演奏しているのである。「American Woman」は前半のアコースティックブルースパートを省いたエレキパートのみの演奏。ボーカルはターナー。原曲に忠実だが、リフのギターは若干エッジを効かせた音色にしている。「Shakin' All Over」は60年代ブリティッシュビートの曲を演奏しているつもりだろうが、アメリカンハードの表情が強くなっており妙な演奏となっている。個人的にはゲス・フーの原曲よりこちらの方がアンバランスさがありおもしろいと思った。
BTOのオリジナル曲では、3曲目「Gimme Your Money Please」や7曲目「Four Wheel Drive」は「Live」と同じ力技で勝負している。しかし、2曲目「Blue Collar」や5曲目「Not Fragile」はハードでありながらも再結成のためか、余裕が感じられる。うまく「タメ」をきかせているのだ。「Blue Collar」でのアウトロの長いギタージャムは聞き物である。「Not Fragile」でのリズムセクションとギターの掛け合いもうまい。10曲目「Let It Ride」は「Live」では迫力ある演奏に終始していたがこちらは原曲に近い。イントロのギターやコーラスの軽快さとサビへ向かうハードさの両方を堪能できる今回の演奏の方を、私は気に入った。
ところでこのライブ盤を聞いて改めて気がついたのだが、ランディ・バックマンは影響を受けたギタリストのフレーズをそのまま曲に反映させてしまうようだ。例えば、1,3曲目はストーンズ(キース・リチャーズ)、10曲目はドゥービーブラザーズといった具合だ。8曲目「Weekends」はランディが歌うポップないい曲なのだが、やはりギターのリフにステッペンウルフの影響を強く感じる。これでは「パクリ」と言われないかと冷や冷やしてしまうのだが、一応ファンとして「いいとこ取りをしつつオリジナリティを生み出している」とフォローしておこう(笑)。
それにしても、やはり今回のライブ盤でも満足できない。BTOには全盛期に「Japan Tour」というライブ盤を発表しているが残念ながらCD化されていない。この中の1曲が2枚組ベスト盤「The Anthology」に収録されている。「Don't Get Yourself In Trouble」で、10分を超す大ハードロック大会、気迫あふれる演奏となっている。私がライブ盤を求めているのはこういう素晴らしい演奏があるためである。買う人は少ないだろうが、レコード会社の方にはなんとしてもライブ盤の決定打を発売してくださるよう重ねてお願いしたい。