The Guess Who (ゲス・フー)

<変遷の末に結実するアメリカンロック>

88年くらいから漫画家の柴門ふみ氏のファンになり、結構作品を読んだ。柴門氏は「同級生」「東京ラブストーリー」「あすなろ白書」で人気を博した漫画家だ。氏はロックファンとして知られており、ペンネームの「柴門」も「ポール・サイモンからとった」と公言している。その氏の89年の短編集である「新・同棲時代」「胸いっぱいの愛を」という作品が収録されていた。主人公は地方公務員で新しいステップが踏み出せず煩悶する日々が続き、妻との関係もぎくしゃくし始めていた。その主人公の趣味が60〜70年代のブルースやロックを聴くことだった。
主人公のカセットには「Led Zeppelin」や「Deep Purple」に混じって「Guess Who」があった。ゲス・フー・・・・当時、名前だけはどこかで聞いていたが、どんなバンドなのか全くわからず、聞く機会もなかったバンドだ。まさかこんなところで名前が出てくるとは。

時は流れて、2001年2月、輸入盤で購入したリンゴ・スター&オールスター・バンドのライブアンソロジーにランディ・バックマンによる「Takin' Care Of Business」バートン・カミングスによる「American Woman」が収録されていた。どちらもアメリカンロックの心にあふれる素晴らしい曲で、英語の解説を見ると、バックマンは「バックマン・ターナー・オーバードライブ(以下、BTO)」と「ゲス・フー」に、カミングスは「ゲス・フー」に在籍していたことがわかった。とりあえずBTOを聞いてみることにしてベスト盤とライブ盤を購入して聞いてみたところ、すっかり気に入った。
そして、ゲス・フーも探して聞いてみることにした。2001年11月のことである。柴門氏の漫画で名前を発見して、実に12年後に聞くことになったのだ。もちろん私好みのサウンドですっかり気に入ってしまった。しかし音楽的変遷もかなり激しかったようだ。その辺りは、「おすすめアルバム」をご覧願いたい。

余談になるが、「胸いっぱいの愛を」の主人公について....妻との関係は悪化し、ついに地方公務員もやめてしまう。しかしそれは昔からの夢だったサッカーを追求するためであり、少年サッカーの指導員になるためであった。指導員になって数ヶ月後、別居していた妻も戻ってくる。
サッカー教室の後、いつものようにヘッドホンを耳に当てていると少年たちが「何を聞いているの」と尋ねてくる。主人公「ペット・ショップ・ボーイズ・・・・妻に勧められたんだ。新しいのを聴かないとね」ときた。新しいのを聴く・・・・耳が痛いセリフだ(笑)
(2002年2月)

<プロフィール> →(特別企画)ビジュアル面から検証するゲス・フーへ
<CDの発売状況>

残念ながら資料がなく、どのようなアルバムを出していたのか、メンバーは誰だったのかさっぱりわかりません。またアルバムは国内盤が発売されていません。ここでは英語の解説を斜め読みしてわかったことと、手持ちのCDのみ紹介いたします。

1964: ランディ・バックマン(g)を中心に結成
1966: バートン・カミングス(vo、key)が加入
1970: バックマン脱退。カート・ウィンター(g)加入
1975: 解散

手持ちのCD(全て輸入盤です)
「Shakin' All Over」(2001) 67年までのベスト盤。リマスター化
「Greatest Hits」(1999) 68年以降のベスト盤。リマスター化
「Live At The Paramount」(1972) 2000年の再発でリマスター化&ボーナストラック6曲追加
「Running Back Thru Canada」(2001) 2000年の再結成ライブ、2枚組

なお、アメリカではヒット曲もあるバンドです。89年の時もそうでしたが、国内盤が1枚もないというのは残念でなりません。ベスト盤でもよいので1枚くらいは出してくれることを切望しています。

<おすすめアルバム>

The Guess Who  「Shakin' All Over !」 (2001)
輸入盤 Sundazed (SC11113)
01. Shakin’ All Over   02. Tuff E Nuff   03. I'd Rather Be Alone   04. All Right   05. Baby Feelin'
06. You Know He Did   07. Believe Me   08. Clock On The Wall   09. It's My Pride
10. If You Don't Want Me   11. Baby's Birthday   12. Made In England   13. Seven Long Years
14. Gonna Search   15. Stop Teasing Me   16. Hey Ho (What You Do To Me)   17. One Day
18. I Should Have Realized   19. Use Your Imagination   20. Don't Act So Bad   21. As
 22. Just A Matter Of Time   23. Flying On The Ground Is Wrong   24. Goodnight Goodnight

本文でも述べたように、私はゲス・フーより先にBTOを聴いていた。気に入ったので友人にも聞いてもらったところ、「ギターのリフにブリティッシュロックの影響を強く感じる」との指摘をいただいた。なるほど、キース・リチャーズやフリーのようなリフや音色が飛び出してくる。一体、ランディ・バックマン(ギター)のルーツはどこにあるのだろう?
と思っていたところでゲス・フーを聞き始めた。この「Shakin' All Over !」は下で紹介するベスト盤と一緒に購入したもので、先にそちらを聞き、後からこのアルバムを聞いた。
この2枚のアルバムを聴き比べてみて驚いたのだが、彼らの初期の活動は、もろに60年代のブリティッシュ・ビート・バンドそのものの音を出しているのである。私の知っているバンドではヤードバーズサーチャーズにそっくりであった。バックマンはブリティッシュ・ビート・ムーブメントへの憧憬を強くもって音楽活動を始めたのではないかと思われる。
このアルバムは2001年に発売されたベスト盤で、収録されている曲は64年から67年にかけて録音されたものである。バックマンを中心にスタートして、バートン・カミングスが加入して以降の曲まで収録されている。正直に白状すると、私はブリティッシュ・ビート・バンドは少し苦手な分野で、ゲス・フーも中期〜後期のアメリカンロック寄りの路線が好きだ。偉そうな言い方で恐縮だが、このアルバムに収録された曲も、バンドとしての強い個性を獲得しているとは思えない。ギターの音色、ドラムのリズムパターン、ボーカル&コーラスまで、全て当時のブリティッシュ・ビート・ムーブメントへのコンプレックスを感じる。下で述べる「Greatest Hits」でのゲス・フーとはまるで別のバンドであるかのように思えてしまう。
各曲の紹介であるが、レコード・コレクターズ誌2001年11月号での大森眸氏による解説を少し引用させていただく。7曲目「Believe Me」はキンクスの影響を受けたバックマンの曲。なるほど、キンクスの代表曲「You Really Got Me」にそっくり(笑)、しかし間奏のギターソロは聞き物だ。8曲目「Clock On The Wall」はアニマルズ風とのこと。こちらもアニマルズの代表曲「朝日の当たる家」に似ている。9曲目「It's My Pride」はカミングスが加入した曲。バックマン作詞作曲でカミングスが歌っている。カミングスもまだ自信がないのか絶叫もどことなく背伸びした感じがする。12曲目「Made In England」はシャドウズの影響が強いインスト曲。23曲目「Flying On The Ground Is Wrong」はニール・ヤングのカバー。ここでようやくアメリカらしさが出てきたようなよいアレンジだ(とはいえ、彼らはカナダのバンドである)。
私も気がついたことを述べておきたい。6曲目「You Know He Did」はキース・リチャーズ風のギターリフが印象的だ。10曲目「If You Don't Want Me」でのカミングスのボーカルは中期につながる個性を発揮しつつある。サウンドもスピード感にあふれスリリング。11曲目「Baby's Birthday」や15曲目「Stop Teasing Me」はギターやコーラスが初期のビートルズ風である。14曲目「Gonna Search」はジミ・ヘンドリックス風といったことろか。
このように、60年代ブリティッシュの印象が非常に強いサウンドである。ゲス・フーを全て聴いてみたい方、または60年代のブリティッシュがお好きな方にはその影響を探るアイテムとしてお勧めできる。
またサンデイズド社らしく丁寧なリマスタリングが施されているので音質的にも安心できる。
(余談)
この頃のゲス・フーガいかにブリティッシュ・ビートかぶれしていたか、ビジュアル面でもご確認ください(笑)。

The Guess Who   「Greatest Hits」 (1999)
輸入盤 RCA/BMG (07863 67774-2)
01. These Eyes   02. Laughing   03. Undun   04. No Time   05. American Woman 
06. No Sugar Tonight / New Mother Nature   07. Hand Me Down World   08. Share The Land 
09. Hang On To Your Life   10. Albert Flasher   11. Rain Dance   12. Sour Suite
13. Heartbroken Bopper   14. Guns, Guns, Guns   15. Follow Your Daughter Home
16. Star Baby   17. Clap For The Wolfman   18. Dancin' Fool 

こちらもベスト盤であり、バートン・カミングスが中心となった中期(68年)〜後期(74年)からの選曲となっている。転換期がどこだったのかが不明だが、「Shakin' All Over !」で聞かれるブリティッシュ・ビートへのコンプレックスはほぼ払拭され、グループとしての個性をつかんでおり、その意味でもベストな選曲ではないだろうか。
初代リードギタリストであるランディ・バックマン在籍時代の曲は6曲目まで。バックマンのポップかつロック色の強いギターとカミングスのメロディアスながらもハードさを備えたサウンドが融合しており名曲揃いである。
まずはヒット曲である「These Eyes」、バックマンとカミングスの共作であるロック・バラード。ボーカルだけではなくキーボードも担当するカミングスの個性が頼もしい。2曲目「Laughing」もカミングスが甘く歌うバラード。コーラスは後期では見られなくなる厚みがある。また1、2曲目ともにストリングスやコーラスワークにはソウル・ミュージックの影響が少し感じられる。
3曲目「Undun」はバックマンの曲をカミングスが歌う。ギターの音色はバックマンが得意とするジャズの音色をフェイクしたものが。4曲目「No Time」はゲス・フー的ハードロックの名曲。いよいよカミングスのボーカルが全開となっている。実はカミングスの声質はフリーのポール・ロジャースに声質が似ており、ハードな曲に実に合うのだ。ギターもハードなエレキにアコースティックギターによるリフを組み合わせており実に巧みだ。
ゲス・フーの評価を決定づけた5曲目「American Woman」は大ヒット曲である。作者はバックマン、カミングス、ゲイリー・ピーターソン(ドラム)、ジム・ケイル(ベース)による共作である。まずはアコースティックブルースのセッションで幕を開け、ミディアム・テンポのハードロックに突入する。ドン・マクドゥーガルのリズムギターをバックにバックマンがブリティッシュロック好きらしい粘りあるギターを弾く。カミングスのボーカルもシャウトを交えノリにのっている。ベースとドラムがシンプルに徹しているのも曲の迫力を支えるのに成功している。6曲目「No Sugar Tonight / New Mother Nature」はメドレー。アコースティックなロックを2曲つなげている。後半の「New Mother Nature」はビートルズの「I Wanna Be Your Man」を下敷きにしているのはご愛敬、きっとバックマンのアイデアに違いない。曲の終わりは前半の「No Sugar Tonight」を重ねるなど、楽しい1曲となっている。
7曲目以降はバックマンがBTO結成のため脱退し、2代目リードギタリストのカート・ウィンター在籍時代の曲である。ロック〜ハードロックだけではなく、音楽の幅を広げていった軌跡が見える。
7曲目「Hand Me Down World」はますますカミングスの絶叫に磨きがかかっている。おそらくはバックマン脱退後にゲス・フーのフロントマンを1人で背負わなければならなかったはずだが、その重圧は全く感じられない。8曲目「Share The Land」はゲス・フーのバラードとしてはピカ一の出来映えではないだろうか。ウィンターの泣きのギターにカミングスの情熱的なボーカルが交差する。コーラスからエンディングへますます盛り上がるパートでは、カミングスもあえて絶叫型ボーカルを押さえ気味にしている。
10曲目「Albert Flasher」ではカミングスのホンキートンクなピアノが冴える。11曲目「Rain Dance」ではコーラスワークとベースのリズムがとてもユニーク。13曲目「Heartbroken Bopper」、間奏の白熱のギターバトルが聞きものとなるハードロック。
14曲目「Guns, Guns, Guns」もハードロックスタイルだが、カミングスのピアノがリード楽器となり、ボーカルにも円熟味が感じられるようになっている。15曲目「Follow Your Daughter Home」はメンバー全員のペンによる、今までの曲調からは一転してカリビアンな曲だ。16曲目「Star Baby」はスピード感あふれる楽しいロックンロール。カミングスの作曲だがさらに幅が広がってきている。スライドギターも楽しさに拍車をかけている。
残念ながら、ゲス・フーのオリジナルアルバムが何枚あるのかわからないし、きちんとCD化されているのかも不明だ。しかしこのベスト盤は、彼らのよいところをほぼ全て網羅しているのではないだろうか。お勧めのベスト盤である。なおこちらもリマスター化されているので、音質も申し分ない。

The Guess Who  「Running Back Thru Canada」 (2001)
輸入盤 RCA/BMG (07863-68093-2)
(disc1)
01. Runnin' Back To Saskatoon   02. Guns Guns Guns   03. These Eyes   04. Rain Dance
05. Glamour Boy  06. Lookin' Out For #1   07. Sour Suite   08. No Sugar Tonight/New Mother Nature 
09. Talisman   10. Let It Ride   11. Undun   12. Follow Your Daughter Home 
(disc2)
01. American Woman   02. Albert Flasher   03. Hand Me Down World Winter   04. Orly 
05. Takin' Care Of Business   06. Laughing   07. Clap For The Wolfman   08. Bus Rider 
09. No Time  10. Share The Land

上記のベスト盤「Greatest Hits」の解説はもちろん全部英語で、語学力の乏しい私は全く読むことができない。拾い読みしてみると、どうやら75年に解散したようだ。
このアルバムは2000年の夏にカナダで行われた再結成ツアーの模様を収録したライブ盤である。なんといってもバートン・カミングスとランディ・バックマンが揃って参加している。いや、やはり再結成をするからには、この2人が顔を揃えてこそ意味があるはずだ。
さて、メンバーは全員過去にゲス・フーに在籍したメンバーばかり。つまりおっさん軍団である(笑)。しかしそこはベテランらしい熟練した味わいを発揮し、なおかつ迫力も満点である。ゲス・フー的ロックンロールの熱気を十分に感じていただけるはずだ。

disc1の1曲目は「Runnin' Back To Saskatoon」。カミングスのピアノとハーモニカ、バックマンとドニー・マクドゥーガルのギター、時の経過を奪い返すような軽快な演奏だ。カミングスのボーカルにバックマンら全員がバックコーラスが加わり、ボーカル面も一層パワフルになっている。続く「Guns Guns Guns」は一転してハードロックできめる。バックマンのギターが加わっている分ギターパートがさらに強力である。
3曲目「These Eyes」は大ヒット曲のため、観客からより一層大きな歓声が上がる。カミングスのボーカルは、若い頃より張りが出ているのではないかと思うくらいの充実ぶりだ。4曲目「Rain Dance」は軽快なロックンロールながらも、ビル・ウォランスのベースとゲイリー・ピーターソンのドラムは重量級のリズムを見せる。これにマクドゥーガルとバックマンの対照的なギターが絡み聞き所の多い演奏となっている。5曲目「Glamour Boy」は上記のベスト盤には収録されていないバラード。エンディングはバックマンのギターソロを大きくフィーチュアして盛り上げる。
ここから12曲目までアコースティックセットとなる。6曲目「Lookin' Out For #1」はBTOの曲。ボーカルはもちろんバックマンだ。アコースティックギターを弾きつつスローテンポでじっくり聞かせる。7曲目「Sour Suite」はカミングスのピアノを中心で。スタジオテイクでのストリングスはアコースティックギターのカッティングにリアレンジしており、実にうまい。8曲目「No Sugar Tonight/New Mother Nature」、この曲はカミングスを中心にした厚みのあるコーラスを聴いてもらいたい。ちなみに今回のメンバー5人は全員が歌う。それにしても厚みのあるアコースティックギター、そして軽快に弾くピアノの見事さ!
10曲目「Let It Ride」もBTOの曲なのだが、アコースティックセットの中では最も素晴らしい出来映えではないだろうか。バックマンのボーカルに抑えた感じのコーラス、そしてマクドゥーガルのアコースティックギターソロ。ベテランロックミュージシャンらしい円熟味にあふれている。BTOでは豪快なハードロックが、こちらは見事なアンプラグドロックとなっている。ほめてもほめても、ほめきれない1曲だ。

続いてdisc2は代表曲「American Woman」からスタート。スタジオテイクでのアコースティックブルースのパートはエレキギターとなり、またカミングスのハーモニカもフィーチュア、後半のハードロックパートを期待させる演出となっている。そして後半部に突入、前半部からとばし気味のカミングスのボーカルはそのままの勢いを持続し、間奏ではバックマンの気迫と粘りにあふれる長尺のソロが展開する。なんと、全編で13分にも及ぶ演奏となっており、このライブ盤一の聞き物である。
2〜4曲目は軽快なロックンロール。4曲目「Orly」はコーラスアレンジに工夫をこらし、間奏はカミングスのピアノがリードをとる。
5曲目「Takin' Care Of Business」は、またまたBTOのヒット曲。ボーカルはもちろんバックマン、間奏では全員に見せ場を用意し、会場は再び興奮のるつぼとなる! この再結成ライブはゲス・フーとBTOの代表曲が両方楽しめるぜいたくな選曲となっているのだ。6曲目「Laughing」はしっとりと聞かせるバラード。それでもギターのパートはスタジオテイクより厚みを増している。
そして軽快な8曲目「Bus Rider」、ハードロック魂を見せる9曲目「No Time」、エンディングにふさわしい泣かせる展開の10曲目「Share The Land」で幕を閉じる。

実は私が一番最初に聴いたゲス・フーのアルバムがこのライブ盤である。最初に輸入CD店に探しに行ったとき、数枚のベスト盤があったがどれを購入してよいのかわからなかったのでこのCDを買ってきた。しかしそれは運が良かったようだ。すっかりゲス・フーのファンになってしまった。一番最初に聞くアルバムが再結成のライブ盤。これは極めて邪道ではあるものの、ゲス・フーのCDの中で最もお勧めできるのがこのアルバムであると断言したい。


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