Re-Issue CD (再発CD事情)

<いずれにしても財布と相談>

今回は「Remaster(リマスター盤)」のページと関連があるため、そちらと合わせて読んでいただけるとありがたい。まずRemaster(リマスター盤)のページに少し補足しておきたい。
CDが再発になるというのは、まず値下げしてくれる場合(廉価盤)やレコード会社が変わる場合がある。
それ以外の再発は、
 1.ボーナストラック収録で再発
 2.リマスター化されて再発
 3.紙ジャケット仕様になり再発
などがある。この1〜3がいずれかと組み合わさったものが一番多いパターンである。「リマスター化&ボーナストラック多数収録!」とか「紙ジャケット仕様リマスター盤!」などである。Remaster(リマスター盤)のページで紹介したジョージ・ハリスン「All Things Must Pass (New Century Edition)」は、1〜3の全てを満たし、しかも限定版ではなく定番商品というまことにうれしい再発であった。

では、ここから先は再発について考えてみたい。

**紙ジャケット仕様盤について**
プログレッシブロックの名盤やレア盤が続々と紙ジャケット仕様リマスター盤で再発され話題となっている。数年前では考えられない、非常にうれしい事態である。プログレファンはLPに親しんだ世代が多いためだろうか、紙ジャケの人気度が高くその出来映えも特によいようだ。大手4バンド(キング・クリムゾン、ピンク・フロイド、EL&P、イエス)は全て限定紙ジャケ盤が発売された。
しかし紙ジャケット仕様になる場合、レコード会社のコストもかさむためか、ほとんどが限定版扱いである。そのたびに苦しい選択を迫られる。シリーズで一斉にたくさん発売されるからである。手持ちのCDとの重複はもとより、ほしいCDを全部買うわけにはいかない。そんなことをするとCD屋に毎月数万円支払い続ける羽目になる。リマスター盤のページに書いた「厳選の上、せいぜい1枚を購入するのがやっとだ」というのは本当に苦渋の選択である(笑)。
6月20日にイエスの7作品が限定紙ジャケ盤で発売された。発売前から異常に話題になり、実際に24日に行きつけのCD屋をのぞくと、ほとんど売り切れになっていた。一体、7月25日発売予定の第2回発売分(5作品)と合わせてシリーズで何万枚売れるのであろうか? この話を妻にすると「イエスってそんなに人気があるのか?」と尋ねられ、返答に困ってしまった(笑)。
こうした現象はプログレに限らない。レッド・ツェッペリン、スティーリー・ダン、ブルース・スプリングスティーンなど、速攻で売り切れてしまった紙ジャケ限定シリーズがいくつもある。
また、ジャズの世界でも紙ジャケは人気のようだ。こちらはロック以上にLPへのこだわりが強い方が多いようで中古LPの流通が半端ではないらしい。レコード会社もCDに目を向けてもらおうと、音質にうるさいファンのためにリマスター化はロックより進んでいるように見えるし、紙ジャケ限定盤もよく発売されているようだ。マイルス・デイビスの2000年春から始まったソニー社のシリーズは、やはりあっという間に売り切れてしまった。

**世界初CD化作品について**
あまり書きたくないが不況が続いている。この影響はCDの売上げにも影響を及ぼしているようで、ここ数年芳しくない状態が続いているらしい。そこでレコード会社では今まであまりCDを購入しなかった層(30代後半以上)への訴求を始めている。たとえば邦楽なら70年代以降のヒット曲を年代別に編集したオムニバス盤をシリーズで出したりしている。
洋楽の紙ジャケ限定シリーズも多少はこうしたことを意識しているはずだ。ほとんどがLP時代の作品(80年以前)がラインアップされているからである。
この動きとは別に「世界初CD化作品」の発売がある。今までCD化されていない作品やCD化されること自体が考えにくい作品がCD化されている。これも「昔は洋楽ファン、音楽ファン」だった人々に強くアピールするのではないだろうか?
さて「世界初CD化」再発を販促手段から離れて考えてみたい。
日本では80年代後半に早くもCDの出荷量がLPを上回った。そのためか、そのころから「世界初CD化」作品が日本でちらほら発売されるようになった。当時のCD化すべきソフトの不足という側面もあったと思う。最近の動きを見ていると、レコード会社から積極的な働きかけを行い「世界初CD化」を行っている。
まずファンのリクエストに応えてCD化するという試み。ソニー社が行っている「洋楽秘宝館」では、インターネット上でファンのリクエストを集い、一定数に達したものをCD化、発売している。私は廃盤や未CD化というのが常々いやだった。このデジタル技術が進んだ時代にCDをどんどん廃盤にしたりするのをやめられないかと思っている。廃盤にするのではなく、デジタル技術を用いて聞きたい音楽をすぐにCDという形で購入できるやり方はないか、そうすればレコード会社も在庫を抱えずに済むし、音楽ファンも安心して自分の聴きたい時に購入できるのに、と思っていた。「洋楽秘宝館」はこの私の希望とは形は違うが、ファンの声が反映されるという点で大きく評価したい。
次にムーブメントに合わせた形でレコード会社が再発・発掘を行うという試み。上記のプログレのレア盤のCD化もそうだし、私の知るところでは、昨今のAORブームにのってドリームズヴィル社やクールサウンド社が積極的に再発を行っている。AORは80年代前半に日本でも大ブームを呼んだようだ。邦楽ミュージシャンに与えた影響も大きいらしい。しかし悪くいえばアルバム1枚で消え去ってしまったミュージシャンも多く、未CD化作品が多数あるとのこと。こうした作品が再び店頭で購入できるようになってきた。当時のブームを知っている人は懐かしんで購入する人がいるだろうし、私のようにどちらかといえば過去の作品を評論を見ながら購入を検討しているものには、かなりのアピール度がある。
過去の作品が気楽に購入できるというのは本当にありがたいことだ。よいとわかっていてもなかなか中古LPを購入して聞こうと思わないし(もちろんLPプレイヤーはない)、そもそも作品の存在自体を知らない場合がほとんどである。新しいミュージシャンやアルバムに触れる機会が増えるというのは歓迎すべきことだと思う。

最後に、再発CDが手持ちのCDと重複している場合の、私の「苦渋の選択〜その購入基準」をご覧ください。
1.手持ちのCDが非リマスター&ボーナストラックなしの通常版の場合
(プラケースのリマスター盤が発売された時)
  →そのCDがどれだけ好きかによって購入を検討する

(プラケースのリマスター盤にボーナストラック収録の時)
  →財布の中身と相談の上、前向きに購入を検討する

(限定紙ジャケリマスター盤の時)
  →財布の中身と相談の上、できるだけ購入できるように努力する。

2.手持ちのCDが既にリマスター盤の場合
(プラケースのリマスター盤にボーナストラック収録の時)
  →ボーナストラックの中身を判断しつつ、購入を検討する。
   ただし、できるだけ我慢するように努力する。

(限定紙ジャケリマスター盤の時)
  →そのCDがどれだけ好きかによって購入を検討する
   ただし、財布の中身と相談の上、できるだけ我慢するように努力する。

まあ我慢とかいいながら、実際に店頭で見てしまった時には頭の中から「我慢」の2文字が吹っ飛んでいることも多々ある(笑)。
(2001年6月)


<関連作品>

Yes  「The Yes Album」  (1971)
01. Yours Is No Disgrace  02. The Clap
03. Starship Trooper <a.Life Seeker b.Disillusion c.Wurm>
04. I've Seen All Good People <a.Your Move b.All Good People>
05. A Venture  06. Perpetual Change

本文で紹介しているイエス限定紙ジャケット仕様リマスターシリーズで6月20日発売分7作品のうちの1枚。
実は7月25日発売分の5作品が98年5月に一度紙ジャケリマスター盤で発売されているのだが、大好評であっという間に売り切れてしまったらしい。しかもその時の発売分がネットオークションなどで高値を呼ぶ結果となってしまった。今回の初紙ジャケ化作品も含む満を持しての再発となった。ちなみにライブ盤「イエスソングス」は従来盤が2枚組であったのを、LPに忠実な3枚組に戻すという荒技をやってのけた。
さてリマスター具合はどうかと思い早速聴いてみた。従来盤をもっていないので比較できないが、クリス・スクワイアのベースが迫力を増し、ジョン・アンダーソンを中心とした自慢のコーラスワークが鮮明になっていると思われる。
このアルバム自体もイエスクラシックと呼べる名曲揃いだ。現在に至るまで何度もライブで取り上げられている。プログレの代表的アルバムとはいえポップな楽曲が中心であり、プログレを聴いたことがない方にもにもお勧めできる。やはりプログレ界きっての名ボーカリストであるアンダーソンと、練りに練られたハーモニーが聴きやすさや親しみやすさをよんでいるのではないだろうか。
1曲目「Yours Is No Disgrace」は新加入のスティーブ・ハウのギターが早くも活躍、9分を越す大曲ながらだれることなく一気に突き進む。中盤のハウのカッティングにスクワイアのベース、トニー・ケイのキーボード、そしてビル・ブラッフォードの変拍子ドラムが絡むところはスリリングだ。ハウのソロである2曲目「The Clap」や4曲目「I've Seen All Good People」はアコースティックギターを大きくフィーチュア、バンドのハウへの期待が伝わってくる。3曲目「スターシップ・トルーパー」ではタイトル通りSF的イメージをうまく取り入れ、彼らの持ち味であるスペーシーさも十分に生かしている。

Byrne And Barnes   「An Eye For An Eye」  (1981)
01. An Eye For An Eye  02. Standby Love  03. Crack The Whip  04. Keep On Running
05. One More Try For Love  06. Never Gonna Stop Loving You  07. Love You Out Of Your Mind
08. I'll Try A Little Everyday For You  09. Making For The First Time  10. Be My Baby
11. Right Through The Heart  12. That's The Way She Goes  13. Who's That Look In Your Eye

ドリームズヴィル社から発売されたAORの隠れた名盤の世界初CD化作品。2曲の未発表曲(12,13)を追加収録している。もともと81年に発売されたが、本国アメリカではすぐに廃盤になりその後は国内盤が発売されていたそうだ。
解説によるとバーン&バーンズロバート・バーンブランドン・バーンズのユニットである。現在、バーンはポップ・カントリー、バーンズはR&Bの分野で活躍しているそうだ。
さて、私はこのアルバムを全く知らなかった。同社の再発CDは内容的に優れたものが多かったので発売告知を見て思い切って買ってみた。聞いてみると確かに「これぞAOR!」といった内容。しかしAORにありがちな甘口のサウンドではなく、解説にあるとおりクールな印象を受ける。シンセやエレピを基調としてさりげなくギターソロが絡むあたりがアダルトな雰囲気だ。多くの曲で使われているシンセベースもおしゃれ、この辺りは4人時代のオフコースにも影響を与えているのではないだろうか。
個人的に最も気に入ったのが4曲目「Keep On Running」。これと1曲目「An Eye For An Eye」マイケル・マクドナルドのソロを彷彿させるボーカルとコーラスを聴かせる。6曲目「Never Gonna Stop Loving You」のエレピの使い方やメロディもやたらマクドナルド的だ。3曲目「Crack The Whip」はやたらファンキー。クールな印象を最も与えるものとしては7曲目「Love You Out Of Your Mind」や11曲目「Right Through The Heart」だろうか。10曲目「Be My Baby」はもちろん彼らのオリジナルで、ちょっとカントリータッチなギターが意表をつく。後半に厚いコーラスで、しかしさりげなく盛り上げるのが見事。
またインナーには各曲ごとにミュージシャンの名前がクレジットされている。残念ながら今回は知らないミュージシャンばかりだったが、AOR系アルバムには腕利きスタジオミュージシャンが参加している場合が多く、こういう配慮がきちんとなされているのは、非常によいことだと思う。

S.S.Fools   「S.S.Fools」  (1976)
01. First Things First Sound Sound   02. Desert Dancin'  03. Tearbanks
04. Baby's Callin' Me Home  05. Fool Hard-e   06. I Just Love The Feelin'
07. Sunnyridge  08. Whatever Happened To America  09. Why Can't You Be Mine

こちらはソニー社「洋楽秘宝館」シリーズから発売された世界初CD化作品。S.S.フールズはボーカルのボビー・キンボールがTOTO参加以前に在籍していたグループとして名前だけは知っていたのだが、スリー・ドッグ・ナイト(以下、3DN)のメンバーが3人も参加していたとは驚きだった。サウンドはAORというよりアメリカン・ロック/ポップスである。
正直なところあまり期待していなかったのだが、予想を上回るよい作品だった。キンボールの若くはつらつとしたボーカルに3DNのソウルミュージックをお手本としたコーラスが合体、まさに取り合わせの妙である。リズム隊が3DNメンバーのため至る所でファンキーさが炸裂している。
これ以上は述べることもないが、せっかくなのでもう少しだけ。2曲目「Desert Dancin'」はTOTOのデビッド・ペイチの作品。しかし完全に自分たちのものとしている。特にメンバー全員(7人)で行うコーラスとリズム隊の印象が強く、頼もしい1曲である。
3曲目「Tearbanks」と6曲目「I Just Love The Feelin'」はキンボールの作品。なぜかメロトロン風のシンセが登場、ミディアムテンポでそれ風にキメる。キンボールのルーツはブルースときいていたが、プログレも好きだったのだろうか? 4曲目「Baby's Callin' Me Home」ボズ・スキャッグスのスティーブ・ミラー・バンド時代の曲のカバーとのこと。キンボール以外のボーカルが歌っている。オルガンやリズム隊(特にフィルインしてくるパーカッション)がやたらファンキーで、ベースが太いミディアムテンポのハードロックに仕上げている。8曲目「Whatever Happened To America」ではいきなりカントリーになる。意外と多くのスタイルを披露している。ボーカルはキンボール以外の人。
大発見だったのが5曲目「Fool Hard-e」、やたらかっこいいインストナンバーである。ドゥービー「Long Train Runnnin'」風のリズムギターが全編で活躍、バックで流れるクラビネットもグルーブ感を煽る。
この再発をきっかけにS.S.フールズが再結成して来日、なんてことになったらとてもうれしいのだが。せめてプロモーションライブくらい行ってもらえないだろうか。


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