■海外研修日記


●アイルランド

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#1260 海外研修日記(8)
新さん 1991/10/15 22:41
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10月7日(月) ベルファスト・北アイルランド

英国での文楽公演のお手伝いをしている。ロンドンでの公演を終えて北アイルランドでの公演旅行に出る。北アイルランドは爆弾テロで厳重警戒中である。

ベルファスト市内に入るといたる所鉄条網と検問所。町も暗くて荒れている。ホテルの回りが遮断されている。軽機関銃と防弾チョッキを着た軍隊が道路を封鎖している。こりゃまじだ。

ホテルには裏から歩いて入る。やれやれと思ったら非常ベル。何事かと外に飛び出ると避難命令がでたという。ホテルの前の税務署に爆弾を仕掛けたという電話があったという。やれやれ。着のみ着のまま外に出されてしまう。セーター1枚。ホテルの従業員もコックもホテルの裏に避難する。

仕方がないので文楽一行50人を近くのホテルにバスで誘導する。人間国宝2人が同行しているので気を遣う。(人間国宝って英語ではLiving National Treasureというんだね。なるほど)3時に出て7時になっても帰れない。疲れてくるし不満も出る。交渉の結果、ありがたいことに町のはずれにある唯一の日本料理店がお弁当を作ってくれるという。弁当が来たのが9時半。とんかつ弁当であった。現金なことにこれで全員元気が出た。

税務署から小さい爆弾が発見された。これで帰れない。郊外のホテルに一行を収容することにする。一度前のホテルに降ろしたトランク40数個を回収し、運び直す。全部配り終えたのが1時過ぎ。まったくもう。

夜中、装甲車が町の中をパトロールしていた。

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#1261 海外研修日記(9)
新さん 1991/10/15 22:43
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10月8日(火) ベルファスト

今日は一日中リハーサル。やることがないので私はオフ。小さな車を借りる。今日は一人で北の方まで行ってみるつもりだ。

The Ulster Folk Museum
アイルランドの古い建物をそのまま再現してある、いってみればアイルランド村。ここは素晴らしかった。小さな2部屋だけのアパート。3畳ほどの台所と寝室。ここに多いところでは10人住んでいたという。煉瓦の一つ一つまで持ってきて再現してある。部屋の中の家具や台所用品もそのまま。管理のおじさんが暖炉をくべている。丁寧に話をしてくれる。なんと爆弾騒ぎがあったあのホテルの裏に1977年まで建っていたという。

全部で20軒ほど、教会、裁判所、銀行、雑貨屋、印刷所(実際に印刷をしている)、町長の家など。みんな小さくて可愛い。まるでドールハウスそのもの。つましい暮らし。人がいない家はさびしい。さっきまで食事の支度をしていたのに、急に誰もいなくなってしまった様な空白感がある。

教室が一つだけの小さな学校がある。かわいい机が20ほど。机にイニシャルが彫ってある。壁にかけてある1860年製の世界地図にはNIPHONとあった。Jedo,Uraga,Miyakoと読める。石炭ストーブが燃えている。

農家にはいる。ほっと暖かい。管理のおじさんがターフ(泥炭)を暖炉にくべてお茶をわかしている。暖炉の前に座り込み話を聞く。小学生がノート片手に先生の話を聞いている。ここには昔の館を改装した宿舎があって、修学旅行もあるそうだ。なるほど。

海岸沿いの道を北上する。荒涼とした海に切り立った崖。目に染みる緑。アイルランドは緑の国と言われる。羊がいたるところに点々。雄大な眺めだ。遥か下では波が岩を噛む。スコットランドがすぐ目の前に見える。

Giant's Causeway
北アイルランドの北の果て。Land's End。奇妙な石がそそり立つ。はるばる来たもんだ。ここで日本人2人、イギリス人2人組に会う。イギリス中の小学校の生徒に日本の凧を教えて回っている日本凧の会の人だった。ありがたいことだ。お二人とももう引退した身でこうして回るのが楽しみだとおっしゃる。草の根。これからピクニックで夕食でもと誘われて、小さな船付場のベンチでご馳走になった。ツナをはさんだコッペパン、クッキー、スコーン、暖かいコーヒー。それにりんごとチョコレート。夕焼けを見ながらの食事だった。お腹がいっぱいになった。

みんなと分かれてBushmillsへ。そう、アイリッシュウィスキーで有名な町。というより単なる小さな村だった。海岸端のパブでエールを飲みながら、日が暮れるのを眺める。

ベルファストへはMotor Wayで1時間半だった。

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#1262 海外研修日記(10)
新さん 1991/10/15 22:44
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10月9日(水) ベルファスト

公演が始まるまで時間があるので英国人スタッフみんなで裏の山に登るという。地図を買って登り始める。1時間で頂上に着く。海に向かって切り立った崖。古い砦の後がある。風が湿って冷たい。

Irish Stew
豚のバラ肉、にんじん、じゃがいも、玉ねぎをポットにいれ、水を差し塩味だけでことこと暖炉にかける。くたくたになるまで煮込む。水がなくなり、いもがぐずぐずに崩れたら出来上がり。全粒パンとクリーミーなギネスで頂きます。うまい。何でこんなに簡単なもんがうまいんだろう。パブの定番。

The Crown
という古いパブがあって、ここはNational Trustに指定されている。天井が低くてすすけている。全体はアールデコ。くすんだステンドグラス。
ここで飲むGuinessがうまい。泡がとてもクリーミーで喉越しが絹のようだ。TVでラグビーをやっている。Ireland vs Japan。私は全日本の桜のバッチを着け、たった一人で応援した。ただ一度だけの日本のトライには沢山の拍手があった。ありがとうよ。

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