(by あしぎぬ団長)


 ミラーダイヤルの文字盤をよく見ますと、不思議なことに気が付きました。
 例えば、1016です。 ノーマルのダイヤルは、ROLEXロゴ以下の文字が白で文字盤面に薄く乗せられていますが、ミラーダイヤルは、文字盤面から薄く掘り下げられている様に見られます。 丁度、グランドセイコー・ファーストのSEIKOロゴが彫り文字になっている様に、光の角度で「彫り文字」に見えます。 手元に1960年頃のGS・ファーストがありましたので比べてみますと、GSの方がしっかりと「彫り文字」になっています。

   

 サブ、GMTも良く見ますと、1016と同じように「彫り文字」タイプになっている様です。 不思議ですね。 この辺りにもノーマルとの違いがあるのでしょうか?

   

 益々、ミラーダイヤルの魔力に魅了されてしまいそうです。



 サブマリーナ6536は、リューズガードが付く前のモデルです。 ご存知の様に大きなリューズの付いたRef.6538はジェームズ・ボンドモデルとして良く知られていますが、イタリア辺りでは6536こそ「サンダーボール作戦」で登場するサブマリーナだとの説もある様です。
 さて、銀幕での論争はこれくらいにしまして、最近気にしていますのは「6536の白い秒針」です。 私の6536は「Ref.6536/1」といわれるモデルです。通常の6536との違いは何でしょうか?
 歴代サブマリーナを紹介しています書籍にも、某ショップの紹介にも6536と6536/1の2種類を見掛けます。 この白い秒針は、EX5504、GMT6542(1st)、SUB5510のミラーモデルにも見られます。 それからミラーモデルではありませんが、EXU1655の白い秒針は皆さん、ご存知のとおりです。
 なぜ、6536/1の「1」はあるのでしょうか? ROLEXは、どんな意味を現そうとしたのでしょうか?  少し調べてみますと、こんな説があることが分かりました。 「クロノメーターを示す白い秒針」・・・
 白い秒針は、その精度を誇示するためのものだというのです。 それからもう一つの疑問がレッドトップベゼルです。
 クロノメーターモデルの6538では、このベゼルがオリジナルの証とも言われている様ですが、6536/1のオリジナルベゼルだとしますと、白い秒針と併せて「クロノメーターを示すレッドトップベゼル」という説も信憑性がある様に思えてまいります。

  

 こんな推理をするのも50年代、60年代のミラーモデルの魅力でしょうか。



 ミラーダイヤル、その吸い込まれるような漆黒の文字盤に華麗に浮かぶ金の文字・・・。 単純な色使いですが、その輝きは愛好家の心を掴んで放さないオーラを感じます。
 さて、Gilt(ギルト)とは、金箔、金メッキ又は塗った金などという意味がある様です。 このギルトを艶やかな黒の鏡面文字盤の上に置く発想は、いったい誰が思い付いたのでしょうね。 既に、1930年代にはROLEXがムーブメントを供給していた当時のパネライにも見られますし、皆さんご存知の1950年代のブライトリング・ナビタイマーやコ・パイロットにも逸品を見ることが出来るようです。
 クレイジーさんから、「彫り文字」がギルト文字盤だとお教え頂くまでは、ギルトという言葉すら分かりませんでした。 実は、未だにはっきりしたことは分かりませんが、一つの考察としてゴールドレターを「ギルト文字」、ミラーダイヤルにゴールドレターの組み合わせを「ギルト文字盤」と呼んでみようと思います。 中には私の5513EXダイヤルの様に、インデックスがゴールドで、ロゴがホワイトのミラーダイヤルもありますから、どうやら考察の域を出ないようですね。

   

 そう言えば、グリーンSUBもミラーダイヤルですね。 皆さん、もしもミラーダイヤルの時計をお持ちなら文字盤をよく観察してみて下さい。 ROLEXなら、黒の鏡面文字盤に浮かぶ金色のロゴが光の角度で彫り文字に見える筈です。これは、他の時計には見られないROLEXだけの特徴の様ですよ。
 ギルト文字盤・・・ ロレ・ラビリンスへの入り口・・・ また一つ、ミラーダイヤルの魅力が増えました。



 このところ、新聞を読むのに眼鏡をはずしたり、小説でも妙に歴史モノが気になったり、コタツによいしょっ!と入ったり・・・ 自分では特に意識はしていないのですが、「おじさん」年代に突入して仕舞ったのかな〜と寂しくなります。
 皆さんは如何でしょうか?  さて、腰痛・肩こりに悩まされる私を尻目にRef.6564は50年目を迎え、綺麗に歳を取りました。  仕立の良いチョーク・ストライプ柄のスーツを着てコンサートに出掛ける紳士の趣きです。 艶やかな黒髪にそれでも少し白いものが混じる髭を蓄え、後姿に僅かに哀愁を漂わせながら、じゃじゃ馬のポルシェも難なく乗りこなす冷静さと気品を備えたデューク・・・ こんな風に歳を重ねたいものですね。

   

 Ref.6564にはCal.1030という名ムーブメントが搭載されています。皆さんご存知の両方向巻上げ式の初出。 サブマリーナのセカンドとされるRef.6536が初搭載モデルといわれています。 同じムーブメントを載せた2本のミラーダイヤルですが、インデックスや針のゴールドがフォーマルな雰囲気のRef.6564に対し、ベゼルやベンツ針がRef.6536のアクティブさを現している様で、その違いを際立たせています。 同じ65で始まる両機ですが、ROLEXの罠に見事に嵌って仕舞いました。
 あっ、そうそう・・・このRef.6564の裏蓋には「T56」の刻印があります。



 物の価値とは難しいものです。 欲しいと思う気持ちが先行すると物の真価を見失い、市場原理という魔物に飲み込まれてしまいます。 そして、自分を見失った者は供給する側の思惑に翻弄され、終には妥協と後悔だけが残る・・・ そんな空しい経験をしたのは私だけではないでしょう。
 実は私、アンティーク・ウォッチと同じくらい嵌っているモノがあります。 そして昨年末、かねてからの希望が叶う機会に恵まれました。 初冬にしては暖かい、敷き紅葉も鮮やかな京都で江戸時代後期の生活器は「はんなり」と私を迎えて呉れました。 古伊万里・・・九寸五分の花唐草竜紋の角皿。 凡庸な私を十分に満足させて呉れる逸品です。

   

 私にとっては古伊万里もアンティーク・ロレックスもとても大切な宝物・・・ 逸品といわれるモノに憧れ、焦がれて焦がれて手に入れる。 しかし気をつけて下さい。 人によって価値観も満足感も違いますから、百人百様の楽しみ方があるんです。 古伊万里とミラーダイヤル、これが私流の楽しみ方です。
 皆さんは如何ですか?



 毎日、私を乗せている愛車のモニターからピーッといった警告音とともに「故障が2件」といったメンテナンスサインが出た。 調べてみると、ブレーキパットとクルーズコントロールに異常があるらしい。 これは大変と馴染みの修理工場に持ち込んだところ、点検と部品の交換に1時間ほど掛かるらしい。 仕方ない、程々の出費は覚悟して待つことにした。
 雑誌を2〜3冊持って応接コーナーに陣取り、5513(EXダイヤ)と雑誌を相手に睨めっこが始まった。 ふと、古めかしいレースカーが目に留まった。 その車は「ブガッティー35B」という1929年にモンテカルロで開催された第1回モナコGPを征した名車でした。
 モナコ公国のGP記念館の専用室に飾られていたその名車は、タイヤ以外は部品が交換されたことがないらしく、恐ろしいくらいオリジナリティーを保って80年近くを経た今も、GPのセレモニーランに登場するとのこと。 それが何でもヴィンテージカー・オークションに出品されたらしい。
 しかし稀有のオリジナリティーから落札に到らず、今も販売中とのこと。  睨めっこの相手はブガッティーに替わった。 老人には辛い8ポイントくらいの小さな活字が犇めく6ページを何度も読み返す。

   

 今日は偶然にも久しぶりに5513を着けていた。1967年のSUBは文字盤も3針も王冠マークだけのリュウズも幸いオリジナルを保っている様です。 流石にブガッティーを手にすることは出来ませんが、5513は私に優しく微笑んで呉れます。 それは、オリジナリティーというミスティック・スマイル・・・
 因みにブガッティー・タイプ35Bは、国内ではトヨタ自動車博物館に飾られているらしい。



 今日は、お昼前から雨が降り出しました。少し風が付いて庭の芙蓉の葉が優しく揺れています。 午後の気だるい時間を買い溜めたミステリー小説を読んで過ごそうか、それとも馴染みの喫茶店でマスターと音楽談議でも楽しもうか・・・雨脚が酷くなって来ました。
 そうだ、出掛ける前に今日の供を選ぼう。 休日に私の供をするのは、お気に入りのCal.1030を載せた1950年代の時計たちです。最近、仲間が増えてカルテットになりました。表情の異なる従者を全て連れて行きたいのですが両腕に着ける訳にはいきませんし、かと言って眺めていても飽きません。
 これは困った・・・手に取って思い入れや入手の経緯を思い出していましたら小一時間が過ぎて仕舞い、散々に悩んだ挙句、新参者のGMTを選びました。オリジナルのベイクライト・ベゼルと偶数日が赤で表示されるカレンダーが私のお気に入りです。
 さて、お供が決まったところで旨いコーヒーと老人の会話を楽しみに出掛けるとしますか。 丁度、雨も上がった様です。