武装警察
(漫画の原作のつもりで書きました。)

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登場人物
ミヤタユキオ・日系・男・十代、突撃警察警視、車長
エルザ(エリザベート・マーラー)・白人・女・二十代、突撃警察警部、副長
ウォルフ(ウォルフガング・ホート)・白人・男・二十代後半、突撃警察警部、砲手
ナカムラ(リュウ・ナカムラ)・日系・男・二十代、突撃警察警部補、運転手
レイ・日系・女・十代前半、バグ
・黒人・女・三十代、バグのリーダー
バート・白人・男・三十代、バグ



 手帳サイズの携帯端末の画面。エルザの顔が映っている。二十代後半の美人。それにオーバーラップして、司令部からのメッセージ。
 エルザの声。
「二十三時私の部屋で……バイ」
 画面が切り替わり司令部のオペレーターの顔、十代後半の美少女。
「委員長より発令。優先度α+。形式、文書。読みますか?」
「読まずにいたら、俺は首だ」
ユキオの呟き。
「どうぞ」
「直ちに司令部に出頭せよ……以上」
「了解」
ユキオ椅子から立ち上がる。十代後半の少年長身でどことなく冷酷な顔。
「拒否するチャンスを与えないわけか」
「いやな親父だ」
憂鬱そうな顔で部屋を出る。

 司令部にいるユキオ。机を挟んで公安委員長がいる。
「私および第十二班は休暇中です。少なくとも、後三十六時間は」
委員長笑う。
「服務規定を忘れたのかね」
「忘れたいですよ。できれば」
空中にホログラフで、立体の地図が投影される。
「バグの巣が発見されたのだ」
地図の一部が光る。
「休暇の中断と、こいつの掃討が君と君の班への指令だ。詳しい内容は、直接君達のMI(機械知性体)に送る」
「了解」
ユキオ、廊下へ出るなり中指を立てる。
「エルザ、怒るだろうな」
気を取り直し、歩きながら携帯端末を取りだし、怒鳴る。
「同定せよ。ミヤタ・ユキオ、AP警視」「同定完了、指令をどうぞ」
「緊急召集、優先度α+」
「了解」
「第十二班格納庫、開け」
「了解」
「以上」
「了解、指令を受領しました」
「実行せよ」
「了解。指令を実行します」
チームの不機嫌そうな顔がユキオの脳裏をよぎる。
「俺が陰で委員長の悪態をつき、部下は公然と俺をなじるわけだ。……よくできてるぜ」
 この時代、CITIの治安を守るために、優秀な警察官の純粋培養が行われていた。十代後半で現場に送り込まれるエリート捜査官たち。彼らは『恐るべき子供たち』といわれていた。
 回想。
「私が、皆さんのリーダーを務める、ミヤタです。どうぞよろしく」
「『恐るべき子供たち』か、かっこいいぜ」「ホート警部ですね」
「ご丁寧に、私ごときの名前をご存じか」「よしなよ。大人げない」
ユキオはエルザを手で制すと、ウォルフに近寄る。
「あなたたちについて、必要なことは大体覚えています。仕事ですから」
ウォルフ、ちょっと鼻白む。
「やなヤツだね、おまえって」
「ありがとう。誉められたと思っておきますよ」

 格納庫
 フロア中央に戦車が一台。バイクが係留されてる。
「仲間に入れてもらうのに、俺がどれほど苦労したか、ヤツらにはわからない」
ハッチが開いて、ナカムラが顔を出す。
「いつでも行けるよ。エンジン入れるか?」
「ちょっと待とう」
そうだな、という顔をしてナカムラ車内に消える。程無く、二人が現れる。
「お待たせ」
「どこのどいつと遊ぶんだ?」
二人に続いてユキオも搭乗する。
ヘッドセットをつけながらユキオがいう。
「BUGの巣が発見された」
ナカムラ、エンジンを始動、ガスタービンエンジンが回転を上昇させる。
「きれいにしろってか?」
「こちらAP十二班、チーフ、ミヤタ・ユキオ、階級、一級警視、指令を照合し、出動許可願う」
壁の一隅が開く。戦車はキャタピラをきしらせて発進する。
「クリア、発進せよ」
オペレーターの声がしたときは、既に戦車は地上に向かうスロープにいる。
 ユキオ、エルザの方をちょっと見る。表情が読めず視線をもどす。

 この世界はCITIに魂を売り渡した者に支配されている。
 CITI……それは荒廃した大地に点在する高分子化合物のドームにおおわれた魔の都。マイクロブラックホールの衝突により、絶滅の危機に瀕した人間がたよったメガロポリスの総称である。
 大規模な変動が収まった後も、人間はそのドームから出てはこなかった。もう彼らは街の外では暮らせなくなっていたのだ。
 彼らは侵入を頑なに拒み、異常に人口密度の高い都市に肩を寄せ合って暮らしていた。犯罪者は外に追放され、その中の何割かは団結して街への帰還を画策した。彼らは、BUGとよばれ、突撃警察と呼ばれる特務機関に、駆り立てられる存在だった。

 戦車の中、LSD(発光半導体ディスプレイ)の淡い光芒の中、地形図と、推定されたBUGの細かいデータが表示される。
「皆殺しにすればいいってもんでもないと思うがなあ」
ナカムラの声にウォルフが応じる。
「四課の奴等は殺したことがないのさ」
「一度奴等に引き金をひかすべきね」
LSDをにらみながら、ユキオ声に出さずに考え込む。
(BUGを分散させておけばいいのに、集まって『さあやってやろう』てな奴等ばかり見つけて来る。俺たちは殺すしかない。)
ハッチを開け、まぶしそうにユキオは青空を見上げ、つぶやく。
「MBHの衝突まで、人間は太陽の下に住んでいたらしいな」
「なんだ?」
ウォルフの声。
「嫌みな話だと思わないか」 
「はっきりしゃべれよ。聞こえねえ」
ユキオはまだ空をみている。戦車は廃墟(MBH衝突以前には大都市だったと思われる。)の中を疾駆する。キャタピラが瓦礫を砕き巻き上げる。
 戦車がスローダウンする。
「このブロックをこえるとすぐだ」
ナカムラの声。
「止めろ」
ユキオ、戦車から降り係留してあったAMC(武装バイク)をとりはずし、またがる。車長席にはエルザが移る。AMCは250〜400CC単気筒のアメリカン。泥よけはない。
 ヘルメットのマイクを使い、ユキオが指示する。


「こちらヤマハ、感度いかが?」
「こちらピット。良好。+20デシベル」「フォーメーションはいつもやつで」
「了解。幸運を祈るわ。坊や」
「そっちも幸運を」
 戦車砲によってビルが破壊されている。破壊された機銃、瓦礫の中から覗く死体。
 内部では憔悴した顔のリーダーが合図する。
 脱出を決行する面々。地下通路を通って、出口へ。
 入り口のゲートを開けると、火炎放射器の炎が戦闘の何人かを焼き殺す。ライフルの応射。炎は沈黙する。
 迷うリーダーの顔。しかし選択の余地無く、前進。
 カモフラージュされた格納庫まで100メートルほど。走る一行。約30名。
 突然の狙撃。パニックに陥り、狙点を把握できない。ある者は走る背中を、ある者はでたらめにライフルを乱射しつつ頭を、20名ほどが射殺される。
 10名ほどが、三台の車両に分乗して走り出す。半開きの格納庫の扉は弾け飛ぶ。乗員の顔には絶望の色。
 迫撃砲か、ロケット弾の光条が五筋放物線を描いて着弾。一台撃破。
 残りは二台。廃墟の町を走る。ジープのような車両で後部には軽機関銃がマウントされている。ひたすら走る。
 一人の運転手が前方に影を認める。影はやがてバイクの形をとる。恐怖にゆがむ顔。ユキオはAMCに乗ったままハンドルの軸にマウントされたライフルを発射。一台の運転手を射殺。タイヤを撃ち抜く。
 激しくスピンして爆発。その中をすり抜けてバイクは去る。残った一台にはリーダーのM(機銃座)、バート(運転手)、レイ(助手席)が乗っている。一度止まるがMが叫ぶ。
「無理よ。助からないわ」
「どうしたんだ?M」
いぶかしげなバート。
「奴は死に神よ。奴のバイクの擲弾筒と背中にしょってた火炎放射器を見たでしょ」
事態を把握する一行。急発進。
しばらく走った後。
「M」
「何?」
「何か見えないか?」
「後ろには何も」
「俺たち逃げ切れるかな」
無言。不安げなレイ。
その直後車がピアノ線トラップに突っ込む。機銃座が吹き飛び、車両は大破。Mは即死。二人は車外に投げ出される。
 バート頭から出血。レイに声をかける。体を起こすレイ。拳銃を抜くバート
「使い方知っているな」
黙ってスライドをひき、弾倉を抜くともう一発装填するレイ。
「離れて逃げる。どちらかでも助かるだろう」
二人無言の別れ。レイ走り出す。
レイが逃げていると、エンジン音が聞こえる。瓦礫の陰に飛び込む。


 AMC、レイの10メートルほど先に停車。ユキオ降車して双眼鏡を覗く。
 レイ、拳銃でユキオを撃つ。もんどり打って倒れる。
 油断無く近付き、もう一発撃とうとすると、逆に倒れているユキオに撃たれる。腕を撃たれ拳銃を落としてうずくまる。顔はユキオをにらみつける。
「名前は」
「レイ」
「CITIに来るかい?」
驚いた顔。
「どうせ偽のIDカードはあるんだろ」
「悪魔」
落ちた拳銃に手を伸ばすレイ。
 銃声


 ユキオはAMCに向かって歩いている。独り言。
「説得力無いよな。やっぱり」
少女の倒れていた場所にいまユキオがつくってやったらしい墓がある。

 ベッドの中
 エルザとユキオ。
 ユキオが目を覚ます。
「朝か?」
「まだ夜ね」
シェードのすきまから陽光。苦笑。
「何言ってるの」
「いいじゃない。今日は一日夜で」
「そうだね」
抱き合う二人
ユキオつぶやく
「当分夜明けは来そうもないしな」

 了

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