小さな人間たちの詩

                   自信があれば、恐れずやらせればいいんです。

 この話は、昨年1999年12月18、19日に、当グループの「Kids 愛ランド わんぱく自然の里」の12月活動として、長野県下伊那郡泰阜村のカントリーハットやまびこ館で行われたキャンプでの事です。

 このキャンプは、同村で20年に渡り、通年合宿(山村留学)と夏冬期キャンプを行ってきております「グリーンウッド遊学センター」と当クラブとの初めての交流で、今年の夏に行いますサマーキャンプに向けてのモニターキャンプのため、当クラブからは会員の小学1,5年生の兄弟(トモ君、サッチャン)と3年生(スエッチ君)、私(ヒゲグマ)の4人が参加し、同センターをご紹介頂いた「静岡カヌークラブ」のメンバーと同センターのスタッフを併せて13名の小さなキャンプでした。雪の降る中、なんとインディアンテントであるティピーテントを張り、これまた常識を破って寒風の吹く天竜川でカヌー下りを行い、とても楽しく過ごしてきました。

 ただ私は授業のため18日の土曜日からは参加できず、逆に3年生のスエッチ君はどうしてもティピーテント張りから参加したく、小学校の担任の先生に事情を言って学校を1時間目で早退し、一人静岡から新幹線に乗って豊橋経由で泰阜村に向かいました。1年と5年の兄弟は学校を終えから電車で泰阜村に向かい、途中カヌークラブの高校生のお兄ちゃんと合流して夕方から参加しました。私は19日早朝3時半に藤枝を発ち、浜松でカヌークラブのメンバーの辛島さんの車に乗せて頂き、7時半にやまびこ館に到着しました。

 早速やまびこ館の庭に建てられたティピーテントの中を覗きますと、中央の炉の周りにおいしそうな夕食の食べ残しがあるだけで、こども達の姿は見あたらず。あれ?もう散歩の行ったのかな?と、館長の篠さんに聞けば、夕方から雪が降り始めたためこども達の安全を考え、こども達のたっての希望を取り入れティピーテントでは仮眠だけとして、深夜12時頃篠さんがこども達を抱きかかえてやまびこ館の部屋に移してくれたとのこと。こども達を送り出した後はスタッフの皆さんにお任せで、ただただ感謝申し上げました次第です。

 部屋に行けば、こども達は元気ではしゃぎ回っておりました。聞くに、朝3時にはもう目が覚めてしまったとのことで、遊び道具を取りにティピーテントに行こうとしたら野犬(実は近所の家の犬だったそうですが)がいて怖くてテントに近づけず、仕方なく部屋に戻っておしゃべりをしていたとか。「あのねえ、初めて大きな杵で餅つきをして、カ・ガ・ミ・モ・チ?作ったよ。」「そうそう、シ・シ・ナ・ベに、大きなキノコ(篠さんの栽培している村ではちょっと有名な大きなしいたけのことです)ご飯、それに、ナメコ?おろしと、すっごくおいしかったリンゴジュース・・・」「ティピーテントの張り方、もう覚えちゃったよ。あれって、ほんと温かいんだね。天井が煙出れるように空いてるんだよ。」・・・・・・何から何まで初めての経験で、それがまたこども達にはとても楽しかったようで、私が声を掛ける余裕もないくらいに、次から次へと話が出てきました。

 朝食後、参加者全員のミーティング。当初の計画では午前中里山散策、午後カヌー体験の予定でしたが、私達の帰り電車が午後2時半の特急列車になったことから予定を変更、午前9時やまびこ館を出発して、天竜川での待望のカヌー体験となり、こども達は大喜び。そうなれば行動は早いんですねえ、こども達はさっさと部屋に戻り、自分の荷物を手早くまとめ、掃除もそこそこで当センターのワゴン車に積み込んだカヌーの隙間に入り込み、向かった天竜川。藤枝の川と違うんですねえ。真冬でも水深3,4mもありましょうか、川幅3,40mの青々としたした水がゆったりと流れておりました。

 静岡カヌークラブ会長の鈴木さんの指導で、まずはライフジャケットの装着。「たとえひっくり返っても大丈夫だよ。」と言って下さっても、こども達の心はもうカヌーの中なんですね。さっさとライフジャケットを付けて、カヌー選びを始める始末。ここで体の大きなサッチャンは、小さいライジャケットをベルトも締めず装着していたため、鈴木さんに注意され付け直し。さて、いよいよカヌー乗りです。今回は一人乗りのカヤックで、こども達に一艘ずつ与えられ、大喜び。まずは川岸でパドルを使って一人乗りの練習。カヤックと岸とをパドルで橋渡しして、その上に座りながら少しずつ体をカヤックの方に移動して乗り込むんですが、こども達の覚えは早かったですね。2、3回でマスターしてしまい、早速橋げたのたもとの深くよどんだところで乗船練習。ここでもまずは会長さんがカヤックに乗って、パドルでの前進、後進、方向転換の仕方を指導して下さり、さらにどうすればカヤックがひっくり返るか教えて頂き、待ちに待った乗船となりました。

 ここはこども達の方が度胸があるんですねえ。勿論みんな初めての経験だったのですが、私の心配をよそにさっさとカヤックに乗り込み、よどみの中央にこぎ出してしまいました。バランスを崩してヒヤッとする場面がありましたが、それで覚えちゃうんですね。「こうやって片っ方に体が寄っちゃうと、ひっくりかえっちゃうんだよね。」と頷く。「ちょっと危ない場面があっても、周りが慌てないことなんだよね。周りの人の動揺が写って本人が慌て、バランスを崩すこともあるんだよね。」と、会長さん。なるほどと思いました。私達はこども達が練習をしているのを眺めながら、川原木を集めたき火を始めました。

 乗り始めて30分も経ったんでしょうか、5年生のサッチャンがゆったりと流れる本流を指さして、「んねえ、あっちに行ってもいいかなあ?」と、大きな声で私達に聞いてきたんですね。私はエエッ−!と思ったんですが、カヌークラブの会長さんはためらいもなく、「いいよお、自信があれば。」と答えると、「やっぱ、やめた。」と、しりごんでしまったサッチャン。すると、暫くして今度は弟のトモ君が行きたいと言い出し、もう一人の3年生のスエッチ君も加わったものですから、遂にセンターのスタッフが伴走して行くことになりました。乗り始めて1時間も経ってなかったんですね。カヌークラブの会長さん曰く、「自信があれば、恐れずやらせればいいんですよ。転覆したって、ライフジャケットを付けるんだし、大丈夫。自信があるから、行きたいって言うんだら、まあ失敗はしないもんだよ。転覆すればしたで、転覆しないすべを覚えるんだから、それも自信になるんですよ。」

 一緒に参加していました右半身不随の若者とその伴走者の辛島さんも加わって、5人の天竜川本流の川下りとなりました。「トモ君、大丈夫かなあ?」と心配するサッチャンに、元気よく「じゃあね〜、行って来ま〜〜す!」と、出発。本流合流直前に方向を失って後ろ向きになるも、自力で立て直して無事本流に乗り、約800mの川下りをゆっくり楽しんできました。それを見てもお兄ちゃんのサッチャンもやっぱり行きたくなり、5人が帰ってくるのを待って、今度は会長さんが伴走してサッチャンが出発。約2時間のカヌー体験となりました。

 すっかり疲れ切って、3人のこども達と私は特急列車の豪華な座席に沈み込み、ぐっすりと寝てしまいました。暮れゆく伊那谷を眺めながら、こうした活動から10数年遠ざかり、すっかり忘れかけていたものが再びわき上がってくるのを感じました次第です。

2000年1月6日記 4月9日一部修正
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