掩蔽観測の失敗例

by 内山茂男

長く観測をしていると、失敗をすることも少なくありません。特に最近はうっかりの失敗が増えました。(年齢のせい?)
お恥ずかしい話ばかりなのですが、自分でも同じ失敗をしないように、そしてこれを読んだ方も同じ失敗をしないように、ここにまとめておこうと思います。


恒星の接近方向を勘違い − 2009年 1月16日 7.2等星の接食 −

接食状況

1月3日の接食に続いて、今回もFC-100を使いました。星が7.2等星とあまり明るくないので、FC-100でどの程度写るのか知らなかったのですが、 1月3日の5.6等星がよく写ったので、今回も大丈夫だろうと考えたことと、月がやや太くなってきているので、 コントラストの良いものの方がいいだろうと判断したからです。

観測地で現象10分前にビデオ撮影の準備が完了しました。月の南側で対象の恒星をモニター画面で探したのですが、見つかりません。 月は下弦前でやや太めですが、地球照もうっすらと確認できました。でも、恒星が見つかりません。念のために月の北側など、 いろいろなところを探したのですが見つからないのです。このとき頭に浮かんだことが2つ。
  「現象の日時を勘違いしたか?」 「10cmでは写らないのか?」
急いで、ビデオカメラをはずし、眼視で確認しても恒星が見つかりません。「おかしい」と思ったときに、 カスプ(明縁と暗縁の境界)の近くで淡く光る点を発見!  このときやっと「満月後は明縁側から近づく」ということを思い出したのです。
最近観測した接食は満月前ばかりで、恒星は暗縁側から近づいてきます。現象時刻前であれば、カスプよりだいぶ離れた暗縁側に恒星の姿が見られます。 うっかりして、今回も同様のところに恒星の姿を探していたのです。もしも、恒星が明るいものであれば、 このような勘違いをしていても恒星を見つけることは簡単でしょう。しかし、月の太さに比べるとやや暗い7.2等星であったため、見つけられなかったのです。

すでに現象時刻は迫っているので、ビデオカメラを付け直していると間に合わないかもしれませんし、 淡い光しか見えていないのでビデオカメラに写らないかもしれません。そこで、眼視観測をすることにしました。 結果的に3D3Rを観測でき、眼視観測のドキドキも久しぶりに味わえました。

観測終了後に、ビデオカメラを接続して撮影してみたところ、恒星は眼視で見えた姿よりも少しよく写っていました。 恒星の位置を勘違いしていなければ、問題なくビデオに写ったと思われます。

GHS時計が作動せず − 2008年 3月 8日 小惑星(1157)Arabia による恒星食 −

GHS時計
私の GHS時計
矢印が補修後のアンテナ線

原因: アンテナ線接触不良
教訓: 調子が悪いことがあったら、次の観測前に機材チェックをしておく。

掩蔽観測は現象時刻の測定が重要ですが、そのために私が使用しているものが「マイコンGHS時計」。これは、GPS受信機を内蔵していて、 衛星からの電波を受信することにより正確な時刻と位置(東経・北緯等)を表示する、掩蔽観測用に開発された機材です。 以前天文ガイドから部品頒布され、その部品をハンダ付けをして組み立てたもので、私は容器として食品を入れるタッパーを利用しました。

いつも観測の際には、望遠鏡を組み立てる前にGHS時計に電源を接続しておきます。電源を接続すると液晶画面に“Now Waiting”と表示されますが、 1分程度で衛星の電波を受信して時刻と位置を表示します。ところが、3月8日の観測の時には、いつまで待っても液晶画面に“Now Waiting”と表示されたままなのです。 取扱説明書でスイッチのセッティングを確認し、電源の再投入を何度かしても“Now Waiting”のままです。結局、この夜は改善されませんでした。
観測のほうは、もともと対象の星が暗く、地平高度も低いため、眼視でもビデオでも対象星を捉えることができず観測できませんでした。 機材トラブルが起きたのがこのようなときであったのは、不幸中の幸いです。

翌日、どこが悪いのか調べた結果、次のようにアンテナ線の接続部分に問題があることがわかりました。
code1 code2 code3 code4
アンテナ線の接続部が
傷んでいる。
コードをグッと押すと
中央のピンが十分出てくるが、
コードを少し緩めると
ピンが引っ込んで接触不良に。
そこで、テープをしっかり巻いて
正しい位置で固定しておいた。

実は、1月19日の小惑星(526)Jenaによる恒星食の観測の際にも、GHS時計の表示はしばらく“Now Waiting”のままでした。 いろいろいじってみているうちに、なぜか時刻と位置を表示するようになったので「使えて良かった」とそのままにしていました。このころから接触不良があり、 いろいろといじっているうちに結果的にアンテナ線も動かし、偶然接触して電波を受信できたのでしょう。 この観測後に、どこが悪いのかチェックしておけば良かったのです。

ビデオの録画を忘れる − 2008年 1月19日 小惑星(526)Jena による恒星食 −

原因: ビデオのバッテリーを交換し、録画ボタンを押すのを忘れる。
教訓: 必ず、録画マークをチェックする。
    バッテリーはフル充電しておき、節約しながら使用。特に寒いときには注意。

当日は、かなり冷え込んでいました。観測地には予報時刻の1時間以上前に到着し、早めに準備をしていました。 結果的に、ビデオカメラのモニターに映している時間は長かったようです。それでも、セッティングのときに残量が200分以上あることを確認していますし、 予報時刻6分前にも十分な残量があると確認しています。ビデオカメラの上部に小さな液晶表示があり、 バッテリー残量を4段階で表示しています。6分前の段階で残量は3でした。予報時刻 4分前から録画を開始。しかし、 3分前にモニター画面に「バッテリー残量少量」を示すマークが出現しました。過去の経験では、これが出ると数分と持ちません。おそらく、 寒さのためにバッテリー出力が低下したのでしょう。予備の小型バッテリーを持ってきているのですぐに交換しました。こちらも寒さで冷えているため、 心配しながらの使用です。大型液晶画面では電力消費が多いので、ビューファインダーで現象をチェックです。 現象時刻直前のため、対象の恒星が消えないか注目していました。バッテリーと恒星の様子に気をとられて、録画ボタンを押すのを忘れていたのです。
このときは、通過(小惑星が恒星を隠さずことによる減光が起きない)であったため、 一応観測(通過観測)は成立しましたが、もしも食が起きていたら、時刻測定ができず、観測不成立になるところでした。

対象の恒星を間違えた(その2) − 2005年12月13日 小惑星(158)Koronis による恒星食 −

原因: 対象星が明るく、導入は簡単と判断。拡大星図を用意しなかった。
教訓: 対象星より暗い星まで印刷した拡大星図を用意する。

私は、ステラナビゲーターで観測用の星図を作成しています。このときは、高度10度の低空の現象でしたが、掩蔽される恒星が6.9等星と明るいものでした。 そこで、対象星を含んだ星図を作成しましたが、6.9等星があればいいのですから、あまり拡大した星図でなくても見やすく表示されます。
ビデオ観測では写野がやや狭いです。「これが対象の恒星だな」と思われる星を導入しても、画面に映っている他の星は星図に載っていません。でも、 (写野の外の)ここの星の並びのこっち側には星図には星は1つしかないし、これでOKだな、と思っていました。予報時刻の前後に、その星は消えません (減光しません)でした。小惑星もやや小さめなので、通過だったと判断しました。

帰宅後、パソコンを立ち上げてJOIN(掩蔽観測メーリングリスト)の報告を見ると、私の観測地とラインが近い観測者が「減光しました」と報告しています。 しかも、減光時間の長さから考えて、私のところも食が起きているのが普通です。ステラナビゲーターで再確認すると、 対象の恒星のすぐ近くにわずかに暗いだけの恒星があります。写野を動かしながら撮影したビデオ画面で確認すると、 この「隣のわずかに暗いだけの星」を撮影しているようです。肝心の恒星はわずかに写野外で、写っていませんでした。

周囲の暗い恒星も記載された拡大星図があれば、簡単に防げたミスでした。


対象の恒星を間違えた(その1) − 2004年11月24日 小惑星(791)Ani による恒星食 −

原因: 天頂ミラー使用で裏像。ビデオの写野はやや狭い。準備の時間がやや不足。
教訓: 天頂ミラーを使用する際は、裏像(鏡像)の拡大星図を用意する。
    ビデオの東西南北を合わせる。
    導入経路を事前に確認し、わかりにくいところの場合は準備時間にゆとりを持つ。

以前、眼視観測を多数こなしていた頃は、星図を頭の中で裏返しにして導入していました。慣れれば、それほど難しいことではありませんでした。 今回も、まず眼視で導入するときには、ちょっと手間取った程度でした。しかし、ビデオカメラに切り替えるとき、 望遠鏡の架台が弱いので少しずれてしまいます。眼視では視野1度のアイピースを使っていますが、ビデオでは写野が0.5度程度。 面積は1/4で、この違いは大きかったです。東西南北も切り替えたばかりのときにはわかりにくく、どこが写っているのかわからなくなってしまいました。 現象時刻が近づいてくると、あせってしまい、落ち着いた判断ができなくなります。
このときは、確信が持てないまま「この星がそうかもしれない」という星を撮影しておいたところ、結果的に対象の恒星が画面の左端近くに写っていて、 観測データが得られました。


ビデオのバッテリー切れ − 2004年2月9日 10Vir 接食 −

原因: 昼間にバッテリー残量が十分なのを確認し、そのままOFFにするのを忘れた。
教訓: 使わないときは必ず電源OFF。予備のバッテリーも用意。

コントラスト不足 − 2004年2月9日 10Vir 接食 −

原因: 望遠鏡の光学系を購入以来清掃していなかったため。
教訓: ときどき分解・チェックして、きれいに。

ビデオのバッテリーが不足し、眼視観測に切り替えたのですが、6.1等星とは思えないくらい淡い姿でした。 何とか観測できたのですが、ちょっと集中力が落ちると星が見えなくなる状態でした。
接食では、すぐ近くに明るい月があるので、コントラストが悪いととても見にくくなります。このとき使用した望遠鏡はε-160で、 購入以来12年間、光学系の清掃はしていませんでした。観測後の休日に分解してみたところ、主鏡も斜鏡も予想以上にほこりが多く、 補正レンズもなんとなく曇っていました。


望遠鏡に霜 − 2000年1月27日 8.2等星の接食 −

原因: 目の前に小さい小川。そちらから弱い風。
教訓: セッティング後の霜や夜露にも気をつけて。

望遠鏡は25cmシュミカセ。恒星は暗いが十分見えるだろうと思っていました。しかし、恒星が月に近づくにつれて見にくくなります。 視野のコントラストも落ちていきます。やがて、恒星が見えなくなり、そのまま現象時刻が過ぎていきました。現象時刻も過ぎたので、 アイピースから眼を離し、シュミカセの補正版を見てびっくり! 霜で真っ白になっているではありませんか。 セッティングからわずか30分で霜が付いていたのです。そのときにやっと気がつきました。目の前は小さい川ですが、その川の方から弱い風が吹いています。 しかもその冬1番の冷え込み。霜が付きやすい条件がそろっていたのです。

接食は、見晴らしがよく一般の方の邪魔にならないところで観測をすることが多いもの。 結果的に川のそばで行うことも多いのですが、気をつけないといけません。


録音できず − 1997年11月7日 小惑星(1437)Diomedes による恒星食 −

原因: 録音用小型カセットテープレコーダーのポーズ(一時停止)がオンになっていた。
教訓: 録音で記録するときには、本番直前に必ず録音テストを。

このテープレコーダーは、通常操作するボタンは大きく、手袋をして手探りでも全く迷わないくらいです。また、バッテリーチェック機能もあり、 そろそろ電池交換というのがわかり、観測中に突然止まる心配が少ないもので、掩蔽観測にも流星観測にも愛用しています。
ただし、普段は使わない小さい切り替えスイッチもいろいろ付いていて、ポーズもその1つ。これがうっかりオンになっていて、 テープが回っていなかったのです。

私は1994年11月1日から小惑星による恒星食の観測に取り組み始めました。その頃は恒星の位置精度が低いため、 小惑星による恒星食の予報も精度が低く「日本のどこかで観測できそう」というレベルのものが多かったです (その後ヒッパルコス衛星の観測データで飛躍的に精度向上)。当時の私はそのような現象を片っ端から監視観測し、54回通過を観測しました。 そして、55回目にして初めて食による減光を観測(目撃)したときに、この「録音失敗」をしてしまったのです。
詳しくは、観測記を読んでください。


望遠鏡が動き、視野から出てしまう − 1997年4月11日 7.2等星の接食 −

原因: バランスがとれていないのに、クランプをしっかりと締めていなかった。
教訓: 現象時刻を確認し、早めに準備。
    望遠鏡のバランスがとれていないときは、要注意。

ヘール・ボップ彗星の観測地で見られた接食です。接食観測直前まで、ヘール・ボップ彗星を見に来た一般の方に望遠鏡を覗いてもらっていました。
あと10分くらいかな、と思って望遠鏡を月に向けると、星が月の縁にくっつきそうです。これは大変と、すぐに眼視観測を開始しました。 しかし、意外に風が強いです。私の25cmシュミカセはフォークアームが弱く、風に弱いのです。車を風除けにすることもあるのですが、 すでのその時間はなさそうです。少しでも風の影響を減らそうとフードをはずし、再びアイピースを覗き始めると、まもなく潜入・出現・潜入と現象が始まってしまいました。 まだ5分くらいあとではなかったっけ?と思っているうちに、今度は月が視野からパッと消えてしまいました。一瞬、何が起こったのかわからなかったのですが、 すぐに望遠鏡が動いたことに気づき、ファインダーを覗いて、月を入れ直しました。視野から出ていた時間は5秒間でした。

私のシュミカセは、フードをつけてバランスがだいたい合います。ところが、風対策でフードをはずしてしまったために、アイピース側の方が重い状態でした。 それにもかかわらず、クランプの締め方が甘かったために、望遠鏡が動いてしまったのです。
もともとは、予報データで時刻を確認せず、現象時刻を6分ほど勘違いしていたのが失敗の始まりでした。このため時間に余裕がなくなり、 車を風除けにする暇もなくなるし、クランプをしっかり締める心の余裕もなくなっていたのです。やはり、時刻確認と、早目の準備は基本です。


☆ 遠征観測では忘れ物に要注意!!!

対策: 必要なもののリストをつくっておく。
    はずすことのある部品もリストの中に書いておく。
    車に載せたことをチェックする。

観測用星図 & 現象データ  − 2005年12月27日 小惑星(485)Genua による恒星食 −

小惑星による恒星食の観測は、自宅または決まった観測所で行っている方が多いです。しかし、私はほとんど遠征観測をしています。 理由は、1. 小さい子どもがいるので自宅で深夜にガサガサとしにくい、2. 掩蔽確率の高いところへ行きたい、 3. 他の観測者と違うラインの観測データを得たい、の3つです。遠征観測は接食で慣れていますので、面倒だとは感じません。ところが、 観測地で忘れ物に気がついても、取りに戻ることができません。この日は、観測用星図を忘れてしまいました。小惑星による恒星食の観測では、 対象になる恒星を導入するのに星図が必要です。私は、ステラナビゲーターでやや広域の星図と拡大星図を作成し、それに現象のデータを記入しています。 これを忘れてしまったのです。

2枚の星図で共通の特徴的な星の並びには線を引いていました。そこで、かすかな記憶を頼りに対象の恒星の導入にチャレンジです。 しかし、なかなかそれらしいものを見つけられません。もしかしたらこれ?というものを見つけたのは現象時刻の7分前。 ビデオを接続する時間はありませんので、眼視観測にしました。「この星」とわかっているわけではないので、視野の中の4つの星をすべて監視です。 現象時刻も記憶が正しいかわかりません。前後4分ずつ監視しました。
帰宅後チェックしてみると、予報時刻を2分間勘違いしていました(でも、その時刻は監視していました)。そして、対象の恒星は、 残念ながらすぐ近くの別の星で視野のほんのわずか外でした。

アリ型プレート − 2005年11月22日 7.5等星の接食 −

この日持って行った赤道儀はGN-170。これは、赤道儀と鏡筒をアリ型・アリ溝で接続するものです。私は、この赤道儀には、 FC-100とε-160の2種類の鏡筒を対象によって選んで載せています。しかし、鏡筒側のアリ型プレートは1つしかありません。 ε-160の方が使用頻度が高いので、たいていはこちらにアリ型プレートが付いています。そして、ε-160は大きな布製のバッグに入れています。

この日はε-160を持って行きましたが、アリ型プレートがFC-100の方につけっぱなしだったのです。気がついたのは、 観測地で鏡筒を赤道儀に載せようとしたとき。アリ型プレートがないと、どう頑張っても望遠鏡を赤道儀に載せることができません。 鏡筒を手で抱えて眼視観測ができないか?と試してみましたが、あまりにも揺れが大きくて全くだめでした。

観測地の地図 & 現象データ − 2000年2月9日 7.8等星の接食 −

夕方の現象のため、職場を早退して観測地に向かったときのこと。接食データを限界線を描きこんだ地図にはさんでおいたですが、 そのセットをうっかり自宅に忘れてきたのです。現象データも限界線の位置も、だいたいは覚えていましたので、 記憶を頼りに観測地に向かい観測をしたが、一部記憶違いもあって危ないところもありました。 詳しくは観測記を見てください。



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