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『羽根リュックについて思うこと』
あゆの羽根リュックとその中身について、少し思うことを書いてみます。もちろんリュックの中身が空っぽだったことはあゆシナリオ本編で描かれていますが、そのような物理的な話ではなく、リュックの中身が象徴していたものについて考えてみます。
そもそもリュックとその中身について真剣に考えてみるきっかけとなったのは、Keyのネタバレ掲示板に投稿された記事を読んだからでした。要約するとそれは…《羽根リュックの中身は『七年前に置き忘れた祐一の心』であり、あゆとの別れのシーンでリュックを抱いているあゆの姿は、心を抱きしめているように見える》というものでした。
私自身はその時までは、リュックとその中身についてあまり深く考えたことがありませんでした。とは言え、リュックはあゆを象徴する重要なアイテムの1つなわけですから、『あゆの心』などを意味するのだろうとは漠然と考えていました。
何にせよあゆシナリオの終盤で、その中身は空っぽであることが判明しました。そして…結局のところ『空っぽ』であったことが、重大な意味を持っていたのだろうと思います。そう考えると『七年前に置き忘れた祐一の心』という捉え方も、ある意味では核心に近いのではないかと思います。
さて…私の考えですが、リュックの中身が象徴するものとは『忘れられた2人の思い出(哀しい記憶)』ではないかと思います。『心』だと感情面の要素が強く押し出されてしまいますから、むしろ失われていた『記憶』という捉え方をしました。リュックを開けること、それは閉ざされていた『記憶』の開放(真実の曝露)だったのではないかと思います。
そう…リュックの中身は空っぽでした。その衝撃の事実は、あゆ自身が実際にリュックを開けてその中身を確認したことで明らかとなります。ちょうどそれと前後して、あゆの記憶はあやふやなものとなり、あゆ自身が通っていたはずの学校の存在それ自体までもが否定されようとしていました。そしてあゆは、自分の記憶が確かなものだと証明しようとしてリュックを開けることによって、自らだめ押しをすることになります。結局あゆは、まだ記憶の戻りきらない祐一にとっては意味不明な言葉を残して、その姿を消してしまいます。空っぽのリュックだけを彼の元に残して…。
…そう、リュックを開けることによって、そこに封じられていた何かが解き放たれたのです。それは、決して目には見えないもの。けれどとても大切なもの…7年前の『哀しい記憶』。手提げ、あるいは肩かけ式の鞄や腰に付けるポーチなどではなく、背負い式のリュックであることも邪推するならば、あゆはあまりにも重い『荷物』を背負っていたという見方が出来ると思います。また…再会してすぐの時のあゆは、背中のリュックに羽根が付いていることに自分で気がつかずにいましたが、そもそも背中の鞄自体があゆの意識面においても同様に『死角』になっていたのではないでしょうか。捜し求めているはずの記憶がこんな身近な所に、しかしながら自分にとっては死角となる場所に封じ込められていたと考えると、あるいは偶然なのかも知れませんが、意味深なものを感じます。
結局のところ、確かにリュックを開ける前からあゆの記憶はあやふやなものになりつつありましたが、最後に止めの確実な一撃を与えたのは、リュックを開けたことそれ自体でした。従って…徐々にではありますが、忘却の彼方から甦りつつあった過去の記憶に引きずられて、ついには一気に全てを開放してしまったと考えることも出来ると思います。これに関しては、祐一の出現によって記憶の蓋が開きつつあったということも言えるのではないでしょうか。そしてその結果、祐一の方もあゆの生死に関する部分以外の全ての記憶を取り戻すことになりました。
こう考えると、哀しい記憶を閉じ込めていたリュックはまさに『あゆの心』と考えることが出来ると思います。リュックがあゆの心とするならば、祐一に対して忘れられないほどの強い想いを残していたあゆが、リュックを祐一の元に残していなくなってしまったことも頷けますし、夕焼けのあの場所でもう一度だけ再会して…お別れをするシーンで、リュックと人形が共に消えてしまったことも、今度こそはあゆの心が本来あるべき場所(現実)へと還ったことを意味するのではないかと思います。
さて…ここまで色々と考えてみるに際して、リュックは『あゆの心』と書きましたが、もうひとつ別な言葉で表現することも出来るのではないかと思います。
『人』のさまざまな『想い』を閉じ込めたもの。
その中に封じられたものは、決して人の目には映らず…
それを開けてしまうことで、哀しみや苦しみが放たれるもの。
けれど…『最後』にたった1つだけ残されていた、純粋な想い…『希望』。
あゆの羽根リュックの正体は、『哀しい過去の記憶』と…それを正面から受け止めて前に向かって強く歩き出すことで、最後の最後に与えられる『希望』(=奇跡)がつめられた『パンドラの箱』だったのではないかとも思えてくるのです…。
『以上』
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