2009年8月18日 第10号(通算252号)
『作業所だより』最新号より
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ある日の昼食提供日「揚げそば(皿うどん)」
主張/ボーナス査定

 ある方に「今日は作業所のボーナス支給日(4面参照)でした」と分配方法を説明するメールを送ったら、企業の人事担当であるその方から、次のようなメールをいただきました。

 「自分のやったことを振り返って発表することで、労働の喜びや達成感を少しでも味わうことができますよね。次のボーナス会議のときに検討していただければと思うのですが、この半年で成長できた点について発表するなんて項目があれば面白いと思うのです。

 今の形式であれば、他の人と比較して貢献できたことがクローズアップできていると思うので、これをベースにして、そこに過去の自分に何か付け加えることが出来た分だけ加点してあげても良いのかと。」

 なるほど、さすが大企業の人事担当責任者です。自分がこのように変わることが出来た・成長が出来たと自己分析して報告し、仲間がそれを認めることで加点されるなんて長期の展望を開くことにつながるし、いいなあと思いました。

 ところが一方で「それが出来たらこんなところに来ているものか」とも言えます。彼らは「毎朝表のシャッターを開けました」という単純な行為を思い出すのがやっとのことだし、それを思い出させるのが私たちの大仕事なんですね。自分の変革点について自ら自己分析し、報告することは今のところ不可能といわざるを得ません。

 ただ、こちらでしっかりと観察した上で、彼ら一人一人の変化を指摘して「どう思う?」ということはやれると思うのです。例えば「居眠り君はこの半年間、金銭トラブル一回も起こさなかったぞ」とか「彼は泣かなくなったと思わないか?」という変化・成長です。これなら話し合いが成立すると思うし、そのような努力も加点されて1000円がもらえるというシステムはよいと考えます。

 今の、仕事に貢献した内容の発表では、本人は「こんな仕事をした」と言っても我々から見るとまだまだ不十分で、「これからはやらない日がないように期待を込めて認めましょう」という場面が結構多い。この期待値による加点を考えれば、半年間の成長や変化に加点することも大事だといえましょう。

 私たちがいつも気をつけているのは、誉めるとすぐに舞い上がる人たちだし、それだけなら舞わせておけばいいのですが、増長してしまってまだできない人を見下す発言が起こったりするのです。特に「力量」と「年齢差」がごちゃごちゃですから、うっかり誉められない現実もあり、日常的にはめったに誉めません。半年に一回、ボーナス付で誉める機会を作るのも面白い。「増長し傲慢にならなくなった」とみんなで認めて加点してやる機会を作るのもいいですから。

両替騒動顛末記


 うちの作業所にはお金にまつわるトラブルメーカーが一人おりまして、今回も主役は居眠り君です。しかしこれも、サービス提供事業者として彼らをつつがなく管理することを業務にし、お小遣いの制限までしている所ではまず起こらない出来事。こういう問題が起こることをむしろ誇りに思う私たちです。起こったほうが面白いしねえ!

1、発端

 8月5日、島本祭りの日でした。この日は作業所は前の駐車場でビアガーデンを開いておりました。従業員は自由にどちらを選んでもよいことになっていました。F君は先に島本祭りに参加し、薄暮の頃に彼にとっては、祭りに欠かせないヨーヨーを持ってビアガーデンに帰ってきました。

 帰るなり参加していた母親に向かって「今日居眠り君に2000円取られた!」と訴えたのです。もちろん皆は「スワッ!」となりました。タク君から100円取り上げたのはつい最近のことだからです。母親が彼の財布を見たところ確かに1000円札2枚が消えて小銭が入っているだけ。

 私たちは「またやりやがったな」と、しかし容疑者がいないから月曜日に話をつけることにしてこの日はこれで終わりました。

2、月曜日の朝

 早速出勤してきた二人を奥へ呼んで座らせ、居眠り君に「お前、F君から2000円取り上げたのか?」と迫りました。彼は「そんなん盗ってへん。島本祭りでF君におうてへんもん」と口を尖らせ、F君はそばで「2000円とらはった」と繰り返し言い続けます。「こんなん言うてるやないか。何かしたやろ!」というのですが否定。

 そこへF君が「白いテーブルのとこでとらはった」と具体的な話をしたので居眠り君「あ〜、その代わり500円玉3個と100円玉5個あげたやん」というと、F君もすぐに「500円玉3個と100円玉5個もらったの」と言います。どうやら居眠り君が両替を迫って小銭と札とを交換させたことが分かりました。

 明日、居眠り君は2000円をお札で持ってきて、F君は小銭で2000円持ってきてもう一回両替するということでF君との問題は収まりました。

 しかし、居眠り君が会話の中で「ボクが持っていたのは10個の硬貨」と言ったことを聞き逃さず、店長の追及が始まりました。10個も硬貨を持ってくるというのは不自然だというわけです。どこかでくすねてきたに違いない。彼が財布に入れてきたたくさんの小銭がいつも置いてあるのは作業所かお父さんの野小屋しかない。お父さんの野菜販売のお金入れに手をつけたのはわかっていましたが、「作業所の金を盗んだやろ」と迫ることで野小屋のカンカンから持ち出したことをゲロしました。

 祭りに小遣いがないから親の金に手を出して持って出たものの、小銭ばかりで不便で仕方ないし格好も悪いと、1000円札を2枚持っていたF君に目をつけ、祭りに出る前に両替を強要したらしい。F君は後になって腹が立って仕方なくなったようです。

3、火曜日の朝

 火曜日、私は「F君が10円玉で持ってきたら面白いのに」と店長にいいながら、ふと教材用に残していた1円玉で1万円ほどあるのを思い出し、秤で2kgを計り取りましてスーパーのレジ袋の小さいのに入れておきました。そして、出勤してきたF君を更衣室で抑えて、彼が持ってきた100円玉を取り上げ「これを居眠り君に渡したら2000円返してもらえるよ」と1円玉の固まりを渡しました。

 「それでは今から、札を小銭に・小銭を札に元通り交換してもらいます。さあ、どうぞ」テーブルに向かった二人にじゃんけんのように交換させ、居眠り君の前に1円玉2000円分が置かれました。居眠り君、袋に顔を近づけてしげしげと眺めています。「これほんまに2000円あるのか?」「あるよ、ちゃんと数えてきたから」「そんな〜ん、これ数えてたら今日一日仕事できひん」「何を言うか、仕事は仕事。1円玉を数えるのは私用なのやから仕事が済んで家に帰ってから数えなさい」

 居眠り君、がっくりと肩を落とし頭を抱えてしまいました。小声でブツブツというのを聞くと「ボクは500円玉3個と100円玉5個渡したのに」と言っている。「そんなもん知るかい、F君だって札が小銭になると思わなかったんや。一円玉とは言えこれでも立派に2000円あるから何も法律に違反してません」と突き放してしばらく観察していました。見ていると、顔だけじゃなくて腕からも汗が吹き出しタオルでこすっても次々と汗が出て伝わり落ちる。これじゃあ一日1円玉のことが気になって、仕事が手につかなくなるのは日常の彼を見ているから理解できます。

 「懲りたか?」「懲りた!」「あのな、両替とは多くの場合、ジュースを買いたいのに大きなお金しかなくて小銭に替えてもらうことを両替って言うんや。お前は親からくすねた金では気分が悪いし不便やし、くすねてきた細かな金を札に替えさせた。こういうのをマネーロンダリングって言う。ええか、これから二度とするなよ。」と言って、F君が家から持ってきた100円玉20枚と交換してやりました。

 「助かったやろ?」「助かった〜!」「今度やってみい、1円玉で1万円、目方にして10kgあるからなあ。全部1円玉にしてしもたるからな。」「エ〜〜〜ッ」

4、翌日

 昼食後、居眠り君が財布を出しているのを見た店長、足元に置いていた100円玉の入ったガラス瓶を出してきて、「2000円出せ!これと替えたるから」と怖い顔で強要しました。彼は「2000円持ってへんし、そんなんいやです」「そのいやなことお前がF君にやったのやないか!」彼はこのときも腕から顔から汗が吹き出してきました。どうやら精神的にストレスがたまると、特に暑い日はこうなるらしい。この汗を見て彼は彼なりにこたえているらしいことを確かめました。

 お金を巡ってはいろいろと事を起こしてくれますが、これは彼だけではなく周囲のみんなの(私たちも含めて)勉強になっているし、おもろい出来事でした。

夏のボーナス支払いました


 明日から盆休みという8月11日、経営は決して楽ではないけれど働く彼らに労働意欲を掻き立てるために、今夏も無事にボーナスを支払うことができました。ただし、誰がいくらもらうかという「査定」は全員に公開の話し合いでやります。

 ご存知の方も多いのですが、少し査定会議の説明しておくと、前期の冬のボーナス以降、自分はどんな働きをしたかアピールしてみんなに確かにそうだと認められると、基本給の上に1,000円ずつ加算されるという仕組み。言葉が出ない人にはみんなで考えてあげます。今回はいつも一番の高給ボーナスをかっさらうHさんが骨折で入院しているため、店長が過去の平均値を出してそれをHさんのボーナスとしましたが、他の人は全員「ボーナス獲得サバイバル会議」で決めるのです。

昼食時間が終わるなり、原資7万円を全て1,000円札にしたものを前に置いて始まりました。まず、一定額×年数の金額が基本としてみんなの前に配られました。その後は順に発言の機会が回ってくると自己アピールができるのです。

 ところがいつもならHさんが自分のやった仕事をメモしてきていて発言し、みんなもそれに刺激されて思い出せるのですが、Hさんがいないから思い出せないみたい。店長が「仕事してないのならこれ全部私の物にするからなあ」と圧力をかけるからますます頭抱えてうなっています。

 若いK君が発言するけど「自分だけの取組み」という意味が分からず、「調理実習をしました」「マンションの掃除をしました」などと当番の仕事をいうたびに「それならボクもやりました」というかみ合わない状態が続きました。

 かろうじて搾り出せたのが、R君はいつも言われなくても掃除をしていると認められました。F君はいつも重いものを進んで持ち運びする点が認められ、店長が「ホンマにお前のために助かっているんや」と3,000円ももらえました。居眠り君は野菜配達の袋の準備と伝票張りをヤイヤイ言われながらもやったことなどが認められました。タク君は毎朝の店の準備をしたことや、荷物の積載方法が上手なことを認められました。K君は生協の「めーむ広場」の準備をしたり、パンの販売日ごとにあるお宅にパンの配達をやったことが認められました。

 自分で言えたのもありますが、私たちがヒントを出してかろうじて言えたのも多かった。結果的には年功も加味した最高16000円、最低8000円というまあ私たちも納得できる金額に収まりました。

 今回もボーナスを手にした従業員たち、会議が終わるなり大事そうに袋に入れてカバンに片付けていました。苦しくとも彼らの喜びや労働意欲につながるこのボーナス支給、できるだけ長く続けたいものです。また彼らも自分の働きがボーナス支給にかかわることなんだということを自覚して、日常の取り組みにつなげてほしいものです。

      


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