鉄塔
 

           その鉄塔はまだ高い夕日を浴び
           巨体を一碧の秋天に伸ばしつづけている
           涼風の流れをせき止め すべてを吸い込み
           圧倒的な力で眼下を見渡す
           人は何故それを見抜けないのか
           鉄塔は世界の支配者にならんとしているのを
           謀略は着々と進行し ついには抗うこともできず
           重量に土台の小山は緑を失い じわりと沈む

           すでに夕日は没したというのに
           その鉄塔はまだ赤い血の光を浴び
           巨体はその腕を拡げ 地上を覆いつづけている
           もはやその存在すら自然に同化させ ついには抗うことも忘れ
           人は押しつぶされ 滅するのだろう

                        (1994年10月8日)