闇           砂海原裕津
 
 
 暗闇の中に一筋の光があり
 その中に私はいた
 冷たいリノリウムの床の上に
 しかし他は闇の中で
 手を差し延べても
 何もない

 やがて目が慣れ
 周囲の姿が明らかになる
 広大な部屋には窓がなく
 冷たいコンクリートの壁に
 ポートレートが並んでいる
 救いを求めて触れても
 テープに吹き込んだ声が
 冷たく繰り返されるだけ

 走り続けても
 壁は終わることなく
 同じ顔のポートレートが
 現れては消えていく
 声にならない叫びが耳に響く
 


                       (1998.6.10)