《プロローグ》
物語りは、一つの出会いから始まった。
時は、西暦2XXX年、動乱の時代。
たくさんの戦争があった。
核爆弾が大地をけずり、毒が海を汚し、人が人を殺し合った。
今では、大地は萎え、廃壊ビルがいたる所に横たわる。
文明の利器は、軍人や政治家たちしか使えず、庶民は貧困に苦しみ、職も少なく治安も悪い。
その戦争で、少年は祖国を家族を失い、少女は記憶を失っていた。
「・・・・名前は?」
ベッドの上で、上半身をおこし、頭に包帯をまいた少年は、目の前の見知らぬ少女に問いかけた。
「知らないの。何も覚えてないから。」
少女は、そっけなく答えた。
しかし、少年は敵意に満ちた少女の瞳が悲しげで、目をそらす事ができなかった。「それならオレが、名前をあげる。」
少年は、やわらかい少女の頬に手をのばし、優しく言った。
少年の言葉に、少女はその頬をほのかに赤く染めた。
少年が17歳、少女が16歳の春の事である。